第一句座
・藤英樹選
【特選】
つつがなく秋の金魚となりにけり 木下洋子
薬箪笥に抽斗いくつ木の実降る わたなべかよ
秋は空から桐の実を鳴らしつつ 葛西美津子
見舞篭秋の果実のひややかに 葛西美津子
被爆者の投げし林檎を受け留めよ 神谷宣行
竜胆の立て札の横竜胆咲く 仲田寛子
【入選】
栗の子がさざめいてゐる栗御飯 澤田美那子
がうがうと簗鳴き崩れ濁流へ 西川遊歩
三千年石を穿ちて水の秋 きだりえこ
みの虫の夢にやさしい母ゐるか 森永尚子
鴎外は冷眼なりぬ秋日影 関根千方
木の実独楽最後よろよろ我のごと 園田靖彦
仕事できる女黙して新酒汲む 仲田寛子
ふるさとのほのかな地熱今年米 園田靖彦
百年後描けぬ我らそぞろ寒 おほずひろし
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
秋は空から桐の実を鳴らしつつ 葛西美津子
初恋の人もジジイや秋刀魚焼く 木下洋子
空を飛ぶジンベイザメや秋の晴 おほずひろし
ふるさとはほのかな地熱今年米 園田靖彦
この辺り千年のちは薄原 きだりえこ
【入選】
竹伐つて青空残る静寂かな きだりえこ
渋皮の香の栗飯をよろこべり 葛西美津子
この秋やしみじみノーベル平和賞 澤田美那子
秋晴や完治を願ふカツカレー 神谷宣行
ひややかな秋の果実の見舞籠 葛西美津子
第二句座 (席題:鳥兜、障子洗ふ)
・藤英樹選
【特選】
障子洗ふ信濃の川や母の声 吉田順子
糟糠の妻の微笑み鳥兜 きだりえこ
洗はれて障子の骨の立ちあがる 長谷川櫂
自堕落に生きて最後は鳥兜 きだりえこ
【入選】
一間きりの和室の障子洗ひけり わたなべかよ
障子洗ふや猫のひつかき傷あらは 仲田寛子
訳もなく魅かれてゆきぬ鳥兜 久嶋良子
老松に干さる山盧の障子かな 西川遊歩
胸過るひとりの男とりかぶと 葛西美津子
障子洗ふたつた二枚の大仕事 澤田美那子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
洗はんとすれば障子の流れ出す 藤英樹
兄弟が破りし障子洗ひけり 木下洋子
ざぶざぶと国も障子も洗ふべし きだりえこ
【入選】
シャワー浴びながら洗ふ障子かな 木下洋子
ふるさとの川で障子を洗ひし日 吉田順子
一間きり和室の障子洗ひけり わたなべかよ
干されある障子の骨を吹く風よ イーブン美奈子
かって二十枚今二枚障子干す 園田靖彦
老松に干して山盧の障子かな 西川遊歩
洗ひ上げ骨美しき障子かな 森永尚子
障子洗ふたつた二枚の大仕事 澤田美那子