「中央公論」(中央公論新社)10月号の熊本特集にエッセイ「怪獣モッコス」が載っています。
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古志鎌倉ズーム句会(2024年9月8日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
八月を呑み込んでゆく夕焼かな イーブン美奈子
部屋まるでお化け屋敷やいなびかり 森永尚子
台風報ひもの少々買ひたしぬ 湯浅菊子
稲妻は水なき空を走りけり 長谷川櫂
秋風の君住む街や眺め過ぐ 髙橋真樹子
痩せこけて眼ん玉ぎよろり鮎下る 園田靖彦
【入選】
大空が瀑布をなせり大白雨 長谷川櫂
舟ゆくや霧を抜けては霧に入り 関根千方
けさ秋の海すべりゆくヨットあり 木下洋子
蟻地獄この静寂に誘はれて 木下洋子
黄の喉みせて鯉くる今朝の秋 仲田寛子
男踊りの腰深く折り風の盆 わたなべかよ
病巣の影なき身体秋高し 神谷宣行
目に耳に八月の修羅ことごとく イーブン美奈子
ラ・フランス一日待てと又妻が 西川遊歩
爽やかや川をはなるる川の音 おほずひろし
あの渓の欠片の硯水の秋 西川遊歩
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特々選】
長き柄の細きを秋の団扇とす 澤田美那子
小年は大河を泳ぐ敗戦日 イーブン美奈子
卵割つて黄身の高しや今朝の秋 佐藤森恵
朝顔のうしろにしんと昨日あり 髙橋真樹子
あの崖の欠片の硯水の秋 西川遊歩
【特選】
ざらざらを喜ぶ刃梨を剥く 葛西美津子
八月を呑み込んでゆく夕焼かな イーブン美奈子
台所汚さぬやうに秋刀魚焼く 髙橋真樹子
腰深く踊る男や風の盆 わたなべかよ
獣の匂ひをさせて台風来 藤英樹
アルプスの水に冷やして桃ひとつ 高橋真樹子
【入選】
つぎつぎと蕾かかげぬ秋の薔薇 吉田順子
露草に小さき骸埋めけり 藤原智子
黄の喉あけて鯉よる今朝の秋 仲田寛子
部屋まるでお化け屋敷やいなびかり 森永尚子
これがかの蟋蟀相撲の土俵とや 西川遊歩
台風や鯵のひものを買ひたしぬ 湯浅菊子
秋高き身に病巣の影もなし 神谷宣行
敗戦日より太陽の子となりき イーブン美奈子
抽んでて秋明菊は花支度 金澤道子
秋冷や川を流るる川の音 おほずひろし
ラ・フランス一日待てと妻が又 西川遊歩
第二句座 (席題:猿酒、青蜜柑)
•藤英樹選
【特選】
もてなされ猿酒とは知らざりき 萬燈ゆき
もう二度とたどり着けない猿酒 木下洋子
猿酒やなめとこ山に分け入りて 葛西美津子
青みかん誰か剥いてる夜行バス 金澤道子
海風に照る青蜜柑崖なして 葛西美津子
蒼白き月が醸すや猿酒 萬燈ゆき
【入選】
ましら酒不老長寿と教えられ おほずひろし
青みかんむひて病室さわやかに 田中益美
猿もまた乙女の醸す猿酒 長谷川櫂
風待ちの船を見下ろす青みかん わたなべかよ
戸隠の鬼より掠めましら酒 金澤道子
空をゆく悟空の腰にましら酒 おほずひろし
•長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
蟻と蜂沈んでをりぬ猿酒 佐藤森恵
東塔の向こう西塔青みかん きだりえこ
青蜜柑蝶の惑うて近づき来 佐藤森恵
梛の木の月が醸すや猿酒 萬燈ゆき
青蜜柑ひからびたわがくちびるへ 森永尚子
【入選】
青蜜柑割つて豊かな飛沫浴ぶ 澤田美那子
もう二度とたどり着けない猿酒 木下洋子
青みかんむいて病室さはやかな 田中益美
猿酒さがして出羽の山深く 萬燈ゆき
ネット投句(2024年7月31日)特選
つるのびて天上天下ががいもの花 | 北海道 | 芳賀匙子 |
荒梅雨や大蛇のごとく最上川 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
ほととぎす記憶の谷から聞こえくる | 千葉 | 木地隆 |
遠くまで見えてバス来ぬ酷暑かな | 東京 | 櫻井滋 |
木から木へ燃え移るなり蝉の声 | 神奈川 | 三玉一郎 |
青年の裸のまぶし牛洗ふ | 新潟 | 安藤文 |
初蝉や身の裂けるほど泣くがよし | 石川 | 北村おさむ |
軽井沢産のビールは冷えて着く | 長野 | 金田伸一 |
わなわなと忍び泣く花烏瓜 | 静岡 | 湯浅菊子 |
日の熱の残る暗闇蛍飛ぶ | 愛知 | 稲垣雄二 |
金メダル地獄を見きとさはやかに | 大阪 | 澤田美那子 |
炎天や黙礼交す杖と杖 | 大阪 | 澤田美那子 |
風の来て大海原となる青田 | 兵庫 | 吉安とも子 |
夜が明けて魔法の解けし蛍かな | 奈良 | 中野美津子 |
口紅のどろりと溶くる炎暑かな | 奈良 | 中野美津子 |
紀ノ国は大空の中夏の果 | 和歌山 | 玉置陽子 |
愛せざる哀しみもあり梅を煮る | 広島 | 森恵美子 |
蝉時雨遥かに我のゐたりけり | 広島 | 森恵美子 |
明易の何の報ひやこの病苦 | 高知 | 森脇杏花 |
素潜りの少年魚群の中にかな | 長崎 | ももたなおよ |
「水俣病発見の日」は昭和31年5月1日
「古志」九月号の長谷川櫂連載「二度目の俳句入門」で「水俣病公式発見の日」が「一九五八年(昭和三十三年)五月一日」とあるのは「一九五六年(昭和三十一年)五月一日」の誤りでした。
ネット投句(2024年7月15日)特選
生き方の異なる母の髪洗ふ | 神奈川 | 植木彩由 |
散り敷きて今日の命や凌霄花 | 新潟 | 高橋慧 |
かすむ目にもつと光を雲の峰 | 長野 | 金田伸一 |
三伏や顔まつかにし卯の花炒る | 静岡 | 湯浅菊子 |
夏帽子大地に置きて黙祷す | 愛知 | 稲垣雄二 |
寝返りの骨が軋むや夏の夜 | 奈良 | きだりえこ |
妻死さば我は骨なし古団扇 | 長崎 | 川辺酸模 |
古志広島ズーム句会(2024年9月1日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
石あらばたれの墓ぞと秋遍路 矢田民也
神仏吹き飛ばされし野分朝 城山邦紀
銀漢や我が光陰はホ句の中 今村榾火
不知火の言葉の海へ帰省かな 長谷川櫂
父と子のだんまり続く榠樝の実 石塚純子
【入選】
独り居をたたくはクイナばかりなり 岡村美沙子
祝はれて酔ひほのぼのと温め酒 菅谷和子
ひとつ咲き暑さ嫌いの牽牛花 加藤裕子
ちちははと居た日は遠し初秋刀魚 高橋真樹子
荼毘に付すしづかな時を鉦叩 今村榾火
若冲の鶏になりたや羽抜鶏 大平佳余子
旅立つ日金魚を池へ放ちやる 伊藤靖子
すいつちよのちよいと飛び込む勝手口 ストーン睦美
ひげ生やし息子現はる盂蘭盆会 夏井通江
台風のぐづらぐづらや大混乱 大平佳余子
いびつでも愛しき家族吾亦紅 瑞木綾乃
お七夜を終えて連れ出す地蔵盆 ももたなおよ
先生の魔法の手なり小鳥来る 大場梅子
水柱噴いて厄日のマンホール 神戸秀子
アルプスの雫よシャインマスカット ももたなおよ
竹伐りの音叡山にこだまする 大平佳余子
やはり道間違へたらし秋の山 原京子
邯鄲と母が教へてくれし日よ 斉藤真知子
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
もう裂けるところはあらず破芭蕉 斉藤真知子
竹を伐る音こだませり比叡山 大平佳余子
にぎやかに月より戻る屋形船 今村榾火
【入選】
亡き犬が来て寄り添ひぬ秋の夜 夏井通江
悶々と術後の夜長いかにせん 大場梅子
野分晴マッターホルンのような雲 伊藤靖子
朝からの秋の暑さに家ごもり 夏井通江
台風に灼熱列島ひと呼吸 加藤裕子
やはり道間違へたらし秋の山 原京子
ふるさとの墓仕舞しぬつくつくし 神戸秀子
白桃を剥きゐて静かなる夜かな 斉藤真知子
赤ん坊も母も眠りぬ涼新た ももたなおよ
人無惨草木無惨秋に入る 矢野京子
台風一過青空のぼりゆく一機 斉藤真知子
第二句座(席題:朝顔、秋高し)
・矢野京子選
【特選】
山一つ湖に浮かべて秋高し 高橋真樹子
朝顔棚藍一色の瀧をなす 長谷川櫂
朝顔の色を殺してしぼみけり 矢田民也
【入選】
朝顔の開きそこねに手をかして 大平佳余子
秋高し放たれし犬まっしぐら 石塚純子
朝顔が見送ってゐる登校子 石塚純子
年ごとに色淡くなり牽牛花 原京子
朝顔にきのふの夜の匂ひあり 高橋真樹子
朝顔やきのふの花をもう忘れ 斉藤真知子
この先はすべてが記録秋高し 金田伸一
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
朝顔や今朝は不調の俳句会 金田伸一
秋高しされど不作や秋津洲 菅谷和子
朝顔や今朝の花さへもう忘れ 斉藤真知子
【入選】
父愛す藍の朝顔ひらきけり 菅谷和子
秋高し放たれし犬まっしぐら 石塚純子
朝顔の一輪ひらく大事かな 斉藤真知子
朝顔と大きく書きぬ種袋 高橋真樹子
古志仙台ズーム句会(2024年8月25日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
死ねといふ時代ありけり敗戦忌 長谷川櫂
もう何も叱らぬ父よ墓洗ふ 川辺酸模
産土の神に捧ぐる村歌舞伎 武藤主明
そのうちに行くよと洗ふ墓一基 及川由美子
【入選】
初さんま白長靴の衆走り 及川由美子
閑けさを両手につつみ鳩を吹く 上村幸三
名にし負へど花色やさし弁慶草 服部尚子
見得切つて舞台に出づる夏の月 武藤主明
遠萩や波うねりたる海に似て 及川由美子
高まりて徐々に早まる蝉の声 川村杳平
真夜中の風生臭き鵺の笛 武藤主明
流星群見て来た妻の寝顔かな 平尾 福
煮えたぎる暑さの底に秋生まる 齋藤嘉子
一生を地歌舞伎支ふ黒子役 宮本みさ子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
白桃の一つ小籠に眠りをり 石川桃瑪
蜩は夢から覚めて鳴き始む 平尾 福
もう何も叱らぬ父よ墓洗ふ 川辺酸模
【入選】
つるはしを持ちて入営敗戦日 齋藤嘉子
黄泉の足この世に戻す踊りかな 臼杵政治
幸せな家族写真や敗戦忌 臼杵政治
母の焼く秋刀魚恋しき夕べかな 川辺酸模
栗飯や母の遺せし母子手帳 長谷川冬虹
煮えたぎる暑さの底に秋生まる 齋藤嘉子
そのうちに行くよと洗ふ墓一基 及川由美子
第二句座(席題:南瓜、飛蝗、地蔵盆)
長谷川冬虹選
【特選】
絵葉書をはみ出している赤南瓜 甲田雅子
脚一つ残して行きしバッタかな 平尾 福
おふくろと呼ばれ南瓜の煮物かな 那珂侑子
包丁の身動きできぬ大南瓜 甲田雅子
【入選】
ゆきすぎてゆきすぎがたし地蔵盆 長谷川櫂
切り分けて配り歩かん大南瓜 齋藤嘉子
群れなして猿が南瓜をひとつづつ 宮本みさ子
はたはたや兄が秘密の釣りの場所 上村幸三
いびつでも村一番の南瓜かな 佐伯律子
ふるさとの空うつくしき南瓜かな 三玉一郎
袋さげハシゴしてゆく地蔵盆 平尾 福
地蔵盆かつて間引のありし村 武藤主明
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
切り分けて配り歩かん大南瓜 齋藤嘉子
南瓜煮て愛のひと匙離乳食 谷村和華子
子どもらも猫も集まり地蔵盆 谷村和華子
包丁と力比べの南瓜かな 武藤主明
【入選】
ゴロゴロと夫のやうなカボチャかな 平尾 福
生れし子よ南瓜のごとき人となれ 川辺酸模
連れて来し母の手ぬくし地蔵盆 佐伯律子
きちきちのどつちへ飛んでも日がくれる 上村幸三
包丁の身動きできぬ大南瓜 甲田雅子
音たててもの食ふ螇蚸太き顎 齋藤嘉子
フレンチや南瓜スープにかしこまり 那珂侑子
地蔵盆かつて間引のありし村 武藤主明
古志金沢ズーム句会(2024年8月18日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
「魔の山」の秋一夜ごと深みけり 長谷川櫂
溽暑なる野辺切り裂きて新幹線 密田妖子
目指したる生前遺句集星月夜 氷室茉胡
桃食べてけむりのごとき息を吐く 趙栄順
黙祷の鼻にピアスや終戦日 田村史生
傷ひとつなき空残る原爆忌 安藤久美
かなかなやかなかなかなや母逝けり 飛岡光枝
大いなる木陰となりぬ紀伊の秋 玉置陽子
【入選】
帰省子は母の知らなひ香を纏ふ 山本桃潤
死受け入れば生は自由や涼新た 土谷眞理子
七夕や一夜かぎりの竹しなふ 安藤久美
ころりとは逝けぬあはれや羽抜鶏 梅田恵美子
囮追ふ鮎の気負ひを串に刺す 山本桃潤
西瓜食ぶはるかに父のハーモニカ 松川まさみ
高きよりふはりと小鳥展宏碑 泉早苗
ドームの名奪はれしまま原爆忌 安藤久美
母のなき母の病室けさの秋 飛岡光枝
ブルブルと秋のみ空を槍が飛ぶ 花井淳
天の川舟で辿れば美しきかろ 土谷眞理子
火の子抱く火の母親や原爆忌 稲垣雄二
馥郁と白桃傷む夜の底 玉置陽子
母を焼くからくれなゐの秋の風 飛岡光枝
能登きりこブルーシートの夏に立つ 花井淳
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
空に墓標海に墓標や敗戦忌 趙栄順
母を焼くからくれなゐの秋の風 飛岡光枝
ころりとは逝けぬあはれや羽抜鶏 梅田恵美子
蟬は鳴きトンボはとぶや終戦日 橋詰育子
六人の敵は送りぬ生身魂 稲垣雄二
【入選】
胸に手を当てれば聞こゆ秋の声 土谷眞理子
白桃を食べてけむりのごとくをり 趙栄順
七夕や一夜かぎりの竹しなふ 安藤久美
母のなき母の病室けさの秋 飛岡光枝
かなかなやかなかなかなや母逝けり 飛岡光枝
火の母が火のわが子抱く原爆忌 稲垣雄二
馥郁と白桃傷む夜の底 玉置陽子
天の川ほとりに栖みて新藁うつ 酒井きよみ
蜩や十一人で母送る 飛岡光枝
第二句座
席題:「踊」、「蜻蛉」
・鬼川こまち選
【特選】
潮風の香り渦なす踊かな 玉置陽子
徹夜をどり暮らし忘れてのっぺらぼう 間宮伸子
避難先より集まりぬ踊の輪 宮田勝
蜻蛉の光零れて楽園に 田中紫春
幽谷の光統べるや鬼やんま 藤倉桂
大土佐に生まれよさこい踊りかな 橋詰育子
【入選】
輪踊りや半拍遅れの園児たち 密田妖子
恐竜の眼が二つあかとんぼ 安藤久美
精霊も家族も総出盆踊り 田村史生
盆踊り後ろについて来しは誰 松川まさみ
踊りの輪タトゥー跳ねたる異邦人 氷室茉胡
踊り子のくるぶし綺麗ゆびさきも 川上あきこ
踊笠ことしは二夜被りけり 泉早苗
杭一本交互に分かち蜻蛉飛ぶ 越智淳子
実盛が萌黄縅か鬼やんま 長谷川櫂
ひとごゑも風に消えゆく踊りかな 安藤久美
少しづつ君へ近づく盆踊り 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
笠の内見せず女の手が踊る 安藤久美
少しづつ君へ近づく踊かな 田村史生
踊りけり冠灯籠消ゆるまで 飛岡光枝
踊笠ことしは二夜被りけり 泉早苗
【入選】
忘れじと折々すさる踊かな 松川まさみ
この椅子に一睡の幸赤とんぼ 花井淳
少年の誇りとしたり鬼やんま 橋詰育子
避難先より集まりて踊の輪 宮田勝
子を抱きて足で踊るや盆一夜 稲垣雄二
大土佐に生まれよさこい踊りかな 橋詰育子
うたたね歌仙「花の山姥の巻」満尾
《連衆》玉置陽子、松井恭子、高橋慧、三玉一郎、川辺酸模、青沼尾燈子、安藤文、岩井善子、飛岡光枝、佐藤森恵、齊藤嘉子、西川遊歩、中野美津子、湯浅菊子、北側松太、長谷川櫂(捌)
二〇二四年四月九日~八月十一日
【初折の表】
発句 花巡るいつぽんの杖ある限り 黒田杏子(春・花)
脇 霞さすらふ山姥となれ 酸模(春)
第三 もくもくと噴煙を上げ富士笑ふ 一郎(春)
四 帰還の兵のあふるる甲板 恭子(雑)
五 夕暮れて自由の女神月照らす 文(秋・月)
六 悪夢ふたたびトランプの秋 文(秋)
【初折の裏】
初句 世界みな恋する星のごとくあれ 嘉子(秋・恋)
二 ミロのヴィーナス仰ぐ少年 遊歩(雑)
三 乙女らの恥毛かがやく水遊び 嘉子(夏・恋)
四 流れにをどる梅花藻の花 善子(夏)
五 裏金と知りつつ誰も逆らはず 陽子(雑)
六 見猿聞か猿言は猿の森 中野美津子(雑)
七 ダーウィンの進化の果ての月氷る 遊歩(冬・月)
八 地球呑み込む一本の蔓 一郎(雑)
九 怖い夢ばかり見てゐる大統領 松太(雑)
十 春の空よりヘリ墜落す 善子(春)
十一 八咫烏いつせいにたつ花の山 松太(春・花)
折端 夏待ちきれぬ京の鉾町 一郎(春)
【名残の表】
初句 千年の夢より弥勒まだ覚めず 酸模(雑)
二 無垢の心の鉄腕アトム 櫂(雑)
三 七色のマーブルチョコが散らばつて 恭子(雑)
四 海響もして昇る太陽 陽子(雑)
五 都知事選妖魚も雑魚も賑やかに 善子(雑)
六 なめくじ笑ふででむしの角 酸模(夏)
七 天竺はまだまだ遠し火焔山 松太(雑)
八 クビライ一家夏の都へ 櫂(夏)
九 睡蓮の花ひらく音幽かなり 菊子(夏)
十 秋の揚羽は風に破れて 光枝(秋)
十一 寝たきりの母を照らせよ今日の月 光枝(秋・月)
十二 目を見開けば蟋蟀の闇 光枝(秋)
【名残の裏】
初句 竪坑の金山ひとつ掘りつくし 恭子(雑)
二 蕭条として野良犬の町 松太(雑)
三 三度目の大戦まで二十八時間 櫂(雑)
四 春の潮の音ものすごき 櫂(春)
五 古里を探しただよふ花筏 一郎(春・花)
挙句 千年たたばみなレンゲ草 櫂(春)
古志鎌倉ズーム句会(2024年8月11日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
今朝の秋日本国を地震はしる 吉田順子
ひしやげたる壜が叫ぶや原爆忌 木下洋子
家ごとに切り方違ふ西瓜かな 藤原智子
けさ秋のひとすぢ裂けし芭蕉の葉 葛西美津子
目覚めれば深む命や秋の朝 森永尚子
あかあかと八月の立つ焼野原 きだりえこ
【入選】
人の世の戦火を照らす天の川 吉田順子
故郷は遠きにありて盆踊り 湯浅菊子
燃え盛る太陽抱へ秋来る 神谷宣行
白毫のひかりしろがね秋兆す 金澤道子
オリンピック終はり近づく涼新た 田中益美
戦争はいつまで続く終戦日 おほずひろし
香水の一滴にして氷の香 長谷川櫂
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
故郷は遠くにありて盆踊り 湯浅菊子
白毫のひかりしろがね秋兆す 金澤道子
八月や炎の槍を槍投げは 森永尚子
神の手や妖しき鴉瓜の花 仲田寛子
地の底も煮えたぎるかや迎へ鐘 藤英樹
【入選】
今朝の秋日本列島地震はしる 吉田順子
燃え盛る太陽抱へ秋来る 神谷宣行
兜虫子ども眠ればかさこそと 藤原智子
けふもまた危険な暑さ原爆忌 萬燈ゆき
兜かと思へば釜か秋の風 森永尚子
けさ秋のひとすぢ裂けし芭蕉の葉 葛西美津子
水道の水生ぬるし終戦日 葛西美津子
タワービル昔穴子の穴場なり 関根千方
蜻蛉や水を探して水の上 葛西美津子
四歳の記憶火の海敗戦忌 金澤道子
祖父を継ぐ語り部若し原爆忌 萬燈ゆき
第二句座 (席題:花火、大豆)
•藤英樹選
【特選】
四方八方ガラスのビルや揚花火 イーブン美奈子
残業の窓より見やる遠花火 木下洋子
遠花火江戸は戦のなき世かな 関根千方
背なの子の深き眠りや花火果て 金澤道子
【入選】
大欅どんと揺らして大花火 藤原智子
大豆打つ嵯峨野も奥の寂しさに 澤田美那子
華のある花火師上げる大花火 仲田寛子
砂浜の胡座にこども花火待つ 湯浅菊子
大川の風に吹かれて揚花火 木下洋子
出会ひては別れゆく旅遠花火 西川遊歩
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
花のある花火師ならん揚花火 仲田寛子
手のひらにやさしき色の新大豆 藤原智子
打ち上げに鬼の手を借る花火かな きだりえこ
【入選】
豆を打つ飛び散る豆もつかまえて 関根千方
流れ来る煤や煙や大花火 葛西美津子
からからと音立て大豆収穫す 吉田順子
四方八方ガラスのビルや揚花火 イーブン美奈子
山の端に日のかかるまで大豆干す 金澤道子
大揺れの船繰り出して揚花火 葛西美津子
三尺玉豪雨の如き花火かな 吉田順子
甘き香や茹でこぼしたる新大豆 木下洋子
荒海の嘶くごとく揚花火 神谷宣行
空襲の死者もあつまる花火かな 萬燈ゆき
腹いせもありて力や大豆ひく 湯浅菊子
縄文の土器ごろごろと大豆引く 藤英樹