古志鎌倉ズーム句会(2023年9月10日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
焼肉か鰻にするか敬老日 田中益美
骨と化す木の根草の根秋の風 葛西美津子
不器用に生きながらへて濁り酒 湯浅菊子
まどかならん大きからんや島の月 藤原智子
夢醒めて秋の金魚となりゐたり 萬燈ゆき
世界中敵と思へる残暑かな 萬燈ゆき
秋されや象は足裏に音を知る 升谷正博
【入選】
縋るなよ我もよろよろ名残の蚊 きだりえこ
月の水しづかに満ちて巨椋池 森永尚子
竜胆や天に定まる黒き富士 神谷宣行
体内のあちらこちらに秋の声 関根千方
長生きの村の百福草の花 きだりえこ
瀧の句は瀧のごとくに鳴りにけり 長谷川櫂
鯊釣つて今日一日を空白に 田中益美
黒よりも黒き一反水澄めり 葛西美津子
籐椅子に坐れば見ゆる瀧のあり 長谷川櫂
曾良眠る壱岐にとどろく秋の波 木下洋子
一切の煩悩風に捨て扇 神谷宣行
この国の空気はくるしゑのこ草 関根千方
菊の日や茎のごとくに母の脚 関根千方
•長谷川櫂選
【特選】
夢醒めて秋の金魚となりゐたり 萬燈ゆき
端然と秋一切のカステーラ 澤田美那子
曾良眠る壱岐にとどろく秋の波 木下洋子
【入選】
熊よけの爆竹響く秋高し 葛西美津子
鱗雲母の病室窓開けよ 田中益美
妹を見舞ひて帰る月の道 金澤道子
新涼や東海道に富士現るる 田中益美
まどかならん大きからんや島の月 藤原智子
人の世の隅に蚯蚓の歌聞かん イーブン美奈子
そこここと庭掘り返す九月かな 澤田美那子
母在さば白寿の祝ひ栗きんとん わたなべかよ
世界中敵と思へる残暑かな 萬燈ゆき
咀嚼できぬ母へ搾るや梨の水 神谷宣行
第二句座 (席題:露、鶺鴒)
•藤英樹選
【特選】
妻と我いつか一つの露の玉 長谷川櫂
赤ん坊に智慧の兆すや露の玉 長谷川櫂
笑ふしか術なき露の世なりけり 森永尚子
ひとり居に何うながすや石叩き 澤田美那子
芋の露こぼれ言葉のこぼれをり 藤原智子
一粒の露ともならぬ地球かな 神谷宣行
【入選】
露吸うて砂漠に生きる虫一つ 関根千方
しら露に包み込まれし大伽藍 関根千方
天も地もあついあついと石叩き 萬燈ゆき
露けしや娘三人嫁に出し わたなべかよ
手で拭いてサドルの露や塾終へる 田中益美
少年の詠ふ孤島や石叩き 西川遊歩
明けぬ間に父母の出かける露の畑 木下洋子
足元の濡れるも嬉し今朝の露 澤田美那子
墨摺るやこの白珠の朝の露 きだりえこ
•長谷川櫂選
【特選】
石叩たたき疲れて飛び去りぬ 金澤道子
濁流のあとを叩きぬ石叩き 藤英樹
鶺鴒の身をひるがへす光かな 森永尚子
鶺鴒の叩く露けき石ひとつ 葛西美津子
石叩きここは地獄か天国か 関根千方
【入選】
島中を新聞配達草の露 田中益美
地球もつと暑くなるぞと石叩 神谷宣行
そこらじゆう叩きつくすか石たたき 森永尚子
明けぬ間や父母の出かける露の畑 木下洋子
白露や日の出ぬ前の一仕事 園田靖彦
石叩すいと水から青空へ きだりえこ
笑ふしか術なき露の世なりけり 森永尚子
ひとり居に何うながすや石叩き 澤田美那子
秋篠は水麗しと石叩 きだりえこ
心して句集開くや露の秋 木下洋子
鶺鴒のけふは機嫌のリズムかな 仲田寛子
どの石も気に入らぬらし石叩 金澤道子
血の匂ふ六条河原石叩き 萬燈ゆき