古志仙台ズーム句会(2024年4月28日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
黒鯛の鋼の鱗はがしけり 長谷川櫂
象の鼻五月の空を振り回す 上村幸三
たらちねは朧の中に存すかな 齋藤嘉子
亡き人の席を設けて花御膳 武藤主明
春の蝶しづかに月を待ちゐたり 三玉一郎
【入選】
わが杖も花の杖とや吉野山 平尾 福
犬と寝て総身に受ける春日かな 青沼尾燈子
日時計に影のなき午後万愚節 阿部けいこ
猿芸の猿と目の合ふ花の昼 佐伯律子
葱坊主ひと皮むけて中学生 那珂侑子
父母の声のきこゆる春の山 齋藤嘉子
風吹かば風の形の柳かな 臼杵政治
春耕や鋤く度退がる己が影 臼杵政治
長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
ひんやりと朝の太陽新茶かな 上村幸三
日時計の影のひときは薄暑かな 石川桃瑪
みちのくの孤立みごとや瀧桜 青沼尾燈子
【特選】
一年生お花見給食花の下 長谷川冬虹
犬と寝て総身に浴びる春の月 青沼尾燈子
蝮草傲然と我見やりをり 那珂侑子
父母の呼ぶ声きこゆ春の山 齋藤嘉子
種浸す能登の未来を念じつつ 辻奈央子
【入選】
家産もう吾も弟も耕さず 臼杵政治
花筵はひ出してしまふ赤子かな 辻奈央子
わが杖も花の杖とや吉野山 平尾 福
鯉のぼり泳ぐや今朝は東へ 平尾 福
老若の海女朝焼けに染まりけり 辻奈央子
葉桜や沸いてケトルのなりやまず 佐伯律子
鮠の子は自分の影と遊びをり 平尾 福
初夏のみどり耀ふ月の山 上村幸三
春の日に包まれてゐる句集かな 那珂侑子
蔵王から月山かけて春の虹 齋藤嘉子
第二句座 (席題:鯵、桑の実、父の日)
長谷川冬虹選
【特選】
父の日や少しいびつなオムライス 甲田雅子
桑いちご弟はいつも見張り役 佐伯律子
父の日はさらり流せと子らに告げ 青沼尾燈子
父の日や父そつくりの歩き方 臼杵政治
母の日を頑張りすぎて父の日よ 那珂侑子
【入選】
桑の実やいつも素足にゴム草履 上村幸三
教はりてこれが桑の実拾ひけり 那珂侑子
くわの実の落ちて華やぐ地べたかな 辻奈央子
父の日や碁打ちの集ふ公民館 佐藤和子
父の日や父の日記に弱音あり 佐伯律子
三枚におろして太き鯵の骨 阿部けいこ
唇も手指も桑の実の色よ 臼杵政治
父母のをらぬ古里桑いちご 佐藤和子
決めありぬ一枝は我の桑いちご 佐伯律子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
蚕飼ひせぬ家の桑の木鬱蒼と 服部尚子
三枚におろして太し鯵の骨 阿部けいこ
友の顔帽子いつぱい桑いちご 齋藤嘉子
桑の実やかつて蚕と共に寝て 武藤主明
父母のをらぬ古里桑いちご 佐藤和子
【入選】
威勢よく運ぶ漁港の鯵定食 谷村和華子
父の日のかくも無色に過ぎにけり 青沼尾燈子
くわの実の落ちて華やぐ地べたかな 辻奈央子
鯵の皮ぴりつと剥いて喰らひけり 上 俊一
母の日のついでに祝ふ父の日よ 武藤主明
鯵ひらく夕星のまだ低きこと 谷村和華子
懐かしや肥やしの匂ひと桑の実と 上村幸三
唇も手指も桑の実の色よ 臼杵政治
決めてあり一枝はわが桑いちご 佐伯律子
あれも喰はずこれも嫌ひの父の日よ 長谷川冬虹
母の日を頑張りすぎて父の日は 那珂侑子
父の日や墓前に語る新句集 長谷川冬虹