【特選】 | ||
旅人のこころで拾ふ落葉かな | 北海道 | 芳賀匙子 |
鉈彫のやうな山なみ大根干す | 神奈川 | 金澤道子 |
もどれないところまで来し日向ぼこ | 神奈川 | 三玉一郎 |
・もどれず、で十分。どこにいて、どこにもどれないか、不明。 | ||
日向ぼこ眼つぶれば地球回る | 神奈川 | 松井恭子 |
冬薔薇の蕾の如き覚悟あり | 愛知 | 稲垣雄二 |
柚子大樹とげの長さもただならぬ | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
・ね、ず。ぬ、すわりわるし。 | ||
かの昔富国強兵寒卵 | 奈良 | 喜田りえこ |
ささやきの小径へ誘ふ雪蛍 | 和歌山 | 玉置陽子 |
あちこちに寄り道したる炬燵かな | 大分 | 竹中南行 |
【入選】 | ||
寂聴を読み散らかして冬籠り | 北海道 | 村田鈴音 |
・寂聴への姿勢、不明確。 | ||
初稽古小手取られたる口惜しさよ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
初稽古口惜し涙で汁粉吸ふ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
初稽古父子に戻る帰り道 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
・いずれも場面の描写は十分。ここからどうするか。 | ||
海吼えて鰰逸る日なりけり | 秋田 | 佐藤一郎 |
草枯れや読めぬ句碑立つ村はづれ | 秋田 | 佐藤一郎 |
櫟炭音なく崩るる霜夜かな | 福島 | 渡辺遊太 |
笑顔にてマフラー渡す別れなり | 埼玉 | 藤倉桂 |
新巻のあぎとに荒縄痛からん | 千葉 | 若土裕子 |
・に、を残したこと 猛反省すべし。俳句を誤解しているか。 | ||
手焙に祖母のおもかげ餅ふくる | 千葉 | 若土裕子 |
故郷の干し海老届く年用意 | 千葉 | 池田祥子 |
山茶花の散るより早く掃きにけり | 千葉 | 麻生十三 |
・掃かれけり | ||
太陽の末つ子である茶の花よ | 東京 | 長井亜紀 |
さざんかの震えて居りぬ雨の朝 | 神奈川 | 伊藤靖子 |
初雪や肩に落ちては水玉に | 神奈川 | 越智淳子 |
まずは喜寿までと三年日記買う | 神奈川 | 遠藤初惠 |
大鴉ばさと羽搏き寒波来る | 神奈川 | 金澤道子 |
土牢にやうやく届く冬日かな | 神奈川 | 金澤道子 |
もう声のとどかぬ日向ぼつこかな | 神奈川 | 三玉一郎 |
うしろから付いて来るのか寒烏 | 神奈川 | 水篠けいこ |
・か、ダメ。 | ||
一日の終はりは坐禅ふゆの月 | 神奈川 | 那珂侑子 |
・立派ですが、つまらない。 | ||
オンライン越しの恥づかしさ忘年会 | 新潟 | 安藤文 |
かすむ目に遠白馬の雪真白 | 長野 | 金田伸一 |
雪間門去ねやらず巨かもしか | 長野 | 柚木紀子 |
幻の花一面に枯蓮 | 岐阜 | 夏井通江 |
・逆。枯はちす、とはじめる。今の形は枯蓮の説明。 | ||
掌に綿虫の影ありにけり | 愛知 | 稲垣雄二 |
東京は大き狐火煌々と | 愛知 | 稲垣雄二 |
己が悩み小さし冬の大三角 | 愛知 | 宗石みずえ |
年の市防犯カメラそこかしこ | 京都 | 吉田千恵子 |
禁煙を破る一本枯葉散る | 京都 | 氷室茉胡 |
・しょっちゅう破っているような句。 | ||
褞袍とは知らず褞袍を着てをりぬ | 大阪 | 高角みつこ |
工場の蒸気の濃さや冬の朝 | 大阪 | 内山薫 |
はたこれも自動音声年の暮 | 大阪 | 内山薫 |
わざをぎの力を見たり花の春 | 大阪 | 木下洋子 |
・ご挨拶俳句。俳句はお礼代わりではない。 | ||
風呂吹やとろりとかかる味噌もまた | 大阪 | 澤田美那子 |
・また、とは? | ||
夫にひとつ息子にふたつ寒卵 | 大阪 | 澤田美那子 |
燃えつきるときの華やぎ冬紅葉 | 兵庫 | 加藤百合子 |
・ときはなやかに? | ||
ひさびさの会合に急く小春かな | 兵庫 | 加藤百合子 |
冬の日やほのと仏のたなごころ | 兵庫 | 加藤百合子 |
・ほのと、不要。 | ||
除夜の鐘みづの真闇が揺れてゐる | 兵庫 | 魚返みりん |
大根や喰ふは上手に煮るは下手 | 兵庫 | 天野ミチ |
・に、不要。安易に入れない。 | ||
初採りは丸ごとかじる小蕪かな | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
鐘の音の唸るがごとく去年今年 | 兵庫 | 福田光博 |
・音、不要。 | ||
冬の波見え隠れする漁り船 | 兵庫 | 髙見正樹 |
大根焚きまづ一椀を大黒へ | 奈良 | 喜田りえこ |
ずたずたの父の青春開戦日 | 長崎 | 酸模 |
君をまつ温かき石大枯野 | 大分 | 山本桃潤 |
東京駅吐き出す人間冬ざるる | 大分 | 山本桃潤 |
凩や反旗のかかる凱旋門 | フランス | 廣瀬玲子 |
ネット投句(2021年11月30日)選句と選評
・想いが通じてこそ俳句です。
・詠みっ放しは俳句ではない。
・通じるよう、確認と工夫を。
・よいお年を。
【特選】 | ||
十二月八日のラッパはるけしや | 秋田 | 佐藤一郎 |
今は亡き猫ひざにゐる小春かな | 神奈川 | 越智淳子 |
伊賀大津浪速思ふや翁の忌 | 神奈川 | 越智淳子 |
生と死の間まぶしき日向ぼこ | 神奈川 | 三玉一郎 |
裸木の村に帰りぬブリューゲル | 石川 | 花井淳 |
はづかしゆうない無花果吸え往還 | 長野 | 柚木紀子 |
綿虫の無より涌き出てさまよへり | 岐阜 | 夏井通江 |
すみれいろの夕暮包むマントかな | 和歌山 | 玉置陽子 |
あわてても齢七十寝正月 | 長崎 | 川辺酸模 |
【入選】 | ||
朝の雪瓶に詰め込む小さな手 | 北海道 | 村田鈴音 |
声わろきつがひのからす十一月 | 北海道 | 芳賀匙子 |
骨壺に人は納まり秋の風 | 北海道 | 柳一斉 |
冬の雷季語の奴隷となるなかれ | 宮城 | 長谷川冬虹 |
小春日や死との密かなディスタンス | 福島 | 渡辺遊太 |
山門に最後の一葉冬紅葉 | 茨城 | 袖山富美江 |
癒えよ君つつじ真白に返り咲く | 茨城 | 馬場小零 |
いななける馬の歯茎の寒さかな | 埼玉 | 園田靖彦 |
七五三着物脱がぬと泣く子かな | 千葉 | 谷口正人 |
しなり良き冬木とならん誕生日 | 千葉 | 池田祥子 |
俳書読む寝床の中の寒さかな | 千葉 | 麻生十三 |
凩にあらがふ波や隅田川 | 東京 | 岡田定 |
今朝の冬恥づることなく妻を抱く | 東京 | 神谷宣行 |
恋人と鯛焼の列に並びけり | 東京 | 長井亜紀 |
鯛焼を食べる子どもとひだまりに | 東京 | 長井亜紀 |
通り道鴉飛び交ふ十二月 | 東京 | 楠原正光 |
傘寿過ぎてラケット買へり秋高し | 東京 | 畠山奈於 |
綿虫は御用御用と芝を飛ぶ | 東京 | 堀越としの |
耳遠きわれに道とふ冬の蝶 | 東京 | 櫻井滋 |
留守電に彼女の訃報冬薔薇 | 東京 | 齊藤拓 |
山茶花やマドンナの骨拾ひけり | 東京 | 齊藤拓 |
新米と一本の稲届きけり | 神奈川 | 伊藤靖子 |
廃屋の柚子鈴なりに陽を集め | 神奈川 | 遠藤初惠 |
夜つぴいて木がらし枯らすもの探す | 神奈川 | 金澤道子 |
逝かれたる人の思ひの大根引く | 神奈川 | 松井恭子 |
真つ青な空の端まで懸大根 | 神奈川 | 松井恭子 |
小春日や浦賀水道百千船 | 神奈川 | 水篠けいこ |
救急車のサイレン聞きつつ炬燵かな | 神奈川 | 水篠けいこ |
ふるさとの太き柱よ火恋し | 神奈川 | 中丸佳音 |
冬麗や棺の弥生人の丈 | 神奈川 | 中丸佳音 |
木枯らしや今日も立ち寄る天然湯 | 神奈川 | 土屋春樹 |
真夜中に腹まで響く霧笛かな | 神奈川 | 土屋春樹 |
星の夜は夢見る鯨となりにけり | 神奈川 | 湯浅菊子 |
連れ立ちて老婆三人冬田道 | 神奈川 | 那珂侑子 |
閖上の赤貝ですと鮓握る | 神奈川 | 片山ひろし |
いつまでも卓の上なる蜜柑かな | 新潟 | 安藤文 |
しんみりと霰打つ音聞きゐたり | 新潟 | 安藤文 |
寒烏何見つめ居る一羽かな | 新潟 | 高橋慧 |
とまりて花こぼれて花や冬すずめ | 富山 | 酒井きよみ |
黙から生れ鉄線返り花 | 石川 | 花井淳 |
信楽の里底冷えの轆轤蹴る | 石川 | 花井淳 |
われもまた枯るるからりと音たてて | 石川 | 岩本展乎 |
校庭に地上絵を描く小春かな | 石川 | 岩本展乎 |
道問はばところところの冬すみれ | 石川 | 松川まさみ |
いつの世のふたりやふたつ返り花 | 石川 | 松川まさみ |
皮となり板張りの熊乾きゆく | 石川 | 密田妖子 |
モーツアルト冬の朝日の柔らかき | 長野 | 金田伸一 |
暖冬や裸をとほすさるすべり | 長野 | 金田伸一 |
霜は深夜に和服茅舎は露ちらし | 長野 | 柚木紀子 |
月に影映し地球の月見かな | 岐阜 | 古田之子 |
市ヶ谷に右翼の車三島の忌 | 岐阜 | 辻雅宏 |
玉砂利や抱つことなりぬ七五三 | 岐阜 | 梅田恵美子 |
東京は夢の中まで虎落笛 | 愛知 | 稲垣雄二 |
鞍はずせし若き馬より湯気立てり | 京都 | 吉田千恵子 |
間引きし孟宗竹立て雪囲 | 京都 | 吉田千恵子 |
目病みして辺りものみな冬ざるる | 京都 | 佐々木まき |
地球には数多の言語冬銀河 | 京都 | 氷室茉胡 |
晴れ晴れと十一月が終はりたり | 大阪 | 高角みつこ |
好きだった冬が年々つらくなり | 大阪 | 内山薫 |
冬満月地球の影が通りすぐ | 大阪 | 澤田美那子 |
冬桜おもひつめたる花いくつ | 兵庫 | 魚返みりん |
寒林に隠る場所なし空の青 | 兵庫 | 髙見正樹 |
天地の嘆きの歌を冬といふ | 奈良 | 喜田りえこ |
茜して大きな冬の来てゐたり | 奈良 | 喜田りえこ |
水鳥の水上走り逃げおほす | 奈良 | 田原春 |
煮凝や夢の中まで風の歌 | 和歌山 | 玉置陽子 |
碧空やどの障子よりか張り替ふる | 広島 | 鈴木榮子 |
焙じ茶の薫る茶の間や冬隣 | 香川 | 曽根崇 |
石榴割けかつと命の瑞々し | 長崎 | ももたなおよ |
凩や家毀さるる音もして | 長崎 | ももたなおよ |
ネット投句(2021年11月15日)選句と選評
・主婦の座に踏ん反り返る蟇
・自分に安住すればラクダが針の穴をとおるより俳句は困難。
・かな遣いは自分で辞書で調べること。
【特選】
われさきと迎えにくるよ雪螢 01_北海道 高橋真樹子
木枯や聞こえぬ耳を欹てて 07_福島 渡辺遊太
あかあをき卓の林檎よ今朝の冬 14_神奈川 越智淳子
*上五、漢字に。
未完なる闇の形の鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
朽ち果てて月光になる鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
大いなる佐渡の晴れ間の日向ぼこ 15_新潟 安藤文
狼煙から佐渡へ海道冬ざるる 17_石川 花井淳
・下五、再検討。
烏瓜一つは命一つは死 23_愛知 稲垣雄二
一つ家の二人夜長をそれぞれに 26_京都 佐々木まき
冬の蝶いつまでも目が追うてをり 27_大阪 澤田美那子
焼芋や百歳にして母恋し 29_奈良 喜田りえこ
忘れたき一心で編む毛糸かな 30_和歌山 玉置陽子
しぐるるや病みてやはらか女の手 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
まだ熟すところのこりし熟柿かな 01_北海道 高橋真樹子
・れる
秋天や同級生らと骨納む 01_北海道 芳賀匙子
・ら、不要。
錆深し工場のトタン泡立草 01_北海道 柳一斉
冬天や裾野の長き富士の山 04_宮城 長谷川冬虹
(悼寂聴)百歳に余白残して冬薔薇 04_宮城 長谷川冬虹
老い二人歩調を合はせ冬に入る 05_秋田 佐藤一郎
冬晴れや遠くに響く木遣歌 08_茨城 袖山富美江
リヤカーの運びに揺られ菊大輪 08_茨城 馬場小零
ぞんぶんに浅間を詠んで秋惜しむ 11_埼玉 上田雅子
寂聴の訃報ある日の時雨かな 12_千葉 谷口正人
・しぐれけり
柚子の黄や朝日一身独り占め 12_千葉 谷口正人
冬茜別れし後は足早く 13_東京 岡恵
懐かしき十一月の黄蝶かな 13_東京 岡恵
冷まじや熊が生き骨齧る音 13_東京 神谷宣行
今朝冬の空を翔けるや銀の馬 13_東京 神谷宣行
新走り六腑に鶴の舞降りぬ 13_東京 神谷宣行
群青の甲斐の山より寒卵 13_東京 長井亜紀
すき焼きは芹ふるさとは雪のころ 13_東京 長井亜紀
・すきやきに
老いの日々猫と似たりし秋日和 13_東京 杜野廉司
・似てゐる、「し」は変。文法ではなく感覚でわかるように。
冬晴や光をまとふ樟大樹 13_東京 楠原正光
のんびりとがらくた市の文化の日 13_東京 楠原正光
一輪車枯れ葉の山に突つこめり 13_東京 櫻井滋
気にそまぬ事のあれこれ懐手 14_神奈川 金澤道子
散り敷いて山茶花たるを全ふす 14_神奈川 金澤道子
・う
ふるさとは落葉をたたく雨ばかり 14_神奈川 松井恭子
・ばかり、ダメ。
とろとろと夕日を煮詰め熟柿ジャム 14_神奈川 松井恭子
・を煮詰め、ダメ。
耳遠き人に道問ふ小春かな 14_神奈川 中丸佳音
冬桜一つ一つの花たふと 14_神奈川 中丸佳音
・たふと、不要。
旅に出る刻には止みぬ朝時雨 14_神奈川 那珂侑子
合の手にエイと餅伸ぶ命伸ぶ 17_石川 花井淳
湯の中の繭ころころと冬ざるる 17_石川 花井淳
・この下五も再検討。
手袋にペンだこ一つ納めをり 17_石川 岩本展乎
・納める?
夕刊はバイクで配る日短し 17_石川 岩本展乎
着水の水に弾かれ鴨来る 17_石川 岩本展乎
水仙は渡り来し花絹の道 19_山梨 小泉雅恵
・ごちゃごちゃ。五七五のリズムの奴隷。
天が下抜く大根の白さかな 20_長野 金田伸一
黄葉の散り尽くしたる虚空かな 20_長野 大島一馬
秋晴れ過多至福の時間死から生 20_長野 柚木紀子
うれしさよ晩秋深夜届くクロネコ 20_長野 柚木紀子
チケツトをしをりに使ふ小春かな 21_岐阜 夏井通江
茨線の獣の毛鳥の毛秋野原 21_岐阜 古田之子
波立てて凩わたる余呉の湖 21_岐阜 辻雅宏
人垣へゴリラ尻掻く小春かな 21_岐阜 辻雅宏
ビル影がビルに掛かりて冬に入る 23_愛知 臼杵政治
・ビルの影
ころころと向いの家へゆく落葉 24_三重 乾薫
掃き寄せる落葉を土に戻しけり 24_三重 乾薫
木犀の返り花なりかそけくも 26_京都 佐々木まき
小春空子に手を引かれ行く散歩 26_京都 氷室茉胡
煮て焼いて晒して三品芋日和 27_大阪 安藤久美
葛湯練るしだいに花のあきらかに 27_大阪 澤田美那子
しぐるるや借る軒も無きビルの街 27_大阪 澤田美那子
木犀も終りに近き香なりけり 27_大阪 齊藤遼風
・なりけり、が死んでいる。
上賀茂に椎の実落つる時空あり 28_兵庫 加藤百合子
もみじ葉は舞ひ散るための形かな 28_兵庫 加藤百合子
小鳥くる十方世界水のこゑ 28_兵庫 魚返みりん
綿虫はいずこに行かむ日暮れ道 28_兵庫 福田光博
湯豆腐や崩れゆくとき美しく 29_奈良 喜田りえこ
・珍しく感傷。
泥団子ひとつ一つに敷く落葉 29_奈良 田原春
三輪山の寝息の音か酒醸す 33_岡山 齋藤嘉子
通草蔓細いの太いの綰ね売る 33_岡山 齋藤嘉子
暖冬やなりをひそめてゐる病魔 37_香川 丸亀葉七子
己が根をあたためてゐる落葉かな 37_香川 曽根崇
弟の骨となる間や秋時雨 37_香川 曽根崇
銀杏の実拾ふ背中にまた一つ 42_長崎 川辺酸模
鮭の川命が命食らはんと 44_大分 山本桃潤
・食ひけり、細かなことに迷わない。
立冬の心定まる河口かな 44_大分 竹中南行
衿立てて焼き栗の列シャンゼリゼ 50_フランス 廣瀬玲子
匂ひたつ枯葉や巴里の日の骸 50_フランス 廣瀬玲子
ネット投句(2021年10月31日)選句と選評
【特選】
宇宙から帰る人あり十三夜 13_東京 森徳典
すさまじやすべて暗渠に吸ひこまれ 14_神奈川 金澤道子
かはいがるやうに無花果むきはじむ 17_石川 松川まさみ
生身魂妻に消えざる恋ごころ 20_長野 金田伸一
ガーゼ彩々わが病室のちんちろりん 20_長野 柚木紀子
膝から肘かさぶた七枚秋夕暮 20_長野 柚木紀子
身のうちの夢を怖るる長夜かな 21_岐阜 三好政子
桐一葉滑空をして着地せり 28_兵庫 髙見正樹
よく響く空つぽの胸木の実雨 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
天仰ぐ車道に屈した鹿の貌 01_北海道 村田鈴音
分葬の二文字鮮し紅葉寺 03_岩手 川村杳平
くろぐろと秋刀魚のまなこ潮のいろ 04_宮城 長谷川冬虹
図書室の窓から見ゆる秋の虹 08_茨城 袖山富美江
轟沈の海を遙かに秋冷碑 08_茨城 馬場小零
よべ編みし父のほまれの籾筵 11_埼玉 園田靖彦
何も無き畑にキラキラ鳥脅し 11_埼玉 藤倉桂
ぼろおんと法螺貝響く夜長かな 12_千葉 菊地原弘美
記念樹と齢かさねて松手入れ 12_千葉 若土裕子
コロナ禍の見舞ひかなはぬ林檎かな 12_千葉 若土裕子
冬近し黒き血潮の隅田川 13_東京 岡田定
秋夕焼恐竜の影地平まで 13_東京 岡田定
月はひとつ羊羹には栗五六粒 13_東京 長井亜紀
初霜や友と通ひし通学路 13_東京 楠原正光
立冬の背筋を伸ばし一歩かな 13_東京 楠原正光
夫好む大馬鈴薯のオーブン焼き 13_東京 堀越としの
団栗の落ちて転がる夜の屋根 14_神奈川 伊藤靖子
小春日やあの人かの人をりし日々 14_神奈川 越智淳子
干柿は天の恵みの甘さかな 14_神奈川 越智淳子
先客は野良の老猫日向ぼこ 14_神奈川 遠藤初惠
毬落ちてをり熊棚の新しく 14_神奈川 金澤道子
鶏頭ややうやく決まる帰郷の日 14_神奈川 松井恭子
芋煮えて平々凡々日が暮れる 14_神奈川 水篠けいこ
島猫となりし野良猫秋うらら 14_神奈川 中丸佳音
合掌し即身仏に冬の蝿 14_神奈川 湯浅菊子
富士山をそばに一日星月夜 14_神奈川 那珂侑子
身に入むやむかし学童疎開寺 14_神奈川 片山ひろし
神主の父いそいそと七五三 15_新潟 安藤文
すさまじき顔ぞろぞろと選挙戦 15_新潟 安藤文
石榴三つ描きて食ふてあと酒に 15_新潟 高橋慧
零余子と書けばぱらぱらとこぼるるよ 16_富山 酒井きよみ
がんもどきふつくら炊けて小春かな 17_石川 花井淳
秋風や一腑除きし身のかるさ 17_石川 松川まさみ
朝寒や同床猫の大あくび 19_山梨 小泉雅恵
老いてこそ心耳たしかや秋の風 20_長野 金田伸一
仔山羊らのふうちん揺るる十三夜 20_長野 柚木紀子
あけびの実風よりもいではかなさよ 21_岐阜 夏井通江
松手入脚立二台に板渡し 21_岐阜 三好政子
身に入むや鬼籍に入る友つづき 21_岐阜 辻雅宏
間引菜も入れてジュ―スや朝の卓 21_岐阜 梅田恵美子
米こそが近江の宝新走り 23_愛知 臼杵政治
あばら家は終の栖ぞ障子貼る 23_愛知 青沼尾燈子
菊の香や馬齢重ねて恙なし 26_京都 佐々木まき
山蘆辞し夢の続きの紅葉狩 26_京都 氷室茉胡
蛇笏忌の榾かぐはしく爆ぜにけり 27_大阪 安藤久美
余生などと安んじをれば鎌鼬 27_大阪 澤田美那子
足元の草ぐさまでも紅葉して 28_兵庫 天野ミチ
袋には従弟の写真今年米 28_兵庫 藤岡美惠子
綱を張る犬の勢い朝寒し 28_兵庫 髙見正樹
どの子にも青空あるよ七五三 29_奈良 喜田りえこ
思ひ出は小春日和に似たるかな 33_岡山 齋藤嘉子
縁側に昼餉揃へん小六月 33_岡山 齋藤嘉子
塩を焚くあかり洩れをり十三夜 37_香川 曽根崇
縄張の中に我が家か鵙高音 37_香川 曽根崇
シスターも鎌を研ぐなり豊の秋 42_長崎 ももたなおよ
たわいなくけふはきのふへ蚯蚓鳴く 44_大分 竹中南行
焼き栗やモンマルトルの丘へ雨 50_フランス 廣瀬玲子
ネット投句(2021年10月15日)選句と選評
【特選】
亀壺の酢の香の深む十三夜 12_千葉 池田祥子
耳たしかペンまたたしか夜の長き 20_長野 金田伸一
おそろしき水音たてて崩れ簗 21_岐阜 梅田恵美子
ゆく秋の空に香るや塔ふたつ 27_大阪 澤田美那子
東塔と西塔の間栗を喰ふ 27_大阪 澤田美那子
あお空の底に大きな秋がゐる 28_兵庫 加藤百合子
この世ともあの世ともなく能登時雨 28_兵庫 魚返みりん
ミルフィーユパリの落葉の音立てて 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
仕付け取り姿見に立つ秋夜かな 01_北海道 村田鈴音
栗ご飯喧嘩の事を忘れをり 01_北海道 村田鈴音
漁終えし船つぎつぎと秋夕焼 01_北海道 柳一斉
秋の雲こころ遠くへ旅したる 01_北海道 柳一斉
白樺を渡る風音秋深し 01_北海道 柳一斉
三代の南部杜氏や新走 04_宮城 長谷川冬虹
勇ましき話となりぬ今年酒 05_秋田 佐藤一郎
あれも嫌これでもないと秋の蝶 07_福島 渡辺遊太
秋の蝶今際の花に呼ばれたる 07_福島 渡辺遊太
鵙啼くや古戦場てふ村外れ 08_茨城 馬場小零
仕入れ値の五倍の値段あけび売る 11_埼玉 園田靖彦
コロナ禍の弛みし後の夜長かな 11_埼玉 上田雅子
跳ね返るオール揃ふや天高く 12_千葉 麻生十三
顔も剃らずにコロナ禍二年秋の風 13_東京 岡恵
蓑虫の蓑入るころか火を熾す 13_東京 神谷宣行
秋風よ支払い終えし屋根修理 13_東京 長尾貴代
芋虫や派手な模様の伸び縮み 13_東京 楠原正光
新米を賜りて聴く故郷(くに)話 13_東京 畠山奈於
秋茄子のいろほれぼれと掌に 14_神奈川 三浦イシ子
わが齢不知火見ゆるかも知れず 14_神奈川 中丸佳音
これはまあ豪華な虹よ台風一過 14_神奈川 湯浅菊子
みちのくの虫食ひ木像そぞろ寒 14_神奈川 湯浅菊子
抱へるに程よきくぼみ冬瓜は 14_神奈川 那珂侑子
新米の釜の火かげん薪加減 14_神奈川 片山ひろし
月の窓まだまだ慣れぬテレワーク 15_新潟 安藤文
コロナ禍のわけてもうまき今年米 15_新潟 安藤文
恐ろしや裂けし石榴の奥の闇 15_新潟 高橋慧
手にのせてこの世映さんけふの月 16_富山 酒井きよみ
狂言師秋を深めて去りにけり 16_富山 酒井きよみ
爽やかや大谷翔平一周す 17_石川 花井淳
梅室忌修す句会に黒羊羹 17_石川 花井淳
呼び捨ての名前飛び交ふ木の実独楽 17_石川 岩本展乎
長き夜を人なつかしき病臥かな 17_石川 松川まさみ
心の目開けて宇宙を詠まん秋 20_長野 金田伸一
深山に団栗の降る一夜あり 20_長野 大島一馬
ひとり子吾か白さるすべりにいとこはとこ 20_長野 柚木紀子
美智子麻里郁子羨(とも)しも10月生まれ 20_長野 柚木紀子
スーパーは小さな楽園芋の山 21_岐阜 夏井通江
すれちがふだけの秋蝶遠ざかる 21_岐阜 夏井通江
数日を籾焼く匂ひ峡の底 21_岐阜 古田之子
頬杖に押し寄せて来る秋思かな 21_岐阜 辻雅宏
硯山色づく頃や玩亭忌 21_岐阜 梅田恵美子
このビルに灯り一つの夜食かな 23_愛知 稲垣雄二
囮籠開けても逃げぬ囮かな 23_愛知 臼杵政治
藤袴花屋の花に埋もれて 23_愛知 臼杵政治
桃ひとつ矯めつ眇めつ妻買ひぬ 23_愛知 青沼尾燈子
五億年経て還り来し龍淵に 23_愛知 青沼尾燈子
孵卵器にかすかな鳴き声朝寒 26_京都 吉田千恵子
牛膝煙くすぶる一斗缶 26_京都 吉田千恵子
焼すぎず焼き不足なく焼く秋刀魚 26_京都 佐々木まき
われもまた藻に鳴く虫となりたき日 26_京都 氷室茉胡
月光に抱かれ柩自宅へと 26_京都 氷室茉胡
秋篠の御堂は木の実降るころか 27_大阪 安藤久美
秋晴や食料支援受くる列 27_大阪 木下洋子
貫入や色事もなき九月尽 27_大阪 齊藤遼風
天空の雲の島なみ良夜かな 28_兵庫 加藤百合子
をちこちに夕轟や大紅葉 28_兵庫 魚返みりん
柿もまた小さく切りて食す今 28_兵庫 天野ミチ
何色に今日を染めよう小鳥来る 28_兵庫 藤岡美恵子
長月や一途な君へ祝婚歌 29_奈良 喜田りえこ
身に沁むや比翼連理の塚の苔 29_奈良 喜田りえこ
笹漬の鯛のうすべに玩亭忌 30_和歌山 玉置陽子
玩亭忌再翻訳で読む源氏 30_和歌山 玉置陽子
桜守けふは葛根を掘るといふ 33_岡山 齋藤嘉子
日の神のゆつくり歩く刈田かな 33_岡山 齋藤嘉子
長生きの秘訣恋せよ秋の薔薇 37_香川 丸亀葉七子
柿の棹霧の山里暮れいそぐ 37_香川 曽根崇
登高や雲の上なほ雲流れ 37_香川 曽根崇
山川の匂ひ忘るな秋燕 42_長崎 川辺酸模
蛇笏忌や言葉に重さありにける 44_大分 山本恒雄
渾身の一句今こそ螇蚸跳ぶ 44_大分 竹中南行
ボルドーの収穫終へし城へ月 50_フランス 廣瀬玲子
ネット投句スクーリングズーム軽井沢紅葉句会 11月3日
長谷川櫂 選
一座目
【特選】
紅葉晴れ黒犀のごと浅間山 稲垣雄二
銀杏落葉吹きだまる夜のコンビニ ももたなおよ
豆稲架がチリチリ音す日和かな 齋藤嘉子
落葉踏む音やはらかく展墓かな 澤田美那子
こぼしては這ひつくばつて捜す零余子 齋藤嘉子
積年の恥はいろいろ障子張る 片山ひろし
【入選】
桜紅葉抜けて始発のバスが来る ももたなおよ
秋の雲寂しき池に浮かびけり 上田雅子
行く秋や浅間嶺走る雲の影 川辺酸模
柿紅葉とりどりの色一枚に 越智淳子
静かなる妻との夕や落葉焚き 川辺酸模
蛸焼を返す手さばき冬に入る 片山ひろし
人去りて避暑地の秋の深みゆく 上田雅子
紅葉狩明日はとどめの川下り 園田靖彦
天地の深閑として紅葉晴 北側松太
紅葉より黄葉多し軽井沢 越智淳子
日毎散るわびしき眺め梅紅葉 佐々木まき
二座目(席題:秋惜しむ、文化の日)
【特選】
なつかしき岡野先生文化の日 齋藤嘉子
乙三の詩歌寿ぐ文化の日 喜田りえこ
根付かざる松を火にくべ秋惜しむ 北側松太
秋惜しみ浅間山行く二人かな 川辺酸模
畑の草集めて焼いて秋惜しむ 齋藤嘉子
【入選】
ネツト句会指導きびしや文化の日 川辺酸模
ふかふかの山道歩き秋惜しむ 梅田恵美子
もぎたての柿サラダにす秋惜しみ 鈴木榮子
奥能登の白き灯台秋惜しむ 花井淳
秋惜しむ旬の値段の旬の物 加藤百合子
少しずつ花土返して秋惜しむ 小泉雅恵
植ゑかへの庭堀りおこす文化の日 梅田恵美子
日溜まりの匂ひの猫や秋惜しむ 高橋 慧
文化の日辞世の句なき一茶論 片山ひろし
文化の日長嶋茂雄なほ闘ふ 臼杵政治
落花生莚に干すや文化の日 稲垣雄二
裏山の木々と話して秋惜しむ 小泉雅恵
嘴の実のあかあかと秋惜しむ 玉置陽子
ネット投句(2021年9月30日)選句と選評
・「老人の日とて牛肉焼いてみる」、この句はびくびくしながら詠んでいるところがダメ。推敲してください。
【特選】
引退はわれには在らず新酒汲む 04_宮城 長谷川冬虹
朝顔や入院のまま帰らざる 07_福島 渡辺遊太
山と積む根の無き言葉そぞろ寒 17_石川 松川まさみ
五臓六腑そろふ身照らせ月今宵 17_石川 松川まさみ
・照らす
五十歩ほど歩いて休む月の道 21_岐阜 古田之子
老人の日とて牛肉焼いてみる 26_京都 佐々木まき
母の忌の一日を妻と良夜かな 27_大阪 齊藤遼風
怒る母秋の夕焼より真つ赤 37_香川 丸亀葉七子
露の間と言ふと謂へども斯く老いき 44_大分 山本桃潤
曼珠沙華咲いた形で死んでゆく 46_鹿児島 大西朝子
【入選】
婆の声香ばしきかな玉蜀黍 01_北海道 高橋真樹子
虫の音や机の上の予診票 01_北海道 村田鈴音
をしみなく咲き散らかして芙蓉かな 01_北海道 芳賀匙子
月今宵地球の裏よりメール来る 01_北海道 柳一斉
栗入りの松茸飯の香る卓 03_岩手 川村杳平
五臓六腑たちまち駆くる新走 04_宮城 長谷川冬虹
空つぽの墓石の群や曼珠沙華 04_宮城 長谷川冬虹
青空にぶら下がりたる木通かな 05_秋田 佐藤一郎
梨剥くやつくづく弱音見せぬ人 07_福島 渡辺遊太
表札に名が加わりて小鳥来る 08_茨城 袖山富美江
はなやかに空の半分秋夕焼け 11_埼玉 上田雅子
葡萄の葉ぶどうの色に枯れにけり 12_千葉 若土裕子
自然薯のふるさと山の深からん 12_千葉 若土裕子
幼より届く文読む良夜かな 12_千葉 池田祥子
秋晴や大きく返すぬかの床 13_東京 小野早苗
漂泊の種のこぼれて草の花 13_東京 神谷宣行
からつぽの鳥籠かるし後の月 13_東京 長井亜紀
かぐはしき稲架のむかふは国上山 13_東京 長井亜紀
誕生日庭いっぱいの水引き草 13_東京 長尾貴代
爽やかや朝の日課のごみ出しも 13_東京 楠原正光
身に沁むや義母の相続20人 13_東京 櫻井滋
団栗を踏みつつ歩む山の道 14_神奈川 伊藤靖子
旅の途に見知らぬ村の運動会 14_神奈川 越智淳子
菜園の爺に出くはす穴まどひ 14_神奈川 松井恭子
竜舌蘭の棘に拘るオニヤンマ 14_神奈川 水篠けいこ
男の子泣かせし記憶曼殊沙華 14_神奈川 中丸佳音
日の辷る蘂かく長し曼殊沙華 14_神奈川 中丸佳音
樽椅子や臓腑に沁みる新走り 14_神奈川 土屋春樹
小舟より竿で寄せたる菱を取る 14_神奈川 片山ひろし
稲すずめ転び合ひつつ稲の中 15_新潟 高橋慧
沼の辺の月にぬぎたる蛇の衣 16_富山 酒井きよみ
新蕎麦や主の心香り立つ 17_石川 密田妖子
星月夜壊れゆく国ガンダーラ 19_山梨 小泉雅恵
ふるさとや楢枯れ渡る哭きながら 19_山梨 小泉雅恵
秋空の高きがかすむ病かな 20_長野 金田伸一
秋の七草ひとつたりない満月光 20_長野 柚木紀子
今日祝し明け方の虫鳴きにけり 21_岐阜 夏井通江
暗がりにこほろぎ居りて犬昼寝 21_岐阜 古田之子
布巾干す軒端明るし小望月 21_岐阜 三好政子
隆起せし大岸壁や秋高し 21_岐阜 三好政子
煙茸つつけばまこともくもくと 21_岐阜 梅田恵美子
残業の隣りの窓も月の中 23_愛知 稲垣雄二
鯊釣りや左右の人に会釈して 23_愛知 臼杵政治
お使ひの鍋にゆうらり新豆腐 23_愛知 臼杵政治
八人を育てし乳首吾亦紅 23_愛知 宗石みずえ
デイの着替へ一枚増やし秋時雨 26_京都 吉田千恵子
夜食用のラーメン誰に食はれしか 26_京都 氷室茉胡
秋耕や生涯過ごす峡の村 27_大阪 木下洋子
再会を果たせぬままに柿の秋 27_大阪 木下洋子
夜半の月シャイな笑顔の句友逝く 27_大阪 木下洋子
テレワークは淋しくないか鰯雲 27_大阪 澤田美那子
椿の実ぱちんと爆ぜて三等分 27_大阪 澤田美那子
帰るさの出迎へ嬉し草ひばり 28_兵庫 加藤百合子
稲架日和にほひ深むる淡路島 28_兵庫 魚返みりん
海に向く机にひとつラ・フランス 28_兵庫 千堂富子
秋晴れや金券売りにショップまで 28_兵庫 天野ミチ
三男の先導秋の沢渡り 29_奈良 田原春
満月が雲を出ました嫁の声 29_奈良 田原春
朝刊に露の手ざはり蛇笏の忌 30_和歌山 玉置陽子
しなやかな骨となりゆく芒かな 30_和歌山 玉置陽子
紅つけず過ぎしふたとせ秋に入る 34_広島 鈴木榮子
仕舞湯に聞く虫の声ことさらに 34_広島 鈴木榮子
蚯蚓鳴く闇にふたつの眼あり 42_長崎 ももたなおよ
資本主義故郷荒らす真葛原 44_大分 山本桃潤
九州を統ぶる火の山露千里 44_大分 竹中南行
永遠の月の明りにわれらかな 44_大分 竹中南行
夜半の秋無能無才になれぬかな 44_大分 竹中南行
とんぼ飛ぶ巴里の老舗のショコラティエ 50_フランス 廣瀬玲子
ネット投句(2021年9月15日)選句と選評
・言葉ははっきりと使ってください。わかってくれるだろうでは、わからない。
・ただし説明はダメ。
【特選】
カナクギの便りもうれし栗羊羹 04_宮城 長谷川冬虹
八月の祈りの初め広島忌 11_埼玉 上田雅子
両の目に病を得たり秋はじめ 20_長野 金田伸一
身に沁むやあらためて聞く子の齢 27_大阪 澤田美那子
凄まじきもののひとつに孫七人 27_大阪 齊藤遼風
颱風の大きく強くのろのろと 28_兵庫 天野ミチ
妻いまやはらからとなり衣被 44_大分 竹中南行
【入選】
飛沫上げ鮭の解禁鱗舞う 01_北海道 村田鈴音
灯台下はまなすの実の赤々と 01_北海道 村田鈴音
もらひ受く根ごと土ごとをみなへし 01_北海道 芳賀匙子
今朝の秋珈琲の香の戻りくる 01_北海道 柳一斉
妻つくる秋の彼岸の豆ごはん 03_岩手 川村杳平
仲直り妻へ麦茶と水羊羹 04_宮城 長谷川冬虹
亡骸に紅ひく人や酔芙蓉 05_秋田 佐藤一郎
・人に焦点を当てないように。
無花果の幼き青やみづみづし 07_福島 渡辺遊太
朝顔や一番乗りの野球場 08_茨城 袖山富美江
栗ようかん栗のあたりを包丁す 11_埼玉 上田雅子
・栗のあたりへ
グロリオーサ萎るる午後や敗戦日 11_埼玉 上田雅子
ハンカチにいろいろ秋の零れもの 12_千葉 若土裕子
すずかけの樹皮はがしゆく秋の風 12_千葉 若土裕子
忙しなき今日の終わりや虫の声 12_千葉 谷口正人
妻恋の露の柩となられけり 12_千葉 池田祥子
・露の棺の人となる?
古書店の棚に差し込む秋陽かな 12_千葉 麻生十三
榧の実は渋し煙の匂ひして 13_東京 岡恵
爪の上にのせてもらひぬ夜光虫 13_東京 岡恵
秋の蚊よ生き永らへて何とする 13_東京 森徳典
猫いつか虹を渡りて猫のくに 13_東京 長井亜紀
新米や夜も操業精米所 13_東京 楠原正光
先駆けの鬼が飛び来る秋祭 13_東京 楠原正光
書を閉じて穏やかならぬ秋思かな 13_東京 堀越としの
つゆ草の二つ三つ咲く朝の道 14_神奈川 伊藤靖子
母が来て一緒に買った柿を買ふ 14_神奈川 伊藤靖子
身のかくも厚き秋鯖昆布締め 14_神奈川 越智淳子
精進湖にひがな遊べり夕蜻蛉 14_神奈川 越智淳子
山裾の陽だまりぬくし吾亦紅 14_神奈川 遠藤初惠
夕月の色なり白の曼珠沙華 14_神奈川 金澤道子
竹春や日暮るるころに晴れてきし 14_神奈川 金澤道子
・竹春ではダメ。数多くの季語の中からこの季語を選ぶところがダメ。
月待つやあふるる前のさみしさと 14_神奈川 三玉一郎
・言葉が屈折している。
渋柿の一本もなき柿の里 14_神奈川 松井恭子
見えぬ手が遊んでをりぬ曼珠沙華 14_神奈川 松井恭子
秋雨やワクチン接種長い列 14_神奈川 水篠けいこ
秋耕の老いやだんだん雄弁に 14_神奈川 中丸佳音
葡萄狩り房の間にまに富士が見え 14_神奈川 土屋春樹
姪からの白桃うれし敬老日 14_神奈川 那珂侑子
爽かや佐渡の空ゆく朱鷺の群れ 15_新潟 安藤文
往診は軽四で行く花芒 17_石川 岩本展乎
青空と沖の白波初さんま 17_石川 松川まさみ
ルーペにて季語の本意をさぐる秋 20_長野 金田伸一
目つむりて心遊ばす星月夜 20_長野 金田伸一
金色の蜂の屍白露かな 20_長野 大島一馬
抽象の螢かも夜空はみだし 20_長野 柚木紀子
痛み止め一服金色鷽替 20_長野 柚木紀子
鷹渡る天の流れの高きこと 21_岐阜 古田之子
釣り場まで抜ける近道あかのまま 21_岐阜 辻雅宏
鬼の栖む山の麓や女郎花 21_岐阜 梅田恵美子
鯊を釣る戦艦沈む海の端 23_愛知 稲垣雄二
爽やかや二度目の接種今日済ませ 23_愛知 臼杵政治
ごろごろとマチスの裸婦や大瓢 23_愛知 臼杵政治
草の実も畳まれ二年旅衣 23_愛知 宗石みずえ
隻眼の犬と吾あり秋の風 23_愛知 青沼尾燈子
世迷ひ言は聞き流すだけちちろ虫 26_京都 吉田千恵子
寡婦長き母の一生雁渡し 26_京都 氷室茉胡
桔梗やめりはり淡き日々のなか 27_大阪 高角みつこ
早稲の香やこの道行けば句会場 27_大阪 木下洋子
水色のことになつかし草の花 27_大阪 澤田美那子
帰らねばならぬ燕か相寄りて 27_大阪 澤田美那子
葛城のとある神社の茅の輪かな 27_大阪 齊藤遼風
一生を善意に生きて稲の花 27_大阪 齊藤遼風
ペン胼胝のかすかな痛み秋の夜 28_兵庫 千堂富子
秋の蚊のいつぴき来たり我が膝に 28_兵庫 天野ミチ
叩かずに蔓で判ると西瓜かな 28_兵庫 藤岡美惠子
・叩かずとも、次のと、不要。
人恋坂行きつ戻りつ秋の暮 28_兵庫 福田光博
イモリ出で追えどどこかへ秋の宵 29_奈良 高坂泰子
・ヤモリだろう。
身に入むや両の義足の大ジャンプ 29_奈良 田原春
・見に入む、では陰々滅々。
カラカラに乾くタオルよ秋の風 34_広島 鈴木榮子
尻に根が生える婆さま芋茎?く 37_香川 丸亀葉七子
・下五は?
浜木綿の実のふつくらと岬道 37_香川 曽根崇
セントラルパークの秋を歩みし日 44_大分 山本桃潤
木枕の雪や冬瓜横たはり 44_大分 竹中南行
押し寄せるクラクションの音巴里九月 50_フランス 廣瀬玲子
ネット投句(2021年8月31日)選句と選評
【特選】
なに目指し歩みし道や敗戦忌 07_福島 渡辺遊太
原爆忌浜に木の骨貝の骨 07_福島 渡辺遊太
救急車行きどころなき秋の暮 13_東京 櫻井滋
・なし
へうたんに酌みても尽きぬ酒やある 16_富山 酒井きよみ
鰯雲この長身を横たへん 17_石川 花井淳
落ち蝉の残る命を塵取りへ 17_石川 密田妖子
・に
そそくさと踊る阿呆になりに行く 26_京都 佐々木まき
蘆刈の姿のままに老ゆるかな 27_大阪 澤田美那子
・老いし
ゆつくりとこの世眺めむ秋簾 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
生身魂家震はするうがい声 50_フランス 廣瀬玲子
何の服も似合はぬ合はぬ残暑かな 01_北海道 芳賀匙子
炎帝やなほ濁流の最上川 04_宮城 長谷川冬虹
古道てふ径見え隠れ萩の花 08_茨城 馬場小零
大空の座標を探す蜻蛉かな 08_茨城 馬場小零
竹伐って父母の花筒取り替へん 11_埼玉 園田靖彦
腐れ縁すぱりと断ちて新生姜 11_埼玉 園田靖彦
焦げるまで網に転がし茄子かな 11_埼玉 上田雅子
看取られぬ死者弔はん星月夜 11_埼玉 上田雅子
新涼や滴るほどに化粧水 11_埼玉 藤倉桂
仕舞湯やまだ拙くて虫の声 11_埼玉 藤倉桂
七日ずつ薬揃えて夏果つる 12_千葉 芦野アキミ
一人膳かすかに祭り囃子かな 12_千葉 芦野アキミ
大風の揺さぶる青き蜜柑山 12_千葉 若土裕子
新豆腐食の細りし母に先ず 12_千葉 若土裕子
大家族支へし母の南瓜かな 12_千葉 池田祥子
秋めくと頷き合へる鯉泥鰌 12_千葉 池田祥子
全体重押しつけて切る大南瓜 13_東京 岡田栄美
盆過ぎて富士が一気に迫りくる 13_東京 神谷宣行
十のうち九本は曲がり胡瓜かな 13_東京 長井亜紀
誘蛾灯死ぬとも知りて落ちる恋 13_東京 長井亜紀
放課後のドッジボールやうろこ雲 13_東京 楠原正光
移住せし夫婦は若し新豆腐 14_神奈川 越智淳子
手をつけぬ絣いつぴき秋きざす 14_神奈川 金澤道子
満身にひしとまつはる残暑かな 14_神奈川 三浦イシ子
水に濡れ光に濡れて新豆腐 14_神奈川 三玉一郎
羽拾ふ九月の空のいづくより 14_神奈川 松井恭子
一木を覆う葛の葉葛の蔓 14_神奈川 水篠けいこ
源流に片手を浸し夏惜しむ 14_神奈川 中丸佳音
瑠璃蜥蜴褒むれば墓の裏側へ 14_神奈川 中丸佳音
一匹となりし目高の残暑かな 14_神奈川 那珂侑子
広告のはや節料理秋暑し 14_神奈川 那珂侑子
つぶやきが飛び交つてゐる夜長かな 15_新潟 安藤文
揺れながら子蜘蛛を狙ふ子かまきり 15_新潟 高橋慧
足裏を崩るる砂も秋の海 15_新潟 高橋慧
末成りと思つてゐしが大瓢 16_富山 酒井きよみ
白山から芒づたひに下りけり 17_石川 花井淳
それぞれに笑顔を向ける木の実かな 17_石川 花井淳
目のかすむ病を得たり秋の空 20_長野 金田伸一
かすむ目にパラリンピック熱き秋 20_長野 金田伸一
蟋蟀に大地確と共鳴す 20_長野 大島一馬
秋桜は秋桜然と戦ぎおり 20_長野 大島一馬
白昼夢たれコロナも星降る白夜とか 20_長野 柚木紀子
向日葵や悪の扉を開けし者 21_岐阜 古田之子
迢空の小暗き道や仙翁花(恵那市上矢作町) 21_岐阜 三好政子
朝顔の鉢植ゑ膝に車椅子 21_岐阜 辻雅宏
三十のバケツ田並ぶ豊の秋 23_愛知 稲垣雄二
鯊釣や隣の浮きをまた引きて 23_愛知 臼杵政治
つましくも己が内なる玉祭り 23_愛知 青沼尾燈子
大丈夫といふ無責任藪からし 26_京都 吉田千恵子
藤寝椅子死にゆくときはこの上で 26_京都 佐々木まき
爽やかや草木の名札ごとに和歌 26_京都 氷室茉胡
晩年は一日長し酔芙蓉 26_京都 氷室茉胡
恐竜の孵化ゆつくりと熱帯夜 27_大阪 安藤久美
冷や奴今日で納めとお思いしが 27_大阪 高坂泰子
定年後の長きに憂ふ晩夏かな 27_大阪 内山薫
ひときはに鮭なまぐさき残暑かな 27_大阪 内山薫
猛然と食うて太りて芋虫よ 27_大阪 澤田美那子
藍浴衣母の乳房のうすきこと 27_大阪 齊藤遼風
苦瓜の憤怒の種の熟したる 28_兵庫 加藤百合子
蜩や十秒ほどのそれつきり 28_兵庫 加藤百合子
うつし世の夜を明るく盆の月 28_兵庫 加藤百合子
星月夜兄の形見のオルゴール 28_兵庫 千堂富子
日が暮れて心底嬉しき残暑かな 28_兵庫 天野ミチ
弟に少し小さく瓜の馬 28_兵庫 藤岡美惠子
この大樹ひぐらしの木と名付けたり 28_兵庫 藤岡美惠子
祇園会の生ぬるき風京の風 28_兵庫 福田光博
盆踊り妻のまぎれて帰り来ず 29_奈良 喜田りえこ
テーブルの秋の二草朝ごはん 29_奈良 田原春
新涼やワルツのやうに踏むミシン 30_和歌山 玉置陽子
密やかな寝息香るや桃の箱 30_和歌山 玉置陽子
藺座蒲団ひとつ残りて法事果つ 34_広島 下田あつ子
苗木から育て酢橘の初成りぞ 37_香川 丸亀葉七子
ワクチンを打つも抽選秋暑し 42_長崎 ももたなおよ
敗戦日かつて眩しき民主主義 42_長崎 川辺酸模
敗戦日書棚に古ぶ堕落論 42_長崎 川辺酸模
敗戦日憲法前文今一度 42_長崎 川辺酸模
混沌のわれら何処へ秋の風 44_大分 竹中南行
ネット投句(2021年8月15日)選句と選評
・まず意味不明の句を作らないように。
・自分がわかれば人もわかるはず、というのが間違い。人はわかりません。
・わかるようにするためには「第三者の目」で読み直すこと。
【特選】
ばばさまの乗りこなしたり茄子の馬 13_東京 神谷宣行
メコン河の秋水萍の来ては去る 17_石川 花井淳
・二つの「の」不要。散文ではありません。
ひとつずつ木の実手にして別れけり 17_石川 岩本展乎
蝉声のなかひと筋の法蝉蝉 27_大阪 澤田美那子
西日照り命のかぎり女哭く 28_兵庫 魚返みりん
・大西日
敗戦日杭一本の墓標かな 29_奈良 喜田りえこ
・を墓標とす
【入選】
風鈴の音にしばらくペンを置き 01_北海道 柳一斉
打つ手なくコロナ第五波敗戦忌 04_宮城 長谷川冬虹
人去りて言葉残りぬ水中花 07_福島 渡辺遊太
箱庭や産湯の家と喪の家と 07_福島 渡辺遊太
真二つや無花果の裸身美しき 11_埼玉 上田雅子
飼育ケース並ぶや十個夏休み 11_埼玉 藤倉桂
新涼の翼を広げ浅間山 12_千葉 若土裕子
油蝉近く日ぐらし遠くから 12_千葉 谷口正人
敗戦忌母の遺品に引揚証 12_千葉 池田祥子
床下を風吹きぬけて夏の家 12_千葉 麻生十三
カナカナや独り住まひの門の内 13_東京 岡恵
秋めくや一品多し夕ごはん 13_東京 岡田栄美
道なりに花売りのロバ秋に入る 13_東京 岡田栄美
人の世の片蔭にゐて寿 13_東京 神谷宣行
秋刀魚食ふ母の必死やまだ生きる 13_東京 神谷宣行
レナウンのワンサカ娘秋が来た 13_東京 長井信彦
初蝉を聞くやたちまち蝉しぐれ 13_東京 杜野廉司
手花火や遊びし日々の友の顔 13_東京 楠原正光
三度巣に育つ子燕駅舎の壁 13_東京 畠山奈於
大くさめは隣家の主人今朝の秋 13_東京 堀越としの
月光に冷たく光る五つの輪 13_東京 櫻井滋
神様の退屈凌ぎ野分かな 13_東京 齊藤拓
降りつづく闇夜の底に鉦叩き 14_神奈川 伊藤靖子
夏休み熱いトマトにかぶりつき 14_神奈川 遠藤初惠
八月の道に小石の照り返し 14_神奈川 遠藤初惠
父の忌を修し風鈴外しけり 14_神奈川 金澤道子
静寂の記憶八月十五日 14_神奈川 三玉一郎
爆弾抱へ死ぬる訓練父の夏 14_神奈川 松井恭子
読みさしの本めくる風秋に入る 14_神奈川 松井恭子
閉幕のアンツーカーに秋の雨 14_神奈川 水篠けいこ
炎天や落し物して齢増ゆ 14_神奈川 中丸佳音
遠雷をうきうきと待つ心あり 14_神奈川 中丸佳音
飢えに飢えフスマを食くす敗戦忌 14_神奈川 土屋春樹
テレビ観戦終りて我の夏終る 14_神奈川 那珂侑子
荒れ川の簗に追ひ込む藻屑蟹 14_神奈川 片山ひろし
夕立にさつと濡れゆくランナーよ 15_新潟 安藤文
今年また一家揃はぬお盆かな 15_新潟 安藤文
深閑と泉の底に深き空 15_新潟 高橋慧
冷まじや障碍者てふ言葉あり 15_新潟 高橋慧
ひと雨の来て秋草となりにけり 17_石川 岩本展乎
ややありて音も終ひの遠花火 17_石川 松川まさみ
蜩の輪唱の波森は海 17_石川 密田妖子
西瓜食ふ昼は測らぬ血糖値 20_長野 金田伸一
どこをどう来るや枕辺の飛蝗 20_長野 金田伸一
終戦日音くぐもれる真空管 20_長野 大島一馬
蜻蛉のすいと行き来す今昔 20_長野 大島一馬
己すませば天高く不可思議 20_長野 柚木紀子
草原の香の香水をまとひ寝ん 21_岐阜 夏井通江
雨の輪や鯉の緋色の揺れてをり 21_岐阜 古田之子
点さねば父母まよふ門火かな 21_岐阜 梅田恵美子
お大師が背にへばりつく夏遍路 23_愛知 稲垣雄二
水撒けば小さな虹や原爆忌 23_愛知 稲垣雄二
路面電車の細きホーム炎天 26_京都 吉田千恵子
墓洗ふお山の水で何杯も 26_京都 佐々木まき
代筆とある友の文秋の声 26_京都 氷室茉胡
大文字の今宵の空のひろびろと 27_大阪 安藤久美
八月や木叢草叢疲れそむ 27_大阪 高坂泰子
賑やかに帰りくるらん魂迎 27_大阪 澤田美那子
大阪に飽きて京都や鱧の皮 27_大阪 齊藤遼風
夕べより嫉みの雨よ恋の星 28_兵庫 加藤百合子
初めての火傷に泣けり庭花火 28_兵庫 藤岡美惠子
砂浜に見ゆる人影良夜かな 28_兵庫 高見正樹
迎え火や軍靴の父の蚤しらみ 29_奈良 喜田りえこ
好物の芋と南瓜を菰筵 29_奈良 喜田りえこ
秋高しまだ純白のユニフォーム 33_岡山 齋藤嘉子
かじられて脛も細りぬあつぱつぱ 37_香川 丸亀葉七子
空蝉や隣りはすでに墓じまひ 42_長崎 ももたなおよ
義兄死すしばし泣かせよ秋の風 42_長崎 川辺酸模
今もなほいくさは止まづ敗戦日 44_大分 山本桃潤
俎の音に八月六日明く 44_大分 竹中南行
瓜の馬役目を終へて門の陰 46_鹿児島 大西朝子
夕凪の坂は蘭盆勝会かな 50_フランス 廣瀬玲子