NHK「英雄たちの選択 “奥の細道”への道〜松尾芭蕉 五・七・五の革命〜」がBSプレミアムで再放送されます。
【BSP】2023年10月14日(土)14:00〜14:59
NHK「英雄たちの選択 “奥の細道”への道〜松尾芭蕉 五・七・五の革命〜」がBSプレミアムで再放送されます。
【BSP】2023年10月14日(土)14:00〜14:59
日 時:2023年11月18日(土)午後1時30分〜3時
テキスト:ふたたび長谷川櫂句集『太陽の門』(青磁社)
・『太陽の門』から7句を選んでください。前日までに選の結果を送信します。当日印刷してご参加ください。選句結果をもとに話し合いたいと思います。当日終わらなければ、第4回でつづけてやります。
・参加申し込みはこちらから、50名で締め切ります。参加は無料です。(木下洋子)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
おろし林檎母の唇濡らしけり 米山瑠衣
殻割つてまこと胡桃の命(みこと)かな 長谷川櫂
ポケットの草の実ひとつ大宇宙 城山邦紀
手のひらに胡桃鳴らしてけふの月 金田伸一
銀杏や毒と言はれてもうひとつ 原京子
【入選】
雑草をごぼう抜きして墓洗ふ 城山邦紀
ヴィオロンに月を跳びだす兎かな 原京子
栗百個一気に剥かん小半時 加藤裕子
秋天の壁に落書きトトロ来る 米山瑠衣
根の国の御霊の声か蚯蚓鳴く 安藤文
今生は稲刈までも競ひ合ひ 大平佳余子
枝豆の塩加減よしけふの月 金田伸一
湯浴みして月浴びをする今宵かな 大平佳余子
今年米病院食のしみじみと 矢田民也
もてなしはまづ一献の菊の酒 斉藤真知子
運ばんとぐらりと傾ぐ菊の鉢 斉藤真知子
半分の家族になりぬ栗羊羹 高橋真樹子
月に泣き月に笑うて喜寿迎ふ 大平佳余子
鶉の卵はやも鶉のまだらあり 大平佳余子
山栗のかつと口開く蛇笏の忌 大場梅子
・長谷川櫂選
【特特選】
崩れ簗月影もまた水音も 加藤裕子
我今も傷つきやすし敬老日 矢野京子
十六夜や夜干し終へたる寿 林弘美
【特選】
蓑虫の破れ葉の蓑さむからむ 斉藤真知子
安芸の海へ竹伐り出さん牡蠣筏 加藤裕子
月に泣き月に笑うて喜寿迎ふ 大平佳余子
露の玉はらはらさせてまだ葉先 矢野京子
夏帽を木に掛けしまま山下る 岡村美沙子
【入選】
安らかに母の寝息やけふの月 米山瑠衣
花ニラの花は清らか庭の隅 夏井通江
栗百個一気に剥かん小半時 加藤裕子
腹探るエコー検査や秋の暮 今村榾火
胡瓜茄子ともに届きぬ今年米 伊藤靖子
反骨の骨はぼろぼろ羽抜鶏 大場梅子
今年米病院食のしみじみと 矢田民也
現れて風鈴外す大きな手 菅谷和子
月天心いよいよ深き月の色 菅谷和子
森の木のそれぞれに秋深みゆく 斉藤真知子
手のひらに胡桃鳴らしてけふの月 金田伸一
運ばんとぐらりと傾ぐ菊の鉢 斉藤真知子
半分の家族になりぬ栗羊羹 高橋真樹子
秋風にさらはれさうや杖の母 矢野京子
鶉の卵はやも鶉のまだらあり 大平佳余子
用も無し宛てにもされず柘榴の実 岡村美沙子
ひよんの実を吹いて勝ち負けなかりけり 矢野京子
第二句座(席題:鵙、胡桃)
・矢野京子選
【特選】
熟年を夫婦で迎ふ鬼胡桃 高橋真樹子
玲瓏と双葉の眠る胡桃かな 長谷川櫂
まな板の芯まで乾き鵙の声 石塚純子
【入選】
胡桃餅今年の胡桃もう出たか 長谷川櫂
胡桃割る父の手元を兄弟 石塚純子
鵙高音わが体温の切り替わる 加藤裕子
のこされし胡桃に母の握り艶 神戸秀子
かすかにも吊り橋揺らし鵙のこゑ 矢田民也
掌の胡桃回し回して句をつくる ももたなおよ
・長谷川櫂選
【特選】
しつくりと麻痺の手にある胡桃かな 瑞木綾乃
しづかなる力をこめて胡桃割る 安藤文
愛玩の二つを残し胡桃割る 矢野京子
【入選】
鵙高音老の歩みをわらふかに 金田伸一
胡桃割る父の手元を兄弟 石塚純子
晩節を汚すなかれや鵙の声 大場梅子
何時の間に庭のあちこち鵙の贄 林弘美
一粒の音して落ちし胡桃かな 高橋真樹子
胡桃割る明日来る人を楽しみに 加藤裕子
丹精の薔薇や鵙きて贄を刺す 大平佳余子
寝静まる家にひとりや胡桃割る 斉藤真知子
のこされし胡桃に母の握り艶 神戸秀子
したたかや打てども割れずこの胡桃 菅谷和子
胡桃割る怒りの音を立てながら 安藤文
右の脳きたへん胡桃鳴らしつつ 金田伸一
あつけなく二つに割れし胡桃かな 矢田民也
ばんざいの形のままや鵙の贄 ストーン睦美
わが頭打つて信濃の鬼くるみ 神戸秀子
掌の胡桃回し回して句をつくる ももたなおよ
長谷川櫂 選 | |
あ | |
第一句座 | |
【特々選】 | |
ぼろぼろの地球にあがれけふの月 | 斉藤真知子 |
蓑を出て蓑虫あそぶ月夜かな | 安藤久美 |
花頭窓欠けては満ちてくる月を | 矢野京子 |
鮭の修羅月夜の川を遡る | 岩井善子 |
落柿舎も次庵も月の雑魚寝かな | 木下洋子 |
【特選】 | |
足もとに犬眠りゐる良夜かな | 飛岡光枝 |
息殺し金粉を蒔く良夜かな | 稲垣雄二 |
丈高く活けて月待つ花すすき | 飛岡光枝 |
葉隠れに青柚の眠る月の庭 | 澤田美那子 |
高空をむささび飛んで森の月 | 稲垣雄二 |
月光にリスの埋めたる胡桃かな | 葛西美津子 |
桃のごとき今宵の月を捥ぎとらん | 矢野京子 |
【入選】 | |
青きまま明けゆく空を望の月 | 岩井善子 |
ふつふつともろみ呟く月夜かな | 北側松太 |
深閑と月のさし入る苔の庭 | きだりえこ |
葦の間に眠れる鳰やけふの月 | 玉置陽子 |
名月やこれより老後幾十年 | 葛西美津子 |
里芋に子芋孫芋月祀る | 稲垣雄二 |
寝はぐれし厠の窓にけふの月 | 川辺酸模 |
月が出て人の出てゐる湖畔かな | 木下洋子 |
離れ住む家族そろうて月見せん | 越智淳子 |
虫除けの薄荷の匂ふ良夜かな | 葛西美津子 |
五十年夫と仰ぎぬ今日の月 | 玉置陽子 |
もうゐないあなたと祀るけふの月 | 川辺酸模 |
月光の一夜あまねし法の山 | 飛岡光枝 |
名月やいよいよ白し那智の滝 | 玉置陽子 |
サウナ風呂出て月光の水の中 | 北側松太 |
花と散る珊瑚の卵けふの月 | 玉置陽子 |
しんしんと鮨の馴れゆく良夜かな | 玉置陽子 |
隅々も馴染める庭をけふの月 | 澤田美那子 |
しまひ湯を簀子に落とす月夜かな | 安藤久美 |
あ | |
第二句座 | |
【特々選】 | |
夫在らばどんな夫婦に今日の月 | 澤田美那子 |
【特選】 | |
鯥五郎一つ跳ねたり月の潟 | 川辺酸模 |
縁側に夕餉を運ぶ良夜かな | 澤田美那子 |
金泥のぬらりと月の鯰かな | 岩井善子 |
【入選】 | |
葱を切る包丁を置く月見かな | 稲垣雄二 |
鮭を打つ棒五六本月夜かな | 岩井善子 |
稲刈つて激しく香る月夜かな | 北側松太 |
蓑虫の寝息立てたる月夜かな | 川辺酸模 |
こくこくと乳吸ふ赤子けふの月 | 玉置陽子 |
たまりゆく月の雫か糸瓜水 | 澤田美那子 |
叱られて軒端にかかるけふの月 | 葛西美津子 |
いま一度雲居の月をみて眠る | 飛岡光枝 |
月こよひ島の外れに曾良の墓 | 斉藤真知子 |
月光や桐の一葉の裏表 | 北側松太 |
妻の背の湿布の匂ふ良夜かな | 飛岡光枝 |
セーターの花を編み込む良夜かな | 稲垣雄二 |
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
天守より鏑矢ひゆつと秋祭 武藤主明
わが子よりはるかに若し獺祭忌 齋藤嘉子
天上は一気に秋よ鰯雲 上 俊一
業平になりきつてゐる村芝居 那珂侑子
草の穂や鼻寄せあへる犬と犬 及川由美子
【入選】
ぐづぐづと寝屋より出でし龍田姫 青沼尾燈子
地下鉄や夏の終はりの闇の音 長谷川櫂
小鳥来てしきりに妻を呼びにけり 平尾 福
処理水と名を変へ海へ星月夜 武藤主明
名月をへうたんに入れもてなさる 上村幸三
稲刈り機稲の機嫌をこはさずに 宮本みさ子
曼殊沙華鎮守の杜は伐られけり 上 俊一
良い月が出てゐますよと操縦士 平尾 福
秋空に並ぶ二台の車椅子 佐伯律子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
小鳥来てしきりに妻を呼ぶ日かな 平尾 福
稲の香にまみれて昇る棚田かな 武藤主明
よい月が出てゐますよと操縦士 平尾 福
【特選】
わが子よりはるかに若し獺祭忌 齋藤嘉子
離れ住む子の誕生日栗ごはん 長谷川冬虹
鹿垣とおぼしきものが山の中 齋藤嘉子
露けしや鼻寄せあへる犬と犬 及川由美子
【入選】
猫つれて猫戻り来る良夜かな 平尾 福
処理水と名前だけ変へ星月夜 武藤主明
怒るほど心離るる秋の風 青沼尾燈子
新涼のゆるりと香る緑茶かな 阿部けいこ
母に少し用事を頼む敬老日 齋藤嘉子
病む夫の夏の帽子を助手席に 甲田雅子
草取りの進まぬ畑昼の虫 阿部けいこ
第二句座(席題:秋簾、糸瓜水、蚯蚓鳴く)
・長谷川冬虹選
【特選】
蚯蚓鳴く山盧の橋の短かさよ 宮本みさ子
ITの声かも知れず蚯蚓鳴く 平尾 福
干天の慈雨やれやれと蚯蚓鳴く 服部尚子
青空にバーコードのやう秋簾 佐藤和子
【入選】
蓑虫に負けてはならじ蚯蚓鳴く 青沼尾燈子
葱箸で蕎麦をすするや秋簾 武藤主明
効能は祖母の美肌か糸瓜水 及川由美子
若き日の母が使ひし糸瓜水 佐藤和子
おづおづと妻に糸瓜の水渡し 臼杵政治
黒々と原爆ドーム蚯蚓鳴く 三玉一郎
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
いつまでも綺麗な女房糸瓜水 平尾 福
裏表色をたがへて秋簾 阿部けいこ
蚯蚓鳴く外に風呂場のありし頃 阿部けいこ
【入選】
使はざる部屋の簾も仕舞ひたり 石川桃瑪
旱天の慈雨やれやれと蚯蚓鳴く 服部尚子
葦抜けてそぞろとなりぬ秋簾 及川由美子
しばらくは残す書斎の秋簾 臼杵政治
寝そびれて声の聞こゆる蚯蚓かな 上 俊一
染みだらけなれど朝晩へちま水 齋藤嘉子
若き日の母が使ひし糸瓜水 佐藤和子
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
うす紙に落雁の秋こぼれけり 飛岡光枝
ラ・フランス面影といふ香りかな 趙栄順
曾良の海語りきかせよ渡り鳥 玉置陽子
瀧となり千年ののち君を待つ 長谷川櫂
世をはなれ干潟にあそぶ鴫の群 梅田恵美子
瓜揉んで裏も表もなき暮らし 安藤久美
秋真昼ぬつと寂しき腕二本 松川まさみ
ふらふらの脳細胞や新生姜 酒井きよみ
いちじくの秘めたる花を啜りけり 稲垣雄二
【入選】
秋空へふはり鯊釣る糸舞へり 近藤沙羅
声かけて人のぬくみの墓洗ふ 趙栄順
けさ月へ戻りし妻の笑顔かな 花井淳
レモングラス今宵の月に洗はれて 藤倉桂
露草や母は小さく眠りをり 飛岡光枝
千切れては雲流れゆく秋彼岸 田村史生
真つ青な十四歳の終戦日 山本桃潤
うつちやりに行司も転ぶ草相撲 田村史生
望月はなんと大きな器かな 清水薫
かみ合わぬ臓器あちこち秋暑し 密田妖子
鈴虫に霧ふいて出る留守ひと夜 酒井きよみ
蘭の香や生きてる限り眉を描き 間宮伸子
・長谷川櫂選
【特々選】
いちじくの秘めたる花を啜りけり 稲垣雄二
祖母の訃に五歳号泣秋彼岸 氷室茉胡
ラ・フランス円熟の尻かがれたり 松川まさみ
マスカット水跳ね返す水の中 玉置陽子
うつちやりに行司も転ぶ草相撲 田村史生
【特選】
うす紙に落雁の秋こぼれけり 飛岡光枝
白山へいよいよ白し風の道 安藤久美
いつまでも秋の団扇を傍らに 飛岡光枝
町中の水に柳の散る日かな 飛岡光枝
酢橘しぼる酢橘の花を思ひつつ 安藤久美
玉なれと一句磨くや茶立虫 松川まさみ
かみ合わぬ臓器あちこち秋暑し 密田妖子
【入選】
老眼に辞書をひきよせ秋灯 橋詰育子
尻ゆすりムジナ消えたり萩の花 密田妖子
親指の腹すべらせて鰯裂く 玉置陽子
電子辞書片へに句集良夜かな 藤倉桂
上の菊橋下の菊橋十三夜 松川まさみ
日差しより雨に親しき芭蕉かな 氷室茉胡
稲刈つて田圃千枚明らかに 清水薫
川音も囃子してゐるや風の盆 宮田勝
この道は能登線の跡虫しぐれ 清水薫
花芙蓉夕べは紅をふかめけり 橋詰育子
曾良の島の話きかせよ浜千鳥 玉置陽子
けふよりもきのふが近し秋簾 玉置陽子
いつの間に腕を組みたる秋思かな 橋詰育子
もがく蛾をすくつて捨つる秋団扇 稲垣雄二
有り余る小さな秋の金魚かな 越智淳子
日々に減りる貯へ釣瓶落しかな 氷室茉胡
吟味するほどの穴なし穴惑 泉早苗
瓜揉んで裏も表もなかりけり 安藤久美
秋真昼ぬつと寂しき腕二本 松川まさみ
小鳥来よ眼を病んでゐる母へ 安藤久美
白山の水はつめたし新豆腐 趙栄順
スカスカの脳細胞や新生姜 酒井きよみ
酒豪の血子へ脈々と新酒かな 氷室茉胡
がちゃがちゃの鳴きていよいよ一人かな 川上あきこ
色白く味濃く母の衣被 越智淳子
無花果は乳房でありぬ捥ぎにけり 藤倉桂
バツタとぶ今朝降りし雨きらめかせ 近藤沙羅
もう出せぬ母への手紙けふの月 玉置陽子
聡太もゐ翔平もゐる案山子かな 田村史生
鈴虫に霧ふいて出るひと夜かな 酒井きよみ
老犬と交はす眼差し秋の夜 山本桃潤
病む星に白露重陽秋の月 泉早苗
せせらぎの音のしてゐる花野かな 橋詰育子
蝶番外れたる木戸大野分 川上あきこ
秋あかね石のぬくみに休みをり 泉早苗
余生なほまだまだ続く鰯雲 梅田恵美子
奥能登へ霧流れけり松林図 山本桃潤
第二句座(席:運動会、蟋蟀)
・鬼川こまち選
【特選】
虫の闇みな蟋蟀に聞こえたる 泉早苗
コロコロリ閻魔こおろぎ誰裁く 間宮伸子
校長の靴は真つ白運動会 趙栄順
こほろぎの声やむときの淋しかり 近藤沙羅
こほろぎや月の出しも知らざりき 近藤沙羅
白線の空へ伸びゆく運動会 藤倉桂
ちちろ虫人なき里を守りをり 清水薫
【入選】
こおろぎや子ら脱ぎ散らす靴の陰 安藤久美
アンカーは少女よ区民運動会 氷室茉胡
山廬いま美しき闇ちちろ虫 趙栄順
こほろぎの声をたよりに歩きけり 橋詰育子
足腰をのばし玉入れ運動会 酒井きよみ
目印は虹の靴下運動会 田村史生
伴走もゐる車いす運動会 宮田勝
アベック走男子ひきずり一等賞 密田妖子
蟋蟀は雨夜の闇さへ囃しけり 越智淳子
こほろぎや憂きこと知らぬ仏たち 宮田勝
運動会今も歌える校歌かな 間宮伸子
一番に祖母が席取り運動会 酒井きよみ
いなり寿司若き母との運動会 梅田恵美子
運動会父の自慢の土踏まず 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特選】
香林坊にあまた闇ありちちろ虫 鬼川こまち
島中の人の走るや運動会 飛岡光枝
犀星の碑を宿としてちちろ虫 清水薫
蟋蟀の声麗しき顔知るや 山本桃潤
白線の空へ伸びゆく運動会 藤倉桂
【入選】
蟋蟀や死を考ふる顔しづか 松川まさみ
こほろぎの声をたよりに歩きけり 橋詰育子
こほろぎや小菊縫ひ取る金の糸 玉置陽子
ブルーマーの脚細かりし運動会 越智淳子
アベック走男子ひきずり一等賞 密田妖子
屑茄子のかけらに鳴くかちちろ虫 稲垣雄二
今は無きパン食ひ競争運動会 飛岡光枝
我去りし鏡に宿るちちろ虫 松川まさみ
運動会父の自慢の土踏まず 玉置陽子
第一句座
•藤英樹選
【特選】
焼肉か鰻にするか敬老日 田中益美
骨と化す木の根草の根秋の風 葛西美津子
不器用に生きながらへて濁り酒 湯浅菊子
まどかならん大きからんや島の月 藤原智子
夢醒めて秋の金魚となりゐたり 萬燈ゆき
世界中敵と思へる残暑かな 萬燈ゆき
秋されや象は足裏に音を知る 升谷正博
【入選】
縋るなよ我もよろよろ名残の蚊 きだりえこ
月の水しづかに満ちて巨椋池 森永尚子
竜胆や天に定まる黒き富士 神谷宣行
体内のあちらこちらに秋の声 関根千方
長生きの村の百福草の花 きだりえこ
瀧の句は瀧のごとくに鳴りにけり 長谷川櫂
鯊釣つて今日一日を空白に 田中益美
黒よりも黒き一反水澄めり 葛西美津子
籐椅子に坐れば見ゆる瀧のあり 長谷川櫂
曾良眠る壱岐にとどろく秋の波 木下洋子
一切の煩悩風に捨て扇 神谷宣行
この国の空気はくるしゑのこ草 関根千方
菊の日や茎のごとくに母の脚 関根千方
•長谷川櫂選
【特選】
夢醒めて秋の金魚となりゐたり 萬燈ゆき
端然と秋一切のカステーラ 澤田美那子
曾良眠る壱岐にとどろく秋の波 木下洋子
【入選】
熊よけの爆竹響く秋高し 葛西美津子
鱗雲母の病室窓開けよ 田中益美
妹を見舞ひて帰る月の道 金澤道子
新涼や東海道に富士現るる 田中益美
まどかならん大きからんや島の月 藤原智子
人の世の隅に蚯蚓の歌聞かん イーブン美奈子
そこここと庭掘り返す九月かな 澤田美那子
母在さば白寿の祝ひ栗きんとん わたなべかよ
世界中敵と思へる残暑かな 萬燈ゆき
咀嚼できぬ母へ搾るや梨の水 神谷宣行
第二句座 (席題:露、鶺鴒)
•藤英樹選
【特選】
妻と我いつか一つの露の玉 長谷川櫂
赤ん坊に智慧の兆すや露の玉 長谷川櫂
笑ふしか術なき露の世なりけり 森永尚子
ひとり居に何うながすや石叩き 澤田美那子
芋の露こぼれ言葉のこぼれをり 藤原智子
一粒の露ともならぬ地球かな 神谷宣行
【入選】
露吸うて砂漠に生きる虫一つ 関根千方
しら露に包み込まれし大伽藍 関根千方
天も地もあついあついと石叩き 萬燈ゆき
露けしや娘三人嫁に出し わたなべかよ
手で拭いてサドルの露や塾終へる 田中益美
少年の詠ふ孤島や石叩き 西川遊歩
明けぬ間に父母の出かける露の畑 木下洋子
足元の濡れるも嬉し今朝の露 澤田美那子
墨摺るやこの白珠の朝の露 きだりえこ
•長谷川櫂選
【特選】
石叩たたき疲れて飛び去りぬ 金澤道子
濁流のあとを叩きぬ石叩き 藤英樹
鶺鴒の身をひるがへす光かな 森永尚子
鶺鴒の叩く露けき石ひとつ 葛西美津子
石叩きここは地獄か天国か 関根千方
【入選】
島中を新聞配達草の露 田中益美
地球もつと暑くなるぞと石叩 神谷宣行
そこらじゆう叩きつくすか石たたき 森永尚子
明けぬ間や父母の出かける露の畑 木下洋子
白露や日の出ぬ前の一仕事 園田靖彦
石叩すいと水から青空へ きだりえこ
笑ふしか術なき露の世なりけり 森永尚子
ひとり居に何うながすや石叩き 澤田美那子
秋篠は水麗しと石叩 きだりえこ
心して句集開くや露の秋 木下洋子
鶺鴒のけふは機嫌のリズムかな 仲田寛子
どの石も気に入らぬらし石叩 金澤道子
血の匂ふ六条河原石叩き 萬燈ゆき
第一句座
・矢野京子選
【特選】
また一つ森の消えゆく竹の春 大場梅子
火の中に目玉が一つ原爆忌 長谷川櫂
生きてまた秋の歳時記ひらきけり 斉藤真知子
まきさんに逢ふ歳時記の梨畑 ももたなおよ
世界を憂ふ枝豆を食ひながら 今村榾火
【入選】
鬱々と無花果熟るる真昼かな 安藤文
茫茫と庭草の丈秋の風 城山邦紀
敬老日気がすすまぬの一点張り 石塚純子
向日葵の一つ一つに挨拶す 伊藤靖子
子規庵に白粉花の咲くころか 今村榾火
艶やかないのち山栗炊き込めば 石塚純子
生きて跳ぶ水切りの石秋の川 駒木幹正
鷹渡る海の細道案内せよ 林弘美
夕凪や海流れこむ蟹の穴 長谷川櫂
秋彼岸母の大ぶりいなりずし 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特特選】
明け方の夢より醒めて桃をむく 斉藤真知子
冬瓜とかはるがはるに思案顔 加藤裕子
荒野には荒野の花の露けしや 神戸秀子
【特選】
一病を得て親しきは子規忌かな 大場梅子
長き夜やペン皿にペン置いてより 矢野京子
露けしや庭に廻りてみても留守 加藤裕子
鬱々と無花果熟るる真昼かな 安藤文
何もなきわが家の自慢虫時雨 矢野京子
父の忌や庭に今年の桔梗咲く ももたなおよ
世界を憂ふ枝豆を食ひながら 今村榾火
虫の夜の闇へ睡りの舟を漕ぐ 矢野京子
このごろの南アルプス大根蒔く 大場梅子
地の底を大江戸線や九月一日 原京子
【入選】
故郷の無花果食めば母恋し 伊藤靖子
乳吸ひてすぐ寝る赤子月今宵 夏井通江
枝豆を枝ごと抜きて土産とす ストーン睦美
秋恋し空いちめんのうろこ雲 菅谷和子
故郷に実る無花果届きけり 伊藤靖子
茫茫と庭草の丈秋の風 城山邦紀
日がな一日雲見て飽きず啄木忌 石塚純子
命あらば百歳の母震災忌 大平佳余子
草刈りし庭に向日葵高々と 伊藤靖子
若き子は手順追ひつつ踊の輪 加藤裕子
安曇野の友病みてありけふの月 城山邦紀
ふるさとに釣糸垂らす夏の果 高橋真樹子
艶やかないのち山栗炊き込めば 石塚純子
生きて跳ぶ水切りの石秋の川 駒木幹正
生きてまた秋の歳時記ひらきけり 斉藤真知子
満月を仰ぐ兵士か黒き影 石塚純子
猛々し夜店のひよこ雄鶏に 米山瑠衣
原爆ドーム今宵しづかに虫時雨 菅谷和子
輪に入れば両手の挙がる踊りかな 駒木幹正
引くところのめりかけては踊りけり 金田伸一
梔子の再びの花ひらきゆく 上松美智子
生れし子を囲む家族へ小鳥来よ 夏井通江
秋刀魚焼く一尾は逝きし父の為 斉藤真知子
桃食ふや昼は測らぬ血糖値 金田伸一
第二句座(席題:野分、蜻蛉)
・矢野京子選
【特選】
ふいと来て心をよぎる糸とんぼ 城山邦紀
飛行機は大きなとんぼ子を送る 神戸秀子
野分すぎ蜻蛉の空となりにけり 大平佳余子
【入選】
戦地へと目玉光らせ鬼やんま 城山邦紀
竹帚きのふの蜻蛉来てとまる 斉藤真知子
綿雲のちぎれちぎれて夕蜻蛉 今村榾火
海底の石も逆立つ野分かな 菅谷和子
厳島なほも清らや野分あと 瑞木綾乃
・長谷川櫂選
【特選】
将門の首のさまよふ野分かな 大場梅子
蜻蛉来る一天紺のかなたから 菅谷和子
ひと掃きで揺らぐ天地野分かな 城山邦紀
【入選】
はじめての佃なつかし赤とんぼ 神戸秀子
竹帚きのふの蜻蛉来てとまる 斉藤真知子
次々にとんぼ乗り継ぐ次の風 矢野京子
忘れずによくぞ我が家へ秋茜 石塚純子
むせかえる風の奥から銀やんま 高橋真樹子
とんぼうや芝しきつめて爆心地 神戸秀子
庭箒探して回る野分あと ももたなおよ
空海の高野を守る鬼やんま 大平佳余子
草ぐさの力を試す野分かな ももたなおよ
野分きて駆け上がりゆく太田川 林弘美
何もなき田舎といへど野分立つ 今村榾火
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
炊き上げて大地の色や零余子飯 齋藤嘉子
笑顔のみ思ひ出されて盆の月 及川由美子
原爆忌わたしも愚者のその一人 三玉一郎
会津峰の水をちからの稲の花 宮本みさ子
十一時二分のしじま長崎忌 青沼尾燈子
【入選】
戦争を売り買ひしたる烏ども 青沼尾燈子
旧姓にはつと振り向く盆踊 谷村和華子
百日紅遠き戦地の子らの声 青沼尾燈子
父親によく似た人や踊りの輪 平尾 福
どの家も老いし女や敗戦忌 長谷川櫂
枝豆や酒徒は硬めの茹で加減 石川桃瑪
すべりひゆ地球のどこかいつも飢餓 佐藤和子
・長谷川櫂選
【特々選】
夕暮れて道なほ熱し葉鶏頭 服部尚子
ややの声露の言葉を吐かんとす 齋藤嘉子
いまさらと詫びも通らぬ糸瓜かな 臼杵政治
【特選】
寂莫と火蛾の紋様塵取りに 佐藤和子
広島がしづかに眠る夏帽子 三玉一郎
旧姓にはつと振り向く盆踊 谷村和華子
心平の瞑想の籐寝椅子かな 宮本みさ子
一匹で足りる一夜の虫の声 佐伯律子
冬瓜や妻の寝姿そのままに 齋藤嘉子
湾曲の列島猛々しき残暑 川村杳平
すべりひゆ地球のどこかいつも飢餓 佐藤和子
【入選】
片蔭をはみ出してゐる力士かな 佐伯律子
海風に溺れさうなり秋の蝶 平尾 福
炊き上げて大地の色や零余子飯 齋藤嘉子
弾けたる氷の音や冷し酒 武藤主明
手花火や安らぎこぼる妻の顔 川辺酸模
畑仕事終へて自由な素足かな 阿部けいこ
かなかなや木の根に縋る焼山寺 川辺酸模
孫よりの朝顔のたね開花せり 那珂侑子
白桃の夢のしずくを啜りたり 上村幸三
小さき手に零るる菓子や地蔵盆 臼杵政治
ひもじさを知る人の減り終戦日 阿部けいこ
数多なる魂とびかふ終戦忌 青沼尾燈子
遺影早も決めある輩生身魂 石川桃瑪
笑顔のみ思ひ出されて盆の月 及川由美子
さよならと空に書きおく秋燕 臼杵政治
夫が手の抹茶いただく涼新た 那珂侑子
秋の灯へ広ぐ英世の母の文 宮本みさ子
広島やひとりひとりが爆心地 三玉一郎
原爆忌わたしも愚者のその一人 三玉一郎
盆帰省磐梯山の水真つ先に 宮本みさ子
ケルン積む姫神山の磊磊たり 甲田雅子
盆迎へ山形なまりの母の声 長谷川冬虹
会津峰の水をちからの稲の花 宮本みさ子
墓参り戦死特進古びけり 上 俊一
第二句座(席題:九月、ねこじやらし、鰡)
・長谷川冬虹選
【特選】
一湾を自在に跳ねる鰡たちよ 上 俊一
ランドセル誰のものやらゑのこ草 臼杵政治
寄り道は秘密の始め猫じやらし 及川由美子
しろがねのつぶてつぎつぎ鰡飛べり 齋藤嘉子
【入選】
鯔ばかり狙ふ白髪の漢かな 及川由美子
故郷の川はいまでも鰡飛ぶか 那珂侑子
鰡の子のしきりに跳ぶや竿の先 平尾 福
猫見舞ひ狗尾草を手土産に 及川由美子
だんだんと猫に遊ばれ猫じやらし 臼杵政治
尻尾立て猫出かけ行く九月かな 平尾 福
・長谷川櫂選
【特選】
故郷の川はいまでも鰡飛ぶか 那珂侑子
鰡の子のしきりに跳ぶや竿の先 平尾 福
老犬よ九月の風を見に出でん 青沼尾燈子
尻尾立て猫出かけ行く九月かな 平尾 福
九月来る草ばうばうの吾が庭に 那珂侑子
【入選】
グランドに大声響く九月かな 阿部けいこ
鰡とんで福島の海取り戻せ 甲田雅子
蔵王山雲隆々と九月来る 長谷川冬虹
ねこじやらし二本枯れたり本の上 上村幸三
旅先にワインの試飲九月かな 佐藤和子
鰡跳んで雨雲かかる羽田沖 服部尚子
小名木川堤越えんと鰡飛べり 齋藤嘉子
阿蘇五岳ふたり遊びし九月かな 川辺酸模
えのこぐさ九月はわれの生まれ月 長谷川冬虹
涸れ川に水流れ入る九月かな 服部尚子
仮設跡ゑのころ草の盛りなり 武藤主明
鰡の腹そろばん珠をまさぐりぬ 佐伯律子
投げ直す竿や鰡飛び暮るる海 石川桃瑪
今年また夫の誕生九月くる 甲田雅子
砂浜を軽トラがゆく九月かな 谷村和華子