第一句座
・矢野京子選
【特選】
椿の木巡りてかごめかごめかな 神戸秀子
糸よりは春の乙女ぞ包丁す 長谷川櫂
つちふるや心曇らすことなかれ 城山邦紀
こんなにも命軽きか水俣忌 斉藤真知子
目が合うて花見疲れの者同士 安藤文
【入選】
蓬摘みをれば潮風水俣忌 ももたなおよ
逃げ水の父よ戦艦大和の忌 瑞木綾乃
海鳴りは母を呼ぶこゑ水俣忌 今村榾火
詩歌詠む国に生まれて蜆汁 高橋真樹子
養生の老木に花二三輪 加藤裕子
花衣花より花の十六歳 ストーン睦美
おさらばはまだ早からん春暖炉 金田伸一
捻じくれし指にガリビラ水俣忌 瑞木綾乃
牡丹のほてりをさます朝の雨 斉藤真知子
金剛の杖の欲しきや山桜 大場梅子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
海底も花咲きめぐる水俣忌 高橋真樹子
死にきれず生きて死を待つ水俣忌 金田伸一
【入選】
水俣やあの世この世へ落椿 神戸秀子
逃げ水の父よ戦艦大和の忌 瑞木綾乃
海鳴りは母を呼ぶこゑ水俣忌 今村榾火
こんなにも命軽きか水俣忌 斉藤真知子
妻の目を恃みて見えず初桜 金田伸一
養生の老木に花二三輪 加藤裕子
ひとひらの花びらよぎる盧舎那仏 石塚純子
生き地獄とはこのことぞ水俣忌 安藤文
牡丹のほてりをさます朝の雨 斉藤真知子
水俣の海に椿よ降りつもれ 大場梅子
第二句座(席題:春灯、蛙、水俣忌)
・矢野京子選
【特選】
ひと日生きもうひと日あれ水俣忌 城山邦紀
かつて海泣きき笑ひき水俣忌 長谷川櫂
かあちゃんと呼ばれる夢や水俣忌 斉藤真知子
【入選】
駅弁が里への土産初蛙 神戸秀子
語りかけ吾子に顔寄す水俣忌 加藤裕子
春ともし消すたび縮む余命かな ストーン睦美
水俣忌死のうたごゑか波の音 高橋真樹子
夢うつつ蛙合戦ありやなし 大平佳余子
独り身に門限はなし夕蛙 安藤文
春灯孫の遊びに来てゐたる 上松美智子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
水俣忌死のうたごゑか波の音 高橋真樹子
開かぬ眼に花を見てをり水俣忌 矢野京子
見えねども恋の戦か夕蛙 駒木幹正
高層ビルあんなところに春灯 石塚純子
【入選】
蛙鳴く三千世界闇の中 ももたなおよ
片仮名となりしふるさとミナマタ忌 矢田民也
添寝するつもりか蛙一晩中 ストーン睦美
巻貝(びな)いつぱい取つて帰らん水俣忌 ももたなおよ
独り身に門限はなし夕蛙 安藤文
春灯やわが世のページまためくり 矢野京子