・目の前のものを機械的に写しても句にはならない。とくに風景。
・ものを描いても、そこに心が宿るように。
・もろに気持ちを表す言葉(さみし、かなし、うれし、よき)は句を浅薄にする。
・自分だけわかったような(読者にはわからない)句多し。
・必ず他人の目で「これで通じるか」をチェックしること。
・俳句は時間がかかる。残り時間の少ない人は覚悟必要。
【特選】
街中の猫がみてゐるはるのつき 13_東京 長井亜紀
仏生会いまも湧きつぐ甘露の井 14_神奈川 金澤道子
初蝶や今日より羽根の汚れゆく 23_愛知 稲垣雄二
摘むほどに籠の輝く茶摘かな 26_京都 氷室茉胡
蝶がきて止まりさうなるお菓子かな 27_大阪 澤田美那子
地下足袋のこの若者が桜守 33_岡山 齋藤嘉子
飴山忌あなたを真似て妻愛す 44_大分 山本桃潤
死ぬるまでホ句と同行風光る 44_大分 竹中南行
【入選】
遠山に束の間白き花の雲 01_北海道 村田鈴音
・白し
顔に白日高の仔馬大地喰む 01_北海道 村田鈴音
空間を笑ひころげるこぶしかな 01_北海道 芳賀匙子
花守ぞ鉢巻きりり花殻摘む 04_宮城 長谷川冬虹
・花守は
手這坂下ればまほろ桃の花 05_秋田 佐藤一郎
耽読の余熱に一夜龍天に 07_福島 渡辺遊太
海境の底のしづけさ花の雨 07_福島 渡辺遊太
うぐひすの総出迎へやわが故郷 11_埼玉 園田靖彦
刈り込みの一蔓貰ふ郁子の花 12_千葉 池田祥子
朝楽し春のキャベツのある限り 13_東京 岡恵
・日々楽し
二階から雨に向かって石鹸玉 13_東京 岡恵
・旧かなは自分で。
跳箱は勇気だぽんと春の風 13_東京 神谷宣行
うたにうたうたひ合はせて大岡忌 13_東京 西川遊歩
・合はせよ
恋もせず説教もせず猫眠る 13_東京 長井亜紀
法要の一族も老ゆ暮の春 13_東京 杜野廉司
・一族老いぬ
はやばやと隣家に上がる鯉幟 13_東京 楠原正光
・隣の上げる
蕗の薹見つけて今朝のおみおつけ 13_東京 堀越としの
抜け出して春の渚に小半時 14_神奈川 遠藤初惠
境内の椿で葺いて花御堂 14_神奈川 金澤道子
・きぬ
老木の芽にしづかなる光かな 14_神奈川 三浦イシ子
・芽の。この違い、たいへん大事。
春愁の重さに沈む鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
春愁に足を取らるる渚かな 14_神奈川 三玉一郎
・以上2句、理屈。
けやき通りはなみずき通り若葉 14_神奈川 松井恭子
・みな若葉
エントランスの黒の一群新社員 14_神奈川 水篠けいこ
・最初の、の、不要。
こそげ取る筍飯の御焦げよき 14_神奈川 中丸佳音
・こそ
丹誠の藤の花見て逝かれけり 14_神奈川 那珂侑子
・けむ
寄居虫の次の殻ゆく速さかな 14_神奈川 片山ひろし
・への、へと
どのやうにどこ抓もうかうぐひす餅 14_神奈川 片山ひろし
深き深きコロナの闇を春の月 15_新潟 安藤文
・に
菜の花や義民を祀る五輪塚 15_新潟 高橋慧
葦焼けば越の山々ゆらぐなり 16_富山 酒井きよみ
ニ三言聞きし覚えも朝寝かな 17_石川 松川まさみ
榾爆ぜる四月の朝の氷点下 20_長野 金田伸一
白富士さやうなら花影と還ります 20_長野 柚木紀子
半透明にかほる蝋梅もう文字ではかけぬ 20_長野 柚木紀子
心膜炎かしら陽炎ゆれている 20_長野 柚木紀子
玉ねぎをころがし遊ぶ厨かな 21_岐阜 夏井通江
・遊ぶ?
大空にいどむ力よ朴の花 21_岐阜 古田之子
・力を
裏木曽や芽吹きの谷の山桜 21_岐阜 三好政子
クリニックの広き天窓春動く 21_岐阜 三好政子
城白く輝く空や初つばめ 21_岐阜 梅田恵美子
・を
花冷えの世間へ棺担ぎ出す 23_愛知 稲垣雄二
・世界へ
蠅の子の生れてそのまま嫌われり 23_愛知 宗石みずえ
・そのまま、不要。旧かな。
車椅子を受け入れし母風信子 26_京都 吉田千恵子
ジャム混ぜる木べらは重し日永かな 26_京都 吉田千恵子
・木べらの重き
くにやくにやの赤子洗はん花の昼 27_大阪 安藤久美
新緑や日に日に隠る遠き道 27_大阪 内山薫
・隠れ
上り来て京一望や御忌詣 27_大阪 木下洋子
やはらかき指の腹もて茶摘かな 27_大阪 木下洋子
・以上2句、既存の発想。
春日傘稚児抱く妻に差しかけぬ 28_兵庫 千堂富子
・妻へさしかけて
春の行くどこへも行けぬ人置きて 29_奈良 喜田りえこ
春満月龍抜け出たき絵天井 37_香川 丸亀葉七子
鳴龍を鳴かせお遍路去りにけり 37_香川 丸亀葉七子
人の世にぬつと古代魚春の闇 42_長崎 ももたなおよ
白牡丹蟻一点の翳りかな 42_長崎 川辺酸模
ほんのりと草の香りや針魚食ふ 42_長崎 川辺酸模
四阿は湖のなかほど羊草 44_大分 山本桃潤
春の服友の細きに驚きぬ 50_外国 廣瀬玲子