ネット投句(2021年2月28日)選句と選評
【特選】
雛飾る妻の横顔忘れたり 01_北海道 柳一斉
銀ぶらのさしてはたたむ春日傘 13_東京 岡田栄美
梢から春は来るらし老大樹 13_東京 齊藤拓
いつも誰か待つてゐるらし梅の花 17_石川 松川まさみ
泥付きの大根と孫が来たりけり 20_長野 金田伸一
・が、不要。
かぎろひて崩れさうなる我が家かな 37_香川 曽根崇
命ある今日のまぶしや初つばめ 42_長崎 川辺酸模
もの言はぬ海あをあをと三月来 42_長崎 川辺酸模
【入選】
だんだんにウヰスキー熟る春の闇 01_北海道 高橋真樹子
春風やカランコロンと絵馬触るる 01_北海道 村田鈴音
荒野にも夢見ごこちの雲雀東風 01_北海道 芳賀匙子
誰かゐるフェイスブックの春の闇 03_岩手 川村杳平
しじみ汁マスク姿のはや一年 04_宮城 長谷川冬虹
冬の海捨てし芥を打ち返す 07_福島 渡辺遊太
長閑さの「あれ」「これ」で済む夫婦かな 11_埼玉 園田靖彦
・カギカッコ、不要。
雪解川束ね束ねて大黄河 11_埼玉 園田靖彦
新しき春を眩しむ雛かな 11_埼玉 上田雅子
土筆摘む母子の上をグライダー 11_埼玉 藤倉桂
・空を
かくれんぼのくるぶしに咲く花菫 12_千葉 菊地原弘美
屋上をビルからビルへ蜂が飛ぶ 12_千葉 菊地原弘美
・屋上や
一枝は父母の写真に梅の花 12_千葉 池田祥子
・へ
手作りの雛の命よ四十年 12_千葉 池田祥子
腹這いて少年の日やいぬふぐり 12_千葉 麻生十三
・ひ
大きなマスクをかけたくなりぬ冬牡丹 13_東京 岡恵
初蝶はころびつまろびつ坂をゆく 13_東京 岡恵
マニキュアのしみるささくれ花の冷 13_東京 岡田栄美
口紅は乾涸びしまま柳絮飛ぶ 13_東京 市村さよみ
子等の声響かぬ春の広場かな 13_東京 森徳典
川止めのやうな暮らしや春の虹 13_東京 西川遊歩
風神が轟き走る冬の空 13_東京 猪飼篤
骨軋み骨の痛むや朧月 13_東京 長井亜紀
母唄う哀しき軍歌春の宵 13_東京 長尾貴代
・ふ
春雨や樋を流れる水の音 13_東京 楠原正光
・るる
たまゆらの幾何学模様薄氷 13_東京 畠山奈於
人生の薄暗がりや蜆汁 13_東京 齊藤拓
・に
白木蓮空の涙を拭けり 13_東京 齊藤拓
・ひけり
池の面にアカミミガメや水ぬるむ 14_神奈川 伊藤靖子
菜の花の丘を下れば布良の海 14_神奈川 遠藤初惠
手水鉢底に南天ニ三粒 14_神奈川 遠藤初惠
初蝶を吹き戻したり切通 14_神奈川 金澤道子
種袋そんなにふれば目がまはる 14_神奈川 松井恭子
風光る真っ逆さまにペンの先 14_神奈川 松井恭子
・つ
ミモザ手に銀座通りを大股に 14_神奈川 水篠けいこ
丸襟の白のブラウス薺咲く 14_神奈川 水篠けいこ
土筆煮て母と娘の別れかな 14_神奈川 片山ひろし
新聞を何度も読んで冬籠り 15_新潟 安藤文
・むや
東風吹かば伊豆に旅せん金目鯛 17_石川 花井淳
春天や鳶おもむろに急降下 20_長野 大島一馬
触合うて永遠時間プラトン「眼のまたたき」 20_長野 柚木紀子
水位標根元にはこべらほとけのざ 21_岐阜 古田之子
・に、不要。
葛湯溶く戒厳令の昔あり 21_岐阜 三好政子
小さき手が開けば三つ雛あられ 23_愛知 臼杵政治
・を
寝息あれば夫生きてをり春の雪 23_愛知 宗石みずえ
・寝息たて、あるいは、して
未除染の帰れぬ故郷果ての雪 23_愛知 服部紀子
畦に咲く草花の色蝌蚪の夢 23_愛知 服部紀子
ミモザ咲くキリンの背よりなほ高く 23_愛知 野口優子
春水に臍だしてゐる蜆貝 26_京都 佐々木まき
教材のどさりと届く老いの春 26_京都 氷室茉胡
手をとりて母の爪切る春浅し 27_大阪 内山薫
盆梅の二百歳なる気魄かな 27_大阪 木下洋子
春の雪おやつに炙るあられ餅 27_大阪 木下洋子
吉野雛はかなきものを俤に 27_大阪 澤田美那子
・はかなきひとを
七色の糸を通して針供養 27_大阪 澤田美那子
風花や空あるかぎり鳶高む 27_大阪 齊藤遼風
まほろばに野火幾筋や昼の酒 27_大阪 齊藤遼風
魂の遊びゐるなり春の雲 28_兵庫 加藤百合子
・ゐるなり 不要。
風は火を火は風を追ふ野焼かな 28_兵庫 千堂富子
動くものすべて光や春兆す 28_兵庫 藤岡美惠子
・春兆す、説明。別の季語を。
野遊びや草地に並ぶ乳母車 28_兵庫 髙見正樹
春の沖クルーズ船の遠ざかる 28_兵庫 髙見正樹
椿餅ひとつは会へぬ母の為 30_和歌山 玉置陽子
亀鳴くやじわじわ溶ける舌下錠 37_香川 丸亀葉七子
菱形もこころのかたちひなまつり 38_愛媛 古志溢子
・は
父祖の墓倒れしままに二月尽 43_熊本 筑紫秋
・たるまま
音楽を聞く日溜りへ石鹸玉 44_大分 土谷眞理子
・を
大楠の神に詣づや春の山 44_大分 土谷眞理子
生き辛き世の中なれど蓬摘む 46_鹿児島 大西朝子
・蓬餅