ネット投句(2021年10月31日)選句と選評
【特選】
宇宙から帰る人あり十三夜 13_東京 森徳典
すさまじやすべて暗渠に吸ひこまれ 14_神奈川 金澤道子
かはいがるやうに無花果むきはじむ 17_石川 松川まさみ
生身魂妻に消えざる恋ごころ 20_長野 金田伸一
ガーゼ彩々わが病室のちんちろりん 20_長野 柚木紀子
膝から肘かさぶた七枚秋夕暮 20_長野 柚木紀子
身のうちの夢を怖るる長夜かな 21_岐阜 三好政子
桐一葉滑空をして着地せり 28_兵庫 髙見正樹
よく響く空つぽの胸木の実雨 30_和歌山 玉置陽子
【入選】
天仰ぐ車道に屈した鹿の貌 01_北海道 村田鈴音
分葬の二文字鮮し紅葉寺 03_岩手 川村杳平
くろぐろと秋刀魚のまなこ潮のいろ 04_宮城 長谷川冬虹
図書室の窓から見ゆる秋の虹 08_茨城 袖山富美江
轟沈の海を遙かに秋冷碑 08_茨城 馬場小零
よべ編みし父のほまれの籾筵 11_埼玉 園田靖彦
何も無き畑にキラキラ鳥脅し 11_埼玉 藤倉桂
ぼろおんと法螺貝響く夜長かな 12_千葉 菊地原弘美
記念樹と齢かさねて松手入れ 12_千葉 若土裕子
コロナ禍の見舞ひかなはぬ林檎かな 12_千葉 若土裕子
冬近し黒き血潮の隅田川 13_東京 岡田定
秋夕焼恐竜の影地平まで 13_東京 岡田定
月はひとつ羊羹には栗五六粒 13_東京 長井亜紀
初霜や友と通ひし通学路 13_東京 楠原正光
立冬の背筋を伸ばし一歩かな 13_東京 楠原正光
夫好む大馬鈴薯のオーブン焼き 13_東京 堀越としの
団栗の落ちて転がる夜の屋根 14_神奈川 伊藤靖子
小春日やあの人かの人をりし日々 14_神奈川 越智淳子
干柿は天の恵みの甘さかな 14_神奈川 越智淳子
先客は野良の老猫日向ぼこ 14_神奈川 遠藤初惠
毬落ちてをり熊棚の新しく 14_神奈川 金澤道子
鶏頭ややうやく決まる帰郷の日 14_神奈川 松井恭子
芋煮えて平々凡々日が暮れる 14_神奈川 水篠けいこ
島猫となりし野良猫秋うらら 14_神奈川 中丸佳音
合掌し即身仏に冬の蝿 14_神奈川 湯浅菊子
富士山をそばに一日星月夜 14_神奈川 那珂侑子
身に入むやむかし学童疎開寺 14_神奈川 片山ひろし
神主の父いそいそと七五三 15_新潟 安藤文
すさまじき顔ぞろぞろと選挙戦 15_新潟 安藤文
石榴三つ描きて食ふてあと酒に 15_新潟 高橋慧
零余子と書けばぱらぱらとこぼるるよ 16_富山 酒井きよみ
がんもどきふつくら炊けて小春かな 17_石川 花井淳
秋風や一腑除きし身のかるさ 17_石川 松川まさみ
朝寒や同床猫の大あくび 19_山梨 小泉雅恵
老いてこそ心耳たしかや秋の風 20_長野 金田伸一
仔山羊らのふうちん揺るる十三夜 20_長野 柚木紀子
あけびの実風よりもいではかなさよ 21_岐阜 夏井通江
松手入脚立二台に板渡し 21_岐阜 三好政子
身に入むや鬼籍に入る友つづき 21_岐阜 辻雅宏
間引菜も入れてジュ―スや朝の卓 21_岐阜 梅田恵美子
米こそが近江の宝新走り 23_愛知 臼杵政治
あばら家は終の栖ぞ障子貼る 23_愛知 青沼尾燈子
菊の香や馬齢重ねて恙なし 26_京都 佐々木まき
山蘆辞し夢の続きの紅葉狩 26_京都 氷室茉胡
蛇笏忌の榾かぐはしく爆ぜにけり 27_大阪 安藤久美
余生などと安んじをれば鎌鼬 27_大阪 澤田美那子
足元の草ぐさまでも紅葉して 28_兵庫 天野ミチ
袋には従弟の写真今年米 28_兵庫 藤岡美惠子
綱を張る犬の勢い朝寒し 28_兵庫 髙見正樹
どの子にも青空あるよ七五三 29_奈良 喜田りえこ
思ひ出は小春日和に似たるかな 33_岡山 齋藤嘉子
縁側に昼餉揃へん小六月 33_岡山 齋藤嘉子
塩を焚くあかり洩れをり十三夜 37_香川 曽根崇
縄張の中に我が家か鵙高音 37_香川 曽根崇
シスターも鎌を研ぐなり豊の秋 42_長崎 ももたなおよ
たわいなくけふはきのふへ蚯蚓鳴く 44_大分 竹中南行
焼き栗やモンマルトルの丘へ雨 50_フランス 廣瀬玲子