ネット投句(2023年9月15日)選句と選評
【特選】 | ||
見つめるや見つめかへして蜻蛉かな | 北海道 | 柳一斉 |
秋の夜や聞こえぬ同士黙深む | 神奈川 | 遠藤初惠 |
暮れまどふ大島小島すすき原 | 神奈川 | 三浦イシ子 |
箸先になんと重たき栗ご飯 | 石川 | 清水薫 |
星月夜一つは宇宙ステーション | 石川 | 清水薫 |
湧く雲のどこにも影のなき暑さ | 長野 | 金田伸一 |
いちじくを二つに割つて花啜る | 愛知 | 稲垣雄二 |
捨案山子目玉の力まだ失せず | 大阪 | 安藤久美 |
扇置くあと一年は使ひたく | 大阪 | 澤田美那子 |
長々と残暑寝そべる大八洲 | 大阪 | 澤田美那子 |
毎日が命がけなり秋暑し | 兵庫 | 加藤百合子 |
指先を澄まして摘まむマスカット | 兵庫 | 吉安とも子 |
百歳のいのち遥かへ鰯雲 | 長崎 | ももたなおよ |
茄子食めば母の思ほゆ秋の暮 | 長崎 | 川辺酸模 |
ゆきゆきて秋の小島に曽良眠る | 長崎 | 川辺酸模 |
【入選】 | ||
最後かも母の口癖栗ご飯 | 北海道 | 村田鈴音 |
またひとつ神奈備消ゆる秋の風 | 北海道 | 村田鈴音 |
秋雨のあひまあひまのペンキ塗り | 北海道 | 芳賀匙子 |
歯にさはる種一つあり柿羊羹 | 北海道 | 芳賀匙子 |
ありありと浮かぶけしきや破蓮 | 北海道 | 芳賀匙子 |
秋風やどこまで言葉すれ違ふ | 北海道 | 柳一斉 |
風来るや風コスモスの彩となり | 北海道 | 柳一斉 |
炎熱と戦ひ止まぬ星にゐて | 青森 | 清水俊夫 |
手に触るる水滴やさし秋の朝 | 茨城 | 袖山富美江 |
八十の腰を伸ばさん衣被 | 埼玉 | 園田靖彦 |
かじり痕つつき痕ある木の実かな | 千葉 | 若土裕子 |
ゆく秋よ楽しからずや冬も亦 | 千葉 | 青山果楠 |
処理水の説明ないと蛸の声 | 千葉 | 谷口正人 |
衣被老いの容の日々新た | 千葉 | 池田祥子 |
長生きはなんの罪科石叩き | 千葉 | 麻生十三 |
老いぬれば蝙蝠傘の秋日傘 | 千葉 | 麻生十三 |
夏休み本気で怒る母ありき | 千葉 | 木地隆 |
今朝秋の小さき白雲列をなす | 東京 | 横山直典 |
秋の朝まだ生かされて目覚めけり | 東京 | 岡田定 |
百円で並ぶ句集やちちろ鳴く | 東京 | 神谷宣行 |
電話くる手術成功天高し | 東京 | 長尾貴代 |
爽やかやテニスコートの打球音 | 東京 | 楠原正光 |
出漁の船団の上鰯雲 | 東京 | 楠原正光 |
食細き夫に炒飯梨を添へ | 東京 | 畠山奈於 |
久しぶり上野の森は初紅葉 | 東京 | 堀越としの |
暗黒の宇宙の一点紅葉山 | 東京 | 櫻井滋 |
ずたずたの地球にすみて秋深し | 東京 | 櫻井滋 |
九条や死火山となる秋の風 | 東京 | 櫻井滋 |
敬老日必ず届くカステーラ | 神奈川 | 伊藤靖子 |
駅前に好きなカフェあり秋の雨 | 神奈川 | 伊藤靖子 |
枝豆や四方からの手ぶつからず | 神奈川 | 越智淳子 |
バリカンのごとコンバイン稲を刈る | 神奈川 | 越智淳子 |
群れはいづこただ一匹や秋茜 | 神奈川 | 遠藤初惠 |
秋薔薇やほのと色みせ風の中 | 神奈川 | 三浦イシ子 |
蟷螂の声まで枯れてしまひけり | 神奈川 | 三玉一郎 |
木の実降る文字が祈りでありしとき | 神奈川 | 松井恭子 |
トンネルの先のふるさと秋澄めり | 神奈川 | 松井恭子 |
北国をひとりの秋やがらんどう | 神奈川 | 植木彩由 |
ひぐらしの声のシャワーを全身に | 神奈川 | 中丸佳音 |
おもむろにつくつく法師名告り出づ | 神奈川 | 中丸佳音 |
白湯呑んで秋の一日の終りとす | 神奈川 | 中丸佳音 |
コスモスや丘いちめんを揺する風 | 神奈川 | 藤澤迪夫 |
九月来るたつぷりの湯に浸かるかな | 神奈川 | 那珂侑子 |
多摩川を越せば東京涼新た | 神奈川 | 那珂侑子 |
有の実の汁の甘さが歯にしみる | 神奈川 | 片山ひろし |
ぐんぐんと酒がすすむや秋茄子 | 新潟 | 安藤文 |
秋の夕ガラガラ声の烏かな | 新潟 | 高橋慧 |
雲一つ無きは退屈ゑのこ草 | 石川 | 松川まさみ |
白秋やさなきだに目のかすむ日々 | 長野 | 金田伸一 |
上達は急かず慌てず秋の空 | 長野 | 金田伸一 |
子別れの鴉か愚痴をこぼせしは | 長野 | 大島一馬 |
川の波九月の光返へしくる | 岐阜 | 古田之子 |
風騒ぐ風に向かひてとんぼ群る | 岐阜 | 古田之子 |
動かざる我の回りを蜻蛉群れ | 岐阜 | 三好政子 |
草も木も人も乾びる残暑かな | 岐阜 | 梅田恵美子 |
一雨に秋は来にけり草の花 | 静岡 | 湯浅菊子 |
あら煮付け目玉穿くる生身魂 | 静岡 | 湯浅菊子 |
桃をむく指の力をゼロにして | 愛知 | 稲垣雄二 |
野分晴れ母起こすごと花おこす | 愛知 | 稲垣雄二 |
躓きぬ植ゑし憶えは無き南瓜 | 愛知 | 宗石みずえ |
朝露を踏んで始まる句会かな | 愛知 | 青沼尾燈子 |
百円で句集買ひたり秋の風 | 京都 | 諏訪いほり |
諦念の晴れやかであれ大花野 | 京都 | 諏訪いほり |
今更に母の忠告唐辛子 | 京都 | 氷室茉胡 |
矍鑠と老いて田を守る案山子かな | 大阪 | 安藤久美 |
朝涼し水面漂ふ稲の葯 | 大阪 | 山中紅萼 |
曾良が行く海の細道秋つばめ | 大阪 | 木下洋子 |
夕暮れの風を待ちをり新生姜 | 大阪 | 澤田美那子 |
一塊の葡萄の重さ掌に取りぬ | 兵庫 | 吉安とも子 |
房ごとに袋かぶせて葡萄成る | 兵庫 | 天野ミチ |
晩婚の子につい口出すや新生姜 | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
我血でも命つなぎの糧かヒル | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
編笠や踊りの果ての団扇かな | 兵庫 | 福田光博 |
輝ける良夜の水面船溜まり | 兵庫 | 髙見正樹 |
何処より来て何処へと露の珠 | 奈良 | きだりえこ |
老犬と二階に上がる秋出水 | 奈良 | 中野美津子 |
秋草の思ひのままの売地かな | 奈良 | 中野美津子 |
秋暑し腹に掛けたるバスタオル | 岡山 | 北村和枝 |
新涼や綺麗に磨く革の靴 | 岡山 | 北村和枝 |
獣の顔ずたずたや荒鮭は | 岡山 | 齋藤嘉子 |
いくたびも岩に身を打ち鮭上る | 岡山 | 齋藤嘉子 |
露の世に子らを育み母白寿 | 長崎 | 川辺酸模 |
晩成と言はれ八十生身魂 | 大分 | 山本桃潤 |
無花果の葉陰色無き風通る | 大分 | 山本桃潤 |
借り物のこころなりけり虫の秋 | 大分 | 竹中南行 |