「俳壇」(本阿弥書店)1月号(12月14日発売)から連載「二度目の俳句入門」がはじまります。
第1章は「発想に始まって推敲に終わる」。
「俳壇」(本阿弥書店)1月号(12月14日発売)から連載「二度目の俳句入門」がはじまります。
第1章は「発想に始まって推敲に終わる」。
12月12日(木)の熊本日日新聞に連載「故郷の肖像」第1章「海の国の物語」第8回が掲載されています。「舟出浮き」、水俣忌のことなど。
第1章はこれで終わり、2025年1月からは第2章がはじまります。
よいクリスマスとよいお年をお迎えください。
第一句座
•藤英樹選
【特選】
乙丸も女房に買ふか寒の紅 葛西美津子
浅間山人へばりつく初日かな 長谷川櫂
蓬莱の山のひとつは能登の海 藤原智子
ひととせの地獄極楽冬至風呂 萬燈ゆき
この冬の養生の葱下仁田より 葛西美津子
【入選】
眉大事あとは顔色初鏡 田中益美
しんしんと重ね千枚蕪の樽 葛西美津子
新春句無き楸邨の一句集 西川遊歩
道やがて落葉の山に埋もれん 藤原智子
傷みたる心紙子をなづるなり 森永尚子
ひととせを生きて穢れて年湯かな 関根千方
ありがたや八十二才初御空 吉田順子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
新春句なし楸邨の一句集 西川遊歩
【入選】
まつ黒に焦がせば根深湯気漏らす 葛西美津子
みかづきの眉を大事に初鏡 田中益美
蛇の神御目ほそめて初日かな イーブン美奈子
青空の角を曲がればたい焼き屋 きだりえこ
江ノ島にローマ風呂あり初湯せん 西川遊歩
ひととせを生きて穢れて年湯かな 関根千方
初富士やすぐそこに目がくらむほど 田中益美
家ごもり養生の葱下仁田より 葛西美津子
第二句座 (席題:冬帽子、歯朶)
•藤英樹選
【特選】
星の句を詠んでいるのか冬帽子 仲田寛子
瘦せたねと声掛けられず冬帽子 田中益美
晩年の父目深なる冬帽子 萬燈ゆき
冬帽子人は消えゆき詩は残る イーブン美奈子
【入選】
冬帽も棺に入れればいつもの君 森永尚子
歯朶原に沈みて歯朶を刈る人ぞ 長谷川櫂
禿頭を隠すにあらず冬帽子 おほずひろし
けふもまた一人吟行冬帽子 萬燈ゆき
古本屋めぐる一日や冬帽子 木下洋子
冬帽子羆にばたり出つくわす 園田靖彦
宙にいる詩人を仰ぐ冬帽子 仲田寛子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
裏白の乳房の如く垂れゐたり 関根千方
冬帽子十五万人デモの渦 森永尚子
人は去り詩は残りけり冬帽子 イーブン美奈子
天にいる詩人を仰ぐ冬帽子 仲田寛子
【入選】
伊吹山雪の匂ひの歯朶を刈る 藤英樹
歯朶飾る先の先まで対称に 澤田美那子
裏白や日の燦燦とひもすがら 久嶋良子
裏白の夕には乾ぶ一間かな 葛西美津子
裏白を瀧と垂らして飾りけり イーブン美奈子
子規はよむ江戸の裏白京の歯朶 吉田順子
第一句座
・矢野京子選
【特選】
目を覚ます虎おそろしき屛風かな 斉藤真知子
初日仰ぐわが故郷は海の民 長谷川櫂
雁空に「く」の大文字を書初めぬ ストーン睦美
狂ひ咲く花のしじまや詩人逝く 安藤文
日の本の伸びよ伸びしろ雑煮餅 大平佳余子
【入選】
鈍色の佐渡の空こそ初御空 安藤文
母逝きしより白々と古暦 加藤裕子
書きかけとなるもやしれぬ日記買う 矢田民也
熱燗や秩父音頭を唄はんか 大場梅子
冬眠の寝息あちこち森の中 斉藤真知子
太箸や吉野の杉をかをりよく 高橋真樹子
湯たんぽの肋重ねて金物屋 大平佳余子
戦場の子らにもサンタクロース来よ ストーン睦美
餌運ぶ鴉勤労感謝の日 林弘美
暫くはたか女にならん紅葉寺 ももたなおよ
大海原蹴つて赤子の初日かな 石塚純子
雪下ろし新幹線に飛び乗って 岡村美沙子
新しき年に幸あれ窓みがく 米山瑠衣
手を拭ひ外す厨の古暦 石塚純子
身辺を片付け過ぎし寒さかな 神戸秀子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
十二月今朝も軍艦目の前に 米山瑠衣
冬の苺七十を母に祝はるる 矢野京子
討入も一揆もなき世寝正月 大場梅子
【特選】
古暦母逝きてより白々と 加藤裕子
寒風に藺草を植うる女たち 加藤裕子
新調の入れ歯を逃げる生海鼠 金田伸一
我もまたやがて盲か冬北斗 金田伸一
身辺を片付け過ぎし寒さかな 神戸秀子
【入選】
鈍色の空こそ佐渡の初御空 安藤文
書きかけとなるやもしらず日記買ふ 矢田民也
繰り返す推敲の果て湯冷めかな 城山邦紀
亡き母の角巻かけて寝る夜かな 岡村美沙子
歯固めの小石添へたり小豆粥 ももたなおよ
湯たんぽの肋を積んで金物屋 大平佳余子
餌運ぶ鴉勤労感謝の日 林弘美
楽しみにしてゐたころの年賀状 矢田民也
凩の夜を灯して二人かな 夏井通江
第二句座(席題:おでん、焚火)
・矢野京子選
【特選】
おでん屋の親爺にしたきお人かな 大場梅子
今年から小ぶりの鍋でおでんかな 米山瑠衣
おでん酒詩の一片も浮かばざる 斉藤真知子
【入選】
角取れし友のさびしきおでん酒 矢田民也
おでん鍋かしはの下に大根あり 長谷川櫂
さ迷へる地球の隅で焚火かな 今村榾火
方言のあまた飛び交ふ焚火かな 安藤文
大焚火世界の夜明けまだ来ぬか 安藤文
ねぢりこみ焼く文ひとつ落葉焚 石塚純子
スマホ撮りあと一心におでんかな 今村榾火
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
おでん酒一片の詩の浮かびこよ 斉藤真知子
けふだけの心の友とおでん酒 ストーン睦美
こよひまた梅酒の妻とおでん酒 金田伸一
【入選】
町中の枯葉を焼いて大焚火 ストーン睦美
部屋で焚く薪ストーブを焚火とす 金田伸一
佐渡ことばあまた飛び交ふ焚火かな 安藤文
大焚火世界の夜明けまだ来ぬか 安藤文
今年から小ぶりの土鍋おでんかな 米山瑠衣
しみじみと生きる喜びおでん酒 上松美智子
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
すさまじや足首残る猪の罠 川辺酸模
煎餅がぱりつと割れて展宏忌 上村幸三
千年のうつらうつらや日なたぼこ 石川桃瑪
しづかなる力をおもへ鏡餅 長谷川櫂
木守柿二個青空に奉る 川村杳平
【入選】
どうしても思い出せぬ名忘年会 宮本みさ子
貝塚や鰤の欠片があちこちに 宮本みさ子
夫も子も猫も乗られよ宝船 谷村和華子
心地よく死んでゐるなり日向ぼこ 上村幸三
弓も矢も的も息止め弓始 三玉一郎
りんご風呂両手で囲むりんごかな 佐伯律子
高祖父の屋号を訪ね懐手 川村杳平
配達夫首の喇叭が熊除けよ 臼杵政治
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
雪のひらみな眠りつつ降つてくる 平尾 福
腥き乾坤の間去年今年 青沼尾燈子
弓も矢も的も息止め弓始 三玉一郎
消えたれば狐火となれ牡丹の火 武藤主明
綿虫は遠い国から来たごとく 平尾 福
【入選】
すさまじや足首残る猪の罠 川辺酸模
天狗党の慰霊碑いづこ紅葉谷 川村杳平
命惜しめ牡丹の榾は燃ゆるなり 長谷川冬虹
独楽廻し子らに負けじと七十四 川辺酸模
鴨汁の後は蕎麦がき土鍋かな 田中益美
足だけが達者勤労感謝の日 那珂侑子
火吹き竹牡丹の燠を息づかす 武藤主明
逃げ足のさぞ遅からむずわい蟹 上 俊一
原発を毫も忘れず牡丹焚く 武藤主明
新米にかぼすも入りて届きけり 那珂侑子
第二句座(席題:大晦日、火鉢、福寿草)
長谷川冬虹選
【特選】
大寺に火鉢を据えて葬儀かな 平尾 福
九十の祖父にも仕事火鉢守 那珂侑子
子は誰も自分の部屋に大晦日 臼杵政治
身のうちの錘りをはずす大晦日 上村幸三
【入選】
灰を掻く父の背偲ぶ長火鉢 佐藤和子
熱冷めぬうち洗ふ臼大晦日 宮本みさ子
玄関にもう置いてある福寿草 青沼尾燈子
大みそか最終便の子を待ちぬ 那珂侑子
角火鉢上座は父の指定席 武藤主明
推敲の堂々巡り瀬戸火鉢 三玉一郎
一輪にして咲きみてり福寿草 長谷川櫂
日の匂ひ土の匂ひの福寿草 平尾 福
窓大きこけし工房福寿草 三玉一郎
長谷川櫂(推敲例)
【特選】
今は金魚飼ふ伝来の大火鉢 齋藤嘉子
老人力じつと養へ大晦日 上 俊一
【入選】
熱冷めぬうち洗ふ臼大晦日 宮本みさ子
かじかみて三人姉妹瀬戸火鉢 長谷川冬虹
おろおろと一年過す大晦日 川辺酸模
新築の家はなやかに福寿草 川辺酸模
玄関にもう置いてあり福寿草 青沼尾燈子
まだ除染済まぬ村あり福寿草 宮本みさ子
「短歌往来」(ながらみ書房)12月号に「天空山水」10句が掲載されています。特集「都市を詠む」、今年2024年夏の東京です。
第一句座
新年詠または当季雑詠
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
おんおんと能登一国を除夜の鐘 酒井きよみ
【特選】
黙々と蒔絵師の筆冬に入る 越智淳子
元旦や能登半島は震災忌 鬼川こまち
山積みの眼鏡よ語れ夜と霧 山本桃潤
あらたまのひとつ大きな輪を飾る 安藤久美
起き上がる姫小法師や能登の春 飛岡光枝
【入選】
母の鍋黒豆の釘残りけり 飛岡光枝
母の無きわが新年や花びら餅 飛岡光枝
母の味今もありあり雑煮かな 越智淳子
ぷかぷかと赤子も柚子もお湯の中 玉置陽子
夫の手を借りて眉引く初鏡 土谷眞理子
この冬はなほ寒からん能登の人 近藤沙羅
東京の昔の空へ羽根をつく 飛岡光枝
手袋のまま握り合ふ別れかな 藤倉桂
残業の机が一つ冬の月 稲垣雄二
水仙や庭の仕舞ひを一つづつ 川上あきこ
第二句座
席題:「虎落笛」、「水仙」
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
移り来て心の中に虎落笛 花井淳
虎落笛薬が勝つか死が勝つか 土谷眞理子
能登崩れ人間崩れ虎落笛 稲垣雄二
【入選】
水仙の花一輪の菩薩かな 清水薫
屋上の物みな今宵虎落笛 泉早苗
老い果ててさすらふ我は虎落笛 橋詰育子
人を喰ふむかし話や水仙花 酒井きよみ
水仙や二十一世紀はどこへ 清水薫
あきらかに摩天楼より虎落笛 田村史生
さすらへる詩歌の神か虎落笛 稲垣雄二
思ひ出のかけらの瓦礫虎落笛 花井淳
父母の留守の間を虎落笛 越智淳子
ふるさとの大土佐を越え虎落笛 橋詰育子
水仙の花をしごきてただ一輪 藤倉桂
初めての二間の社宅虎落笛 密田妖子
11月14日(木)の熊日新聞に「故郷の肖像」「海の国の物語」⑦が載っています。
プロ野球の選手カズヨシ・ジョージ・マツウラの話など。
次回は今年最後、12月12日(木)。
先日(2024年11月10日、日曜日)の鎌倉ズーム句会で、おほづひろしさんの
げつそりと痩せたる手足初湯かな
という句がありました。上五の「げつそりと」はいただけない、再考の余地ありとお伝えしましたが、その後の推敲、名案浮かびましたか。
一案、
痩せたまふ足の命(みこと)の初湯かな
という手もあるかと。
新春詠ですから、何事もめでたきさまに。
第一句座
•藤英樹選
【特選】
ふるさとの山のごとくに蒲団干す 藤原智子
鯛焼や日のあるうちに買ひにゆく 藤原智子
紅葉の木々のまほらに大紅葉 長谷川櫂
小春日に迷いひ込んだる蜆蝶 澤田美那子
【入選】
べつたら市雪より白き米麹 西川遊歩
膝の上匂ひしてゐる今川焼 田中益美
山廬いま青き香のなか松手入 関根千方
しぐるるやヒシギに呼ばれ里女 わたなべかよ
海鳴りや大根を干す背中にも 森永尚子
風花やうれしきことはしづかに来 澤田美那子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
山廬いま松の香のなか松手入 関根千方
一握の灰となるまで日向ぼこ 森永尚子
秋出水いのしし一頭流され来 仲田寛子
木の実ひとつ君の思ひ出小引き出し 森永尚子
ヨモツヒラサカ狂ヒ花巨大ナリ イーブン美奈子
【入選】
一票の行方は知れず初氷 木下洋子
返り花一つ開きて古木かな 藤原智子
づたづたの能登置き去りに秋は行く きだりえこ
初氷花に埋もるる母の顔 神谷宣行
ひとつづつ山河の重み秋果盛る 仲田寛子
大蜥蜴冬の運河を覗き込む イーブン美奈子
熱燗や民主主義とは腹の立つ 藤英樹
屋根よりも高きに上り松手入 関根千方
東京は木枯らし一号母へ電話 森永尚子
第二句座 (席題:初湯 蓮根堀り)
•藤英樹選
【特選】
七十の乳房かがやく初湯かな 萬燈ゆき
のうのうと今は一人の初湯かな 金澤道子
蓮根掘り泥あたたかき一日かな 藤原智子
鬼の脛つかむがごとく蓮根引く 関根千方
【入選】
胴長の抜き差しならず蓮根堀 葛西美津子
蓮根掘るマンション群に囲まれて 木下洋子
はからずも米寿となりて初湯かな 澤田美那子
番台の日本髪なる初湯かな 佐藤森恵
蓮根掘り片足抜かば深みへと わたなべかよ
蓮根掘る太きホースを唸らせて 仲田寛子
赤んぼが一番乗りの初湯かな 萬燈ゆき
げつそりと痩せたる手足初湯殿 おほずひろし
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特々選】
七十の乳房かがやく初湯かな 萬燈ゆき
蓮掘るや泥のなかより観世音 きだりえこ
初湯して桃色の妻眩しめり わたなべかよ
【特選】
蓮根引く泥のなかへと引き込まれ 関根千方
やはらかく泥を揺すりて蓮を引く イーブン美奈子
のうのうと今は一人の初湯かな 金澤道子
蓮根掘り泥あたたかき一日かな 藤原智子
【入選】
この晴れ間のがすものかと蓮根堀 田中益美
蓮根掘り泥にまみれてまだ続く 金澤道子
蓮根掘るマンション群に囲まれて 木下洋子
腰までの長靴重く蓮根掘る 鈴木榮子
蓮根掘小学生が眺めに来 木下洋子
蓮根掘る太きホースを轟かせ 仲田寛子
赤んぼが一番乗りの初湯かな 萬燈ゆき
鬼の脛つかむがごとく蓮根引く 関根千方
あたたかき一日選んで蓮根掘る 藤原智子