令和6年度の「恩賜賞・日本芸術院賞受賞作品展」が6月26日(木)から7月2日(水)まで、東京・上野公園の日本芸術院で開かれます。受賞者11人の作品が展示されます。
私は俳句3句、短歌1首の書などを出品しました。
令和6年度の「恩賜賞・日本芸術院賞受賞作品展」が6月26日(木)から7月2日(水)まで、東京・上野公園の日本芸術院で開かれます。受賞者11人の作品が展示されます。
私は俳句3句、短歌1首の書などを出品しました。
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
一枚の月のひかりや夏布団 松川まさみ
死ぬことは脱皮かもしれず心太 土谷眞理子
あの世より取り残さるる昼寝覚 宮田勝
ひそやかに喰うて蛍の舞ひにけり 趙栄順
草笛や遠き日に触れるくちびる 清水薫
薔薇一輪夕日が崩しゐるところ 趙栄順
精霊の掛けて行きけりさるをがせ 酒井きよみ
裸の子抱けばずつしりやはらかし 藤倉桂
桜桃忌暗渠の水のがうがうと 飛岡光枝
【入選】
梅雨深し終の栖の水の星 安藤久美
氷水薔薇の香れる蜜をかけ 飛岡光枝
葉つぱごと野枇杷を瓶に花のごと 近藤沙羅
大南風子の決断を応援す 氷室茉胡
ひと雨に山は太りぬ青葉かな 松川まさみ
紅花畑腰で分け入り花を摘む 飛岡光枝
舟ゆらし太古の沼の蓴摘む 梅田恵美子
白山や逆さまに焼く大岩魚 稲垣雄二
行々子年々増ゆる放棄田よ 藤倉桂
限りある私と地球と大氷河 梅田恵美子
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
母の鏡黴の鏡となりゆくも 飛岡光枝
一枚の月のひかりや夏布団 松川まさみ
花摘むと腰で分け入る紅花畑 飛岡光枝
【入選】
経一巻僧百人の喪の九夏 鬼川こまち
百歳の命さきはへ菖蒲の湯 宮田勝
店番をしつつ梅干す裏の庭 花井淳
死ぬことは脱皮でありき心太 土谷眞理子
死してのち了る俳句や蚊遣香 土谷眞理子
花びらの乙女の肌を薔薇のジャム 鬼川こまち
潮騒やサマードレスの胸深く 玉置陽子
かき氷薔薇の香りの蜜をかけ 飛岡光枝
ふるさとは滴る山の懐に 橋詰育子
何もかもみな厄介や昼寝せん 松川まさみ
灯明の今日まだ消せず梅の雨 清水薫
鹿の子の眸は月を映しけり 田村史生
西日濃き三畳一間わが青春 氷室茉胡
白山を逆さまに焼く岩魚かな 稲垣雄二
息入れてみよ父の日のハーモニカ 松川まさみ
かぎりある私と地球大氷河 梅田恵美子
第二句座
席題:「簾」、「夏の蝶」
・鬼川こまち選
【特選】
目の前を夏蝶よぎる母の声 藤倉桂
いちまいの簾に分かつこの世かな 安藤久美
一茎を咥へては編む簾かな 玉置陽子
あをあをと淡海の風軒すだれ 玉置陽子
昭和果つ簾仕立の海の家 間宮伸子
簾して俗世の風を和らげん 清水薫
【入選】
青簾巻けば真夏の来てゐたり 田村史生
生と死を静かに分ける簾かな 稲垣雄二
夏蝶を追ふて峠を越えにけり 梅田恵美子
ややと寝る産後の妻や青簾 稲垣雄二
いづこより涌き來るものか夏の蝶 近藤沙羅
磨崖仏の視線をよぎる夏の蝶 土谷眞理子
山門へあざやかに飛ぶ梅雨の蝶 花井淳
我が泣くの句碑を離れず夏の蝶 清水薫
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
一茎を咥へては編む簾かな 玉置陽子
夏蝶や雲のあはひの高山寺 安藤久美
羽ふるへ青すぢ揚羽水を吸ふ 橋詰育子
【入選】
百年の我が家愛しや青簾 藤倉桂
簾吊る心に風のなき日かな 趙栄順
お御堂をめぐりて空へ夏の蝶 花井淳
一見を拒む老舗の簾かな 越智淳子
空の道つぎつぎに來る揚羽かな 近藤沙羅
夏の蝶草に止まりぬ黒唐津 山本桃潤
浅野川ひかり遊べる簾かな 松川まさみ
湯治場をざつくり分かつ簾かな 田村史生
花もなき野をただよへり夏の蝶 梅田恵美子
第一句座
•藤英樹
【特選】
明易し手のひらよりも足裏は 藤原智子
海鞘を裂きたちまちあふる潮かな 土井頼温
長嶋のあごひげ濃ゆく雲の峰 森永尚子
藪蚊とて男ざかりを選りて刺す 園田靖彦
死ぬること忘れし媼更衣 萬燈ゆき
【入選】
梅雨雲を突く獣の貌の富士の山 森永尚子
蟻地獄主食はれてしまひけり おほずひろし
青嵐とほく声聴く硯かな 藤原智子
さりげなく隠し包丁夏料理 神谷宣行
逝く朝も背番号の日ミスター忌 佐藤森恵
四葩いま花の色とも葉色とも 仲田寛子
ひと声の夏うぐひすの島を出づ イーブン美奈子
•長谷川櫂 (推敲例)
【特選】
恨めしき大きな種の枇杷すする 澤田美那子
【入選】
軽鳧の子のころがりながら親の後 金澤道子
一すぢの陽に射ぬかるる蝸牛 関根千方
足の裏手のひらよりも明易し 藤原智子
薔薇の花咲き満ちて大岡信展 藤原智子
青梅のきよとんとしたる葉陰かな 久嶋良子
第二句座 (席題:蓴菜、夏祓)
•藤英樹
【特選】
陸奥の闇は深々蓴採る イーブン美奈子
落とせざる心の穢れ夏祓 森永尚子
蓴菜のきよときよと揺るる鉢の底 葛西美津子
わが町の小さな富士や夏祓 藤原智子
加茂茄子は笊ごと供へ夏祓 木下洋子
蓴摘む一世や親指曲がるまで 澤田美那子
【入選】
蓴菜や酒はこなから辛口で きだりえこ
違ふ世へ行く気でくぐる茅の輪かな イーブン美奈子
大三輪の幣しろじろと夏祓 きだりえこ
蓴舟岸より鷺の見てゐたり 関根千方
蓴舟さびしき沼にぬつと出づ 久嶋良子
一風呂を浴びて出かけん夏祓 澤田美那子
蓴採る古代の歌を忘れけり 長谷川櫂
みなづきは今日だけの菓子夏祓 金澤道子
雨のあと藍濃き空や夏祓 神谷宣行
手のひらで水掻き分けてぬなわ舟 金澤道子
•長谷川櫂 (推敲例)
【特選】
じゅんさいの勝手に喉を通りけり 金澤道子
我の分また濁らせて御祓川 イーブン美奈子
いやいやと子ども怖がる夏祓 田中益美
一風呂を浴びて出かける夏祓 澤田美那子
蓴摘む女の指の曲がるまで 澤田美那子
蓴菜は水の衣をまとひけり 関根千方
みなづきは今日だけの菓子夏祓 金澤道子
【入選】
違ふ世へ行く気でくぐる茅の輪かな イーブン美奈子
蓴菜は錫の小鉢に所在なし 葛西美津子
落とせざるわが手の穢れ夏祓 森永尚子
蓴舟岸より鷺の見てゐたり 関根千方
形代あはれ水にもまれて流れゆく 森永尚子
ぬめぬめと盥にうつす蓴かな 吉田順子
秋篠の水の濁りへ蓴舟 きだりえこ
ぬなは舟乗り出す沼の深さかな 土井頼温
あおあおと氷川神社の茅の輪かな おほずひろし
手のひらで水掻き分けてぬなは舟 金澤道子
第一句座
矢野京子選
【特選】
ほうたるや息吐く力吸ふ力 原京子
うつし世は去りがたき夢冷奴 今村榾火
夏山や円盤に乗り飛ぶごとく(大宰府天満宮仮拝殿) 長谷川櫂
血涙の色かとおもふ梯梧咲く 大場梅子
麦秋の声よ嗄るるなゼレンスキー 神戸秀子
【入選】
推敲や髪切虫の容赦なく 城山邦紀
わが暮し金魚の目にはつまらなく 矢田民也
米蔵の米は空つぽ青嵐 安藤文
飛梅の実梅といへばことのほか 斉藤真知子
戦なき世界見ゆるか朴の花 瑞木綾乃
初鰹氷りしままを包丁す 安藤文
ガジュマルの葉陰裸の三尺寝 臼杵政治
サングラス私を名乗る私の名 高橋真樹子
半裂の片眼潰して存へり 矢田民也
やはらかき水を枕に未草 斉藤真知子
人踏まぬ土やはらかし夏わらび 石塚純子
楼蘭の乙女の塵か霾るは 長谷川櫂
里に来て母かも知れず初蛍 駒木幹正
がまがへる仏の顔で虫喰らう 安藤文
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
真緑の煮梅一粒忌を修す 大平佳余子
人触れて泰山木の花腐す 今村榾火
人踏まぬ土はやはらか夏わらび 石塚純子
【入選】
冷し酒男は母を恋ふるもの 矢野京子
早苗田を右へ左へ伯備線 ももたなおよ
飛梅の実梅ときけばことのほか 斉藤真知子
戦なき世界みゆるか朴の花 瑞木綾乃
初鰹氷りたるまま包丁す 安藤文
真つ白な麻のハンカチ更衣 神戸秀子
野に森に蝶おびただし沖縄忌 神戸秀子
うつし世は去りがたき夢冷奴 今村榾火
半裂の片眼潰れて存へり 矢田民也
やはらかな水を枕に未草 斉藤真知子
あぢさゐや風が手鞠をつくごとく 矢田民也
睦五郎干潟の国を守るべく 今村榾火
ゼレンスキーの声よ嗄るるな麦の秋 神戸秀子
横綱の風格はやも五月場所 金田伸一
句作りのはかどらぬ夜を青葉木菟 安藤文
天地の静かなる田を植ゑにけり 今村榾火
白き花咲きつぐ信濃走り梅雨 石塚純子
田植歌古米古古米古古古米 大平佳余子
誰もかもスマホ見てゐる薄暑かな 安藤文
虫喰らふ仏の顔のがまがへる 安藤文
いまも来るか鎌倉駅の初燕 神戸秀子
第二句座(席題:額の花、夏布団)
矢野京子選
【特選】
額の花太宰の墓も黄昏れて 岡村美沙子
夏掛やあるかなきかに人の上 長谷川櫂
紫陽花に嫉妬してゐる額の花 安藤文
【入選】
七十のみなしご同志夏蒲団 神戸秀子
一晩中けられひねられ夏蒲団 大平佳余子
額の花重なりあふて点描画 ストーン睦美
親ふたりそして胎の子夏布団 高橋真樹子
夏蒲団デッキに干せる護衛艦 今村榾火
夏布団けふもさよならホームラン 金田伸一
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
七十のみなしご同志夏蒲団 神戸秀子
音立ててくる山霧に額の花 神戸秀子
親ふたりそして胎の子夏布団 高橋真樹子
【入選】
夏掛けを送ると母の手紙来る 臼杵政治
早起きの鳥が窓辺に夏布団 矢野京子
新婚の二人に選ぶ夏布団 上松美智子
夜もすがら引くも跳ねるも夏布団 駒木幹正
夏布団母は小さくなりにけり 石塚純子
上京の機会を利用して、5月14日、遅まきながら神奈川近代文学館の大岡信展を観た。あらためて大岡の文学世界のゆたかさ、みずみずしさを実感した。まさに「言葉の力」を信じ、再発見し、切り拓いた生涯であり、国際的なスケールで、また万葉から現代までを自在に往還・架橋し、「孤心」と「うたげ」を見事に体現した人生だったことが理解できた。
大らかで柔らかい動感に充ちた書。
大学ノートに記された詩稿のペン字・推敲の過程、葉書や書簡などは若き日の大岡の息遣いを生々しく伝える。
大岡は1931(昭和6)年生まれで、生涯の友谷川俊太郎も同年生まれである。2人の友情を伝えるコーナーも面白い。大岡たちは戦中期を生き延び、敗戦を14歳で迎え、戦後の解放感を柔らかい感性で受け止め得た世代である。私の専門は社会学だが、社会学者でも1931年生まれはとくに卓越した人材が多い。大岡もそうだが、早くから世に出た人も目立つ。既存の枠組を軽々と越境し、新たな視野からパイオニア的な仕事をするのに世代的に有利な位置を占めていたとも言える。
大岡展はまばゆいほどの刺激に充ちている。5月18日まで開催。
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
若鮎の腹は刃の色をして 服部尚子
家中の鍋ぴかぴかにして夏に入る 服部尚子
母逝きし空を遊ぶや鯉幟 川辺酸模
整然と僧兵のごと葱坊主 甲田雅子
曲り家の板の間の艶涼しけれ 谷村和華子
【入選】
南部富士けさも雲乗せ花林檎 及川由美子
予想屋の赤鉛筆や昭和の日 臼杵政治
初夏やピアノレッスン始まる日 佐伯律子
雷鳴の轟く薔薇を切りにけり 長谷川櫂
老鶯ののどをうるほす天の水 三玉一郎
母恋うてお前も鳴くか蟇 川辺酸模
退屈の子が軋ませる籐の椅子 平尾 福
畦青む踏みし大地の柔きこと 谷村和華子
魂の集ふや春の姥捨野 武藤主明
夏の炉や語り部炭を組み直す 谷村和華子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
用無しの大き浮き球卯波かな 上 俊一
目が覚めて魔の二時三時明易し 那珂侑子
退屈の虫が軋ます籐の椅子 平尾 福
針抜いてしづかになりぬ大岩魚 宮本みさ子
短夜や老犬は死と格闘中 青沼尾燈子
【入選】
家中の鍋ぴかぴかと夏に入る 服部尚子
老犬の隻眼うす目風薫る 青沼尾燈子
客人を迎へて林檎花盛り 阿部けいこ
母のなき空に遊ぶや鯉幟 川辺酸模
足載せて石冷たさよ川の底 宮本みさ子
母に見せたき山藤の長さかな 佐伯律子
板の間の艶涼しけれ大曲家 谷村和華子
掻き落とす泥田の蛭や田股引 上 俊一
【第二句座】(席題:さくらんぼ、豆飯、守宮)
長谷川冬虹
【特選】
さくらんぼ疵あるものも愛ほしき 谷村和華子
ガラス戸に腹の波打つ守宮かな 武藤主明
曲家の主の貌して守宮かな 武藤主明
【入選】
百歳の母の祝ひや豆の飯 川辺酸模
新築の家の匂ひや守宮来る 佐伯律子
ガラス戸に吸盤見えて守宮かな 阿部けいこ
享年は百歳の母豆御飯 佐藤和子
守宮めと丑三つ時の睨み合ひ 谷村和華子
入院の留守を守宮に頼みけり 臼杵政治
騒がれて死んだふりする守宮かな 及川由美子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
見つむれば母に似てくる守宮かな 川辺酸模
夕暮れて顔見せに来る守宮かな 平尾 福
桜桃の百粒揺るる紙の箱 石川桃瑪
【入選】
新築の家の匂ひに守宮来る 佐伯律子
窓に来て夕餉うらやむ守宮かな 平尾 福
豆飯の豆残すとや子の茶碗 阿部けいこ
勝手口窺ふ守宮今年なし 青沼尾燈子
ガラス戸に腹波打たせ守宮かな 武藤主明
大波の母の一生豆の飯 川辺酸模
さくらんぼ好みし夫の忌を修うす 甲田雅子
第一句座
•藤英樹選
【特選】
ひのき飢う二百年後の心柱 土井頼温
かしは餅遠くに雲の湧くごとく 森永尚子
誰もまだゆけぬ泉のひと雫 きだりえこ
激動の地球の隅に新茶汲む 澤田美那子
【入選】
伊勢丹の配車係も更衣 西川遊歩
改良の果ての阿蘭陀獅子頭 金澤道子
万博はやはり行列夏帽子 木下洋子
広ごりて山をせり上ぐちんぐるま 土井頼温
•長谷川櫂選
【特々選】推敲例
あやめ草かきわけて入る菖蒲の湯 園田靖彦
みちのくの闇は底なし白牡丹 園田靖彦
激動の地球の隅に新茶汲む 澤田美那子
【特選】
天井にひかりの揺るる菖蒲の湯 佐藤森恵
薫風や蜘蛛は一糸をあたらしく 関根千方
出し雑魚の頭取りをる日永かな 木下洋子
仏像展仏に飽きて夏の雲 森永尚子
三歳で覚えたる味心太 森永尚子
【入選】
おごそかに宇宙をひらく大牡丹 おほずひろし
かたばみの赤き根つこを摘みきれず 藤原智子
メーデーの闘士老いたり我もまた 園田靖彦
さうぶ湯のなまぐさき香や体ぢう 森永尚子
腕通すコットンシャツに夏が来る 葛西美津子
学僧の頤みゆる日傘かな きだりえこ
函開けて兜を飾る函の上 西川遊歩
鯉幟秩父の山の懐に 藤原智子
伊勢丹の配車係も更衣 西川遊歩
今年こそ風の白藤見にゆかん 金澤道子
月山筍熊より早く採りに行かな 藤英樹
第二句座 (席題:青芭蕉、蝸牛)
•藤英樹選
【特選】
一枚の揺るる葉裏は蝸牛 葛西美津子
糞ひねるまんりき力蝸牛 森永尚子
玉巻きて青き炎の芭蕉かな きだりえこ
青芭蕉噎せ返りつつ歩く道 久嶋良子
東塔の裳階へそよぐ青芭蕉 きだりえこ
【入選】
軽やかに荒野を巻いて芭蕉かな イーブン美奈子
枯芭蕉割つて玉巻く芭蕉かな 澤田美那子
八つ手の葉でんでん虫がいつもゐる 金澤道子
江東の風をほぐさん青芭蕉 藤原智子
かたつむりおまえも必死雨の中 吉田順子
蝸牛我に返りて仰ぐ空 久嶋良子
雨音の激しくなりぬ青芭蕉 金澤道子
•長谷川櫂選
【特選】推敲例
おごそかに首めぐらせよ蝸牛 おほずひろし
枯芭蕉割つて玉巻く芭蕉かな 澤田美那子
玉解いてもうずたずたや青芭蕉 藤英樹
【入選】
黒羽や杏子文庫の青芭蕉 藤英樹
けさ一尺ゆふべ一尺かたつむり 藤英樹
太陽に刃をかざす青芭蕉 神谷宣行
糞ひねるまんりき力蝸牛 森永尚子
ゆつくりと地球をめぐるカタツムリ おほずひろし
江東の風をほぐさん青芭蕉 藤原智子
俳諧の旅のこころや蝸牛 西川遊歩
・長谷川櫂選
| 一座目 | |
| 【特選】推敲例 | |
| 新緑を喜ぶ栗鼠の身の軽さ | 越智淳子 |
| 大鍋にぐらと筍かへりけり | 梅田恵美子 |
| 軽井沢村たりしころ麦の秋 | 越智淳子 |
| 【入選】 | |
| 刈草の匂ひ激しき昼寝かな | 北側松太 |
| 取り込みしズボンを振れば雨蛙 | 中野美津子 |
| 長旅を終へて涼しき畳かな | 北側松太 |
| 猫抱けば春の愁ひの重さあり | 北側松太 |
| 勝訴なれど姉は還らず散る桜 | 長尾貴代 |
| パンジーに道を訊きたい住宅地 | 中野美津子 |
| あ | |
| 二座目 | |
| 【特選】推敲例 | |
| ゴーギャンの女らによき木下闇 | 北側松太 |
| 生まれたる蝶落ち着かぬ野原かな | 梅田恵美子 |
| 松落葉鳴らし自転車走り去る | 越智淳子 |
| 初夏や口にほのかな純米酒 | 花井淳 |
| 【入選】 | |
| 初筍その姫皮を寿 | 澤田美那子 |
| かりそめの水に金魚の遊びをり | 安藤久美 |
| かたばみや抜こうとすれば花ひらく | 中野美津子 |
| ストーブを消しては点けて夏に入る | 澤田美那子 |
| 夫婦とは言葉少なや冷さうめん | 北側松太 |
| くたびれし我くたびれし浴衣かな | 北側松太 |
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
葛桜みよしのの夜をとぢこめて 安藤久美
灰汁抜かれあはれ筍丸裸 松川まさみ
生命線にぎる嬰児や夏来る 花井淳
薫りよき餅屋句集やつばくらめ 近藤沙羅
チューリップ大笑いして崩れけり 稲垣雄二
句の切れを如何に英訳夏立ちぬ 花井淳
能登を出て能登に戻る子荒神輿 宮田勝
潮騒が慟哭となる水俣忌 趙栄順
【入選】
一粒の意思の静けさ蝸牛 趙栄順
鯉のぼり子ら定年を過ぎにけり 密田妖子
空も海も空きがあります鯉幟 川上あきこ
駆除といふ筍あはれころがりぬ 梅田恵美子
くちびるは覚えてゐたり草の笛 安藤久美
四万十を泳いで渡れ鯉のぼり 安藤久美
どの星へ行こうかジャンケン子どもの日 川上あきこ
幼子に菖蒲湯掛ける頭から 藤倉桂
紀ノ川へ潮さかのぼる立夏かな 玉置陽子
何にでもなれるパン種子供の日 安藤久美
筍の中より竹のあらはれり 田村史生
漣のやうにあやめの咲き初むる 近藤沙羅
穂高嶺の歓声のごと柳絮とぶ 梅田恵美子
ベネチアは水のゆりかご明易き 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
はつなつや大き虚空の中に我 近藤沙羅
夏めくやわが一日ははや夜に 密田妖子
花よ葉よ吾にもうなき恋の夜 氷室茉胡
筍の中より竹のあらはるる 田村史生
一本の胡瓜を齧り推敲す 田村史生
【特選】
灰汁抜かれあはれ筍丸裸 松川まさみ
くちびるは覚えてゐるか草の笛 安藤久美
チューリップ大笑ひして崩れけり 稲垣雄二
風鈴やまづは指もて鳴らしやる 趙栄順
菩提樹の花こぼるるや蛇の寺 飛岡光枝
蝌蚪のひも眠りてしづか山の路 梅田恵美子
さらさらと夏来たりけり竹林 間宮伸子
切つても切つても吹きあぐる新緑 近藤沙羅
ベネチアは海のゆりかご明易き 玉置陽子
赤箱の石鹸下ろす立夏かな 田村史生
薫風や深くかなしく象の皺 松川まさみ
この國の戦後よ永久に蜃気楼 宮田勝
早苗田にわが家も浮かぶ越の国 酒井きよみ
【入選】
一粒の意志の静けさ蝸牛 趙栄順
心臓を測るベットに春惜しむ 稲垣雄二
山法師町を見おろす峠かな 橋詰育子
薫風や遺伝子のまま髪の生ゆ 土谷眞理子
空も海もまだ空きがある鯉幟 川上あきこ
壬生狂言鐘の中から鬼や出づ 田村史生
葛桜みよしのの夜をそのなかに 安藤久美
薫りよき餅屋句集へつばくらめ 近藤沙羅
天真の土偶の乳房春の月 川上あきこ
柿若葉ブルーシートのままに町 密田妖子
わが庭のわけても柿の若葉かな 橋詰育子
菖蒲湯や後期高齢とは如何に 藤倉桂
辞儀深く見送られゐる薄暑かな 松川まさみ
金沢の菓子なほのこと新茶かな 越智淳子
古家の闇を知りをる守宮かな 清水薫
草茂る輪島通りに人の声 越智淳子
山の池水盛り上げる蝌蚪のひも 梅田恵美子
身をすべる一枚の布五月くる 飛岡光枝
幼子に掛ける菖蒲湯頭から 藤倉桂
紀ノ川を潮さかのぼる立夏かな 玉置陽子
行きあうて八十八夜宵の口 松川まさみ
山彦の歌うて囃す小鮎かな 玉置陽子
蟇の声を辿るや寺の奥 近藤沙羅
七十の体温に薔薇香るかな 趙栄順
万緑や神に任せん吾が命 土谷眞理子
蒔きそこねたる公物の茄子の種 飛岡光枝
筍の深き眠りへ鉈を打つ 梅田恵美子
能登を出て能登に戻る子荒神輿 宮田勝
穂高嶺は歓声をあげ柳絮とぶ 梅田恵美子
清水へ登る坂みな飛花落花 氷室茉胡
早苗田や夕日に燃ゆる越の国 酒井きよみ
余花の雨ふつふつとなほ恋心 氷室茉胡
潮騒が慟哭となる水俣忌 趙栄順
まき散らす一葉もなし青嵐 越智淳子
吾に挑む蚊は軽率をまぬがれず 清水薫
白玉にかがやくえくぼ一つづつ 安藤久美
小満の月はさやかに楠匂ふ 間宮伸子
タンバリン鳴らして子らの夏来たり 間宮伸子
第二句座
席題:「滝」、「鮑」
・鬼川こまち選
【特選】
ひつぺがす岩になりたる大鮑 稲垣雄二
滝壺や思ひの丈のこゑたまる 松川まさみ
一本の滝立ち上がる御姿 安藤久美
太陽も月も流るる瀑布かな 田村史生
炙られて阿鼻叫喚のあわびかな 梅田恵美子
鮑住む岩は無事かな舳倉島 清水薫
鮑上ぐ海女をいたはる舟の夫 越智淳子
滝しぶき浴びて水の香芳しく 梅田恵美子
神さびの滝音に胸濡らしけり 安藤久美
鮑焼く我ロビンソン・クルーソー 藤倉桂
【入選】
白き炎(ほ)を吐きたる滝や神の声 川上あきこ
日の射して虹うまれけり滝の前 橋詰育子
大あわび捕りて話がおほきくなり 酒井きよみ
神の火に身をよぢりけり大鮑 飛岡光枝
滝音に励まされゆく山の道 近藤沙羅
眼裏に枯山水の滝の音 花井淳
取り落とす鮑は闇へ沈みゆく 長谷川櫂
軽々と羽衣の滝舞ひにけり 間宮伸子
引つ付ひて離れぬ二枚鮑籠 飛岡光枝
何もかも捨ててしまへと大瀑布 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
あらあらと滝立ち上がる御姿 安藤久美
鮑住む巌は無事か舳倉島 清水薫
能登揺れてすみかはりたる鮑かな 鬼川こまち
【入選】
恙なく隆起の海へ鮑採り 花井淳
箆入れて一気に捌く鮑かな 宮田勝
炙られて身も世もあらぬあわびかな 梅田恵美子
滝壺へカッパを借りる大中小 間宮伸子
滝落ちて轟音に蝶生まれけり 稲垣雄二
吸ひつひて離れぬ二枚鮑籠 飛岡光枝