ネット投句(2021年3月31日)選句と選評
【特選】
一年を経てむつまじき雛かな 11_埼玉 上田雅子
もうすこし遊んでゐたき落花かな 14_神奈川 金澤道子
ことばにも背筋ありけり飴山忌 17_石川 松川まさみ
【入選】
流氷や海明け待ちぬ漁船群 01_北海道 村田鈴音
・海明けを待つ
梅が香やいまさら愛国萬葉集 01_北海道 柳一斉
祇園精舎合掌してゐる牡丹の芽 04_宮城 長谷川冬虹
母の忌の雪割草は咲きそろふ 05_秋田 佐藤一郎
生涯の岐路とも知らで大朝寝 11_埼玉 園田靖彦
・ず
叛逆の碑拝し種浸す 11_埼玉 園田靖彦
子どもらの雑魚寝のかほや花筵 11_埼玉 松本邦吉
月朧町ゆくわれのなほおぼろ 11_埼玉 松本邦吉
・は
やはらかに蝶ふきあぐる菜花畑 12_千葉 若土裕子
・げて
一輪のらっぱ水仙月仰ぐ 12_千葉 谷口正人
・らつぱ
茶を断ちし母の好みの花湯かな 12_千葉 麻生十三
病み上がるこれぞこの世の春の風 13_東京 横山直典
・病み上がり
白牡丹ひらくや影もひらきけり 13_東京 岡恵
明ぼのや月もほのかに花の色 13_東京 岡恵
老木の折れる枝先花ひとつ 13_東京 岡田栄美
・れし
永き日やセネカの背中斯く遠く 13_東京 市村さよみ
競漕の切歯膂力や舳先の差 13_東京 西川遊歩
金継ぎの皿にどつしり桜鯛 13_東京 西川遊歩
サクラエビからり掻き揚げ大岡忌 13_東京 西川遊歩
花びらを乗せて一艘戻りけり 13_東京 長井亜紀
・乗せて、大げさ
恐ろしき昨夜の雷や種浸し 13_東京 長井亜紀
花韮や抜かれても一面に花 13_東京 長尾貴代
父逝きて父に友あり花吹雪 13_東京 長尾貴代
闘争の封鎖の中を入学す 13_東京 楠原正光
・へ
どしゃ降りの小枝に揺れる青蛙 13_東京 楠原正光
・どしや、るる
花仰ぐ姿の似たりあにいもと 13_東京 畠山奈於
囀りは近く遠くに目覚めかな 13_東京 堀越としの
・囀りを
みちのくの桜はいかにこの十年 14_神奈川 越智淳子
日傘さす女に遇いそな罌粟の原 14_神奈川 遠藤初惠
・ひ
この椅子は魔法の椅子よ春眠し 14_神奈川 金澤道子
ちと老いし犬ともにして桜狩 14_神奈川 三浦イシ子
・犬をともとし
旋回の三度目高し鳥帰る 14_神奈川 松井恭子
・く
ものの芽のみな喜々として天を指す 15_新潟 高橋慧
ざつくりと地打ち返す飴山忌 17_石川 松川まさみ
大空の岐阜羽島駅さへづれり 21_岐阜 夏井通江
水温む雄勝の硯懇ろに 21_岐阜 三好政子
燕飛ぶ太郎や次郎や三郎や 23_愛知 稲垣雄二
制癌剤投与はあした花の雨 23_愛知 宗石みずえ
西行が妻のおもかげ春の寺 23_愛知 青沼尾燈子
観音堂探して迷ふ山桜 23_愛知 野口優子
剪定やときに金閣見あげつつ 26_京都 氷室茉胡
立派な名もろうて眠る仔猫かな 27_大阪 安藤久美
三月は我が家の味のくぎ煮かな 27_大阪 木下洋子
白木蓮は白磁の小皿金平糖 27_大阪 澤田美那子
永き日の桜あんぱんよく売れる 27_大阪 澤田美那子
遊ぶ児と寛げる母春の芝 28_兵庫 髙見正樹
・寛ぐ母と
霾や子ども撃つとは何事ぞ 29_奈良 喜田りえこ
・上五、再考。
野菜畑ひとすじ明かきチューリップ 29_奈良 田原春
・一畝赤き
一羽来て囀つてゐる雨後の屋根 29_奈良 田原春
酢諸子を今宵の肴實の忌 30_和歌山 玉置陽子
金色の走るや蜥蜴穴を出て 33_岡山 齋藤嘉子
飴山忌少し遅れて母の忌も 37_香川 丸亀葉七子
鶴を折る白寿の叔母や桜餅 37_香川 曽根崇
病床の友見よ君の花の庭 42_長崎 ももたなおよ
きみとゐる今のまぶしや蕨もち 42_長崎 川辺酸模
・下五、再考。
大阿蘇も目覚める頃や木の芽和 42_長崎 川辺酸模
・下五、再考。
ぬるぬると蛸遁走す春の宵 42_長崎 川辺酸模
・下五、再考。
もう八十母の言ひ草木の芽和 44_大分 土谷眞理子