第一句座
•藤英樹選
【特選】
荒々と冬の匂ひに抱かれけり 葛西美津子
子育ての日々の遥けき小春かな 萬燈ゆき
ありがたうばかりの母や花柊 関根千方
初鏡九十の覚悟問はれをり 澤田美那子
【入選】
こんなにも仏がおはす柿の秋 森永尚子
冬将軍早よ来て熊を眠らせよ 関根千方
年重ね夫婦は河豚に似てきたる 田中益美
毛筆で届く一筆初時雨 仲田寛子
ストーブやお尻まん丸赤ん坊 田中益美
綿虫やあれが母との最後の旅 萬燈ゆき
けさ冬のローズマリーに青き花 葛西美津子
表札は今も夫の名冬ぬくし 金澤道子
さりながらこの世まばゆし花びら餅 長谷川櫂
肩に落つ白髪払ひて冬に入る 仲田寛子
神のごと富士は立ちたり今朝の冬 神谷宣行
•長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
荒々と冬の匂ひに抱かれけり 葛西美津子
翁ゆく時雨るる宇宙果てもなし 神谷宣行
退りゆく日差し大事に干菜吊る 金澤道子
錦木のけさの紅新しき 藤原智子
静かさや人をはなるる浮寝鳥 仲田寛子
【入選】
母の忌や父を招きて湯豆腐に 神谷宣行
スポーツ紙三紙抱へて日向ぼこ 藤英樹
眠りゐる山のかをりか蘭奢待 きだりえこ
着ぶくれて河豚の夫婦の二人かな 田中益美
餅花のゆるる単純老の春 澤田美那子
晴れやかな一日二日惜しみけり 藤原智子
綿虫やあれが母との終の旅 萬燈ゆき
けさ冬のローズマリーに青き花 葛西美津子
柿紅葉一枚のせて柿届く 金澤道子
冬ざれのまつ赤なポスト投函す 葛西美津子
ぽつねんと白鷺一羽冬の川 おほずひろし
冬紅葉狂気の画家の筆激し おほずひろし
毟られし羽毛漂ふ冬の庭 葛西美津子
二十年子ら三人と墓洗ふ 土井頼温
会ひにゆく母いまもあり冬桜 萬燈ゆき
子育ての日々の遥けき小春かな 萬燈ゆき
包丁す弾けさうなる鰤の腹 澤田美那子
しぐるるやざくとえぐれる蘭奢待 きだりえこ
狛亀の甲羅冷たし十三夜 久嶋良子
ありがたうばかりいふ母花柊 関根千方
冬に入る肩の白髪を払ひけり 仲田寛子
九十の覚悟はいかに初鏡 澤田美那子
眺めても着てもうれしき春着かな 関根千方
神のごと富士は立ちたり今朝の冬 神谷宣行
父逝きてやがて十年冬桜 萬燈ゆき
第二句座 (席題:埋火、お年玉)
•藤英樹選
【特選】
永らへて己に包むお年玉 萬燈ゆき
胸中になほ埋火のごときもの イーブン美奈子
お年玉うけとる孫の大きな手 吉田順子
【入選】
一年の無病息災お年玉 きだりえこ
何もかも埋み火にして去りたまふ 長谷川櫂
歳ひとつ天に賜るお年玉 神谷宣行
父母へ詫び状添へてお年玉 きだりえこ
埋火やここに飴山全句集 関根千方
お年玉に添え書きのあるうれしさよ 仲田寛子
•長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
歳ひとつ天に賜るお年玉 神谷宣行
舞い降りて鶴は我が田のお年玉 神谷宣行
年玉の袋うつくし懐に 藤英樹
【入選】
埋火にしんと冷えきしひとりかな 葛西美津子
永らへし己に包むお年玉 萬燈ゆき
埋火のまつ赤な命惜しみけり 森永尚子
埋火やここに飴山全句集 関根千方
かんかんと熾る備長埋めけり 葛西美津子
ありがたや子孫曾孫にお年玉 金澤道子
