第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
生涯は涼しきマザーテレサかな 山本桃潤
新緑や百億人の野菜ジュース 川上あきこ
掠めゆく水の惑星つばくらめ 安藤久美
街道の悲喜もむかしや大夏野 酒井きよみ
一煎はいろなきほどの初摘み茶 泉早苗
ばら苑を残して詩人逝きにけり 清水薫
柿の花こぼしてゐるはさみしさか 安藤久美
田を植ゑて土佐一国のしづけさよ 橋詰育子
大夕焼明日あるごとく沈みゆく 趙栄順
麦秋の人隠すときそよぐかな 趙栄順
【入選】
汗ばみて森のにほひの駿馬かな 泉早苗
海はるか山またはるかサングラス 趙栄順
潮の香や火の香や鰹食ひにけり 趙栄順
月曜の若葉に押され一年生 川上あきこ
遠郭公母の生家の家仕舞ひ 酒井きよみ
麦熟るる燃へ出しさうな大地かな 藤倉桂
病む母もショートカットや更衣 藤倉桂
日傘とじ入る三和土の安らかさ 越智淳子
一つ年のびし思ひや新茶のむ 橋詰育子
この家の水にも慣れて金魚かな 飛岡光枝
新茶一煎美しき日なりけり 松川まさみ
夏めくや世界を憂ふ理髪店 田村史生
願掛けて投ぐかはらけや若葉光 田中紫春
土俵際せはしく掃くや五月場所 近藤沙羅
雪渓の帯細りゆく田植かな 酒井きよみ
五月闇軋む列島いかにせん 泉早苗
・長谷川櫂選
【特特選】
夏かがやく長き手足を洗ひけり 安藤久美
苗取の後ひろびろと朝の雲 越智淳子
新茶一煎美しき日なりけり 松川まさみ
【特選】
田を植ゑて土佐一国のしづけさよ 橋詰育子
青嵐蝶も吹かれてはるかまで 橋詰育子
潮の香や火の香や鰹食ひにけり 趙栄順
能登地震や岩に隠るる大鮑 花井淳
スコツチと氷が馴染む緑の夜 山本桃潤
【入選】
むれ咲いて絵にはあらねど杜若 橋詰育子
しぶき浴びざくざく包丁山の蕗 梅田恵美子
海はるか山またはるかサングラス 趙栄順
吊忍つりかへて夏来たりけり 橋詰育子
お茶うけはあをき蚕豆山の家 藤倉桂
一つ年のびし思ひや新茶のむ 橋詰育子
さつきまで人の声あり植田かな 稲垣雄二
この家の水にも慣れて金魚かな 飛岡光枝
花柚子やあたりまへの日々戻りくる 梅田恵美子
一煎はいろなきほどの初摘み茶 泉早苗
夏めくや世界を憂ふ理髪店 田村史生
虹立ちて誰かあらはれさうな朝 清水薫
何もなき夕餉に香る木の芽かな 安藤久美
蝶に聞く泰山木の花いづこ 間宮信子
ポン菓子のポンと轟く初夏の市 梅田恵美子
五月闇軋む列島いかにせん 泉早苗
牛車行く玉砂利の音御所涼し 氷室茉胡
尾をふりふり乳吸ふ仔山羊麦の秋 川上あきこ
ひそやかに若葉の木蔭蜂巣箱 梅田恵美子
一煎は写真の母へ新茶汲む 玉置陽子
第二句座(席題:雲の峰、栃の花)
・鬼川こまち選
【特選】
空突いて雨を呼ぶなり栃の花 松川まさみ
お遍路のまた一人来る雲の峰 橋詰育子
橡大樹大空に花かかげたり 酒井きよみ
托鉢僧の着物短き雲の峰 川上あきこ
連山にそだちはじめし雲の峰 橋詰育子
白山ときそふ嵩なり雲の峰 泉早苗
生まれきて初めの一歩雲の峰 趙栄順
雲の峰荒野となりし地球かな 梅田恵美子
【入選】
マスク外し巡る名刹雲の峰 氷室茉胡
樹齢問へば樹上の橡の花笑ふ 長谷川櫂
なべてをみな元気な句会橡の花 氷室茉胡
しんしんと山気満ちたり栃の花 玉置陽子
見上ぐるは白きシャンデリア栃の花 川上あきこ
雨含み艶やかなりし栃の花 近藤沙羅
白峰のやがて銘菓に橡の花 清水薫
峰雲が人を育てる甲斐の国 稲垣雄二
巫女のふる鈴にもに似たり橡の花 酒井きよみ
栃の花高きに雨後の日射しあり 安藤久美
峰雲や議論深まり得たる佳句 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
しんしんと山気満ちたり栃の花 玉置陽子
恐ろしき飽食の日よ栃の花 山本桃潤
橡大樹大空に花かかげたり 酒井きよみ
一山を輝したり栃の花 趙栄順
栃の花高きに雨後の日射しあり 安藤久美
【入選】
今年また君待ちくるる橡の花 藤倉桂
白山の父のごとくや雲の峰 趙栄順
橡の花咲きゐる真下熊通る 酒井きよみ
なべてをみな元気な句会橡の花 氷室茉胡
パラソルの花の大輪雲の峰 玉置陽子
遠泳の沖に沖あり雲の峰 山本桃潤