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俳句的生活

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講演録「西脇順三郎と故郷小千谷」

俳句的生活 投稿日:2025年7月9日 作成者: KAI2025年7月12日

「西脇順三郎を偲ぶ会」の会報「幻影」第42号に、今春、小千谷で行った講演「西脇順三郎と故郷小千谷」の講演録が掲載されています。

購読、同会への入会は同会へ。メールアドレスは、hontoka@city.ojiya.niigata.jp

古志広島ズーム句会(2025年7月6日)

俳句的生活 投稿日:2025年7月6日 作成者: dvx223272025年7月6日

第一句座
矢野京子選
【特選】
不機嫌を絞り絞つて胡瓜揉        ももたなおよ
誰彼の星を探さん籐寝椅子        ももたなおよ
六月の雛さながらの御姿         長谷川櫂
ほうたるとなりて逢はんや墓じまひ    神戸秀子
音もなく地球の歪みゆく夏よ       斉藤真知子
【入選】
こんなにも熱き大地を蟻の列       斉藤真知子
わが胸の骨浮き出たる暑さかな      石塚純子
夏雲やパンダは人を記憶せず       神戸秀子
遺したきもののあれこれ箱庭に      ももたなおよ
笹の葉も吉野育ちや鮎届く        神戸秀子
茗荷の子いつから好きになつたかな    大平佳余子
一息に殺すが礼儀ごきかぶり       安藤文
人ならば笑ふなどせよ竹夫人       金田伸一
ねぎらひのビールをちよつと糠床へ    神戸秀子
煽られて風に溺るるヨットかな      長谷川櫂
電線の影さへ頼り炎暑かな        原京子

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
わが乳房肋浮き出る暑さかな       石塚純子
霧島も阿蘇も火を噴く大南風       加藤裕子
音たてて地球の歪みゆく夏よ       斉藤真知子
【入選】
推敲の髪切虫の容赦なく         城山邦紀
こんなにも熱き大地を蟻の列       斉藤真知子
貧なれど貪婪ならず冷し瓜        矢田民也
夏至の日の水車重たき水落す       大平佳余子
恨むなり笑ふなりせよ竹夫人       金田伸一  

第二句座(席題:泳ぐ、花火)
矢野京子選
【特選】
裸の子泳ぎはじめは盥かな        大平佳余子
病棟のカーテン全開大花火        岡村美沙子
ゆきずりの人と見てゐる遠花火      大場梅子
【入選】
遠泳を達成したる皇女かな        大場梅子
初泳ぎ祖父の犬搔き真似をして      上松美智子      
遠泳の子の白帽子一直線         今村榾火
逃ぐるがに追ふがに鼠花火かな      矢田民也
黒潮を貫き泳ぐ鯨かな          駒木幹正

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
ロザリオをつけ海人の子は泳ぐなり    ももたなおよ
水練の子ら金色の軀かな         瑞木綾乃
【入選】
妹が此処まで来よと立泳ぎ        ももたなおよ
こどもらは服着たるまま泳ぎをり     安藤文
満ちてくる潮かき分けて泳ぎけり     ももたなおよ
出航の花火遠のくデツキかな       斉藤真知子
湖のかそけき波よ花火果つ        高橋真樹子
逃ぐるがに追ふがに鼠花火かな      矢田民也
一億年前の噴火よ湖泳ぐ         高橋真樹子

古志仙台ズーム句会(2025年6月29日)

俳句的生活 投稿日:2025年7月1日 作成者: dvx223272025年7月1日

第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
千年の山椒魚の昼寝かな            上村幸三
子等と立つ十国峠や夏の富士          甲田雅子
百年の母の一生茄子の花            川辺酸模
風鈴は炎の記憶鳴らしけり           三玉一郎
夏草や親きやうだいを弑し跡          青沼尾燈子
【入選】
猪垣に取り囲まるる田草採り          武藤主明
訥々と語るおばあや沖縄忌           川辺酸模
いろこの宮神のすさびの虎魚かな        齋藤嘉子
夏潮へ漕ぎ出す小舟白ふどし          石川桃瑪
青田波神と崇むる山遠く            阿部けいこ
顎はづし鼠のみこむ青大将           上 俊一
恥ぢらうて岩田帯巻く夏座敷          佐藤和子
一匹の蝿に遊ばる可笑しさよ          谷村和華子
旱雲怠けし魂の八十年             青沼尾燈子
皇后の涼しき一語一語かな           長谷川櫂

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
被災地の誰も帰らぬ茂りかな          臼杵政治
薫風の中に夫ゐる忌日かな           及川由美子
家しづか瓶にゆらめく青梅かな         及川由美子
杉板に焼き鮎並ぶ郡上かな           服部尚子
小屋掛けて藺田のほてりに昼寝かな       齋藤嘉子

【入選】
マスクメロン大きく切って夫を待つ       臼杵政治
藍深き切子に溢れ冷し酒            及川由美子
いろこの宮神のすさびの虎魚かな        齋藤嘉子
飯豊山の雪より白し雲の峰           佐藤和子
山椒魚千年の昼寝かな             上村幸三
百年の一生母の茄子の花            川辺酸模
忙しや古木に実梅二十キロ           齋藤嘉子
一匹の蝿に遊ばる可笑しさよ          谷村和華子
旱雲怠け怠けて八十年             青沼尾燈子
知らぬ間に枇杷の実熟るる葉蔭かな       平尾 福
夏草や親きやうだいを弑し洞          青沼尾燈子

第二句座(席題:昼寝、蛍袋、百足)
長谷川冬虹選
【特選】
きな臭き地球の隅に大昼寝           川辺酸模
うかうかと八十年を昼寝かな          齋藤嘉子
悪党になり損なひの百足かな          上村幸三
あたふたと罪を負ふかに逃ぐ百足        谷村和華子
【入選】
美しき足の運びや大蜈蚣            川辺酸模
ヘッセ詩集顔に被せて午睡かな         及川由美子
一人居の祖母よ蜈蚣に話掛け          臼杵政治
昼寝ざめ邯鄲の夢ならずとも          服部尚子
百足虫這ふどこが貌やら尻尾やら        武藤主明
昼寝覚かなしみが目を覚ましけり        三玉一郎
川音に身をゆだねたる昼寝かな         武藤主明
父母の写真の下に昼寝覚め           武藤主明
玉音のながれし地べた百足行く         上村幸三
腐葉土の百足虫の城を毀しけり         宮本みさ子

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
片方の足はかの世か昼寝覚           上村幸三
うかうかと八十年を昼寝かな          齋藤嘉子
家主の快癒を祈るむかでかな          三玉一郎
根付きたる蛍袋の白き花            佐藤和子
授業中微動だにせず昼寝かな          齋藤嘉子
【入選】
蛍袋見え隠れする虫の尻            谷村和華子
昼寝から覚めてうかがふ妻の顔         平尾 福
悪党になり損なひし百足かな          上村幸三
この国は八十年を昼寝かな           臼杵政治
昼寝覚かなしみが目を覚ましけり        三玉一郎
登校す蛍ぶくろを抱へては           宮本みさ子
父母の写真の下に昼寝覚め           武藤主明
玉音のながるる地べた百足行く         上村幸三
腐葉土の百足虫の城を毀しけり         宮本みさ子

日本芸術院賞作品展、6月26日から

俳句的生活 投稿日:2025年6月25日 作成者: KAI2025年7月3日

令和6年度の「恩賜賞・日本芸術院賞受賞作品展」が6月26日(木)から7月2日(水)まで、東京・上野公園の日本芸術院で開かれます。受賞者11人の作品が展示されます。

私は俳句3句、短歌1首の書などを出品しました。

古志金沢ズーム句会(2025年6月15日)

俳句的生活 投稿日:2025年6月17日 作成者: dvx223272025年6月17日

第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選

【特選】
一枚の月のひかりや夏布団        松川まさみ
死ぬことは脱皮かもしれず心太      土谷眞理子
あの世より取り残さるる昼寝覚      宮田勝
ひそやかに喰うて蛍の舞ひにけり     趙栄順
草笛や遠き日に触れるくちびる      清水薫
薔薇一輪夕日が崩しゐるところ      趙栄順
精霊の掛けて行きけりさるをがせ     酒井きよみ
裸の子抱けばずつしりやはらかし     藤倉桂
桜桃忌暗渠の水のがうがうと       飛岡光枝

【入選】
梅雨深し終の栖の水の星         安藤久美
氷水薔薇の香れる蜜をかけ        飛岡光枝
葉つぱごと野枇杷を瓶に花のごと     近藤沙羅
大南風子の決断を応援す         氷室茉胡
ひと雨に山は太りぬ青葉かな       松川まさみ
紅花畑腰で分け入り花を摘む       飛岡光枝
舟ゆらし太古の沼の蓴摘む        梅田恵美子
白山や逆さまに焼く大岩魚        稲垣雄二
行々子年々増ゆる放棄田よ        藤倉桂
限りある私と地球と大氷河        梅田恵美子

・長谷川櫂選

【特選】推敲例
母の鏡黴の鏡となりゆくも        飛岡光枝
一枚の月のひかりや夏布団        松川まさみ
花摘むと腰で分け入る紅花畑       飛岡光枝

【入選】
経一巻僧百人の喪の九夏         鬼川こまち
百歳の命さきはへ菖蒲の湯        宮田勝
店番をしつつ梅干す裏の庭        花井淳
死ぬことは脱皮でありき心太       土谷眞理子
死してのち了る俳句や蚊遣香       土谷眞理子
花びらの乙女の肌を薔薇のジャム     鬼川こまち
潮騒やサマードレスの胸深く       玉置陽子
かき氷薔薇の香りの蜜をかけ       飛岡光枝
ふるさとは滴る山の懐に         橋詰育子
何もかもみな厄介や昼寝せん       松川まさみ
灯明の今日まだ消せず梅の雨       清水薫
鹿の子の眸は月を映しけり        田村史生
西日濃き三畳一間わが青春        氷室茉胡
白山を逆さまに焼く岩魚かな       稲垣雄二
息入れてみよ父の日のハーモニカ     松川まさみ
かぎりある私と地球大氷河        梅田恵美子

第二句座
 席題:「簾」、「夏の蝶」
・鬼川こまち選

【特選】
目の前を夏蝶よぎる母の声        藤倉桂
いちまいの簾に分かつこの世かな     安藤久美
一茎を咥へては編む簾かな        玉置陽子
あをあをと淡海の風軒すだれ       玉置陽子
昭和果つ簾仕立の海の家         間宮伸子
簾して俗世の風を和らげん        清水薫

【入選】
青簾巻けば真夏の来てゐたり       田村史生
生と死を静かに分ける簾かな       稲垣雄二
夏蝶を追ふて峠を越えにけり       梅田恵美子
ややと寝る産後の妻や青簾        稲垣雄二
いづこより涌き來るものか夏の蝶     近藤沙羅
磨崖仏の視線をよぎる夏の蝶       土谷眞理子
山門へあざやかに飛ぶ梅雨の蝶      花井淳
我が泣くの句碑を離れず夏の蝶      清水薫

・長谷川櫂選

【特選】推敲例
一茎を咥へては編む簾かな        玉置陽子
夏蝶や雲のあはひの高山寺        安藤久美
羽ふるへ青すぢ揚羽水を吸ふ       橋詰育子

【入選】
百年の我が家愛しや青簾         藤倉桂
簾吊る心に風のなき日かな        趙栄順
お御堂をめぐりて空へ夏の蝶       花井淳
一見を拒む老舗の簾かな         越智淳子
空の道つぎつぎに來る揚羽かな      近藤沙羅
夏の蝶草に止まりぬ黒唐津        山本桃潤
浅野川ひかり遊べる簾かな        松川まさみ
湯治場をざつくり分かつ簾かな      田村史生
花もなき野をただよへり夏の蝶      梅田恵美子

古志鎌倉ズーム句会(2025年6月8日)

俳句的生活 投稿日:2025年6月9日 作成者: 田中 益美2025年6月9日

第一句座
•藤英樹
【特選】
明易し手のひらよりも足裏は       藤原智子
海鞘を裂きたちまちあふる潮かな     土井頼温
長嶋のあごひげ濃ゆく雲の峰       森永尚子
藪蚊とて男ざかりを選りて刺す      園田靖彦
死ぬること忘れし媼更衣         萬燈ゆき
【入選】
梅雨雲を突く獣の貌の富士の山      森永尚子
蟻地獄主食はれてしまひけり       おほずひろし
青嵐とほく声聴く硯かな         藤原智子
さりげなく隠し包丁夏料理        神谷宣行
逝く朝も背番号の日ミスター忌      佐藤森恵
四葩いま花の色とも葉色とも       仲田寛子
ひと声の夏うぐひすの島を出づ      イーブン美奈子

•長谷川櫂 (推敲例)
【特選】
恨めしき大きな種の枇杷すする      澤田美那子
【入選】
軽鳧の子のころがりながら親の後     金澤道子
一すぢの陽に射ぬかるる蝸牛       関根千方
足の裏手のひらよりも明易し       藤原智子
薔薇の花咲き満ちて大岡信展       藤原智子
青梅のきよとんとしたる葉陰かな     久嶋良子

第二句座 (席題:蓴菜、夏祓)
•藤英樹
【特選】
陸奥の闇は深々蓴採る          イーブン美奈子
落とせざる心の穢れ夏祓         森永尚子
蓴菜のきよときよと揺るる鉢の底     葛西美津子
わが町の小さな富士や夏祓        藤原智子
加茂茄子は笊ごと供へ夏祓        木下洋子
蓴摘む一世や親指曲がるまで       澤田美那子
【入選】
蓴菜や酒はこなから辛口で        きだりえこ
違ふ世へ行く気でくぐる茅の輪かな    イーブン美奈子
大三輪の幣しろじろと夏祓        きだりえこ
蓴舟岸より鷺の見てゐたり        関根千方
蓴舟さびしき沼にぬつと出づ       久嶋良子
一風呂を浴びて出かけん夏祓       澤田美那子
蓴採る古代の歌を忘れけり        長谷川櫂
みなづきは今日だけの菓子夏祓      金澤道子
雨のあと藍濃き空や夏祓         神谷宣行
手のひらで水掻き分けてぬなわ舟     金澤道子

•長谷川櫂 (推敲例)
【特選】
じゅんさいの勝手に喉を通りけり     金澤道子
我の分また濁らせて御祓川        イーブン美奈子
いやいやと子ども怖がる夏祓       田中益美
一風呂を浴びて出かける夏祓       澤田美那子
蓴摘む女の指の曲がるまで        澤田美那子
蓴菜は水の衣をまとひけり        関根千方
みなづきは今日だけの菓子夏祓      金澤道子
【入選】
違ふ世へ行く気でくぐる茅の輪かな    イーブン美奈子
蓴菜は錫の小鉢に所在なし        葛西美津子
落とせざるわが手の穢れ夏祓       森永尚子
蓴舟岸より鷺の見てゐたり        関根千方
形代あはれ水にもまれて流れゆく     森永尚子
ぬめぬめと盥にうつす蓴かな       吉田順子
秋篠の水の濁りへ蓴舟          きだりえこ
ぬなは舟乗り出す沼の深さかな      土井頼温
あおあおと氷川神社の茅の輪かな     おほずひろし
手のひらで水掻き分けてぬなは舟     金澤道子

 

古志広島ズーム句会(2025年6月1日)

俳句的生活 投稿日:2025年6月1日 作成者: dvx223272025年6月17日

第一句座
矢野京子選
【特選】
ほうたるや息吐く力吸ふ力             原京子
うつし世は去りがたき夢冷奴            今村榾火
夏山や円盤に乗り飛ぶごとく(大宰府天満宮仮拝殿) 長谷川櫂
血涙の色かとおもふ梯梧咲く            大場梅子
麦秋の声よ嗄るるなゼレンスキー          神戸秀子
【入選】
推敲や髪切虫の容赦なく              城山邦紀
わが暮し金魚の目にはつまらなく          矢田民也
米蔵の米は空つぽ青嵐               安藤文
飛梅の実梅といへばことのほか           斉藤真知子
戦なき世界見ゆるか朴の花             瑞木綾乃
初鰹氷りしままを包丁す              安藤文
ガジュマルの葉陰裸の三尺寝            臼杵政治
サングラス私を名乗る私の名            高橋真樹子
半裂の片眼潰して存へり              矢田民也
やはらかき水を枕に未草              斉藤真知子
人踏まぬ土やはらかし夏わらび           石塚純子
楼蘭の乙女の塵か霾るは              長谷川櫂
里に来て母かも知れず初蛍             駒木幹正
がまがへる仏の顔で虫喰らう            安藤文

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
真緑の煮梅一粒忌を修す              大平佳余子
人触れて泰山木の花腐す              今村榾火
人踏まぬ土はやはらか夏わらび           石塚純子
【入選】
冷し酒男は母を恋ふるもの             矢野京子
早苗田を右へ左へ伯備線              ももたなおよ
飛梅の実梅ときけばことのほか           斉藤真知子
戦なき世界みゆるか朴の花             瑞木綾乃
初鰹氷りたるまま包丁す              安藤文
真つ白な麻のハンカチ更衣             神戸秀子
野に森に蝶おびただし沖縄忌            神戸秀子
うつし世は去りがたき夢冷奴            今村榾火
半裂の片眼潰れて存へり              矢田民也
やはらかな水を枕に未草              斉藤真知子
あぢさゐや風が手鞠をつくごとく          矢田民也
睦五郎干潟の国を守るべく             今村榾火
ゼレンスキーの声よ嗄るるな麦の秋         神戸秀子
横綱の風格はやも五月場所             金田伸一
句作りのはかどらぬ夜を青葉木菟          安藤文
天地の静かなる田を植ゑにけり           今村榾火
白き花咲きつぐ信濃走り梅雨            石塚純子
田植歌古米古古米古古古米             大平佳余子
誰もかもスマホ見てゐる薄暑かな          安藤文
虫喰らふ仏の顔のがまがへる            安藤文
いまも来るか鎌倉駅の初燕             神戸秀子

第二句座(席題:額の花、夏布団)
矢野京子選
【特選】
額の花太宰の墓も黄昏れて             岡村美沙子
夏掛やあるかなきかに人の上            長谷川櫂
紫陽花に嫉妬してゐる額の花            安藤文
【入選】
七十のみなしご同志夏蒲団             神戸秀子
一晩中けられひねられ夏蒲団            大平佳余子
額の花重なりあふて点描画             ストーン睦美
親ふたりそして胎の子夏布団            高橋真樹子
夏蒲団デッキに干せる護衛艦            今村榾火
夏布団けふもさよならホームラン          金田伸一

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
七十のみなしご同志夏蒲団             神戸秀子
音立ててくる山霧に額の花             神戸秀子
親ふたりそして胎の子夏布団            高橋真樹子
【入選】
夏掛けを送ると母の手紙来る            臼杵政治
早起きの鳥が窓辺に夏布団             矢野京子
新婚の二人に選ぶ夏布団              上松美智子
夜もすがら引くも跳ねるも夏布団          駒木幹正
夏布団母は小さくなりにけり            石塚純子

「言葉の力」を体現、大岡信展 長谷川冬虹

俳句的生活 投稿日:2025年5月16日 作成者: dvx223272025年6月25日

上京の機会を利用して、5月14日、遅まきながら神奈川近代文学館の大岡信展を観た。あらためて大岡の文学世界のゆたかさ、みずみずしさを実感した。まさに「言葉の力」を信じ、再発見し、切り拓いた生涯であり、国際的なスケールで、また万葉から現代までを自在に往還・架橋し、「孤心」と「うたげ」を見事に体現した人生だったことが理解できた。

大らかで柔らかい動感に充ちた書。

大学ノートに記された詩稿のペン字・推敲の過程、葉書や書簡などは若き日の大岡の息遣いを生々しく伝える。

大岡は1931(昭和6)年生まれで、生涯の友谷川俊太郎も同年生まれである。2人の友情を伝えるコーナーも面白い。大岡たちは戦中期を生き延び、敗戦を14歳で迎え、戦後の解放感を柔らかい感性で受け止め得た世代である。私の専門は社会学だが、社会学者でも1931年生まれはとくに卓越した人材が多い。大岡もそうだが、早くから世に出た人も目立つ。既存の枠組を軽々と越境し、新たな視野からパイオニア的な仕事をするのに世代的に有利な位置を占めていたとも言える。

大岡展はまばゆいほどの刺激に充ちている。5月18日まで開催。

「おくのほそ道」を読む(決定版)ができました 

俳句的生活 投稿日:2025年5月15日 作成者: dvx223272025年6月25日

 新書版の『「おくのほそ道」をよむ』(ちくま新書、2007年)の決定版(ちくま文庫、1,000円+税)がでました。新書版にはなかった現代語訳と「曾良随行日記」が加えられております。ぜひご購読ください。

古志仙台ズーム句会(2025年5月11日)

俳句的生活 投稿日:2025年5月13日 作成者: dvx223272025年5月13日

第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
若鮎の腹は刃の色をして            服部尚子
家中の鍋ぴかぴかにして夏に入る        服部尚子
母逝きし空を遊ぶや鯉幟            川辺酸模
整然と僧兵のごと葱坊主            甲田雅子
曲り家の板の間の艶涼しけれ          谷村和華子
【入選】
南部富士けさも雲乗せ花林檎          及川由美子
予想屋の赤鉛筆や昭和の日           臼杵政治
初夏やピアノレッスン始まる日         佐伯律子
雷鳴の轟く薔薇を切りにけり          長谷川櫂
老鶯ののどをうるほす天の水          三玉一郎
母恋うてお前も鳴くか蟇            川辺酸模
退屈の子が軋ませる籐の椅子          平尾 福
畦青む踏みし大地の柔きこと          谷村和華子
魂の集ふや春の姥捨野             武藤主明
夏の炉や語り部炭を組み直す          谷村和華子

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
用無しの大き浮き球卯波かな          上 俊一
目が覚めて魔の二時三時明易し         那珂侑子
退屈の虫が軋ます籐の椅子           平尾 福
針抜いてしづかになりぬ大岩魚         宮本みさ子
短夜や老犬は死と格闘中            青沼尾燈子
【入選】
家中の鍋ぴかぴかと夏に入る          服部尚子
老犬の隻眼うす目風薫る            青沼尾燈子
客人を迎へて林檎花盛り            阿部けいこ
母のなき空に遊ぶや鯉幟            川辺酸模
足載せて石冷たさよ川の底           宮本みさ子
母に見せたき山藤の長さかな          佐伯律子
板の間の艶涼しけれ大曲家           谷村和華子

掻き落とす泥田の蛭や田股引          上 俊一

【第二句座】(席題:さくらんぼ、豆飯、守宮)
長谷川冬虹
【特選】
さくらんぼ疵あるものも愛ほしき        谷村和華子
ガラス戸に腹の波打つ守宮かな         武藤主明
曲家の主の貌して守宮かな           武藤主明
【入選】
百歳の母の祝ひや豆の飯            川辺酸模
新築の家の匂ひや守宮来る           佐伯律子
ガラス戸に吸盤見えて守宮かな         阿部けいこ
享年は百歳の母豆御飯             佐藤和子
守宮めと丑三つ時の睨み合ひ          谷村和華子
入院の留守を守宮に頼みけり          臼杵政治
騒がれて死んだふりする守宮かな        及川由美子

長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
見つむれば母に似てくる守宮かな        川辺酸模
夕暮れて顔見せに来る守宮かな         平尾 福
桜桃の百粒揺るる紙の箱            石川桃瑪
【入選】
新築の家の匂ひに守宮来る           佐伯律子
窓に来て夕餉うらやむ守宮かな         平尾 福
豆飯の豆残すとや子の茶碗           阿部けいこ
勝手口窺ふ守宮今年なし            青沼尾燈子
ガラス戸に腹波打たせ守宮かな         武藤主明
大波の母の一生豆の飯             川辺酸模
さくらんぼ好みし夫の忌を修うす        甲田雅子

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読売新聞「四季」から

まひまひや深く澄みたる石二つ   村上鬼城

 水澄ましがくるくると水面に輪を描いて回る。ふと気がつくと、澄みきった水の底にくっきりと石が二つ。その石の形が水澄ましの波動で揺らめいているのだろう。動と静と、その交響と。蝸牛もマイマイだが、ここでは水澄ましのこと。『定本鬼城句集』

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    • 7月12日(土)朝カルズーム講座「『おくのほそ道』をよむ」」
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    • 8月9日(土)朝カルズーム講座「『おくのほそ道』をよむ」」
    • 8月9日(土)古志ズーム講座「俳句でよむ『おくのほそ道』」
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    『「おくのほそ道」を読む 決定版』
    ちくま文庫
    1,000円+税
    2025年5月刊行


    『四季のうた ウクライナの琴』
    中公文庫
    800円+税
    2025年1月刊行


    『長谷川櫂 自選五〇〇句』
    朔出版
    2200円+税
    2024年4月刊行


    『四季のうた 井戸端会議の文学』
    中公文庫
    800円+税
    2024年1月刊行


    『小林一茶』
    河出文庫
    800円+税
    2024年1月刊行


    『ふじさわびと』vol.26
    株式会社ふじさわびと
    無料配布
    2023年1月発行


    『四季のうた 雨ニモマケズ』
    中公文庫
    800円+税
    2023年1月刊行


    『和の思想』
    岩波新書
    980円+税
    2022年7月刊行


    『俳句と人間』(3刷)
    岩波新書
    860円+税
    2022年1月刊行


    100分de名著『おくのほそ道』(10刷)
    NHK出版
    1,000円+税
    2014年10月刊行


    『四季のうた 美しい日々』
    中公文庫
    800円+税
    2022年1月刊行


    句集『太陽の門』
    青磁社
    2200円+税
    2021年8月刊行


    『四季のうた 天女の雪蹴り』
    中公文庫
    800円+税
    2021年1月刊行


    大岡信『折々のうた』選 俳句(二)
    長谷川櫂 編
    岩波新書
    780円+税
    2019年12月刊行


    『四季のうた 普段着のこころ』
    中公文庫
    800円+税
    2019年12月刊行


    大岡信『折々のうた』選 俳句(一)
    長谷川櫂 編
    岩波新書
    780円+税
    2019年11月刊行


    『歌仙一永遠の一瞬』
    岡野弘彦、三浦雅士、長谷川櫂
    思潮社
    2200円+税
    2019年1月刊行


    『歌仙はすごい』
    辻原登、永田和宏、長谷川櫂
    中公新書
    880円+税
    2019年1月刊行


    『四季のうた 至福の時間』
    中公文庫
    700円+税
    2018年12月刊行


    『九月』
    青磁社
    1800円+税
    2018年8月刊行


    『Okinawa』
    Red Moon Press
    $15
    俳句 長谷川櫂
    英訳 デイヴィッド・バーレイ&田中喜美代(紫春)
    2018年5月刊行


    『俳句の誕生』(4刷)
    筑摩書房
    2300円+税
    2018年3月刊行


    『四季のうた 想像力という翼』
    中公文庫
    700円+税
    2017年12月刊行


    『芭蕉さん』
    俳句・芭蕉 絵・丸山誠司
    選句解説・長谷川櫂
    講談社
    1500円+税
    2017年3月刊行


    『震災歌集 震災句集』
    青磁社
    2000円+税
    2017年3月刊行


    『四季のうた 文字のかなたの声』
    中公文庫
    600円+税
    2016年12月刊行


    藤英樹著『長谷川櫂 200句鑑賞』
    花神社
    2500円+税
    2016年10月刊行


    『文学部で読む日本国憲法』
    ちくまプリマー新書
    780円+税
    2016年8月刊行


    『日本文学全集12』松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶
    松浦寿輝、辻原登、長谷川櫂選
    河出書房新社
    2,600円+税
    2016年6月刊行


    『四季のうた 微笑む宇宙』
    中公文庫
    700円+税
    2016年3月刊行


    『芭蕉の風雅 あるいは虚と実について』
    筑摩選書
    1,500円+税
    2015年10月刊行


    『沖縄』
    青磁社
    1,600円+税
    2015年9月刊行


    『入門 松尾芭蕉』
    長谷川櫂 監修
    別冊宝島
    680円+税
    2015年8月刊行


    『歌仙一滴の宇宙』
    岡野弘彦、三浦雅士、長谷川櫂
    思潮社
    2000円+税
    2015年2月刊行


    『吉野』
    青磁社
    1,800円+税
    2014年4月刊行
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    そのほかの本

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