ネット投句(2022年1月15日)選句と選評
【特選】
目出度くも猫の礼者が来たりけり 千葉 麻生十三
ふるさとへ成人の日の新幹線 東京 長井亜紀
萎え乳もふんはり憩ふ初湯かな 石川 松川まさみ
別れゆく冬帽に振る冬帽子 愛知 青沼尾燈子
くちびるに花の命や寒の紅 大阪 安藤久美
【入選】
年賀状今年限りと書添へて 北海道 村田鈴音
逡巡の青き影あり寒施行 北海道 芳賀匙子
家々の灯消えて雪の降る 北海道 柳一斉
初句会果てて一椀小豆粥 宮城 長谷川冬虹
十九人四代揃ひて雑煮椀 宮城 長谷川冬虹
一握の七草パック恙なく 秋田 佐藤一郎
轟音の列柱となり瀧凍る 福島 渡辺遊太
耳立てて銃声聞けり冬の鹿 福島 渡辺遊太
遠くまで見ゆる船跡春隣 茨城 袖山富美江
静かなるもの展げをり鷹の空 茨城 馬場小零
我が老いもいよいよ佳境初日記 埼玉 上田雅子
楽しげに七草はやす祖母のゐて 埼玉 藤倉桂
立春大吉みちのく深き雪の中 千葉 若土裕子
西海の地魚クエぞ寒見舞 千葉 池田祥子
赤富士を背にして帰る初詣 千葉 麻生十三
仰ぎ見るの寒の日差しの眩しかり 東京 横山直典
球根の頭の上の霜柱 東京 森徳典
一山を赤く染めたり達磨市 東京 長井亜紀
初夢や路上生活終わる日々 東京 長尾貴代
ひと気なき街こそ街の初景色 東京 杜野廉司
今はただ母子ふたりの鏡餅 東京 齊藤拓
紅梅を見付けてうれし枯木立 神奈川 伊藤靖子
日向ぼこ一瞬にして老いにけり 神奈川 金澤道子
通院の予定書きこむ初暦 神奈川 金澤道子
冬滝や水一筋を通しおり 神奈川 三浦イシ子
てのひらに舞ひ降りてくる花びら餅 神奈川 三玉一郎
口笛にさっと降り来る初雀 神奈川 土屋春樹
寅年や笑ふ仔猫の賀状来し 神奈川 土屋春樹
孫が来てこそ福笑初笑 神奈川 那珂侑子
賀状受く重ねて受くる死の知らせ 神奈川 那珂侑子
氷見よりの鰤を包丁始かな 神奈川 片山ひろし
風花の愛車にほろと積もりけり 新潟 安藤文
地吹雪の中を飛びゆく鴉一羽 新潟 高橋慧
初鏡母がいるかと思ひけり 富山 酒井きよみ
寒施行喧嘩せぬやう分けて置く 富山 酒井きよみ
選ばれてこの一株の寒牡丹 石川 花井淳
着ぶくれて百句私製の句集編む 石川 岩本展乎
わは脊椎辷症男の子子ら氷湖に 長野 柚木紀子
しろたへの雪の白山大旦 岐阜 辻雅宏
立春や動き出したる水の声 岐阜 梅田恵美子
胎の子の籤も大吉初社 愛知 稲垣雄二
立ち揃ふ母妻娘春着かな 愛知 稲垣雄二
生きるため酸素を背負ふ冬の道 愛知 青沼尾燈子
凍蝶の見る夢の中この宇宙 愛知 服部紀子
雪原を行く風かつて人だつた 愛知 服部紀子
胎内に男女の双子福寿草 京都 氷室茉胡
海女泳ぐ水脈あをあをと初景色 大阪 安藤久美
初詣みそぎ代はりのエタノール 大阪 内山薫
義理ながら切れぬ縁あり年賀状 大阪 内山薫
車椅子おす身も老いて寒に入る 大阪 内山薫
冬の日をあびて仏のたなごころ 兵庫 加藤百合子
煮て蒸して漬けて蕪の至福かな 兵庫 加藤百合子
億年の七十二歳(とせ)雑煮食ぶ 兵庫 加藤百合子
覗きたきものに深雪の鳥の宿 兵庫 藤岡美恵子
灰となるものの尊しどんどかな 兵庫 藤岡美恵子
生まれくる命待つ日や福寿草 兵庫 福田光博
起き出して背伸びする猫日向ぼこ 兵庫 髙見正樹
ひいばあさんひいひいばさま女正月 奈良 喜田りえこ
寒鴉万民快楽の声高し 奈良 喜田りえこ
銜へしは何の生命ぞ初鴉 和歌山 玉置陽子
歳なんぞ只の数字よ鍬始め 香川 曽根崇
寒鰤にてんやわんやの厨かな 長崎 川辺酸模
婚約の客で花やぐ年始かな 長崎 川辺酸模
日向ぼこり心がこんなに広ひとは 大分 山本桃潤
再会の息の白さよ豊かさよ 大分 竹中南行