古志金沢ズーム句会(2025年9月21日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
白うちはあふげどさめぬこの世かな 梅田恵美子
青空に散らばつている棗かな 清水薫
かなかなのしきりシベリア抑留碑 氷室茉胡
フラメンコ始めたる妻秋高し 氷室茉胡
この夏の燃え残りなり富士の山 飛岡光枝
軍靴手に非戦を語る生身魂 清水薫
老ゆるとは軽くなること渡り鳥 土谷眞理子
【入選】
そよぎつつ微熱にうるむ秋の薔薇 松川まさみ
抗がん剤しばらく休む秋日傘 土谷眞理子
尺とりや風をつかみて進みゆく 梅田恵美子
萩刈つて風の見えなくなりにけり 清水薫
天地のあはひに独り良夜かな 泉早苗
星月夜われらの星も燃えをるや 橋詰育子
梅室の塚くれなゐに萩の風 泉早苗
冬瓜の身の置きどころなき世かな 稲垣雄二
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
受け入れて死も軽やかに赤蜻蛉 土谷眞理子
衰ひや草の花にもつまづきぬ 松川まさみ
ゆつくりと夜煮る小豆秋彼岸 酒井きよみ
月蝕の月のほとりに雁眠る 田村史生
生涯を戦ふ秋の扇かな 稲垣雄二
【入選】
秋風や何処も夫の気配して 泉早苗
小さき母隠してしまふ花野かな 藤倉桂
青空に散らばつている棗かな 清水薫
葛の花高くめぐるや秋の蝶 越智淳子
抗がん剤しばらく休む秋日傘 土谷眞理子
月もよし天地の間に独りかな 泉早苗
推敲や灯一つ長き夜を 山本桃潤
煮魚に梅干ひとつ残暑かな 玉置陽子
湖や秋夫婦で作る佃煮屋 酒井きよみ
一本の炭となりけり初秋刀魚 飛岡光枝
梅室の塚くれなゐに萩の風 泉早苗
黒葡萄エジプトの水滴らす 安藤久美
佃煮を三つ四つ皿へ鳥渡る 花井淳
この夏の燃え残りなり富士の山 飛岡光枝
草木の押し黙る闇霧の中 駒木幹正
軍靴手に非戦を語る生身魂 清水薫
老ゆるとは軽くなること渡り鳥 土谷眞理子
誰も居ぬ静かな夜を鉦叩 橋詰育子
第二句座
席題:「蟋蟀」、「松茸」
・鬼川こまち選
【特選】
松茸の花さながらに香りけり 長谷川櫂
松茸に山の一夜の湿りかな 松川まさみ
ちちろ鳴く大東京の片隅に 安藤久美
一匹は耳底に棲むちちろかな 趙栄順
ちちろむし何を見つめる大きな目 藤倉桂
ほきと捥ぐ松茸のまだ莟かな 長谷川櫂
【入選】
推敲の闇うるわしやつづれさせ 安藤久美
正直は母の口癖ちちろ虫 清水薫
けんかして言ひ返せずやつづれさせ 間宮伸子
松茸や野人なれども俗ならず 長谷川櫂
ポケットに隠して帰るちちろ虫 田村史生
下駄はいて露天の湯までちちろ虫 梅田恵美子
松茸や赤松植えて待ちし日々 山本桃潤
一山を驚かしたる松茸狩 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
松茸や小さけれども匂ひたつ 松川まさみ
弔ひやこおろぎの鳴く昼の闇 稲垣雄二
死神の手下か蟋蟀二三匹 駒木幹正
一匹は水底に棲むちちろかな 趙栄順
【入選】
三年ぶり松茸飯を炊きにけり 梅田恵美子
松茸をひと盛チュセヨ南大門 花井淳
蟋蟀やひとり暮らしに住みついて 鬼川こまち
ちちろ鳴く独りの夜にまだ馴れず 泉早苗
松茸に信濃の松葉敷いてあり 稲垣雄二
愚痴楽し焼き松茸を裂きながら 松川まさみ
松茸や木の根の道を鞍馬へと 飛岡光枝
いつしかに眠る仕舞湯つづれさせ 氷室茉胡
村老いてちちろの闇の恐ろしき 稲垣雄二
蟋蟀の曠野となりぬ宮址かな 田村史生
松茸や赤松植えて待ちし日々 山本桃潤
