「俳壇」(本阿弥書店)4月号に「二度目の俳句入門」④が掲載されています。「発想に問題のある俳句」は捨てるしかないという話。
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《故郷の肖像》「よかよかの明暗」③
3月10日(木)の熊本日日新聞に「故郷の肖像」第2章「よかよかの明暗」③が掲載されています。笠智衆と「東京物語」の前編。
毎月第2木曜日掲載です。
古志鎌倉ズーム句会(2025年3月9日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
角と角しかと嚙ませて焼栄螺 金澤道子
もどかしき恋を囀る一羽あり 葛西美津子
生涯の伴侶得たるや卒業す 神谷宣行
生まれしは紙一重なり東京大空襲忌 佐藤森恵
【入選】
流氷の隙あをあをと軋み合ふ 長谷川櫂
武蔵野は雪降り初めて春の声 藤原智子
長閑さといふ大嘘の街をゆく イーブン美奈子
金婚のいま莟あり梅の花 藤原智子
バンコクの寝釈迦のびやか金の闇 西川遊歩
母の杖こつんとうららけき春へ 葛西美津子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特々選】
船降りてつづく椿のくらき道 土井頼温
紅梅の優に五尺を甕に挿す 仲田寛子
つがひにも少し飽いたか春の鴨 藤英樹
【特選】
金網に角を嚙ませて栄螺焼く 金澤道子
人間に踏まれし草も草の餅 イーブン美奈子
初諸子炙る煙や浮御堂 土井頼温
その一羽恋もどかしと囀れり 葛西美津子
蛍にはならで田螺の鳴きにけり 葛西美津子
【入選】
あれ飛んだほれ落ちるなよ雀の子 きだりえこ
花冷やステージ4の御託宣 園田靖彦
順々に行きわたりけり桜餅 仲田寛子
鳴き交わす恋の声なる蟇 森永尚子
杉花粉浴びて鴉もしやがれ声 仲田寛子
囀りや阿修羅は眉根寄せしまま 金澤道子
参道をよぎる江ノ電うららかに 金澤道子
花桃やこれより耄碌楽しまん きだりえこ
叫喚の浅利の舌や砂を吐く 関根千方
第二句座 (席題:大根の花、観潮)
•藤英樹選
【特選】
渦見船渦に見られてゐるごとく イーブン美奈子
観潮に一度のまれてみたきかな 吉田順子
うすうすと大根の花飛鳥寺 きだりえこ
伊弉諾の矛の名残や鳴門渦 鈴木榮子
渦潮のひかりを浴びる船の上 萬燈ゆき
【入選】
口あけて海の咆哮観潮船 神谷宣行
おぼつかな身をせり出して観潮船 きだりえこ
大根を掘り忘れたり白い花 土井頼温
渦潮のへりを滑つてゆくところ 葛西美津子
渦潮の大独楽のごと傾ぎけり 長谷川櫂
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
口あけて渦の咆哮観潮船 神谷宣行
渦見船渦に睨まれゐるごとく イーブン美奈子
恐ろしき真青の中へ渦見船 イーブン美奈子
観潮船渦の底より戻り けり イーブン美奈子
【入選】
観潮や度胸だめしのガラス床 森永尚子
大渦は観潮船を呑まんとす 園田靖彦
観潮やぐるりと船のまはりつつ 藤原智子
そろそろと近づいてゆく観潮船 おほずひろし
観潮船渦の真中にゐるらしく 藤英樹
観潮船大揺れのたび絶叫す 藤英樹
船長にすがる他なし観潮船 田中益美
渦潮のへりを滑つてゆくところ 葛西美津子
観潮船かもめもわれもくるくると 澤田美那子
渦潮のひかりを浴びる船の上 萬燈ゆき
古志広島ズーム句会(2025年3月2日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
那谷寺の初音待つころ飴山忌 大場梅子
歌の張りその声の張り梅一輪 長谷川櫂
春眠を胎児のごとく貪りぬ 今村榾火
流し雛二人つきりの世界かな 長谷川櫂
もう一度花種を蒔く大地たれ 大場梅子
【入選】
畳紙をひらけば絹の囀れり 高橋真樹子
残雪に真つ赤な椿汀子の忌 安藤文
菜の花やどの畦道も通学路 今村榾火
陽炎や世界大きく軋みゆく 斉藤真知子
重箱に畏まつたり草の餅 今村榾火
もう春が来たかと河馬の大欠伸 ももたなおよ
かけうどん宿まだ遠き遍路道 米山瑠衣
若きらの門出何処にも杉花粉 ももたなおよ
おうおうと忠度が呼ぶ桜かな 石塚純子
週末の机にひとり雛あられ 高橋真樹子
さまざまな恋を雛の左大臣 神戸秀子
春蘭をたづね猪肉貰ひ来し 加藤裕子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
老木の幹の中から春の音 ストーン睦美
勇気こそ老の大切梅一輪 金田伸一
【入選】
春窮やあるところにはありて米 原京子
真白な十勝連峰ひな祭り 高橋真樹子
囀りや甕をずらりと韓の庭 神戸秀子
店先の桶にあをあを新若布 米山瑠衣
水飲みにくる蜜蜂の羽音かな 加藤裕子
第二句座(席題:蝌蚪、卒業)
・矢野京子選
【特選】
蝌蚪掬ふ腸かくも柔らかし 瑞木綾乃
十次元の世界に向ひ卒業す 駒木幹正
園児らの動きそのまま蝌蚪の群 原京子
【入選】
ふるさとに忘れものあり卒業子 今村榾火
蝌蚪の国のぞき込んだる眼かな 高橋真樹子
卒業す少女エクボを引き絞り 岡村美沙子
大股で独り大きく卒業す 城山邦紀
やはらかにぶつかりあへり蝌蚪の国 安藤文
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
やはらかにぶつかりあへり蝌蚪の国 安藤文
【入選】
国籍も思想もなくて蝌蚪あそぶ 矢野京子
校庭の砂嵐浴び卒業す 神戸秀子
森ふかく山椒魚の孵りけり 神戸秀子
集まつて何の談義や蝌蚪の国 斉藤真知子
蝌蚪の国ブラックバスが蹂躙す 安藤文
古志仙台ズーム句会(2025年2月23日)
古志仙台ズーム句会(2025年2月23日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
どか雪やみしみし梁を軋まする 武藤主明
夫の忌の近づく日ざし雨水かな 甲田雅子
屋根の雪振るひ落とせよ夜の地震 武藤主明
多喜二忌や原発汚水海に入る 甲田雅子
【入選】
菜の花は天から降つてくる孤独 三玉一郎
きさらぎの雲のしろさよ母の忌よ 甲田雅子
松どれもまだ菰を巻く余寒かな 臼杵政治
聞き耳をたててラジオの春一番 石川桃瑪
うち一人恋をしてゐる官女雛 青沼尾燈子
展示会蔭で見てゐる菊師かな 青沼尾燈子
進級す素数の好きな女の子 及川由美子
畦を焼く煙の向こう太平洋 平尾 福
さくらもち皮をさくらの色に焼く 宮本みさ子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
雪吊の大きな雪の花ひらく 上村幸三
白鳥は憂ひの羽をたたみけり 武藤主明
牡丹の芽はや大輪の兆しあり 川辺酸模
【入選】
走れなくなりし犬ゆく春野かな 青沼尾燈子
きさらぎの真白き雲よ母の忌よ 甲田雅子
寝た切りの母へ一枝梅の花 川辺酸模
どら猫の恋もさめたる寒さかな 川辺酸模
天空に風の鳴る日や藪椿 平尾 福
目覚むれば音無き世界雪の村 佐藤和子
畦を焼く煙の向こう太平洋 平尾 福
デラシネは闘ふ句集梅真白 長谷川冬虹
春炬燵足の先から眠くなり 宮本みさ子
柚子味噌を練れば名残の雪が降る 齋藤嘉子
【第二句座】(席題:飴山忌、草青む、花鳥)
長谷川冬虹
【特選】
比良に雪まだ残りたる飴山忌 平尾 福
實の忌近江の水を供へけん 上村幸三
光堂ひかりこぼれて草青む 長谷川櫂
草青むファーストシューズで大地踏む 谷村和華子
【入選】
御母堂のもとへ逝きしや草青む 青沼尾燈子
花鳥や失語症なる人に来よ 佐伯律子
鐘の音はゆつたり聴かむ飴山忌 青沼尾燈子
花鳥も涙を落とし原発忌 平尾 福
推敲の頬杖長し飴山忌 佐藤和子
観音の大悲の草の青みけり 長谷川櫂
草青むかつてはここに代官所 武藤主明
をちこちに遊ぶ赤牛草青む 川辺酸模
下萌や犬を歩ます散歩道 川辺酸模
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
花鳥も涙を落とす原発忌 平尾 福
選句する灯小さし飴山忌 三玉一郎
丈を越す雪の下さへ草青む 服部尚子
【入選】
花鳥の競ふ袂や謝恩会 服部尚子
人々の待つ次の花飴山忌 上村幸三
花鳥のこゑは昨夜の夢にあり 甲田雅子
花を詠む残生の日々飴山忌 臼杵政治
花鳥の声が下から多武峰 齋藤嘉子
古志金沢ズーム句会(2025年2月16日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
龍太忌の甲斐に目覚むるものばかり 趙栄順
春立つや瓦礫の山を野にさらす 稲垣雄二
紀元節ろうろう福祉となりし能登 密田妖子
住みながらこの国遠き余寒かな 趙栄順
白山は巨大鯨の化身かな 清水薫
滔滔と金の春泥クリムトは 玉置陽子
糸魚川雪解突き出る小枝かな 越智淳子
一身が鼓動となりて畑を打つ 趙栄順
闘病の一巡りして梅見かな 土谷眞理子
ひたひたと薄氷かへる空の底 松川まさみ
【入選】
きさらぎの雲を潜りて観覧車 田中紫春
飛梅の花の飛びくる日和かな 飛岡光枝
ぎんねずの夜空を割りて春が来る 間宮伸子
雪折れの枝を束ねて挿しにけり 花井淳
夕暮れをひとり葱抜く龍太の忌 藤倉桂
鬼の世へひときは青き柊挿す 安藤久美
生へ死へ花の波舞ふ能登の春 稲垣雄二
枝枝の叫び屋根雪落ちるごと 花井淳
能登の畔ずたずたのまま春立てり 稲垣雄二
俎板の何かを知らぬ海鼠かな 清水薫
孕み鹿満月に身を任せをり 田村史生
毛筆は母におよばず流れ海苔 密田妖子
五色豆京洛の春かみしめる 泉早苗
春炬燵青春の愚痴老ひの夢 田村史生
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
住みながら遠きこの国余寒かな 趙栄順
俎板の上とも知らぬ海鼠かな 清水薫
白山は巨大な鯨雪の原 清水薫
一巡りせん闘病の梅見かな 土谷眞理子
【特選】
恋猫の懺悔しやるか椅子のもと 宮田勝
抜け落ちて八十の歯や冬の果 清水薫
春立つや酒の名前も甕覗 飛岡光枝
【入選】
まだ誰も入らぬ墓や梅の花 間宮伸子
春立つや母へ一切かすていら 飛岡光枝
もう一度汁粉作らん春の果 間宮伸子
雪折れの花芽の枝を束ねては 花井淳
春立つやずたずたのまま能登の畔 稲垣雄二
寿司提げて夫へ帰るや夜の雪 鬼川こまち
紅梅のまどろみゐるや昼の雪 近藤沙羅
第二句座
席題:「春の水」、「引鶴」
・鬼川こまち選
【特選】
春の水田に引き入れて農一年 稲垣雄二
一筋のしじまとなりて鶴帰る 趙栄順
春の水供へて君と語らんや 田村史生
鶴引くや少し欠けたる昼の月 田村史生
黒々と銀の太陽鶴引けり 長谷川櫂
鶴帰る空に港があるごとく 間宮伸子
【入選】
飛び立つとき声たくましや鶴引けり 酒井きよみ
頸伸べて氷る山越へ鶴帰る 梅田恵美子
引鶴やみるみる空はがらんどう 宮田勝
ひと滴またひと滴春の水 趙栄順
引鶴や下宿へ送る大荷物 密田妖子
鶴引くや雲より白し母の骨 玉置陽子
みほとけの山のこゑあり春の水 宮田勝
鶴帰る君の故郷に誰ぞ待つ 川上あきこ
春の水飲み干してまた駆け出せり 田村史生
春の水舟を浮べてでかけませう 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
春の水ことにやはらか大拙館 密田妖子
鶴引くや雲より白き母の骨 玉置陽子
【入選】
春の水吸うて鞠麩は花の色 安藤久美
一筋のしじまとなりて鶴帰る 趙栄順
菊渓を流れてここへ春の水 泉早苗
三本の包帯濯ぐ春の水 泉早苗
《故郷の肖像》2月13日の熊日に「よかよかの明暗」②
2月13日の熊日に「故郷の肖像」第2章「よかよかの明暗」②が掲載されました。
河野裕子さんの祖母、「偉大な女」ジュネさんのことなど。
毎月第2木曜日、掲載予定です。
二度目の俳句入門③、「俳壇」3月号に
「俳壇」(本阿弥書店)3月号に「二度目の俳句入門」③が掲載されています。「第二の俳句の落とし穴」について。
古志雪中ズーム句会2025年2月11日
長谷川櫂 選
一座目 | |
【特選】 | |
春山や白き白山真正面 | 梅田恵美子 |
白山の四方にダムある雪解かな | 花井淳 |
降り積もる雪払はず浮寝かな | 岩井善子 |
【入選】 | |
春立つや屋根にいただく雪五尺 | 北側松太 |
雪晴間猿の親子に出くはしぬ | 密田妖子 |
雪の夜や松の薪足す登り窯 | 斉藤真知子 |
雪の山一歩に景のうつりけり | 梅田恵美子 |
雪踏むや昨日の道も雪の下 | 高橋慧 |
雪しまき納沙布の海渡りくる | 髙橋真樹子 |
立春大吉雪に埋もるる古志の国 | 岩井善子 |
栗鼠眠る真白き闇の雪の森 | 岩井善子 |
浴室の窓が真白大吹雪 | 密田妖子 |
* | |
二座目 | |
【特選】 | |
灯一つ吹き埋めたる吹雪かな | 飛岡光枝 |
雪空の力の限り大吹雪 | 越智淳子 |
まつさらな雪の浄土の朝寝かな | 梅田恵美子 |
切り出して雪塊四角雪卸し | 越智淳子 |
輝いて子供の声や雪の上 | 岩井善子 |
【入選】 | |
酸ヶ湯では風にも雪が積もるとや | 三玉一郎 |
鵯やほたほたと降る春の雪 | 岩井善子 |
みちのくや吹雪の果の星一つ | 三玉一郎 |
とにかくに昭和百年春の雪 | 飛岡光枝 |
浮き上がる亀の頭へ春の雪 | 斉藤真知子 |
精進や雪より白き胡麻豆腐 | 安藤久美 |
北国や春だ春だと雪の中 | 花井淳 |
魂あそぶ雲一つなき寒の空 | 梅田恵美子 |
古志鎌倉ズーム句会(2025年2月9日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
榛名富士影差すところ公魚釣 園田靖彦
燃へ先をうかがってゐる野火の群れ 園田靖彦
この春は春遠かりき瓦礫山 葛西美津子
父祖の地や冷たきままの春の土 森永尚子
口重き父の愛せし椿咲く 金澤道子
【入選】
金色の冬日は波に漂へり 葛西美津子
野遊や友と分けあふ日の匂ひ 吉田順子
冬の蝶日和の石にうづくまる 長谷川櫂
赤鬼トランプ青鬼プーチンやらふべし 関根千方
かつて子をいま白菜を自転車へ 藤原智子
公魚にあけぼの光る糸の先 澤田美那子
二月の光まつすぐ白障子 澤田美那子
のどに喉飴目には目薬ひなたぼこ 仲田寛子
フェークやも知れぬ福あり福は内 仲田寛子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
中風の祖父のをりけり春火鉢 森永尚子
春立つや氷を叩く石叩 藤英樹
こんなにも目白がゐたか梅の花 藤英樹
ヒヨドリの満喫したる椿かな 金澤道子
【入選】
子を乗せし自転車にけふ白菜を 藤原智子
奥能登は春遠かりき瓦礫山 葛西美津子
第二句座 (席題:春泥 、北窓開く)
•藤英樹選
【特選】
春の泥眠りてはまた凍りたる 藤原智子
八雲立つ出雲北窓開きけり イーブン美奈子
春泥にまみれる象の歓喜かな 関根千方
めざす本見つけ北窓開きけり 木下洋子
掻き出す我が子の骸春の泥 きだりえこ
【入選】
修道女高き北窓ひらきけり 葛西美津子
春泥に雀の遊ぶ日差しかな 土井頼温
春泥の飛沫に逃げてまた踏んで 鈴木榮子
春泥の道引き返すには遠く イーブン美奈子
春泥や足どり軽き猪の跡 仲田寛子
春泥やガザへと帰る人の列 きだりえこ
舗装路のあつといふまに春の泥 澤田美那子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
春の泥微睡ゐてはまた凍る 藤原智子
春塵やガザへと帰る人の列 きだりえこ
春泥の道をはるばる来し人よ 藤英樹
【入選】
北窓をひらく新風起こるべし 藤英樹
春泥やおつかなびつくりスニーカー 葛西美津子
ねばりつく春泥のごと母の愛 神谷宣行
春泥や引き返すには遠き道 イーブン美奈子
春泥のかはきて風に舞ふ江東 森永尚子
北窓開く隣の屋根に猫のたま 葛西美津子
北窓を開くや山廬蔵座敷 西川遊歩
春泥や昔を偲ぶ気比詣 澤田美那子
春泥によごれし顔の愛ほしく おほずひろし
春泥にまみるる象の歓喜かな 関根千方
北窓をひらけばそこに瓦礫山 おほずひろし