ネット投句(2021年11月15日)選句と選評
・主婦の座に踏ん反り返る蟇
・自分に安住すればラクダが針の穴をとおるより俳句は困難。
・かな遣いは自分で辞書で調べること。
【特選】
われさきと迎えにくるよ雪螢 01_北海道 高橋真樹子
木枯や聞こえぬ耳を欹てて 07_福島 渡辺遊太
あかあをき卓の林檎よ今朝の冬 14_神奈川 越智淳子
*上五、漢字に。
未完なる闇の形の鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
朽ち果てて月光になる鯨かな 14_神奈川 三玉一郎
大いなる佐渡の晴れ間の日向ぼこ 15_新潟 安藤文
狼煙から佐渡へ海道冬ざるる 17_石川 花井淳
・下五、再検討。
烏瓜一つは命一つは死 23_愛知 稲垣雄二
一つ家の二人夜長をそれぞれに 26_京都 佐々木まき
冬の蝶いつまでも目が追うてをり 27_大阪 澤田美那子
焼芋や百歳にして母恋し 29_奈良 喜田りえこ
忘れたき一心で編む毛糸かな 30_和歌山 玉置陽子
しぐるるや病みてやはらか女の手 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
まだ熟すところのこりし熟柿かな 01_北海道 高橋真樹子
・れる
秋天や同級生らと骨納む 01_北海道 芳賀匙子
・ら、不要。
錆深し工場のトタン泡立草 01_北海道 柳一斉
冬天や裾野の長き富士の山 04_宮城 長谷川冬虹
(悼寂聴)百歳に余白残して冬薔薇 04_宮城 長谷川冬虹
老い二人歩調を合はせ冬に入る 05_秋田 佐藤一郎
冬晴れや遠くに響く木遣歌 08_茨城 袖山富美江
リヤカーの運びに揺られ菊大輪 08_茨城 馬場小零
ぞんぶんに浅間を詠んで秋惜しむ 11_埼玉 上田雅子
寂聴の訃報ある日の時雨かな 12_千葉 谷口正人
・しぐれけり
柚子の黄や朝日一身独り占め 12_千葉 谷口正人
冬茜別れし後は足早く 13_東京 岡恵
懐かしき十一月の黄蝶かな 13_東京 岡恵
冷まじや熊が生き骨齧る音 13_東京 神谷宣行
今朝冬の空を翔けるや銀の馬 13_東京 神谷宣行
新走り六腑に鶴の舞降りぬ 13_東京 神谷宣行
群青の甲斐の山より寒卵 13_東京 長井亜紀
すき焼きは芹ふるさとは雪のころ 13_東京 長井亜紀
・すきやきに
老いの日々猫と似たりし秋日和 13_東京 杜野廉司
・似てゐる、「し」は変。文法ではなく感覚でわかるように。
冬晴や光をまとふ樟大樹 13_東京 楠原正光
のんびりとがらくた市の文化の日 13_東京 楠原正光
一輪車枯れ葉の山に突つこめり 13_東京 櫻井滋
気にそまぬ事のあれこれ懐手 14_神奈川 金澤道子
散り敷いて山茶花たるを全ふす 14_神奈川 金澤道子
・う
ふるさとは落葉をたたく雨ばかり 14_神奈川 松井恭子
・ばかり、ダメ。
とろとろと夕日を煮詰め熟柿ジャム 14_神奈川 松井恭子
・を煮詰め、ダメ。
耳遠き人に道問ふ小春かな 14_神奈川 中丸佳音
冬桜一つ一つの花たふと 14_神奈川 中丸佳音
・たふと、不要。
旅に出る刻には止みぬ朝時雨 14_神奈川 那珂侑子
合の手にエイと餅伸ぶ命伸ぶ 17_石川 花井淳
湯の中の繭ころころと冬ざるる 17_石川 花井淳
・この下五も再検討。
手袋にペンだこ一つ納めをり 17_石川 岩本展乎
・納める?
夕刊はバイクで配る日短し 17_石川 岩本展乎
着水の水に弾かれ鴨来る 17_石川 岩本展乎
水仙は渡り来し花絹の道 19_山梨 小泉雅恵
・ごちゃごちゃ。五七五のリズムの奴隷。
天が下抜く大根の白さかな 20_長野 金田伸一
黄葉の散り尽くしたる虚空かな 20_長野 大島一馬
秋晴れ過多至福の時間死から生 20_長野 柚木紀子
うれしさよ晩秋深夜届くクロネコ 20_長野 柚木紀子
チケツトをしをりに使ふ小春かな 21_岐阜 夏井通江
茨線の獣の毛鳥の毛秋野原 21_岐阜 古田之子
波立てて凩わたる余呉の湖 21_岐阜 辻雅宏
人垣へゴリラ尻掻く小春かな 21_岐阜 辻雅宏
ビル影がビルに掛かりて冬に入る 23_愛知 臼杵政治
・ビルの影
ころころと向いの家へゆく落葉 24_三重 乾薫
掃き寄せる落葉を土に戻しけり 24_三重 乾薫
木犀の返り花なりかそけくも 26_京都 佐々木まき
小春空子に手を引かれ行く散歩 26_京都 氷室茉胡
煮て焼いて晒して三品芋日和 27_大阪 安藤久美
葛湯練るしだいに花のあきらかに 27_大阪 澤田美那子
しぐるるや借る軒も無きビルの街 27_大阪 澤田美那子
木犀も終りに近き香なりけり 27_大阪 齊藤遼風
・なりけり、が死んでいる。
上賀茂に椎の実落つる時空あり 28_兵庫 加藤百合子
もみじ葉は舞ひ散るための形かな 28_兵庫 加藤百合子
小鳥くる十方世界水のこゑ 28_兵庫 魚返みりん
綿虫はいずこに行かむ日暮れ道 28_兵庫 福田光博
湯豆腐や崩れゆくとき美しく 29_奈良 喜田りえこ
・珍しく感傷。
泥団子ひとつ一つに敷く落葉 29_奈良 田原春
三輪山の寝息の音か酒醸す 33_岡山 齋藤嘉子
通草蔓細いの太いの綰ね売る 33_岡山 齋藤嘉子
暖冬やなりをひそめてゐる病魔 37_香川 丸亀葉七子
己が根をあたためてゐる落葉かな 37_香川 曽根崇
弟の骨となる間や秋時雨 37_香川 曽根崇
銀杏の実拾ふ背中にまた一つ 42_長崎 川辺酸模
鮭の川命が命食らはんと 44_大分 山本桃潤
・食ひけり、細かなことに迷わない。
立冬の心定まる河口かな 44_大分 竹中南行
衿立てて焼き栗の列シャンゼリゼ 50_フランス 廣瀬玲子
匂ひたつ枯葉や巴里の日の骸 50_フランス 廣瀬玲子