古志金沢ズーム句会(2024年7月21日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
人形浄瑠璃あふるる涙涼しかり 藤倉桂
あをあをと月しづくせよ洗ひ髪 玉置陽子
白桃や肉体しんと暗かりき 長谷川櫂
九十媼ゆるり作れりかき氷 越智淳子
万緑の湖満々とシャワー浴ぶ 山本桃潤
煮えたぎる渦となりたる祭かな 趙栄順
貝殻の真白き夏を惜しみけり 長谷川櫂
【入選】
ある農夫青田も見ずに逝かれけり 酒井きよみ
鑑真と旅し蓮の裔といふ 田村史生
虫干の女に化けし日記かな 宮田勝
約束の蛍を待ちし幾夜かな 松川まさみ
百年の孤独へ落つる昼寝かな 趙栄順
涼やかに若き僧なる絵解きかな 泉早苗
万年を銀河の底に住む我ら 泉早苗
若竹の若さにむせぶ夜もあらむ 安藤久美
隠沼へ光のつぶて翡翠飛ぶ 玉置陽子
手ぬぐひを枕にちよつと昼寝かな 飛岡光枝
人形焼き真顔の並ぶ暑さかな 飛岡光枝
荒梅雨や地球の怒気の濁り川 松川まさみ
京なれや胡瓜もみにも鱧の皮 泉早苗
身に巣くふ鬼と遊ぶや緑の夜 藤倉桂
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
人間に蝉が止まりて鳴きにけり 山本桃潤
若竹の若さにむせぶ夜もあらむ 安藤久美
人形焼き真顔の並ぶ暑さかな 飛岡光枝
【特選】
手にのせてかの世の蛍とも知らず 安藤久美
スマホより祇園囃子のこぼれ来し 近藤沙羅
黄金の月しづくせよ洗ひ髪 玉置陽子
炎熱のこんぺいとうに角いくつ 玉置陽子
荒梅雨や地球の怒る濁り川 松川まさみ
【入選】
河童忌や愚かに生きて寿 梅田恵美子
石斛の花あつけなく一生過ぐ 飛岡光枝
やはらかき闇をこぼるる蛍かな 安藤久美
「百年の孤独」とともに夏休み 田村史生
ふぐの子の粕漬辛しビール酌む 花井淳
虹になり損ね七色金平糖 玉置陽子
第二句座
席題:「夏の果」、「火取虫」
・鬼川こまち選
【特選】
寂しきはつひに佳句なき夏の果て 田中紫春
野外劇飛び入りの火が舞はじむ 酒井きよみ
逝く夏や狭庭は荒野となり果てて 間宮伸子
戦争の火種は尽きず夏の果 松川まさみ
いかにして放たん我の火取り虫 田中紫春
【入選】
生きるとか死ぬとか無くて火取虫 藤倉桂
火取虫どこかわたしに似てをらん 近藤沙羅
歩みゆく鉄道員へ灯取虫 花井淳
もう一本ジンの封切る夏の果 花井淳
非常口のネオン占領火取虫 川上あきこ
抜け出せる算段やある火取虫 泉早苗
能登はまだ彼の日のままに夏の果 清水薫
この山の火蛾の遊べる寺ならん 橋詰育子
座礁せしごとく昨夜の大蛾あり 長谷川櫂
火を目指しめくらめつぽふ火取虫 藤倉桂
金粉を蒔く火取虫ならば来よ 安藤久美
手なれれば金粉こぼさず火がそとへ 酒井きよみ
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
もう一本ジンの封切る火取虫 花井淳
若き日やテニスコートを火取虫 間宮伸子
物憂げなシャンソンを聞く火取虫 間宮伸子
コンビニに若者減りぬ火取虫 川上あきこ
【入選】
眠りよりさめて独りや夏の果 橋詰育子
死してなほ生きているかに火取虫 梅田恵美子
突掛の先で寄せたり昨夜の火蛾 安藤久美
淋しさに集まり来しか灯取虫 橋詰育子
火取虫一差し舞えば旅の友 鬼川こまち
掃き集め昨夜の真白き火取虫 飛岡光枝