第一句座
・矢野京子選
【特選】
目を覚ます虎おそろしき屛風かな 斉藤真知子
初日仰ぐわが故郷は海の民 長谷川櫂
雁空に「く」の大文字を書初めぬ ストーン睦美
狂ひ咲く花のしじまや詩人逝く 安藤文
日の本の伸びよ伸びしろ雑煮餅 大平佳余子
【入選】
鈍色の佐渡の空こそ初御空 安藤文
母逝きしより白々と古暦 加藤裕子
書きかけとなるもやしれぬ日記買う 矢田民也
熱燗や秩父音頭を唄はんか 大場梅子
冬眠の寝息あちこち森の中 斉藤真知子
太箸や吉野の杉をかをりよく 高橋真樹子
湯たんぽの肋重ねて金物屋 大平佳余子
戦場の子らにもサンタクロース来よ ストーン睦美
餌運ぶ鴉勤労感謝の日 林弘美
暫くはたか女にならん紅葉寺 ももたなおよ
大海原蹴つて赤子の初日かな 石塚純子
雪下ろし新幹線に飛び乗って 岡村美沙子
新しき年に幸あれ窓みがく 米山瑠衣
手を拭ひ外す厨の古暦 石塚純子
身辺を片付け過ぎし寒さかな 神戸秀子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
十二月今朝も軍艦目の前に 米山瑠衣
冬の苺七十を母に祝はるる 矢野京子
討入も一揆もなき世寝正月 大場梅子
【特選】
古暦母逝きてより白々と 加藤裕子
寒風に藺草を植うる女たち 加藤裕子
新調の入れ歯を逃げる生海鼠 金田伸一
我もまたやがて盲か冬北斗 金田伸一
身辺を片付け過ぎし寒さかな 神戸秀子
【入選】
鈍色の空こそ佐渡の初御空 安藤文
書きかけとなるやもしらず日記買ふ 矢田民也
繰り返す推敲の果て湯冷めかな 城山邦紀
亡き母の角巻かけて寝る夜かな 岡村美沙子
歯固めの小石添へたり小豆粥 ももたなおよ
湯たんぽの肋を積んで金物屋 大平佳余子
餌運ぶ鴉勤労感謝の日 林弘美
楽しみにしてゐたころの年賀状 矢田民也
凩の夜を灯して二人かな 夏井通江
第二句座(席題:おでん、焚火)
・矢野京子選
【特選】
おでん屋の親爺にしたきお人かな 大場梅子
今年から小ぶりの鍋でおでんかな 米山瑠衣
おでん酒詩の一片も浮かばざる 斉藤真知子
【入選】
角取れし友のさびしきおでん酒 矢田民也
おでん鍋かしはの下に大根あり 長谷川櫂
さ迷へる地球の隅で焚火かな 今村榾火
方言のあまた飛び交ふ焚火かな 安藤文
大焚火世界の夜明けまだ来ぬか 安藤文
ねぢりこみ焼く文ひとつ落葉焚 石塚純子
スマホ撮りあと一心におでんかな 今村榾火
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
おでん酒一片の詩の浮かびこよ 斉藤真知子
けふだけの心の友とおでん酒 ストーン睦美
こよひまた梅酒の妻とおでん酒 金田伸一
【入選】
町中の枯葉を焼いて大焚火 ストーン睦美
部屋で焚く薪ストーブを焚火とす 金田伸一
佐渡ことばあまた飛び交ふ焚火かな 安藤文
大焚火世界の夜明けまだ来ぬか 安藤文
今年から小ぶりの土鍋おでんかな 米山瑠衣
しみじみと生きる喜びおでん酒 上松美智子