ネット投句、意味不明(独りよがり)の句が目立ちます。古志の会員の方はズーム句会などに参加して、このままでほかの人にわかるのか、鍛え直してください。
つねづね「俳句は発想にはじまり、推敲に終わる」と申し上げていますが、既存の発想を借りてないか、推敲は十分か、考えてください。
ネット投句、意味不明(独りよがり)の句が目立ちます。古志の会員の方はズーム句会などに参加して、このままでほかの人にわかるのか、鍛え直してください。
つねづね「俳句は発想にはじまり、推敲に終わる」と申し上げていますが、既存の発想を借りてないか、推敲は十分か、考えてください。
【特選】 | ||
起きるかと我へ呟く寒さかな | 千葉 | 池田祥子 |
吊るさるる鮟鱇を見る鮟鱇 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
老ゆるとも己が宇宙や犬の冬 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
・に | ||
隙間風とはなつかしの桜花壇 | 京都 | 佐々木まき |
鬼は外などと言ふまい八十五 | 大阪 | 澤田美那子 |
鬼かなし人間かなし豆を打つ | 大阪 | 澤田美那子 |
終はりあることの嬉しさ卒業歌 | 兵庫 | 魚返みりん |
鮭が鮭に乗る川豊かなる大地 | 大分 | 山本桃潤 |
【入選】 | ||
加湿器のごぼりごぼりと枯野宿 | 北海道 | 高橋真樹子 |
流氷や水底の水動きをり | 北海道 | 高橋真樹子 |
探梅の聞き耳立ててしんがりに | 北海道 | 村田鈴音 |
大寒の河岸もろとも吼ゆるかな | 北海道 | 芳賀匙子 |
思ひ出てふやつかいなもの雪の降る | 北海道 | 柳一斉 |
寒稽古間合ひはかりて正対す | 宮城 | 長谷川冬虹 |
センダード賢治の街よ風花す | 宮城 | 長谷川冬虹 |
人生は一度切りなり絵双六 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
餅花のなだれかかれる炎かな | 福島 | 渡辺遊太 |
・「なだれかかれる」が長いので炎が生きず。 | ||
柚子湯して柚子沈みける夜更けかな | 茨城 | 袖山富美江 |
・ける、ダメ | ||
島々を大きく照らす冬の空 | 茨城 | 袖山富美江 |
測量のリボンひらひら枯野道 | 茨城 | 馬場小零 |
肥えふとる氷柱に映る旭かな | 埼玉 | 園田靖彦 |
・長すぎ。理由は自分で考える。 | ||
探梅やはなれて一人海を見に | 埼玉 | 上田雅子 |
年の瀬や十歩の歩みに歓喜せり | 千葉 | 芦野アキミ |
・歩みて? | ||
節の豆手掴みの子や兄となる | 千葉 | 芦野アキミ |
・節の豆を手づかみせし子兄となる。なぜこうしないか。 | ||
春みつけしゃがみこみまた歩き出す | 千葉 | 菊地原弘美 |
春の戸より春の日差しが漏れ来たり | 千葉 | 菊地原弘美 |
・長すぎ。 | ||
窓を開けましょうと春の夢の人 | 千葉 | 菊地原弘美 |
蝋梅や嗚呼あの頃の庭の片 | 千葉 | 若土裕子 |
冬日向音なき部屋の我と椅子 | 千葉 | 谷口正人 |
大寒やドロドロ濁るオリーブ油 | 千葉 | 池田祥子 |
早起きの子の手に温し寒卵 | 千葉 | 麻生十三 |
かさこそと歩けば緑冬蕨 | 東京 | 岡田定 |
一月や道いっぱいの雪合戦 | 東京 | 小野早苗 |
日の当たるところが寒し雪だるま | 東京 | 神谷宣行 |
薄氷のひとひらこそが春の花 | 東京 | 神谷宣行 |
・理屈にならないように。 | ||
病院に動く歩道欲し梅の花 | 東京 | 長尾貴代 |
母倒れ私発病冬ざるる | 東京 | 長尾貴代 |
・我発病す | ||
病夫から感謝のことば明けの春 | 東京 | 畠山奈於 |
親の年羨む子らや年の豆 | 神奈川 | 越智淳子 |
・羨みし日よ | ||
山眠る篭編む人の黙深し | 神奈川 | 遠藤初惠 |
辛うじて梅一輪の日和かな | 神奈川 | 三浦イシ子 |
ありし日の友をとなりにおでん酒 | 神奈川 | 三浦イシ子 |
探梅や夢さながらに其処彼処 | 神奈川 | 三浦イシ子 |
石段の子ら鳥のごと春を待つ | 神奈川 | 松井恭子 |
キッチンの新しき椅子春隣 | 神奈川 | 水篠けいこ |
・に | ||
梅ひらくはつきりものを言ふ如く | 神奈川 | 中丸佳音 |
父母逝きて生家素通り小正月 | 神奈川 | 土屋春樹 |
恋人か新婚さんか初電車 | 神奈川 | 那珂侑子 |
浅春の売約済みの墓石かな | 神奈川 | 那珂侑子 |
・かな、ダメ。これでは他人事。 | ||
水餅や妻の苦労を忘るまじ | 神奈川 | 片山ひろし |
眠りこけ宇宙の果てへ炬燵かな | 新潟 | 安藤文 |
列島を襲ふ疫禍や今朝の雪 | 新潟 | 安藤文 |
冴ゆる月ロックダウンの街しづか | 新潟 | 安藤文 |
氷もち氷の花を炙りけり | 富山 | 酒井きよみ |
薄化粧欠かさぬ妻やなづな粥 | 長野 | 金田伸一 |
ストーブを焚いて出かける寒さかな | 長野 | 金田伸一 |
大寒や柴犬天寿全うす | 長野 | 大島一馬 |
鉄・鉄・鉄火に冬ふかみかも | 長野 | 柚木紀子 |
風の雪乱れ落ちくるホームかな | 岐阜 | 夏井通江 |
冬の鹿青木藪蘭喰うて行く | 岐阜 | 古田之子 |
薪焼べる虫のいのちももろともに | 岐阜 | 古田之子 |
魁の臘梅に苑馥郁と | 岐阜 | 三好政子 |
・苑、ダメ | ||
父の忌の雪に始まる読経かな | 岐阜 | 辻雅宏 |
竿先に寒鮒の沙汰待ちにけり | 岐阜 | 辻雅宏 |
ことばの道まつすぐ進め孫の春 | 愛知 | 稲垣雄二 |
残業の氷の机一人かな | 愛知 | 稲垣雄二 |
どどおてふあれは海鳴り寒留守居 | 愛知 | 宗石みずえ |
風破り木瓜の花芽のかがよへり | 愛知 | 服部紀子 |
妊婦には二つ食べさす寒卵 | 京都 | 氷室茉胡 |
長生きや子供に貰ふお年玉 | 京都 | 氷室茉胡 |
青き踏むわがふるさとはわが胸に | 大阪 | 安藤久美 |
寒き夜や酒で済むこと済まぬこと | 大阪 | 高角みつこ |
立春や茨木のり子の叱咤あり | 大阪 | 高角みつこ |
電線の雪棒状に落ちきたる | 大阪 | 内山薫 |
・たり | ||
盆梅の開ききつたる執念かな | 大阪 | 澤田美那子 |
家康が大根干したる関ケ原 | 大阪 | 齊藤遼風 |
・り | ||
逼迫のニュースに怯へ春を待つ | 兵庫 | 天野ミチ |
トンネルや笑う山から列車出づ | 兵庫 | 髙見正樹 |
東京の灯狐火ばかりかな | 奈良 | 喜田りえこ |
・東京の夜は | ||
臆病な春を引き出せ手力男命 | 奈良 | 喜田りえこ |
立春や畑に向かふ押し車 | 奈良 | 田原春 |
・に向かふ不要。畑へ | ||
猫に見ゆ虎もまたよし年賀状 | 広島 | 鈴木榮子 |
・る、必要 | ||
火の走る蔓ははがれて榾燃ゆる | 香川 | 曽根崇 |
十につき一粒でよし年の豆 | 長崎 | ももたなおよ |
寒晴れや肺に翳なし曇りなし | 長崎 | ももたなおよ |
黒文字の花をどさりと山の客 | 長崎 | 川辺酸模 |
・山の客? | ||
混迷のただ中なれば龍の玉 | 大分 | 竹中南行 |
・なれば? | ||
風花や出合ひてはやも四十年 | 大分 | 竹中南行 |
白雪や藍建つちからふくふくと | フランス | 廣瀬玲子 |
・白雪、ダメ | ||
うづ高き皮は蕪や京の路地 | フランス | 廣瀬玲子 |
・か |
【特選】
目出度くも猫の礼者が来たりけり 千葉 麻生十三
ふるさとへ成人の日の新幹線 東京 長井亜紀
萎え乳もふんはり憩ふ初湯かな 石川 松川まさみ
別れゆく冬帽に振る冬帽子 愛知 青沼尾燈子
くちびるに花の命や寒の紅 大阪 安藤久美
【入選】
年賀状今年限りと書添へて 北海道 村田鈴音
逡巡の青き影あり寒施行 北海道 芳賀匙子
家々の灯消えて雪の降る 北海道 柳一斉
初句会果てて一椀小豆粥 宮城 長谷川冬虹
十九人四代揃ひて雑煮椀 宮城 長谷川冬虹
一握の七草パック恙なく 秋田 佐藤一郎
轟音の列柱となり瀧凍る 福島 渡辺遊太
耳立てて銃声聞けり冬の鹿 福島 渡辺遊太
遠くまで見ゆる船跡春隣 茨城 袖山富美江
静かなるもの展げをり鷹の空 茨城 馬場小零
我が老いもいよいよ佳境初日記 埼玉 上田雅子
楽しげに七草はやす祖母のゐて 埼玉 藤倉桂
立春大吉みちのく深き雪の中 千葉 若土裕子
西海の地魚クエぞ寒見舞 千葉 池田祥子
赤富士を背にして帰る初詣 千葉 麻生十三
仰ぎ見るの寒の日差しの眩しかり 東京 横山直典
球根の頭の上の霜柱 東京 森徳典
一山を赤く染めたり達磨市 東京 長井亜紀
初夢や路上生活終わる日々 東京 長尾貴代
ひと気なき街こそ街の初景色 東京 杜野廉司
今はただ母子ふたりの鏡餅 東京 齊藤拓
紅梅を見付けてうれし枯木立 神奈川 伊藤靖子
日向ぼこ一瞬にして老いにけり 神奈川 金澤道子
通院の予定書きこむ初暦 神奈川 金澤道子
冬滝や水一筋を通しおり 神奈川 三浦イシ子
てのひらに舞ひ降りてくる花びら餅 神奈川 三玉一郎
口笛にさっと降り来る初雀 神奈川 土屋春樹
寅年や笑ふ仔猫の賀状来し 神奈川 土屋春樹
孫が来てこそ福笑初笑 神奈川 那珂侑子
賀状受く重ねて受くる死の知らせ 神奈川 那珂侑子
氷見よりの鰤を包丁始かな 神奈川 片山ひろし
風花の愛車にほろと積もりけり 新潟 安藤文
地吹雪の中を飛びゆく鴉一羽 新潟 高橋慧
初鏡母がいるかと思ひけり 富山 酒井きよみ
寒施行喧嘩せぬやう分けて置く 富山 酒井きよみ
選ばれてこの一株の寒牡丹 石川 花井淳
着ぶくれて百句私製の句集編む 石川 岩本展乎
わは脊椎辷症男の子子ら氷湖に 長野 柚木紀子
しろたへの雪の白山大旦 岐阜 辻雅宏
立春や動き出したる水の声 岐阜 梅田恵美子
胎の子の籤も大吉初社 愛知 稲垣雄二
立ち揃ふ母妻娘春着かな 愛知 稲垣雄二
生きるため酸素を背負ふ冬の道 愛知 青沼尾燈子
凍蝶の見る夢の中この宇宙 愛知 服部紀子
雪原を行く風かつて人だつた 愛知 服部紀子
胎内に男女の双子福寿草 京都 氷室茉胡
海女泳ぐ水脈あをあをと初景色 大阪 安藤久美
初詣みそぎ代はりのエタノール 大阪 内山薫
義理ながら切れぬ縁あり年賀状 大阪 内山薫
車椅子おす身も老いて寒に入る 大阪 内山薫
冬の日をあびて仏のたなごころ 兵庫 加藤百合子
煮て蒸して漬けて蕪の至福かな 兵庫 加藤百合子
億年の七十二歳(とせ)雑煮食ぶ 兵庫 加藤百合子
覗きたきものに深雪の鳥の宿 兵庫 藤岡美恵子
灰となるものの尊しどんどかな 兵庫 藤岡美恵子
生まれくる命待つ日や福寿草 兵庫 福田光博
起き出して背伸びする猫日向ぼこ 兵庫 髙見正樹
ひいばあさんひいひいばさま女正月 奈良 喜田りえこ
寒鴉万民快楽の声高し 奈良 喜田りえこ
銜へしは何の生命ぞ初鴉 和歌山 玉置陽子
歳なんぞ只の数字よ鍬始め 香川 曽根崇
寒鰤にてんやわんやの厨かな 長崎 川辺酸模
婚約の客で花やぐ年始かな 長崎 川辺酸模
日向ぼこり心がこんなに広ひとは 大分 山本桃潤
再会の息の白さよ豊かさよ 大分 竹中南行
【特選】 | ||
あこがれのものぐさ太郎大旦 | 東京 | 神谷宣行 |
帰省子のこころの丈も伸びてをり | 東京 | 畠山奈於 |
・夏の句 | ||
初鏡増えてよろしき笑ひ皺 | 神奈川 | 松井恭子 |
そこそこの大事ありけり除夜の鐘 | 長野 | 金田伸一 |
独り純白パズル埋むる雪夜 | 長野 | 柚木紀子 |
吊られたる外套同士ひそひそと | 愛知 | 青沼尾燈子 |
雪女郎今夜あたりと言ふ今夜 | 京都 | 佐々木まき |
晴れているだけで一福初詣 | 京都 | 佐々木まき |
こんな夜でありしと榾を一つ足す | 大阪 | 安藤久美 |
音かろく胸にひびかせ初箒 | 大阪 | 安藤久美 |
雪の日を泣く子はゐねが肩ぐるま | 大阪 | 高角みつこ |
搗きたての餅の粘りを今年こそ | 大阪 | 木下洋子 |
スケーター白き孤独のただ中へ | 大阪 | 澤田美那子 |
寝室の奥まで白む雪の朝 | 広島 | 鈴木榮子 |
【入選】 | ||
終ひ湯に五体投げ出し去年今年 | 北海道 | 村田鈴音 |
・す | ||
大の字に転がる猫や冬ぬくし | 北海道 | 村田鈴音 |
・下五、再考。 | ||
俳句的生のほとりへ初詣 | 北海道 | 芳賀匙子 |
焼芋屋けふも淋しき笛鳴らし | 北海道 | 柳一斉 |
歌仙巻く軽みのこころ大旦 | 岩手 | 川村杳平 |
くわつくわつ白鳥の声王子呼ぶ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
初雪や托鉢僧は直角に | 秋田 | 佐藤一郎 |
猟人の鹿追い詰めし笛鳴れり | 福島 | 渡辺遊太 |
猟寂し牡撃たれれば連れもまた | 福島 | 渡辺遊太 |
寒雀我が足音に高く飛び | 茨城 | 袖山富美江 |
朝焚火熾ん翁の農用意 | 茨城 | 馬場小零 |
幾万の言葉の海へ初明り | 埼玉 | 園田靖彦 |
初夢や我も乗りたき宝船 | 埼玉 | 上田雅子 |
長病みの母に笑顔や初鏡 | 埼玉 | 藤倉桂 |
猛省のあまたあまたや除夜の鐘 | 千葉 | 若土裕子 |
滔々と詩歌の大河去年今年 | 千葉 | 若土裕子 |
古びたるキャメルの下着父の冬 | 千葉 | 麻生十三 |
もう五日まだ五日あり年の暮れ | 東京 | 岡田定 |
クリスマス腰に頭に鍼百本 | 東京 | 小野早苗 |
十年来慣れ親しみし冬帽子 | 東京 | 森徳典 |
除夜の鐘ききつつ帰る妹よ | 東京 | 長井亜紀 |
踊ろかと夫誘ふ夢クリスマス | 東京 | 畠山奈於 |
初夢や宇宙旅行の無重力 | 東京 | 櫻井滋 |
着ぶくれて並ぶワクチン三回目 | 東京 | 櫻井滋 |
チューリップ眠る花壇に霜柱 | 神奈川 | 伊藤靖子 |
雪原にうつむく木々や綿帽子 | 神奈川 | 伊藤靖子 |
安らかや家に居ること去年今年 | 神奈川 | 越智淳子 |
町内のの柚子の集まる柚子湯かな | 神奈川 | 松井恭子 |
渋紙の天井走る嫁が君 | 神奈川 | 水篠けいこ |
列島の岩打つ飛沫大旦 | 神奈川 | 湯浅菊子 |
もう一度ゆず風呂にせん大三十日 | 神奈川 | 那珂侑子 |
鷽替の貧しき顔の揃ひけり | 神奈川 | 片山ひろし |
ピーと鳴る薬缶の音や寒に入る | 神奈川 | 片山ひろし |
・笛 | ||
歯につきし餅もうれしや雑煮喰ふ | 新潟 | 安藤文 |
黙々と父は注連縄縒りにけり | 新潟 | 安藤文 |
くれなゐにひそむ哀しさ寒の紅 | 富山 | 酒井きよみ |
ひと睨みしては噛み込むごまめかな | 石川 | 花井淳 |
追ひ掛ける二十四節季年新た | 石川 | 花井淳 |
ふるさとの音に包まれ冬ごもり | 石川 | 岩本展乎 |
年用意あれもこれもを棚に上げ | 石川 | 松川まさみ |
・と | ||
煤逃げて勝を急がぬ碁打かな | 長野 | 金田伸一 |
九絵一本捌く師走の誕生日 | 長野 | 金田伸一 |
南天の実数減らしつ師走かな | 長野 | 大島一馬 |
・数、不要。なぜ数を入れたか。 | ||
凍らじや舌歌十脚十の指 | 長野 | 柚木紀子 |
太陽は小さき白き冬の花 | 岐阜 | 夏井通江 |
川沿ひに市立つ朝や雪こんこ | 岐阜 | 辻雅宏 |
初雪や捨てどころなき齢の滓 | 愛知 | 稲垣雄二 |
がらんだう子どもの部屋を煤払ひ | 愛知 | 稲垣雄二 |
ゆつたりと披講聞くべし十二月 | 愛知 | 臼杵政治 |
病室のあの隅にまで初日かな | 愛知 | 宗石みずえ |
凩や丹田にある熱きもの | 愛知 | 青沼尾燈子 |
酢茎漬葉を整へて店頭へ | 京都 | 氷室茉胡 |
来年はいかに遊ばん雪しんしん | 大阪 | 高角みつこ |
着膨れて独り暮れゆくテレワーク | 大阪 | 内山薫 |
天辺に鶯菜置き雑煮餅 | 大阪 | 澤田美那子 |
・椀 | ||
おんおんと春日若宮おん祭 | 兵庫 | 魚返みりん |
初晴の風やまっさら割烹着 | 兵庫 | 魚返みりん |
枯蟷螂木端となりて草の中 | 岡山 | 齋藤嘉子 |
蒸し楮取り出す人と受くる人 | 広島 | 下田あつ子 |
パチパチと跳ねる銀杏実食べ納め | 広島 | 鈴木榮子 |
納札焚くや句殻も放り込み | 香川 | 曽根崇 |
何とまあ図太く生きて晦日蕎麦 | 長崎 | ももたなおよ |
桃源に心遊ばせ日向ぼこ | 長崎 | 川辺酸模 |
七十の闘志ひそめて日向ぼこ | 長崎 | 川辺酸模 |
虎落笛孤独が齧るわが身体 | 大分 | 山本桃潤 |
からまりし糸や熱燗酌みにけり | 大分 | 竹中南行 |
【特選】 | ||
旅人のこころで拾ふ落葉かな | 北海道 | 芳賀匙子 |
鉈彫のやうな山なみ大根干す | 神奈川 | 金澤道子 |
もどれないところまで来し日向ぼこ | 神奈川 | 三玉一郎 |
・もどれず、で十分。どこにいて、どこにもどれないか、不明。 | ||
日向ぼこ眼つぶれば地球回る | 神奈川 | 松井恭子 |
冬薔薇の蕾の如き覚悟あり | 愛知 | 稲垣雄二 |
柚子大樹とげの長さもただならぬ | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
・ね、ず。ぬ、すわりわるし。 | ||
かの昔富国強兵寒卵 | 奈良 | 喜田りえこ |
ささやきの小径へ誘ふ雪蛍 | 和歌山 | 玉置陽子 |
あちこちに寄り道したる炬燵かな | 大分 | 竹中南行 |
【入選】 | ||
寂聴を読み散らかして冬籠り | 北海道 | 村田鈴音 |
・寂聴への姿勢、不明確。 | ||
初稽古小手取られたる口惜しさよ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
初稽古口惜し涙で汁粉吸ふ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
初稽古父子に戻る帰り道 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
・いずれも場面の描写は十分。ここからどうするか。 | ||
海吼えて鰰逸る日なりけり | 秋田 | 佐藤一郎 |
草枯れや読めぬ句碑立つ村はづれ | 秋田 | 佐藤一郎 |
櫟炭音なく崩るる霜夜かな | 福島 | 渡辺遊太 |
笑顔にてマフラー渡す別れなり | 埼玉 | 藤倉桂 |
新巻のあぎとに荒縄痛からん | 千葉 | 若土裕子 |
・に、を残したこと 猛反省すべし。俳句を誤解しているか。 | ||
手焙に祖母のおもかげ餅ふくる | 千葉 | 若土裕子 |
故郷の干し海老届く年用意 | 千葉 | 池田祥子 |
山茶花の散るより早く掃きにけり | 千葉 | 麻生十三 |
・掃かれけり | ||
太陽の末つ子である茶の花よ | 東京 | 長井亜紀 |
さざんかの震えて居りぬ雨の朝 | 神奈川 | 伊藤靖子 |
初雪や肩に落ちては水玉に | 神奈川 | 越智淳子 |
まずは喜寿までと三年日記買う | 神奈川 | 遠藤初惠 |
大鴉ばさと羽搏き寒波来る | 神奈川 | 金澤道子 |
土牢にやうやく届く冬日かな | 神奈川 | 金澤道子 |
もう声のとどかぬ日向ぼつこかな | 神奈川 | 三玉一郎 |
うしろから付いて来るのか寒烏 | 神奈川 | 水篠けいこ |
・か、ダメ。 | ||
一日の終はりは坐禅ふゆの月 | 神奈川 | 那珂侑子 |
・立派ですが、つまらない。 | ||
オンライン越しの恥づかしさ忘年会 | 新潟 | 安藤文 |
かすむ目に遠白馬の雪真白 | 長野 | 金田伸一 |
雪間門去ねやらず巨かもしか | 長野 | 柚木紀子 |
幻の花一面に枯蓮 | 岐阜 | 夏井通江 |
・逆。枯はちす、とはじめる。今の形は枯蓮の説明。 | ||
掌に綿虫の影ありにけり | 愛知 | 稲垣雄二 |
東京は大き狐火煌々と | 愛知 | 稲垣雄二 |
己が悩み小さし冬の大三角 | 愛知 | 宗石みずえ |
年の市防犯カメラそこかしこ | 京都 | 吉田千恵子 |
禁煙を破る一本枯葉散る | 京都 | 氷室茉胡 |
・しょっちゅう破っているような句。 | ||
褞袍とは知らず褞袍を着てをりぬ | 大阪 | 高角みつこ |
工場の蒸気の濃さや冬の朝 | 大阪 | 内山薫 |
はたこれも自動音声年の暮 | 大阪 | 内山薫 |
わざをぎの力を見たり花の春 | 大阪 | 木下洋子 |
・ご挨拶俳句。俳句はお礼代わりではない。 | ||
風呂吹やとろりとかかる味噌もまた | 大阪 | 澤田美那子 |
・また、とは? | ||
夫にひとつ息子にふたつ寒卵 | 大阪 | 澤田美那子 |
燃えつきるときの華やぎ冬紅葉 | 兵庫 | 加藤百合子 |
・ときはなやかに? | ||
ひさびさの会合に急く小春かな | 兵庫 | 加藤百合子 |
冬の日やほのと仏のたなごころ | 兵庫 | 加藤百合子 |
・ほのと、不要。 | ||
除夜の鐘みづの真闇が揺れてゐる | 兵庫 | 魚返みりん |
大根や喰ふは上手に煮るは下手 | 兵庫 | 天野ミチ |
・に、不要。安易に入れない。 | ||
初採りは丸ごとかじる小蕪かな | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
鐘の音の唸るがごとく去年今年 | 兵庫 | 福田光博 |
・音、不要。 | ||
冬の波見え隠れする漁り船 | 兵庫 | 髙見正樹 |
大根焚きまづ一椀を大黒へ | 奈良 | 喜田りえこ |
ずたずたの父の青春開戦日 | 長崎 | 酸模 |
君をまつ温かき石大枯野 | 大分 | 山本桃潤 |
東京駅吐き出す人間冬ざるる | 大分 | 山本桃潤 |
凩や反旗のかかる凱旋門 | フランス | 廣瀬玲子 |
・想いが通じてこそ俳句です。
・詠みっ放しは俳句ではない。
・通じるよう、確認と工夫を。
・よいお年を。
【特選】 | ||
十二月八日のラッパはるけしや | 秋田 | 佐藤一郎 |
今は亡き猫ひざにゐる小春かな | 神奈川 | 越智淳子 |
伊賀大津浪速思ふや翁の忌 | 神奈川 | 越智淳子 |
生と死の間まぶしき日向ぼこ | 神奈川 | 三玉一郎 |
裸木の村に帰りぬブリューゲル | 石川 | 花井淳 |
はづかしゆうない無花果吸え往還 | 長野 | 柚木紀子 |
綿虫の無より涌き出てさまよへり | 岐阜 | 夏井通江 |
すみれいろの夕暮包むマントかな | 和歌山 | 玉置陽子 |
あわてても齢七十寝正月 | 長崎 | 川辺酸模 |
【入選】 | ||
朝の雪瓶に詰め込む小さな手 | 北海道 | 村田鈴音 |
声わろきつがひのからす十一月 | 北海道 | 芳賀匙子 |
骨壺に人は納まり秋の風 | 北海道 | 柳一斉 |
冬の雷季語の奴隷となるなかれ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
小春日や死との密かなディスタンス | 福島 | 渡辺遊太 |
山門に最後の一葉冬紅葉 | 茨城 | 袖山富美江 |
癒えよ君つつじ真白に返り咲く | 茨城 | 馬場小零 |
いななける馬の歯茎の寒さかな | 埼玉 | 園田靖彦 |
七五三着物脱がぬと泣く子かな | 千葉 | 谷口正人 |
しなり良き冬木とならん誕生日 | 千葉 | 池田祥子 |
俳書読む寝床の中の寒さかな | 千葉 | 麻生十三 |
凩にあらがふ波や隅田川 | 東京 | 岡田定 |
今朝の冬恥づることなく妻を抱く | 東京 | 神谷宣行 |
恋人と鯛焼の列に並びけり | 東京 | 長井亜紀 |
鯛焼を食べる子どもとひだまりに | 東京 | 長井亜紀 |
通り道鴉飛び交ふ十二月 | 東京 | 楠原正光 |
傘寿過ぎてラケット買へり秋高し | 東京 | 畠山奈於 |
綿虫は御用御用と芝を飛ぶ | 東京 | 堀越としの |
耳遠きわれに道とふ冬の蝶 | 東京 | 櫻井滋 |
留守電に彼女の訃報冬薔薇 | 東京 | 齊藤拓 |
山茶花やマドンナの骨拾ひけり | 東京 | 齊藤拓 |
新米と一本の稲届きけり | 神奈川 | 伊藤靖子 |
廃屋の柚子鈴なりに陽を集め | 神奈川 | 遠藤初惠 |
夜つぴいて木がらし枯らすもの探す | 神奈川 | 金澤道子 |
逝かれたる人の思ひの大根引く | 神奈川 | 松井恭子 |
真つ青な空の端まで懸大根 | 神奈川 | 松井恭子 |
小春日や浦賀水道百千船 | 神奈川 | 水篠けいこ |
救急車のサイレン聞きつつ炬燵かな | 神奈川 | 水篠けいこ |
ふるさとの太き柱よ火恋し | 神奈川 | 中丸佳音 |
冬麗や棺の弥生人の丈 | 神奈川 | 中丸佳音 |
木枯らしや今日も立ち寄る天然湯 | 神奈川 | 土屋春樹 |
真夜中に腹まで響く霧笛かな | 神奈川 | 土屋春樹 |
星の夜は夢見る鯨となりにけり | 神奈川 | 湯浅菊子 |
連れ立ちて老婆三人冬田道 | 神奈川 | 那珂侑子 |
閖上の赤貝ですと鮓握る | 神奈川 | 片山ひろし |
いつまでも卓の上なる蜜柑かな | 新潟 | 安藤文 |
しんみりと霰打つ音聞きゐたり | 新潟 | 安藤文 |
寒烏何見つめ居る一羽かな | 新潟 | 高橋慧 |
とまりて花こぼれて花や冬すずめ | 富山 | 酒井きよみ |
黙から生れ鉄線返り花 | 石川 | 花井淳 |
信楽の里底冷えの轆轤蹴る | 石川 | 花井淳 |
われもまた枯るるからりと音たてて | 石川 | 岩本展乎 |
校庭に地上絵を描く小春かな | 石川 | 岩本展乎 |
道問はばところところの冬すみれ | 石川 | 松川まさみ |
いつの世のふたりやふたつ返り花 | 石川 | 松川まさみ |
皮となり板張りの熊乾きゆく | 石川 | 密田妖子 |
モーツアルト冬の朝日の柔らかき | 長野 | 金田伸一 |
暖冬や裸をとほすさるすべり | 長野 | 金田伸一 |
霜は深夜に和服茅舎は露ちらし | 長野 | 柚木紀子 |
月に影映し地球の月見かな | 岐阜 | 古田之子 |
市ヶ谷に右翼の車三島の忌 | 岐阜 | 辻雅宏 |
玉砂利や抱つことなりぬ七五三 | 岐阜 | 梅田恵美子 |
東京は夢の中まで虎落笛 | 愛知 | 稲垣雄二 |
鞍はずせし若き馬より湯気立てり | 京都 | 吉田千恵子 |
間引きし孟宗竹立て雪囲 | 京都 | 吉田千恵子 |
目病みして辺りものみな冬ざるる | 京都 | 佐々木まき |
地球には数多の言語冬銀河 | 京都 | 氷室茉胡 |
晴れ晴れと十一月が終はりたり | 大阪 | 高角みつこ |
好きだった冬が年々つらくなり | 大阪 | 内山薫 |
冬満月地球の影が通りすぐ | 大阪 | 澤田美那子 |
冬桜おもひつめたる花いくつ | 兵庫 | 魚返みりん |
寒林に隠る場所なし空の青 | 兵庫 | 髙見正樹 |
天地の嘆きの歌を冬といふ | 奈良 | 喜田りえこ |
茜して大きな冬の来てゐたり | 奈良 | 喜田りえこ |
水鳥の水上走り逃げおほす | 奈良 | 田原春 |
煮凝や夢の中まで風の歌 | 和歌山 | 玉置陽子 |
碧空やどの障子よりか張り替ふる | 広島 | 鈴木榮子 |
焙じ茶の薫る茶の間や冬隣 | 香川 | 曽根崇 |
石榴割けかつと命の瑞々し | 長崎 | ももたなおよ |
凩や家毀さるる音もして | 長崎 | ももたなおよ |
・主婦の座に踏ん反り返る蟇
・自分に安住すればラクダが針の穴をとおるより俳句は困難。
・かな遣いは自分で辞書で調べること。
【特選】
われさきと迎えにくるよ雪螢 01_北海道 高橋真樹子
木枯や聞こえぬ耳を欹てて 07_福島 渡辺遊太
あかあをき卓の林檎よ今朝の冬 14_神奈川 越智淳子
*上五、漢字に。
未完なる闇の形の鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
朽ち果てて月光になる鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
大いなる佐渡の晴れ間の日向ぼこ 15_新潟 安藤文
狼煙から佐渡へ海道冬ざるる 17_石川 花井淳
・下五、再検討。
烏瓜一つは命一つは死 23_愛知 稲垣雄二
一つ家の二人夜長をそれぞれに 26_京都 佐々木まき
冬の蝶いつまでも目が追うてをり 27_大阪 澤田美那子
焼芋や百歳にして母恋し 29_奈良 喜田りえこ
忘れたき一心で編む毛糸かな 30_和歌山 玉置陽子
しぐるるや病みてやはらか女の手 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
まだ熟すところのこりし熟柿かな 01_北海道 高橋真樹子
・れる
秋天や同級生らと骨納む 01_北海道 芳賀匙子
・ら、不要。
錆深し工場のトタン泡立草 01_北海道 柳一斉
冬天や裾野の長き富士の山 04_宮城 長谷川冬虹
(悼寂聴)百歳に余白残して冬薔薇 04_宮城 長谷川冬虹
老い二人歩調を合はせ冬に入る 05_秋田 佐藤一郎
冬晴れや遠くに響く木遣歌 08_茨城 袖山富美江
リヤカーの運びに揺られ菊大輪 08_茨城 馬場小零
ぞんぶんに浅間を詠んで秋惜しむ 11_埼玉 上田雅子
寂聴の訃報ある日の時雨かな 12_千葉 谷口正人
・しぐれけり
柚子の黄や朝日一身独り占め 12_千葉 谷口正人
冬茜別れし後は足早く 13_東京 岡恵
懐かしき十一月の黄蝶かな 13_東京 岡恵
冷まじや熊が生き骨齧る音 13_東京 神谷宣行
今朝冬の空を翔けるや銀の馬 13_東京 神谷宣行
新走り六腑に鶴の舞降りぬ 13_東京 神谷宣行
群青の甲斐の山より寒卵 13_東京 長井亜紀
すき焼きは芹ふるさとは雪のころ 13_東京 長井亜紀
・すきやきに
老いの日々猫と似たりし秋日和 13_東京 杜野廉司
・似てゐる、「し」は変。文法ではなく感覚でわかるように。
冬晴や光をまとふ樟大樹 13_東京 楠原正光
のんびりとがらくた市の文化の日 13_東京 楠原正光
一輪車枯れ葉の山に突つこめり 13_東京 櫻井滋
気にそまぬ事のあれこれ懐手 14_神奈川 金澤道子
散り敷いて山茶花たるを全ふす 14_神奈川 金澤道子
・う
ふるさとは落葉をたたく雨ばかり 14_神奈川 松井恭子
・ばかり、ダメ。
とろとろと夕日を煮詰め熟柿ジャム 14_神奈川 松井恭子
・を煮詰め、ダメ。
耳遠き人に道問ふ小春かな 14_神奈川 中丸佳音
冬桜一つ一つの花たふと 14_神奈川 中丸佳音
・たふと、不要。
旅に出る刻には止みぬ朝時雨 14_神奈川 那珂侑子
合の手にエイと餅伸ぶ命伸ぶ 17_石川 花井淳
湯の中の繭ころころと冬ざるる 17_石川 花井淳
・この下五も再検討。
手袋にペンだこ一つ納めをり 17_石川 岩本展乎
・納める?
夕刊はバイクで配る日短し 17_石川 岩本展乎
着水の水に弾かれ鴨来る 17_石川 岩本展乎
水仙は渡り来し花絹の道 19_山梨 小泉雅恵
・ごちゃごちゃ。五七五のリズムの奴隷。
天が下抜く大根の白さかな 20_長野 金田伸一
黄葉の散り尽くしたる虚空かな 20_長野 大島一馬
秋晴れ過多至福の時間死から生 20_長野 柚木紀子
うれしさよ晩秋深夜届くクロネコ 20_長野 柚木紀子
チケツトをしをりに使ふ小春かな 21_岐阜 夏井通江
茨線の獣の毛鳥の毛秋野原 21_岐阜 古田之子
波立てて凩わたる余呉の湖 21_岐阜 辻雅宏
人垣へゴリラ尻掻く小春かな 21_岐阜 辻雅宏
ビル影がビルに掛かりて冬に入る 23_愛知 臼杵政治
・ビルの影
ころころと向いの家へゆく落葉 24_三重 乾薫
掃き寄せる落葉を土に戻しけり 24_三重 乾薫
木犀の返り花なりかそけくも 26_京都 佐々木まき
小春空子に手を引かれ行く散歩 26_京都 氷室茉胡
煮て焼いて晒して三品芋日和 27_大阪 安藤久美
葛湯練るしだいに花のあきらかに 27_大阪 澤田美那子
しぐるるや借る軒も無きビルの街 27_大阪 澤田美那子
木犀も終りに近き香なりけり 27_大阪 齊藤遼風
・なりけり、が死んでいる。
上賀茂に椎の実落つる時空あり 28_兵庫 加藤百合子
もみじ葉は舞ひ散るための形かな 28_兵庫 加藤百合子
小鳥くる十方世界水のこゑ 28_兵庫 魚返みりん
綿虫はいずこに行かむ日暮れ道 28_兵庫 福田光博
湯豆腐や崩れゆくとき美しく 29_奈良 喜田りえこ
・珍しく感傷。
泥団子ひとつ一つに敷く落葉 29_奈良 田原春
三輪山の寝息の音か酒醸す 33_岡山 齋藤嘉子
通草蔓細いの太いの綰ね売る 33_岡山 齋藤嘉子
暖冬やなりをひそめてゐる病魔 37_香川 丸亀葉七子
己が根をあたためてゐる落葉かな 37_香川 曽根崇
弟の骨となる間や秋時雨 37_香川 曽根崇
銀杏の実拾ふ背中にまた一つ 42_長崎 川辺酸模
鮭の川命が命食らはんと 44_大分 山本桃潤
・食ひけり、細かなことに迷わない。
立冬の心定まる河口かな 44_大分 竹中南行
衿立てて焼き栗の列シャンゼリゼ 50_フランス 廣瀬玲子
匂ひたつ枯葉や巴里の日の骸 50_フランス 廣瀬玲子
【特選】
宇宙から帰る人あり十三夜 13_東京 森徳典
すさまじやすべて暗渠に吸ひこまれ 14_神奈川 金澤道子
かはいがるやうに無花果むきはじむ 17_石川 松川まさみ
生身魂妻に消えざる恋ごころ 20_長野 金田伸一
ガーゼ彩々わが病室のちんちろりん 20_長野 柚木紀子
膝から肘かさぶた七枚秋夕暮 20_長野 柚木紀子
身のうちの夢を怖るる長夜かな 21_岐阜 三好政子
桐一葉滑空をして着地せり 28_兵庫 髙見正樹
よく響く空つぽの胸木の実雨 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
天仰ぐ車道に屈した鹿の貌 01_北海道 村田鈴音
分葬の二文字鮮し紅葉寺 03_岩手 川村杳平
くろぐろと秋刀魚のまなこ潮のいろ 04_宮城 長谷川冬虹
図書室の窓から見ゆる秋の虹 08_茨城 袖山富美江
轟沈の海を遙かに秋冷碑 08_茨城 馬場小零
よべ編みし父のほまれの籾筵 11_埼玉 園田靖彦
何も無き畑にキラキラ鳥脅し 11_埼玉 藤倉桂
ぼろおんと法螺貝響く夜長かな 12_千葉 菊地原弘美
記念樹と齢かさねて松手入れ 12_千葉 若土裕子
コロナ禍の見舞ひかなはぬ林檎かな 12_千葉 若土裕子
冬近し黒き血潮の隅田川 13_東京 岡田定
秋夕焼恐竜の影地平まで 13_東京 岡田定
月はひとつ羊羹には栗五六粒 13_東京 長井亜紀
初霜や友と通ひし通学路 13_東京 楠原正光
立冬の背筋を伸ばし一歩かな 13_東京 楠原正光
夫好む大馬鈴薯のオーブン焼き 13_東京 堀越としの
団栗の落ちて転がる夜の屋根 14_神奈川 伊藤靖子
小春日やあの人かの人をりし日々 14_神奈川 越智淳子
干柿は天の恵みの甘さかな 14_神奈川 越智淳子
先客は野良の老猫日向ぼこ 14_神奈川 遠藤初惠
毬落ちてをり熊棚の新しく 14_神奈川 金澤道子
鶏頭ややうやく決まる帰郷の日 14_神奈川 松井恭子
芋煮えて平々凡々日が暮れる 14_神奈川 水篠けいこ
島猫となりし野良猫秋うらら 14_神奈川 中丸佳音
合掌し即身仏に冬の蝿 14_神奈川 湯浅菊子
富士山をそばに一日星月夜 14_神奈川 那珂侑子
身に入むやむかし学童疎開寺 14_神奈川 片山ひろし
神主の父いそいそと七五三 15_新潟 安藤文
すさまじき顔ぞろぞろと選挙戦 15_新潟 安藤文
石榴三つ描きて食ふてあと酒に 15_新潟 高橋慧
零余子と書けばぱらぱらとこぼるるよ 16_富山 酒井きよみ
がんもどきふつくら炊けて小春かな 17_石川 花井淳
秋風や一腑除きし身のかるさ 17_石川 松川まさみ
朝寒や同床猫の大あくび 19_山梨 小泉雅恵
老いてこそ心耳たしかや秋の風 20_長野 金田伸一
仔山羊らのふうちん揺るる十三夜 20_長野 柚木紀子
あけびの実風よりもいではかなさよ 21_岐阜 夏井通江
松手入脚立二台に板渡し 21_岐阜 三好政子
身に入むや鬼籍に入る友つづき 21_岐阜 辻雅宏
間引菜も入れてジュ―スや朝の卓 21_岐阜 梅田恵美子
米こそが近江の宝新走り 23_愛知 臼杵政治
あばら家は終の栖ぞ障子貼る 23_愛知 青沼尾燈子
菊の香や馬齢重ねて恙なし 26_京都 佐々木まき
山蘆辞し夢の続きの紅葉狩 26_京都 氷室茉胡
蛇笏忌の榾かぐはしく爆ぜにけり 27_大阪 安藤久美
余生などと安んじをれば鎌鼬 27_大阪 澤田美那子
足元の草ぐさまでも紅葉して 28_兵庫 天野ミチ
袋には従弟の写真今年米 28_兵庫 藤岡美惠子
綱を張る犬の勢い朝寒し 28_兵庫 髙見正樹
どの子にも青空あるよ七五三 29_奈良 喜田りえこ
思ひ出は小春日和に似たるかな 33_岡山 齋藤嘉子
縁側に昼餉揃へん小六月 33_岡山 齋藤嘉子
塩を焚くあかり洩れをり十三夜 37_香川 曽根崇
縄張の中に我が家か鵙高音 37_香川 曽根崇
シスターも鎌を研ぐなり豊の秋 42_長崎 ももたなおよ
たわいなくけふはきのふへ蚯蚓鳴く 44_大分 竹中南行
焼き栗やモンマルトルの丘へ雨 50_フランス 廣瀬玲子
【特選】
亀壺の酢の香の深む十三夜 12_千葉 池田祥子
耳たしかペンまたたしか夜の長き 20_長野 金田伸一
おそろしき水音たてて崩れ簗 21_岐阜 梅田恵美子
ゆく秋の空に香るや塔ふたつ 27_大阪 澤田美那子
東塔と西塔の間栗を喰ふ 27_大阪 澤田美那子
あお空の底に大きな秋がゐる 28_兵庫 加藤百合子
この世ともあの世ともなく能登時雨 28_兵庫 魚返みりん
ミルフィーユパリの落葉の音立てて 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
仕付け取り姿見に立つ秋夜かな 01_北海道 村田鈴音
栗ご飯喧嘩の事を忘れをり 01_北海道 村田鈴音
漁終えし船つぎつぎと秋夕焼 01_北海道 柳一斉
秋の雲こころ遠くへ旅したる 01_北海道 柳一斉
白樺を渡る風音秋深し 01_北海道 柳一斉
三代の南部杜氏や新走 04_宮城 長谷川冬虹
勇ましき話となりぬ今年酒 05_秋田 佐藤一郎
あれも嫌これでもないと秋の蝶 07_福島 渡辺遊太
秋の蝶今際の花に呼ばれたる 07_福島 渡辺遊太
鵙啼くや古戦場てふ村外れ 08_茨城 馬場小零
仕入れ値の五倍の値段あけび売る 11_埼玉 園田靖彦
コロナ禍の弛みし後の夜長かな 11_埼玉 上田雅子
跳ね返るオール揃ふや天高く 12_千葉 麻生十三
顔も剃らずにコロナ禍二年秋の風 13_東京 岡恵
蓑虫の蓑入るころか火を熾す 13_東京 神谷宣行
秋風よ支払い終えし屋根修理 13_東京 長尾貴代
芋虫や派手な模様の伸び縮み 13_東京 楠原正光
新米を賜りて聴く故郷(くに)話 13_東京 畠山奈於
秋茄子のいろほれぼれと掌に 14_神奈川 三浦イシ子
わが齢不知火見ゆるかも知れず 14_神奈川 中丸佳音
これはまあ豪華な虹よ台風一過 14_神奈川 湯浅菊子
みちのくの虫食ひ木像そぞろ寒 14_神奈川 湯浅菊子
抱へるに程よきくぼみ冬瓜は 14_神奈川 那珂侑子
新米の釜の火かげん薪加減 14_神奈川 片山ひろし
月の窓まだまだ慣れぬテレワーク 15_新潟 安藤文
コロナ禍のわけてもうまき今年米 15_新潟 安藤文
恐ろしや裂けし石榴の奥の闇 15_新潟 高橋慧
手にのせてこの世映さんけふの月 16_富山 酒井きよみ
狂言師秋を深めて去りにけり 16_富山 酒井きよみ
爽やかや大谷翔平一周す 17_石川 花井淳
梅室忌修す句会に黒羊羹 17_石川 花井淳
呼び捨ての名前飛び交ふ木の実独楽 17_石川 岩本展乎
長き夜を人なつかしき病臥かな 17_石川 松川まさみ
心の目開けて宇宙を詠まん秋 20_長野 金田伸一
深山に団栗の降る一夜あり 20_長野 大島一馬
ひとり子吾か白さるすべりにいとこはとこ 20_長野 柚木紀子
美智子麻里郁子羨(とも)しも10月生まれ 20_長野 柚木紀子
スーパーは小さな楽園芋の山 21_岐阜 夏井通江
すれちがふだけの秋蝶遠ざかる 21_岐阜 夏井通江
数日を籾焼く匂ひ峡の底 21_岐阜 古田之子
頬杖に押し寄せて来る秋思かな 21_岐阜 辻雅宏
硯山色づく頃や玩亭忌 21_岐阜 梅田恵美子
このビルに灯り一つの夜食かな 23_愛知 稲垣雄二
囮籠開けても逃げぬ囮かな 23_愛知 臼杵政治
藤袴花屋の花に埋もれて 23_愛知 臼杵政治
桃ひとつ矯めつ眇めつ妻買ひぬ 23_愛知 青沼尾燈子
五億年経て還り来し龍淵に 23_愛知 青沼尾燈子
孵卵器にかすかな鳴き声朝寒 26_京都 吉田千恵子
牛膝煙くすぶる一斗缶 26_京都 吉田千恵子
焼すぎず焼き不足なく焼く秋刀魚 26_京都 佐々木まき
われもまた藻に鳴く虫となりたき日 26_京都 氷室茉胡
月光に抱かれ柩自宅へと 26_京都 氷室茉胡
秋篠の御堂は木の実降るころか 27_大阪 安藤久美
秋晴や食料支援受くる列 27_大阪 木下洋子
貫入や色事もなき九月尽 27_大阪 齊藤遼風
天空の雲の島なみ良夜かな 28_兵庫 加藤百合子
をちこちに夕轟や大紅葉 28_兵庫 魚返みりん
柿もまた小さく切りて食す今 28_兵庫 天野ミチ
何色に今日を染めよう小鳥来る 28_兵庫 藤岡美恵子
長月や一途な君へ祝婚歌 29_奈良 喜田りえこ
身に沁むや比翼連理の塚の苔 29_奈良 喜田りえこ
笹漬の鯛のうすべに玩亭忌 30_和歌山 玉置陽子
玩亭忌再翻訳で読む源氏 30_和歌山 玉置陽子
桜守けふは葛根を掘るといふ 33_岡山 齋藤嘉子
日の神のゆつくり歩く刈田かな 33_岡山 齋藤嘉子
長生きの秘訣恋せよ秋の薔薇 37_香川 丸亀葉七子
柿の棹霧の山里暮れいそぐ 37_香川 曽根崇
登高や雲の上なほ雲流れ 37_香川 曽根崇
山川の匂ひ忘るな秋燕 42_長崎 川辺酸模
蛇笏忌や言葉に重さありにける 44_大分 山本恒雄
渾身の一句今こそ螇蚸跳ぶ 44_大分 竹中南行
ボルドーの収穫終へし城へ月 50_フランス 廣瀬玲子
・「老人の日とて牛肉焼いてみる」、この句はびくびくしながら詠んでいるところがダメ。推敲してください。
【特選】
引退はわれには在らず新酒汲む 04_宮城 長谷川冬虹
朝顔や入院のまま帰らざる 07_福島 渡辺遊太
山と積む根の無き言葉そぞろ寒 17_石川 松川まさみ
五臓六腑そろふ身照らせ月今宵 17_石川 松川まさみ
・照らす
五十歩ほど歩いて休む月の道 21_岐阜 古田之子
老人の日とて牛肉焼いてみる 26_京都 佐々木まき
母の忌の一日を妻と良夜かな 27_大阪 齊藤遼風
怒る母秋の夕焼より真つ赤 37_香川 丸亀葉七子
露の間と言ふと謂へども斯く老いき 44_大分 山本桃潤
曼珠沙華咲いた形で死んでゆく 46_鹿児島 大西朝子
【入選】
婆の声香ばしきかな玉蜀黍 01_北海道 高橋真樹子
虫の音や机の上の予診票 01_北海道 村田鈴音
をしみなく咲き散らかして芙蓉かな 01_北海道 芳賀匙子
月今宵地球の裏よりメール来る 01_北海道 柳一斉
栗入りの松茸飯の香る卓 03_岩手 川村杳平
五臓六腑たちまち駆くる新走 04_宮城 長谷川冬虹
空つぽの墓石の群や曼珠沙華 04_宮城 長谷川冬虹
青空にぶら下がりたる木通かな 05_秋田 佐藤一郎
梨剥くやつくづく弱音見せぬ人 07_福島 渡辺遊太
表札に名が加わりて小鳥来る 08_茨城 袖山富美江
はなやかに空の半分秋夕焼け 11_埼玉 上田雅子
葡萄の葉ぶどうの色に枯れにけり 12_千葉 若土裕子
自然薯のふるさと山の深からん 12_千葉 若土裕子
幼より届く文読む良夜かな 12_千葉 池田祥子
秋晴や大きく返すぬかの床 13_東京 小野早苗
漂泊の種のこぼれて草の花 13_東京 神谷宣行
からつぽの鳥籠かるし後の月 13_東京 長井亜紀
かぐはしき稲架のむかふは国上山 13_東京 長井亜紀
誕生日庭いっぱいの水引き草 13_東京 長尾貴代
爽やかや朝の日課のごみ出しも 13_東京 楠原正光
身に沁むや義母の相続20人 13_東京 櫻井滋
団栗を踏みつつ歩む山の道 14_神奈川 伊藤靖子
旅の途に見知らぬ村の運動会 14_神奈川 越智淳子
菜園の爺に出くはす穴まどひ 14_神奈川 松井恭子
竜舌蘭の棘に拘るオニヤンマ 14_神奈川 水篠けいこ
男の子泣かせし記憶曼殊沙華 14_神奈川 中丸佳音
日の辷る蘂かく長し曼殊沙華 14_神奈川 中丸佳音
樽椅子や臓腑に沁みる新走り 14_神奈川 土屋春樹
小舟より竿で寄せたる菱を取る 14_神奈川 片山ひろし
稲すずめ転び合ひつつ稲の中 15_新潟 高橋慧
沼の辺の月にぬぎたる蛇の衣 16_富山 酒井きよみ
新蕎麦や主の心香り立つ 17_石川 密田妖子
星月夜壊れゆく国ガンダーラ 19_山梨 小泉雅恵
ふるさとや楢枯れ渡る哭きながら 19_山梨 小泉雅恵
秋空の高きがかすむ病かな 20_長野 金田伸一
秋の七草ひとつたりない満月光 20_長野 柚木紀子
今日祝し明け方の虫鳴きにけり 21_岐阜 夏井通江
暗がりにこほろぎ居りて犬昼寝 21_岐阜 古田之子
布巾干す軒端明るし小望月 21_岐阜 三好政子
隆起せし大岸壁や秋高し 21_岐阜 三好政子
煙茸つつけばまこともくもくと 21_岐阜 梅田恵美子
残業の隣りの窓も月の中 23_愛知 稲垣雄二
鯊釣りや左右の人に会釈して 23_愛知 臼杵政治
お使ひの鍋にゆうらり新豆腐 23_愛知 臼杵政治
八人を育てし乳首吾亦紅 23_愛知 宗石みずえ
デイの着替へ一枚増やし秋時雨 26_京都 吉田千恵子
夜食用のラーメン誰に食はれしか 26_京都 氷室茉胡
秋耕や生涯過ごす峡の村 27_大阪 木下洋子
再会を果たせぬままに柿の秋 27_大阪 木下洋子
夜半の月シャイな笑顔の句友逝く 27_大阪 木下洋子
テレワークは淋しくないか鰯雲 27_大阪 澤田美那子
椿の実ぱちんと爆ぜて三等分 27_大阪 澤田美那子
帰るさの出迎へ嬉し草ひばり 28_兵庫 加藤百合子
稲架日和にほひ深むる淡路島 28_兵庫 魚返みりん
海に向く机にひとつラ・フランス 28_兵庫 千堂富子
秋晴れや金券売りにショップまで 28_兵庫 天野ミチ
三男の先導秋の沢渡り 29_奈良 田原春
満月が雲を出ました嫁の声 29_奈良 田原春
朝刊に露の手ざはり蛇笏の忌 30_和歌山 玉置陽子
しなやかな骨となりゆく芒かな 30_和歌山 玉置陽子
紅つけず過ぎしふたとせ秋に入る 34_広島 鈴木榮子
仕舞湯に聞く虫の声ことさらに 34_広島 鈴木榮子
蚯蚓鳴く闇にふたつの眼あり 42_長崎 ももたなおよ
資本主義故郷荒らす真葛原 44_大分 山本桃潤
九州を統ぶる火の山露千里 44_大分 竹中南行
永遠の月の明りにわれらかな 44_大分 竹中南行
夜半の秋無能無才になれぬかな 44_大分 竹中南行
とんぼ飛ぶ巴里の老舗のショコラティエ 50_フランス 廣瀬玲子