古志金沢ズーム句会(2024年4月21日)
飴山忌または当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
一生や美しかりし桜鯛 長谷川櫂
うぐひすのこゑ金色に玉津島 玉置陽子
滴一滴しづくとなりて初音かな 趙栄順
美しきころのキーウか蜃気楼 清水薫
蟇穴を出て白山を仰ぎをり 玉置陽子
鞦韆や志村喬は父に似て 田中紫春
鯖鮓の生けるがごとし青嵐 長谷川櫂
【入選】
花筏綿毛を運ぶ舟もをり 田村史生
吾が挙動じつと見詰める春の蠅 清水薫
葉ざくらや氷枕に母眠る 飛岡光枝
練り合わせて香木にせん春の闇 玉置陽子
大の字に寝るや兼好花筵 飛岡光枝
親の背中取り合ふ亀や沼の春 藤倉桂
白蓮は月の育てし花ならん 間宮伸子
御開帳おん目の見ゆるごとくにて 橋詰育子
ミサイルや桜蕊降る街に居て 花井淳
車座にふたたびもどり春惜しむ 宮田勝
山吹の句碑にもあはん三室戸寺 泉早苗
五百句の花咲きみちる句集かな 玉置陽子
指揮棒も指揮者の髪も青嵐 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
葉ざくらや氷枕に母眠る 飛岡光枝
速達が二度来る花の日なりけり 宮田勝
親の背を取り合ふ亀や沼の春 藤倉桂
でで虫のひたと吸ひつく紅椿 近藤沙羅
桜鯛捌けば響く骨の音 稲垣雄二
【入選】
変はりゆく世に追ひこされ更衣 梅田恵美子
昼の雨妻と名残りの桜餅 稲垣雄二
柳腰の鮎うつくしや炭の上 飛岡光枝
春蘭にやあと渓流水しぶき 酒井きよみ
まぶしさや家の中まで花菜畑 酒井きよみ
五百句の花咲きみちる句集かな 玉置陽子
ひらくかしら泰山木の大蕾 飛岡光枝
第二句座
席題:「蜃気楼」、「竹の子」
・鬼川こまち選
【特選】
筍や穂先三寸ことのほか 長谷川櫂
筍の息吹受け止む足裏かな 氷室茉胡
猪のさらひたる跡筍の皮 川上あきこ
竹の子の摩天楼へと迷ひ込む 田村史生
あをあをと国滅びゆく蜃気楼 玉置陽子
筍や尻どっしりと国造り 山本桃潤
まだ夢を見てゐる筍届きけり 玉置陽子
大地震に竹の子山の深き創 清水薫
【入選】
暁や筍の土の膨らみを 山本桃潤
初筍この一本を余すなく 趙栄順
筍のぐらり寝返る鍋の中 玉置陽子
禅寺の竹の子鬱と伸びゆけり 飛岡光枝
追ひかけて追ひかけて君は蜃気楼 田中紫春
かえりみる数多の出会ひ蜃気楼 清水薫
竹の子に敗けず伸び行け能登の子ら 清水薫
筍届く三十年来句友なり 間宮伸子
筍や薮の起伏の日だまりに 松川まさみ
僧若し日がな筍掘る修行 越智淳子
筍の重ねの衣をごそと剥ぐ 松川まさみ
筍の皮むかされてゐたりけり 橋詰育子
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
筍のぐらと寝返るお湯の中 玉置陽子
海市立つたつた一人の旅人に 越智淳子
【入選】
初筍この一本を余すなく 趙栄順
水桶に浮かぶ筍如何にせん 趙栄順
禅寺の筍鬱と伸びゆけり 飛岡光枝
立山の雨が消したり蜃気楼 泉早苗
筍の皮の散らばる山廬かな 飛岡光枝