古志鎌倉ズーム句会(2023年10月8日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
雁渡し追悼句集届きけり 木下洋子
山低き大和へ鵙の日和かな きだりえこ
対岸は比良の山々十三夜 わたなべかよ
生きのびてこの秋風のいとほしき 吉田順子
世はまさに老人大国鵙高音 澤田美那子
名月に浮かれ出たるや病持ち 園田靖彦
すれ違ひ多くなりしも秋刀魚焼く 関根千方
【入選】
落花生マリオネットのごと出づる 関根千方
変異してまた強くなる螻蛄かな 神谷宣行
秋雨に連歌師の墓濃くそぼつ 湯浅菊子
あつちこちばつたが飛んで草野球 森永尚子
君追ひて流星となり地平線 森永尚子
寒さうな音を立てたる胡桃かな 長谷川櫂
青蜜柑ぎゆつと子供のこぶしかな 藤原智子
ものぐさに生きてこの世は大花野 神谷宣行
•長谷川櫂選
【特選】
鷹渡るもう追ひつけぬ遠さかな 金澤道子
すれ違ひ多くなりしも秋刀魚焼く 関根千方
故郷の残り香と思ふ新酒かな 神谷宣行
全身の脈しつかりと晩夏光 おほずひろし
いつまでも割れぬ胡桃が胸の中 葛西美津子
【入選】
対岸は比良の山々十三夜 わたなべかよ
すだ椎は切り株となり月光に 仲田寛子
いのししの荒らしたるあと薬掘る 仲田寛子
月光にわらぢ干しあり湯殿山 藤英樹
月光や夜の顔となる椎の幹 仲田寛子
大いなる花野の果てはオホーツク 湯浅菊子
行く秋の手足冷たく目覚めたリ 湯浅菊子
まだ青き団栗ひとつ机の上 木下洋子
無花果のぶつくさ言ひて熟れゆくも 園田靖彦
天高し河口湖畔ひとめぐり 吉田順子
衣被裕明不在二十年 木下洋子
こちら岸むかう岸でも芋煮会 藤英樹
秋の灯や天眼鏡にかすむ文字 園田靖彦
あつちこちばつたが飛んで草野球 森永尚子
濁る世へさつとひと刷毛富士に雪 仲田寛子
月山の神も交るか芋煮会 藤英樹
不整脈除去己にもどる今朝の秋 おほずひろし
はるかなる色に熟れゆく通草の実 澤田美那子
長生きをかなしむ母や菊の酒 萬燈ゆき
ひたすらに鳴くこほろぎと長湯かな 澤田美那子
熱病のぬけたる朝や梨をむく 関根千方
胸中の鬼も静かに十三夜 萬燈ゆき
はららごを抜かれて鮭はげつそりと 湯浅菊子
第二句座 (席題:菊膾、蛇笏忌)
•藤英樹選
【特選】
菊膾われら花食ふ国に生き 西川遊歩
句の道をはるかと思ふ蛇笏の忌 きだりえこ
客人をもてなす鯉や蛇笏の忌 田中益美
初雪の便りが届く蛇笏の忌 木下洋子
間髪を入れずお通し菊膾 園田靖彦
【入選】
次々と話の弾む菊膾 澤田美那子
竹林に風のあそべる蛇笏の忌 萬燈ゆき
笊いつぱい茹でてかばかり菊膾 葛西美津子
山柿を剥けば炎や蛇笏の忌 関根千方
秋の蜂あなどるなかれ蛇笏の忌 木下洋子
蛇笏忌の葡萄畑に集いけり 澤田美那子
蛇笏忌の竹ひやひやと寝かせあり 葛西美津子
•長谷川櫂選
【特選】
蛇笏忌の葡萄畑に集ひけり 澤田美那子
蛇笏忌の竹ひやひやと寝かせあり 葛西美津子
ひさびさに座る畳や菊なます 森永尚子
【入選】
菊膾われら花食ふ国に生く 西川遊歩
日の本の黄やむらさきや菊膾 葛西美津子
手の窪にのせてしぼりぬ菊膾 仲田寛子
笊いつぱい茹でてかばかり菊膾 葛西美津子
姉妹みな白髪頭よ菊膾 金澤道子
口述は終に許さず蛇笏の忌 藤英樹
歯ざわりのあら懐かしや菊膾 吉田順子
一品に加ふ得意の菊膾 田中益美