古志広島ズーム句会(2024年7月7日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
眠たげな汗の子汗の胸に抱く 岡村美沙子
サイダーや鏡を見ねば老い忘れ 菅谷和子
百円玉握る手固き夜店かな ストーン睦美
カルデラといふ箱庭に阿蘇五岳 矢田民也
誰かけさ硯の上に柚子の花 長谷川櫂
【入選】
腰折れの身なぞまつぴら百合真白 金田伸一
街中が匂ひ出したる炎暑かな 原京子
背伸びして少女の削るかき氷 駒木幹正
妻もまた松蝉に耳澄ませをり 長谷川櫂
しやがむ背に葉影ゆれをりトマト摘み 夏井通江
豆の木を昇りて天に昼寝せん 駒木幹正
我儘を言ふは夫だけさくらんぼ 瑞木綾乃
下山して互ひに蛭を取り合うて 原京子
新妻の寝相の悪さ蚊遣豚 安藤文
煮炊きからすこしはなれて籐寝椅子 大場梅子
疲れ鵜の貌まざまざと吾に似て 矢田民也
ガマ掘ればまた人の骨沖縄忌 斉藤真知子
夏足袋や終の旅路の母痩せて 加藤裕子
老いていま遊び盛りや祭笛 石塚純子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
緑陰や赤児に乳房惜しみなく 城山邦紀
乳のあたり形代あてて納めけり 大平佳余子
凌霄花桶三杯の花拾ふ 上松美智子
【入選】
対岸にマンション並ぶ吊忍 神戸秀子
争いは真つ平御免ひきがへる 斉藤真知子
眠たげな汗の子汗の胸に抱く 岡村美沙子
サイダーや鏡を見ねば老い忘れ 菅谷和子
黙々とりんごの摘果日焼顔 ももたなおよ
煮炊きからはなれてやつと籐寝椅子 大場梅子
ガマ掘ればまた人の骨沖縄忌 斉藤真知子
第二句座(席題:七夕、ボート)
・矢野京子選
【特選】
七夕竹葉ずれの音も運びゆく 斉藤真知子
少年の友は真白きボートかな 長谷川櫂
君となら空の海へとボート漕ぐ 大場梅子
【入選】
織姫に捧げる歌のまだ出来ず 斉藤真知子
ボート漕ぐ昔ここらに特攻艇 ももたなおよ
子の書きし犬の願ひを星祭 駒木幹正
折り紙の色をつくして七夕竹 夏井通江
七夕竹庭より伐りて叱られし 原京子
天守閣はるかに見上げ貸ボート 高橋真樹子
ボート番恋のなりゆき見てをりぬ 大場梅子
人類の欲望数多七夕竹 ストーン睦美
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
子の書きし犬の願ひを星祭 駒木幹正
岸遠く二人漂ふボートかな 石塚純子
ままならぬ恋乗せてゐるボートかな 矢田民也
【入選】
反逆の心もすこしボート漕ぐ 矢野京子
折り紙の色をつくして七夕竹 夏井通江
七夕やわが彦星も老いにけり 菅谷和子
ボート漕ぐ腕の太さの眩しけれ ストーン睦美
七夕や混沌として都知事選 安藤文
七夕や水こんこんと不老の井 神戸秀子
ボート番恋のなりゆき見てをりぬ 大場梅子
紙と笹かすかな音や星祭 夏井通江