ネット投句(2023年8月31日)選句と選評
【特選】 | ||
今朝秋のものぐさ太郎起きて来ず | 東京 | 神谷宣行 |
みなとみらい烟るやうなる秋暑かな | 神奈川 | 中丸佳音 |
あさがほは炎の空とま向かへる | 岐阜 | 古田之子 |
老犬よ九月の風を見に出でん | 愛知 | 青沼尾燈子 |
釜ゆでの日本列島盆の月 | 兵庫 | 加藤百合子 |
【入選】 | ||
黙といふ答もありや遠花火 | 北海道 | 村田鈴音 |
七竈朝よりまさり色づきぬ | 北海道 | 村田鈴音 |
ばつくれて水と缶詰秋暑かな | 北海道 | 芳賀匙子 |
人類の我儘ゆるし今日の月 | 北海道 | 柳一斉 |
秋の夜や十年日記読み返し | 北海道 | 柳一斉 |
生身魂人新世を生きてゐる | 青森 | 清水俊夫 |
古りてゆく我も地球も八月尽 | 青森 | 清水俊夫 |
敗戦日どう生きてきた僕たちは | 宮城 | 長谷川冬虹 |
新涼や谿の音また山の音 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
故郷の土の匂ひや山の芋 | 茨城 | 袖山富美江 |
馬追ひの髭なびくたび闇深む | 埼玉 | 園田靖彦 |
真夜中の水槽の音鯰かな | 埼玉 | 佐藤森恵 |
五百メートル噴水あげよブラジリア | 埼玉 | 佐藤森恵 |
わたすげの道を歩くや小さき旅 | 埼玉 | 佐藤森恵 |
泥深く潜る泥鰌や原爆忌 | 千葉 | 若土裕子 |
打ち水をしていた暮らし遠くなり | 千葉 | 春藤かづ子 |
うちわ風百寿超へゐる母の床 | 千葉 | 青山果楠 |
かぶと虫我が童心を呼び覚ます | 千葉 | 谷口正人 |
ひと雨の後の静けさ秋の虹 | 千葉 | 池田祥子 |
野分来る野分来るぞと飯握る | 千葉 | 池田祥子 |
四畳半終の住処の溽暑かな | 千葉 | 麻生十三 |
願わくは水葬たらんや天の川 | 千葉 | 麻生十三 |
夏風邪や手足熱する棒のごと | 東京 | 小野早苗 |
両の手と足で登りし夏の山 | 東京 | 小野早苗 |
鰯雲処理水と言ひ恥づるなし | 東京 | 神谷宣行 |
受験生母の差し入れ夜食とる | 東京 | 楠原正光 |
老い猫の日がな居眠り藺座布団 | 東京 | 畠山奈於 |
幾たびも坊主にされて椎茂る | 東京 | 畠山奈於 |
九月来る草ぼうぼうの狭庭にも | 東京 | 櫻井滋 |
凌霄花リハビリの道また一歩 | 東京 | 櫻井滋 |
参道のよさこい踊りへ雨激し | 神奈川 | 伊藤靖子 |
朝か昼かしばし混乱の昼寝覚 | 神奈川 | 遠藤初惠 |
しんかんと叫喚が立つ原爆ドーム | 神奈川 | 三玉一郎 |
雲の峰原爆ドーム大きくす | 神奈川 | 三玉一郎 |
口角は下げたらあかん鰯雲 | 神奈川 | 植木彩由 |
雄物川の小さき渡し場荻の声 | 神奈川 | 植木彩由 |
壊れゆくこの星惜しみつくつくし | 神奈川 | 中丸佳音 |
木通採り秋の夕暮れ忘れけり | 神奈川 | 土屋春樹 |
人肌を恋ふには暑し秋夕べ | 神奈川 | 島敏 |
倖せの崩れやすきは桃に似て | 神奈川 | 島敏 |
終電を闇に見送る星月夜 | 神奈川 | 藤澤迪夫 |
暑いねと言うてまた言ふ秋の虫 | 神奈川 | 那珂侑子 |
長き夜の戦中語りまだ尽きず | 神奈川 | 片山ひろし |
迷ひ来て蟋蟀の鳴く我が家かな | 新潟 | 安藤文 |
秋暑しデモ隊のゆく池袋 | 新潟 | 安藤文 |
暁の風鈴の音に目覚めけり | 新潟 | 高橋慧 |
納め置く母の風鈴菓子箱に | 新潟 | 高橋慧 |
竜神に忘れられたかひでり村 | 富山 | 酒井きよみ |
秋暑し朝の能登路に機の音 | 石川 | 花井淳 |
腹くくる紐見当たらぬ残暑かな | 石川 | 松川まさみ |
秋色や乳房一対持ち堪へ | 石川 | 松川まさみ |
晩夏光暑さ疲れの森の色 | 石川 | 密田妖子 |
体温の置きどころなき暑さかな | 長野 | 金田伸一 |
残したる腸夫が食ぶ初秋刀魚 | 岐阜 | 三好政子 |
こもれ日や蜩のなく山の道 | 岐阜 | 梅田恵美子 |
もう母の音なき家に帰省する | 愛知 | 稲垣雄二 |
新涼や生きて行くのもよかろうか | 愛知 | 宗石みずえ |
想ひ出は断片ばかり走馬灯 | 京都 | 氷室茉胡 |
逝くときは心静かに桐一葉 | 京都 | 氷室茉胡 |
ひとりゐて鉛筆けづる敗戦忌 | 兵庫 | 加藤百合子 |
子に蹴られ目覚める夜の残暑かな | 奈良 | 中野美津子 |
朝顔の心底ぬれてゐる夜明け | 和歌山 | 玉置陽子 |
桔梗一輪そこら辺りのもの捨てて | 長崎 | ももたなおよ |
最高気温日々更新すけふは処暑 | 長崎 | ももたなおよ |
遠花火ともに生きると決めた夜 | 長崎 | 川辺酸模 |
東京駅色無き風が人の間を | 大分 | 山本桃潤 |
邯鄲の夢の彼方へいわし雲 | 大分 | 竹中南行 |