古志鎌倉ズーム句会(2025年9月14日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
長かりし夏の終わりの黒葡萄 おほずひろし
秋の蚊に貌のありけり殺しけり イーブン美奈子
のちの月ベランダで呼ぶ妻の声 おほずひろし
新豆腐そのまま食べてしまひけり 木下洋子
【入選】
底見ゆる鎌倉の川小鳥来る 金澤道子
よく響く水琴窟よ秋に入る 田中益美
白々と露の凝れる洗かな 長谷川櫂
木漏れ日も葉擦れも秋に大欅 澤田美那子
粉を噴いて黒く涼しき昆布かな 長谷川櫂
鎌倉の風のあつまる萩の寺 金澤道子
秋風に骨まで透かす守宮かな イーブン美奈子
•長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
波一つ打つて逃げたる鱸かな 葛西美津子
役所から茶碗届きぬ敬老日 澤田美那子
菊の前命しづかに祈りけり 吉田順子
【特選】
爽やかにたはし手にして応対す 仲田寛子
さつぱりと棒に戻りし案山子かな 仲田寛子
頑丈な老眼鏡と夜長かな 森永尚子
ぐにやぐにやに溶けし眼鏡も露けしや 藤英樹
【入選】
長かりし夏も終はりか黒葡萄 おほずひろし
颱風やウェディングドレス大鏡 久嶋良子
秋水に沈みて歪む剃刀よ 佐藤森恵
秋の蚊に命ありけり殺しけり イーブン美奈子
ひとむらの曼珠沙華咲く人の墓 吉田順子
死にかけし母甦る秋の風 萬燈ゆき
月明に舟浮かべては鱸釣る 葛西美津子
夫となら老いも楽しや秋刀魚焼く 萬燈ゆき
我を呑む大蛇と化しぬ阿波踊 イーブン美奈子
御巣鷹の千羽鶴みな露の鶴 藤英樹
とんぼうは誰の化身か日航忌 藤英樹
八十年経ちし世界や敗戦日 萬燈ゆき
三陸の筋金入りの秋刀魚かな 関根千方
我が家は朝日の真前野分あと 神谷宣行
第二句座 (席題:豊年、燕帰る)
•藤英樹選
【特選】
まぐはひもほがらかなりき豊の秋 森永尚子
豊年の島に寄せくる金の波 藤原智子
乙女子の踊る肉むら豊の秋 イーブン美奈子
我が代で終はる田畑や豊の秋 森永尚子
鬼瓦口開け笑ふ豊の秋 きだりえこ
豊年や渋谷の底を這ふ神輿 西川遊歩
あれよかし燕の帰る遠い空 きだりえこ
【入選】
太陽の神は女や豊の秋 イーブン美奈子
豊の秋熊はよろこび山を出づ 神谷宣行
長命の牛馬ねぎらへ豊の秋 関根千方
豊年や下宿に届く米俵 久嶋良子
洗濯もの干しつ見送る秋燕 萬燈ゆき
大空を微塵の燕帰りけり 長谷川櫂
出来秋の飴山實全句集 西川遊歩
•長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
長命の牛馬ねぎらへ豊の秋 関根千方
銭湯をあがれば帰る燕かな 佐藤森恵
【入選】
秋燕秩父音頭で見送りぬ 萬燈ゆき
洗濯もの干しつ見送る秋燕 萬燈ゆき
息子らは村に戻らず豊の秋 田中益美
出来秋の飴山實全句集 西川遊歩
傷つきて残る燕の梁に居り 佐藤森恵
