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俳句的生活

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《500句》輝きと重さ ただ圧倒された 瑞木綾乃

俳句的生活 投稿日:2024年5月6日 作成者: KAI2024年5月9日

 著者の自選句集を待ち望んでいた俳句初心者であり、感想というものもおこがましいのであるが、ただただ圧倒されたことをお伝えしたいと感じてPCに向かっている。

 朝日俳壇、「四季」から著者を知り、俳句入門本にて学び、多くの著書を拝読した。著者の俳句入門本は、他のものとは「全く」違っており、論理的で、独創的で、与える力に満ち、あるものはばさばさと切り捨てる鋭利さを持っている。句集は「太陽の門」から、さかのぼる形で拝見したが、高みにある難解なものと感じた。

 今回、自選句集にて50年余りに及ぶ句業を詳細に、初々しさのあるものから触れ、五つの時代や思想を知ることができた。また、今の著者が選ぶ500句の輝きと重さは、これまでの句集にないものではと感じる。

 特に人間諷詠の時代、「俳句は日常生活や自然現象に留まらず、天災も戦争もこの世で起こるすべてが詠めなければいけない」という世界に辿り着き、大震災、沖縄、広島、福島と、失われていく記憶や、風化するものを確固たる文学として残されていることは、若い世代にとっても有難いことである。

 さらに古志の俳人が、そのような花鳥風月に留まらない伝えるべき句を生み出し続けており、鮮やかなうねりの中、著者は変わり続けながら、先陣を切って進まれて行かれるような印象を持った。

 さまざまの月みてきしがけふの月     『太陽の門』

《500句》自らの身体性を帯びたものが中心に おほずひろし

俳句的生活 投稿日:2024年4月30日 作成者: KAI2024年5月6日

『太陽の門』からつぎの3句は絶対に外せないだろう、外してほしくないと思っていたので、それがその通りになっているこの自選句集は嬉しかった。それを書いてみたい。

森閑とわが身に一つ蟻地獄
白桃や命はるかと思ひしに
西行の年まではと思ふ桜かな

ほかに残された「身体性を帯びたもの」を挙げれば。

死の種子の一つほぐるる朝寝かな(皮膚癌)
さみだれや人体青く発光す(PET検査)
いまひらく百合の射程に我はあり
摘出の一太刀浴びつ昼寝覚
病巣は石榴裂けたるごとくあり
鬼の口縫うてすさまじ手術痕
生淡々死又淡々冬木立
寸々に刻まれる身を秋の風

なぜこうした句を作者は外せないのだろうか。それは、俳句固有の方法によってほかの方法ではとらえられない作者の身体性がとらえられているからであると思われる。この俳句固有の方法は作者は長い時間をかけて追求してきたものであり、この自選句集はその証しとも成果とも言えるのではないか。

古志金沢ズーム句会(2024年4月21日)

俳句的生活 投稿日:2024年4月29日 作成者: dvx223272024年4月29日

 飴山忌または当季雑詠
・鬼川こまち選

【特選】
一生や美しかりし桜鯛          長谷川櫂
うぐひすのこゑ金色に玉津島       玉置陽子
滴一滴しづくとなりて初音かな      趙栄順
美しきころのキーウか蜃気楼       清水薫
蟇穴を出て白山を仰ぎをり        玉置陽子
鞦韆や志村喬は父に似て         田中紫春
鯖鮓の生けるがごとし青嵐        長谷川櫂

【入選】
花筏綿毛を運ぶ舟もをり         田村史生
吾が挙動じつと見詰める春の蠅      清水薫
葉ざくらや氷枕に母眠る         飛岡光枝
練り合わせて香木にせん春の闇      玉置陽子
大の字に寝るや兼好花筵         飛岡光枝
親の背中取り合ふ亀や沼の春       藤倉桂
白蓮は月の育てし花ならん        間宮伸子
御開帳おん目の見ゆるごとくにて     橋詰育子
ミサイルや桜蕊降る街に居て       花井淳
車座にふたたびもどり春惜しむ      宮田勝
山吹の句碑にもあはん三室戸寺      泉早苗
五百句の花咲きみちる句集かな      玉置陽子
指揮棒も指揮者の髪も青嵐        長谷川櫂

・長谷川櫂選

【特選】推敲例
葉ざくらや氷枕に母眠る         飛岡光枝
速達が二度来る花の日なりけり      宮田勝
親の背を取り合ふ亀や沼の春       藤倉桂
でで虫のひたと吸ひつく紅椿       近藤沙羅
桜鯛捌けば響く骨の音          稲垣雄二

【入選】
変はりゆく世に追ひこされ更衣      梅田恵美子
昼の雨妻と名残りの桜餅         稲垣雄二
柳腰の鮎うつくしや炭の上        飛岡光枝
春蘭にやあと渓流水しぶき        酒井きよみ
まぶしさや家の中まで花菜畑       酒井きよみ
五百句の花咲きみちる句集かな      玉置陽子
ひらくかしら泰山木の大蕾        飛岡光枝

第二句座
 席題:「蜃気楼」、「竹の子」
・鬼川こまち選

【特選】
筍や穂先三寸ことのほか         長谷川櫂
筍の息吹受け止む足裏かな        氷室茉胡
猪のさらひたる跡筍の皮         川上あきこ
竹の子の摩天楼へと迷ひ込む       田村史生
あをあをと国滅びゆく蜃気楼       玉置陽子
筍や尻どっしりと国造り         山本桃潤
まだ夢を見てゐる筍届きけり       玉置陽子
大地震に竹の子山の深き創        清水薫

【入選】
暁や筍の土の膨らみを          山本桃潤
初筍この一本を余すなく         趙栄順
筍のぐらり寝返る鍋の中         玉置陽子
禅寺の竹の子鬱と伸びゆけり       飛岡光枝
追ひかけて追ひかけて君は蜃気楼     田中紫春
かえりみる数多の出会ひ蜃気楼      清水薫
竹の子に敗けず伸び行け能登の子ら    清水薫
筍届く三十年来句友なり         間宮伸子
筍や薮の起伏の日だまりに        松川まさみ
僧若し日がな筍掘る修行         越智淳子
筍の重ねの衣をごそと剥ぐ        松川まさみ
筍の皮むかされてゐたりけり       橋詰育子

・長谷川櫂選

【特選】推敲例
筍のぐらと寝返るお湯の中        玉置陽子
海市立つたつた一人の旅人に       越智淳子

【入選】
初筍この一本を余すなく         趙栄順
水桶に浮かぶ筍如何にせん        趙栄順
禅寺の筍鬱と伸びゆけり         飛岡光枝
立山の雨が消したり蜃気楼        泉早苗
筍の皮の散らばる山廬かな        飛岡光枝

古志仙台ズーム句会(2024年4月28日)

俳句的生活 投稿日:2024年4月29日 作成者: dvx223272024年4月29日

第一句座              
長谷川冬虹選
【特選】
黒鯛の鋼の鱗はがしけり           長谷川櫂
象の鼻五月の空を振り回す          上村幸三
たらちねは朧の中に存すかな         齋藤嘉子
亡き人の席を設けて花御膳          武藤主明
春の蝶しづかに月を待ちゐたり        三玉一郎
【入選】
わが杖も花の杖とや吉野山          平尾 福
犬と寝て総身に受ける春日かな        青沼尾燈子
日時計に影のなき午後万愚節         阿部けいこ
猿芸の猿と目の合ふ花の昼          佐伯律子
葱坊主ひと皮むけて中学生          那珂侑子
父母の声のきこゆる春の山          齋藤嘉子
風吹かば風の形の柳かな           臼杵政治
春耕や鋤く度退がる己が影          臼杵政治

長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
ひんやりと朝の太陽新茶かな         上村幸三
日時計の影のひときは薄暑かな        石川桃瑪
みちのくの孤立みごとや瀧桜         青沼尾燈子

【特選】
一年生お花見給食花の下           長谷川冬虹
犬と寝て総身に浴びる春の月         青沼尾燈子
蝮草傲然と我見やりをり           那珂侑子
父母の呼ぶ声きこゆ春の山          齋藤嘉子
種浸す能登の未来を念じつつ         辻奈央子

【入選】
家産もう吾も弟も耕さず           臼杵政治
花筵はひ出してしまふ赤子かな        辻奈央子
わが杖も花の杖とや吉野山          平尾 福
鯉のぼり泳ぐや今朝は東へ          平尾 福
老若の海女朝焼けに染まりけり        辻奈央子
葉桜や沸いてケトルのなりやまず       佐伯律子
鮠の子は自分の影と遊びをり         平尾 福
初夏のみどり耀ふ月の山           上村幸三
春の日に包まれてゐる句集かな        那珂侑子
蔵王から月山かけて春の虹          齋藤嘉子

第二句座 (席題:鯵、桑の実、父の日)
長谷川冬虹選
【特選】
父の日や少しいびつなオムライス       甲田雅子
桑いちご弟はいつも見張り役         佐伯律子
父の日はさらり流せと子らに告げ       青沼尾燈子
父の日や父そつくりの歩き方         臼杵政治
母の日を頑張りすぎて父の日よ        那珂侑子
【入選】
桑の実やいつも素足にゴム草履        上村幸三
教はりてこれが桑の実拾ひけり        那珂侑子
くわの実の落ちて華やぐ地べたかな      辻奈央子
父の日や碁打ちの集ふ公民館         佐藤和子
父の日や父の日記に弱音あり         佐伯律子
三枚におろして太き鯵の骨          阿部けいこ
唇も手指も桑の実の色よ           臼杵政治
父母のをらぬ古里桑いちご          佐藤和子
決めありぬ一枝は我の桑いちご        佐伯律子

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
蚕飼ひせぬ家の桑の木鬱蒼と         服部尚子
三枚におろして太し鯵の骨          阿部けいこ
友の顔帽子いつぱい桑いちご         齋藤嘉子
桑の実やかつて蚕と共に寝て         武藤主明
父母のをらぬ古里桑いちご          佐藤和子
【入選】
威勢よく運ぶ漁港の鯵定食          谷村和華子
父の日のかくも無色に過ぎにけり       青沼尾燈子
くわの実の落ちて華やぐ地べたかな      辻奈央子
鯵の皮ぴりつと剥いて喰らひけり       上 俊一
母の日のついでに祝ふ父の日よ        武藤主明
鯵ひらく夕星のまだ低きこと         谷村和華子
懐かしや肥やしの匂ひと桑の実と       上村幸三
唇も手指も桑の実の色よ           臼杵政治
決めてあり一枝はわが桑いちご        佐伯律子
あれも喰はずこれも嫌ひの父の日よ      長谷川冬虹
母の日を頑張りすぎて父の日は        那珂侑子
父の日や墓前に語る新句集          長谷川冬虹

ネット投句年間賞(春)は氷室茉胡さん

俳句的生活 投稿日:2024年4月28日 作成者: dvx223272024年5月9日
*大賞(春)
弟子にユダ居らず寝釈迦となり給ふ 京都 氷室茉胡
*次点
能登の雛圧死焼死の別れあり 富山 酒井きよみ
未来に僕はいますか明日も雪 兵庫 魚返みりん
国ゆれて桜前線たじろげり 東京 櫻井滋
大胡座かきて白山笑ふなり 石川 花井淳
たゆたへる白き花見る朝寝かな 大阪 齊藤遼風
*候補1
半壊の蔵動き出す寒造り 石川 花井淳
原発に囲まれ眠る原発忌 奈良 中野美津子
春泥や独り言ちつつトルストイ 埼玉 佐藤森恵
はくれんは白を解きて花となる 奈良 きだりえこ
花に吸はれて人の死ぬらし四月馬鹿 北海道 芳賀匙子
月の夜に旅する雲や西行忌 千葉 安田勅男
お辞儀して陽炎となる遍路かな 愛知 稲垣雄二
*候補2
我知らぬ母の話を女正月 千葉 池田祥子
大佐渡の不機嫌な空ふゆごもり 新潟 安藤文
入院の夜退院の朝古暦 宮城 長谷川冬虹
またもとの深き眠りへ寒の鯉 埼玉 園田靖彦
母死すや胸に風花ひらと舞ふ 東京 神谷宣行
大朝寝花と死の字のどこか似る 神奈川 中丸佳音
目薬を注して目瞑る寒さかな 岐阜 三好政子
荒れ荒れて波の花飛ぶ能登の闇 愛知 稲垣雄二
初鏡母が写つたかと思ふ 京都 氷室茉胡
冬深し底はくれなゐ輪島塗 奈良 きだりえこ
鮟鱇は顎を残して喰はれけり 長崎 川辺酸模
赤恥もいまや身に添ひ日向ぼこ 大分 竹中南行
鬼やらひ能登の鬼ども生きとるか 富山 酒井きよみ
幾筋かは恋の通ひ路田螺径 京都 氷室茉胡
北陸の女の指に水温む 奈良 中野美津子
百の春死ぬることさへ母忘る 長崎 川辺酸模
容赦なく記憶白濁ゆきげかわ 北海道 芳賀匙子
蝶が来る寄り道したりキスしたり 千葉 木地隆
地に落ちて椿の骸花のまま 愛知 稲垣雄二
春寒のこころに今も難破船 奈良 きだりえこ
過ぎて知る運や不運や草の餅 大分 竹中南行
白鳥帰るもの言はぬ国より言へぬ国へ 宮城 長谷川冬虹
春場所やざんばら髪で優勝す 東京 櫻井滋

ネット投句(2024年3月31日)特選

俳句的生活 投稿日:2024年4月27日 作成者: dvx223272024年5月9日
春愁のしくと手の甲あたりより 北海道 芳賀匙子
花に吸はれて人の死ぬらし四月馬鹿 北海道 芳賀匙子
白鳥帰るもの言はぬ国より言へぬ国へ 宮城 長谷川冬虹
月の夜に旅する雲かな西行忌 千葉 安田勅男
国ゆれて桜前線たじろげり 東京 櫻井滋
春場所やざんばら髪で優勝す 東京 櫻井滋
月の夜は月に恋する栄螺かな 富山 酒井きよみ
大胡座かきて白山笑ふなり 石川 花井淳
お辞儀して陽炎となる遍路かな 愛知 稲垣雄二
たゆたへる白き花見る朝寝かな 大阪 齊藤遼風
初花や眠りて病魔二年目に 大分 竹中南行

《500句》自分を俯瞰して見る冷静なもう一人の自分 木下洋子

俳句的生活 投稿日:2024年4月23日 作成者: KAI2024年4月30日

帯と一体になった表紙のブルーグレーが落ち着きがあってすてきだ。「あとがき」に、電話で出産の報を受けた父が、雪道を自転車で何度も転びながら、生まれたばかりの我が子と母になった妻のもとに駆けつけたことが書かれている。若き日の両親の喜びと我が子に対する愛情が伝わってくる。その生まれたばかりの赤ちゃんが、成長して長谷川櫂になるんだと思うと、これは自選句集プラス自分史だと思った。自筆年譜もあり、誕生から現在までの道のりがこの一冊で読み取れる。

エッセイの中に、これまでの句集を五つの時代に分けて書いてあるところがある。シンプルだが納得できる内容だ。このように自分で自分の歩みを分類するには、これまでの自分を俯瞰して見ることのできる冷静なもう一人の自分が必要だ。エッセイ全体を通して飾りのない「素」のよさを感じた。

平井照敏、飴山實に師事し、そこから自分で道を切り開いてきたことがわかる。さらに、エッセイの冒頭にある飯田龍太との交流。「私は氏の行方から、目を離さないつもりである」と句集『古志』の帯に書かれた龍太の言葉。その言葉は長谷川櫂のその後の歩みに大きな影響を与えた。そしてこれからも、龍太の言葉を心にその「行方」を示し続けることだろう。

『古志』の瑞々しさは格別だ。

 春の水とは濡れてゐるみづのこと

『太陽の門』読み返すたび、思いが深まり、確信に変わる瞬間がある。

 ひるがへり水に隠るる金魚かな

《500句》「言葉の風味」と「切れ」、そして消えいくもの 長谷川冬虹

俳句的生活 投稿日:2024年4月20日 作成者: KAI2024年4月23日

 『長谷川櫂 自選五〇〇句』の味わい方はいろいろだが、刮目すべきは、「言葉の風味」と「切れ」の問題である。「風味」という言葉は、飯田龍太による第一句集「古志」の帯文にまず登場する。「穴子裂く大吟醸は冷やしあり」の飴山實の直しに関して、著者は原句と「言葉の風味は大いに異なる」と書き、俳句は「言葉の風味を醸し出す文学であるらしい」と規定する(一七五頁)。自選五〇〇句で私たちが何より味わうべきは言葉の風味である。

 原句の「穴子裂いて」に対して、「穴子裂く」と直された句は大きく切れる。「穴子裂く」によって生まれた間、鋭い切れがつくり出す間、それが句の柄を大きくする。

 「長谷川櫂をよむ」でも私は論じたが、「大空はきのふの虹を記憶せず」も面白い句である。虹の不在を真正面からとりあげている。言葉の力によって、言葉の力だけで、不在のものを不在のままに詩足らしめている。

 あらためて繰っていくと、第一句集『古志』抄の「冬深し柱の中の濤の音」「雪空に吸はれてはまた海の音」「鷹消えて破れしままの雪の空」「遺影とは硯に映る柳かな」も、不在あるいは消えいくものを詠んでいることが興味深い。例えば「夏の闇鶴を抱へてゆくごとく」(『天球』抄)。そして「青空のはるかに夏の墓標たつ」「炎天や死者の点呼のはじまりぬ」「紅や炎天深く裂けゐたり」(『太陽の門』抄)に至る。言葉の力によって、消えいくものを在らしめ、見えないものを見る。そこに長谷川櫂の骨法がある。

古志鎌倉ズーム句会(2024年4月14日)

俳句的生活 投稿日:2024年4月15日 作成者: 田中 益美2024年4月15日

第一句座
•藤英樹選
【特選】
迸る富士の伏流大岡忌         わたなべかよ
橋掛り春の闇より掛りたる       わたなべかよ
海女沈む地割れの続く海底へ      関根千方
春の水きらきらと詩をこぼしけり    イーブン美奈子
海原に目を瞠りけり鯥五郎       わたなべかよ
戦争を背負つて死にゆく桜かな        イーブン美奈子
【入選】
富士裾野芽吹きゆたかや大岡忌     仲田寛子
菫咲く会いたくなればすぐ傍に     関根千方
富士ひろく伸びて大岡信の忌      仲田寛子
花は葉にわれは正気にもどりけり     葛西美津子
少女らの頬に春風たはむれて      魚返みりん
いつの間に後期高齢葱坊主       仲田寛子
大岡忌かの日の芭蕉七部集         藤原智子

•長谷川櫂選
【特選】
教へ子に遊歩ありけり大岡忌       藤英樹
瞑想の金のまなぶた蟇          葛西美津子
蛇口から水がうたふや大岡忌       神谷宣行
花曇大岡信の忌なりけり            きだりえこ
【入選】
咲きさうな花を吸はんと雀かな      木下洋子
大岡忌かの日の芭蕉七部集         藤原智子
大岡忌太平洋の波の音           藤原智子

第二句座 (席題:のどけし、囀り)
•藤英樹選
【特選】
桜花壇空に浮かびて長閑かなり     長谷川櫂
面売りの長閑な顔を並べたる      長谷川櫂
青年よ起きよ覚めよとさへずれり    園田靖彦
囀を西行と聴くや奥千本        神谷宣行
のどけしや町にあふるる人の顔     藤原智子
のどけしや言葉はどこへ老夫婦     園田靖彦
【入選】
囀やひときは高き声加へ          イーブン美奈子
夢殿の夢より出でて囀れり          萬燈ゆき
天女ひるがえる水煙さへづれり        金澤道子
遺品整理終へ空つぽののどけしや    神谷宣行
外来の声もまじりて囀れる       関根千方
囀の木より一羽の飛び立ちぬ      わたなべかよ
囀りは雲にむかつてひろがりつ     吉田順子

•長谷川櫂選
【特選】
囀やひときは高き声加へ            イーブン美奈子
耕運機一人で動くのどけしや          澤田美那子
四人部屋のどけき枕一つづつ      葛西美津子
【入選】
抜きんでて声の澄みたるさへずりよ       園田靖彦
囀りの故郷を出でて五十年       萬燈ゆき
のどけしや桜まつりのあとの土手    藤原智子
せせらぎは水の囀り長閑かな      関根千方
のどけしや岸に蛸壺並べ干す      木下洋子
囀に混じりて青き鳥一羽        葛西美津子
囀りをたがひにかはす二羽の鳥     吉田順子
葉桜にもたれる箒のどけしや      仲田寛子

《俳句の相談》なぜ「春の蝶」というのか

俳句的生活 投稿日:2024年4月15日 作成者: KAI2024年4月16日

【相談】

方丈の大庇より春の蝶     高野素十

「蝶」はそれだけで春の季語なのに、なぜ「春の蝶」という傍題があるのですか?

【回答】

この質問は問題の立て方が逆です。おそらく自由なはずの頭が何かに縛られているのです。

人間は小さいころから小学校、中学校と10年、20年と学校に通います。学校をはじめ教育(学習、勉強)機関は何のためにあるのか。学校や教育(学習、勉強)の目的は何か。

この質問をすると十中八九、知識を得るため、さらに知識を得ていい職業に就き、さらにはお金持ちになるためという答えが返ってきます。学校で身につけた知識で人より偉くなるためということです。

しかし誰でも自分の人生を振り返ってみればすぐわかるはずですが、知識というものは得れば得るほど、この世界(宇宙)は自分の知らないことばかりという厳然たる事実の前に立たされます。つまり自分がどんなに無知であるかということに気づかされます。

では教育(学習、勉強)の目的は何か。あたらめてこの問題に帰ってくるのですが、その目的はこの不思議に満ちた世界(宇宙)を前に誰もが「自分の頭で自由に考えることのできる人間」になるためです。長い間、学校に通って学ぶのは、「自分の頭で自由に考える」ための材料を提供しているにすぎません。

ところが、このことがしっかりとわかっていないと、教育(学習、勉強)を受ければ受けるほど、いろんな知識で頭ががんじがらめになってしまいます。こうして「いい子」ついには「社会の優等生」「俳句の優等生」ができあがります。

質問の趣旨は、「蝶」といえばそれだけで春の季語なのに、なぜ「春の蝶」というのかということでした。はじめに問題の立て方が逆であるといったのは、それはこの質問自体が俳句の考え方、俳人の考え方、歳時記の考え方に縛られているからです。

何も「蝶」だけの問題ではありません。俳句では「月」といえばそれだけで秋の季語ですが、「秋の月」ともいいます。これはなぜかと一度、俳人ではなくふつうの人になって考えてみてください。

「蝶」も「月」も一年中、存在します。ですから、ふつうの人は蝶は春の季語、月は秋の季語と考えません。そこで「蝶」も「月」もそれぞれの季節をかぶせて「春の蝶」「夏の蝶」「秋の蝶」「冬の蝶」、「春の月」「夏の月」「秋の月」「冬の月」というのです。このほうがふつうの感覚です。素十の句はこのようなふつうの感覚に根ざしたおおらかな句です。蝶は春の季語、月は味の季語と考えるのは歳時記を学び、歳時記の考え方に縛られている人だけです。

こう考えると「蝶」はそれだけで春の季語なのに、なぜ「春の蝶」というのかという疑問はそもそも生まれません。これで質問そのものが俳句の知識に縛られているということがわかるはずです。

俳句のさまざまな問題に向かうとき、自分の頭で自由に考えてください。そのためには「自分の頭は何かに縛られていないか」といつも気をつけておくのは大事なことです。

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読売新聞「四季」から

今年てふ未来ありけり初鏡      田辺麦甫

 これから来る時間を未来というと、何だか輝いているような気がする。それはこの言葉の音の力。美しいmとrの子音があり、aiもある。それに対して過去という言葉は最後の母音oで沈みこむ。初鏡は年が明けて初めてのぞきこむ鏡。『鳥渡る』

2月11日(水) 古志雪中ズーム句会

  • 2月11日(土)、午後1時30分から二座行います。
  • 雪の句を十句ご用意ください。席題はありません。
  • 会費は2,000円(参加者にはあとで振込口座をお知らせいたします)
  • 申込締切=1月31日
  • 古志の同人・会員でないと参加できません。

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      花の浪花の読書会『折々のうた』600句を覚えよう!30分で学ぶ俳句の歴史

      古志ネット講座一覧

      これからのイベント

      • 1月24日(土)朝カルズーム講座「1億人の俳句入門」
      • 1月25日(日)仙台ズーム句会
      • 2月1日(日)広島ズーム句会
      • 2月7日(土)HAIKU+
      • 2月8日(日)鎌倉ズーム句会
      • 2月11日(水、建国記念日)雪中ズーム句会
      • 2月14日(土)朝カルズーム講座「『おくのほそ道』をよむ」」
      • 2月15日(日)金沢ズーム句会
      • 2月22日(日)ネット投句のスクーリング
      • 2月23日(月、天皇誕生日)句会仙台ズーム句会
      • 2月28日(土)朝カルズーム講座「1億人の俳句入門」
      • 3月1日(日)広島ズーム句会
      • 3月7日(土)朝カルズーム講座「『おくのほそ道』をよむ」」
      • 3月8日(日)鎌倉ズーム句会
      • 3月14日(土)きごさい全国小中学生俳句大会(東京、白川清澄公園)
      • 3月22日(日)金沢ズーム句会
      • 3月28日(土)朝カルズーム講座「1億人の俳句入門」
      • 3月29日(日)仙台ズーム句会

      俳句世界遺産への意見

      俳句世界遺産の問題について、ご意見を「お問合せ」からお寄せください。賛否にかかわらず、有意義な意見はこのサイトで紹介します。

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      『「おくのほそ道」を読む 決定版』
      ちくま文庫
      1,000円+税
      2025年5月刊行


      『四季のうた ウクライナの琴』
      中公文庫
      800円+税
      2025年1月刊行


      『長谷川櫂 自選五〇〇句』
      朔出版
      2200円+税
      2024年4月刊行


      『四季のうた 井戸端会議の文学』
      中公文庫
      800円+税
      2024年1月刊行


      『小林一茶』
      河出文庫
      800円+税
      2024年1月刊行


      『ふじさわびと』vol.26
      株式会社ふじさわびと
      無料配布
      2023年1月発行


      『四季のうた 雨ニモマケズ』
      中公文庫
      800円+税
      2023年1月刊行


      『和の思想』
      岩波新書
      980円+税
      2022年7月刊行


      『俳句と人間』(3刷)
      岩波新書
      860円+税
      2022年1月刊行


      100分de名著『おくのほそ道』(10刷)
      NHK出版
      1,000円+税
      2014年10月刊行


      『四季のうた 美しい日々』
      中公文庫
      800円+税
      2022年1月刊行


      句集『太陽の門』
      青磁社
      2200円+税
      2021年8月刊行


      『四季のうた 天女の雪蹴り』
      中公文庫
      800円+税
      2021年1月刊行


      大岡信『折々のうた』選 俳句(二)
      長谷川櫂 編
      岩波新書
      780円+税
      2019年12月刊行


      『四季のうた 普段着のこころ』
      中公文庫
      800円+税
      2019年12月刊行


      大岡信『折々のうた』選 俳句(一)
      長谷川櫂 編
      岩波新書
      780円+税
      2019年11月刊行


      『歌仙一永遠の一瞬』
      岡野弘彦、三浦雅士、長谷川櫂
      思潮社
      2200円+税
      2019年1月刊行


      『歌仙はすごい』
      辻原登、永田和宏、長谷川櫂
      中公新書
      880円+税
      2019年1月刊行


      『四季のうた 至福の時間』
      中公文庫
      700円+税
      2018年12月刊行


      『九月』
      青磁社
      1800円+税
      2018年8月刊行


      『Okinawa』
      Red Moon Press
      $15
      俳句 長谷川櫂
      英訳 デイヴィッド・バーレイ&田中喜美代(紫春)
      2018年5月刊行


      『俳句の誕生』(4刷)
      筑摩書房
      2300円+税
      2018年3月刊行


      『四季のうた 想像力という翼』
      中公文庫
      700円+税
      2017年12月刊行


      『芭蕉さん』
      俳句・芭蕉 絵・丸山誠司
      選句解説・長谷川櫂
      講談社
      1500円+税
      2017年3月刊行


      『震災歌集 震災句集』
      青磁社
      2000円+税
      2017年3月刊行


      『四季のうた 文字のかなたの声』
      中公文庫
      600円+税
      2016年12月刊行


      藤英樹著『長谷川櫂 200句鑑賞』
      花神社
      2500円+税
      2016年10月刊行


      『文学部で読む日本国憲法』
      ちくまプリマー新書
      780円+税
      2016年8月刊行


      『日本文学全集12』松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶
      松浦寿輝、辻原登、長谷川櫂選
      河出書房新社
      2,600円+税
      2016年6月刊行


      『四季のうた 微笑む宇宙』
      中公文庫
      700円+税
      2016年3月刊行


      『芭蕉の風雅 あるいは虚と実について』
      筑摩選書
      1,500円+税
      2015年10月刊行


      『沖縄』
      青磁社
      1,600円+税
      2015年9月刊行


      『入門 松尾芭蕉』
      長谷川櫂 監修
      別冊宝島
      680円+税
      2015年8月刊行


      『歌仙一滴の宇宙』
      岡野弘彦、三浦雅士、長谷川櫂
      思潮社
      2000円+税
      2015年2月刊行


      『吉野』
      青磁社
      1,800円+税
      2014年4月刊行
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