来年2026年は飴山實生誕100年に当たります。これを記念して古志社では文庫版『飴山實全句集』(朔出版)の編集を進めています。
この本の元になった花神社版『飴山實全句集』(2003年)が8部見つかり、すでに3部は売約済み、残り5部を定価(8000円)と送料でお分けします。
必要な方はこのサイトの事務局へご連絡ください。合計金額と振込先をお知らせします。
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第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
太陽の息の太さや山桜 趙栄順
花いかだ変幻自在崩れざる 山本桃潤
山桜去るも残るも能登無念 稲垣雄二
空に星地球にお玉じやくしかな 清水薫
白波は海の血しぶき水俣忌 玉置陽子
親離れやがて名馬に春の駒 間宮伸子
ふりあふぐ芸術院賞春の星 宮田勝
田を巡る大いなる旅蛙の子 清水薫
人はむかし空をよく読む春の雷 酒井きよみ
【入選】
ででむしや銀河へ行きし跡のあり 川上あきこ
行き暮れて杖持ち直す花薊 田中紫春
佐保姫の尻の跡あり大干潟 玉置陽子
花満ちてひときは大き兵の墓 花井淳
ふらここに走り出す子と追ふ母と 越智淳子
今年こそ鮑取らんと能登の海女 川上あきこ
咲みちし花へ怒涛の薩摩琵琶 泉早苗
壁にたつ衣桁のかげや春惜しむ 松川まさみ
春愁ひついて離れぬ一万歩 稲垣雄二
さくらさくらすべてのことはあとまはし 川上あきこ
乱高下する世にありて目刺食ふ 田村史生
万愚節孫が手加減する将棋 氷室茉胡
小さき腰曲げてめでたし桜えび 安藤久美
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
三宝に息なほ荒し桜鯛 玉置陽子
白波は海の血しぶき水俣忌 玉置陽子
春愁ひついて離れず一万歩 稲垣雄二
さを鹿の角落としけり春の月 田村史生
小さくとも腰を曲げたり桜えび 安藤久美
【入選】
追ひかける子を追ひかけてしやぼん玉 宮田勝
地にひたとはりつく影も夏隣 松川まさみ
佐保姫の尻もちのあと大干潟 玉置陽子
桜見る夢は叶はず桜鯛 氷室茉胡
酒蔵の漆喰古りぬ初つばめ 花井淳
マリリンの顔と開きぬチューリップ 飛岡光枝
遠国の土佐にも一つ牡丹寺 橋詰育子
二千年花に埋もれて石舞台 飛岡光枝
けさの雨走りのあやめ花ほどく 飛岡光枝
仏飯を庭の小鳥へ朝桜 藤倉桂
杉玉をかすめて空へ初つばめ 花井淳
第二句座
席題:「羅」、「葉桜」
・鬼川こまち選
【特選】
老ひとり羅に身を遊ばせて 飛岡光枝
葉桜の空に影あるごとくかな 趙栄順
羅の水輪流るる衣桁かな 玉置陽子
花は葉に変幻の世に生きてをり 梅田恵美子
八十も終りのひと日花は葉に 清水薫
【入選】
大桜葉となる昼の明るさに 安藤久美
花は葉に記憶違へる二人かな 松川まさみ
葉桜に囲まれし里母ひとり 土谷眞理子
葉桜のさはぐ大きな風の影 安藤久美
平穏な日々は続かず花は葉に 山本桃潤
葉桜にもたれて眠る桜守り」 藤倉桂
おもかげを探す更地や花は葉に 稲垣雄二
葉桜や焼き味噌香る峡の里 花井淳
葉桜や術後五年の第一歩 藤倉桂
閉ざされし秘仏の扉花は葉に 田村史生
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
羅のよき香の名は忘れけり 安藤久美
葉桜や同じ人思ふ人とをり 松川まさみ
羅に心を隠し会ひにゆく 稲垣雄二
【特選】
葉ざくらや櫻花壇に人も無し 飛岡光枝
羅や嘘も真実も胸のうち 趙栄順
八十も終りのひと日花は葉に 清水薫
【入選】
葉桜や火をもて鍛ふ玉鋼 玉置陽子
絵付師の頑固一徹花は葉に 花井淳
葉桜のさはぐ大きな風の中 安藤久美
羅の水輪流るる衣桁かな 玉置陽子
葉桜やケア帽子脱ぎ前向かん 土谷眞理子
散りつくし夢をみてゐる桜かな 趙栄順
第一句座。
•藤英樹選
【特選】
富士山をそこに残して春は行く 長谷川櫂
今年また燕来し日を記しけり 萬燈ゆき
大岡忌ことばは鞠のごとくかな 藤原智子
フランス山微笑む大岡信展 西川遊歩
雨あがるどこからきたか子猫なく 田中益美
【入選】
京アンパンへそは吉野の桜漬け 西川遊歩
楠の新樹のごとく入学す 藤原智子
春空を鷹の目をした詩人かな 森永尚子
師の受賞かくもうれしき柏餅 木下洋子
言の葉となれば虚しき桜かな 萬燈ゆき
春暮れて蕪村花さく野道かな 長谷川櫂
富士白く裾野は広し大岡忌 田中益美
葉桜の土手飛ばしくるオートバイ おほずひろし
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
詩歌のせ届く朝刊大岡忌 神谷宣行
わさび籠流れる水に置かれあり 藤英樹
さ蕨の萌え出づるころ信の忌 神谷宣行
大岡忌心の深さ問はれをり 木下洋子
老いていま己がこころの花守る 萬燈ゆき
【入選】
春惜しむ楸邨の筆信の書 きだりえこ
くらくらと水湧くところ花わさび 藤英樹
春惜しむ隅田川ゆく舟の上 吉田順子
大岡忌水湧くやうに言葉あり 藤英樹
折々のうたは花束大岡忌 西川遊歩
第二句座 (席題:海胆、藤)
•藤英樹選
【特選】
白藤は空より寄する波の花 関根千方
舟の上輝く雲丹を差し出しぬ 久嶋良子
海胆割つて月をとろりと啜りけり 森永尚子
【入選】
雲丹割つておどろおどろを啜りけり 澤田美那子
藤棚の下ひやひやと人過る 葛西美津子
山藤に見とれ保津川下りかな 木下洋子
馥郁と藤の落花やたなごころ 森永尚子
殻割れば海胆の花びら爛熟す 長谷川櫂
引きあぐる海胆黒ぐろと海女の籠 おほずひろし
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
藤房のぶつかり合へるしじまかな 藤英樹
よろこびの花とひらきし雲丹を食ふ 藤原智子
藤棚の下ひやひやと人とほる 葛西美津子
白藤のひかりさし入るや阿弥陀堂 きだりえこ
雲丹食うて喉うつくしき女かな 藤英樹
【入選】
花虻の安らふ藤の房の中 葛西美津子
海胆割つて無骨の指を差し入れぬ 葛西美津子
雲丹割つておどろおどろを啜りけり 澤田美那子
藤棚の守る家あり満開に 田中益美
舟の上輝く雲丹を差し出しぬ 久嶋良子
引きあぐる海胆黒ぐろと海女の籠 おほずひろし
第一句座
・矢野京子選
【特選】
椿の木巡りてかごめかごめかな 神戸秀子
糸よりは春の乙女ぞ包丁す 長谷川櫂
つちふるや心曇らすことなかれ 城山邦紀
こんなにも命軽きか水俣忌 斉藤真知子
目が合うて花見疲れの者同士 安藤文
【入選】
蓬摘みをれば潮風水俣忌 ももたなおよ
逃げ水の父よ戦艦大和の忌 瑞木綾乃
海鳴りは母を呼ぶこゑ水俣忌 今村榾火
詩歌詠む国に生まれて蜆汁 高橋真樹子
養生の老木に花二三輪 加藤裕子
花衣花より花の十六歳 ストーン睦美
おさらばはまだ早からん春暖炉 金田伸一
捻じくれし指にガリビラ水俣忌 瑞木綾乃
牡丹のほてりをさます朝の雨 斉藤真知子
金剛の杖の欲しきや山桜 大場梅子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
海底も花咲きめぐる水俣忌 高橋真樹子
死にきれず生きて死を待つ水俣忌 金田伸一
【入選】
水俣やあの世この世へ落椿 神戸秀子
逃げ水の父よ戦艦大和の忌 瑞木綾乃
海鳴りは母を呼ぶこゑ水俣忌 今村榾火
こんなにも命軽きか水俣忌 斉藤真知子
妻の目を恃みて見えず初桜 金田伸一
養生の老木に花二三輪 加藤裕子
ひとひらの花びらよぎる盧舎那仏 石塚純子
生き地獄とはこのことぞ水俣忌 安藤文
牡丹のほてりをさます朝の雨 斉藤真知子
水俣の海に椿よ降りつもれ 大場梅子
第二句座(席題:春灯、蛙、水俣忌)
・矢野京子選
【特選】
ひと日生きもうひと日あれ水俣忌 城山邦紀
かつて海泣きき笑ひき水俣忌 長谷川櫂
かあちゃんと呼ばれる夢や水俣忌 斉藤真知子
【入選】
駅弁が里への土産初蛙 神戸秀子
語りかけ吾子に顔寄す水俣忌 加藤裕子
春ともし消すたび縮む余命かな ストーン睦美
水俣忌死のうたごゑか波の音 高橋真樹子
夢うつつ蛙合戦ありやなし 大平佳余子
独り身に門限はなし夕蛙 安藤文
春灯孫の遊びに来てゐたる 上松美智子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
水俣忌死のうたごゑか波の音 高橋真樹子
開かぬ眼に花を見てをり水俣忌 矢野京子
見えねども恋の戦か夕蛙 駒木幹正
高層ビルあんなところに春灯 石塚純子
【入選】
蛙鳴く三千世界闇の中 ももたなおよ
片仮名となりしふるさとミナマタ忌 矢田民也
添寝するつもりか蛙一晩中 ストーン睦美
巻貝(びな)いつぱい取つて帰らん水俣忌 ももたなおよ
独り身に門限はなし夕蛙 安藤文
春灯やわが世のページまためくり 矢野京子
*年間賞 | ||
利休忌やこの皺の手もやがて灰 | 石川 | 密田妖子 |
*次点 | ||
狼の足跡雪よひそと消せ | 富山 | 酒井きよみ |
みちのくの春待つ心焼き尽くす | 千葉 | 若土裕子 |
大粒のあられは白し丹後道 | 石川 | 北村おさむ |
*候補 | ||
春浅し空は大きく空いたまま | 東京 | 楠原正光 |
老いぼれて今さら何を春を待つ | 神奈川 | 丸山分水 |
冬帽子深くかぶりて長き道 | 石川 | 北村おさむ |
母の愛雪の次々積る屋根 | 大分 | 山本桃潤 |
目の洞へ炎飛びつく目刺かな | 和歌山 | 玉置陽子 |
最後まで母を看取りし懐炉かな | 高知 | 森脇杏花 |
白梅の一輪二輪天の門 | 大分 | 竹中南行 |
立つ座る寝るも見苦し老の春 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
一湾のお乳となれや雪解水 | 富山 | 酒井きよみ |
夜気昼気吸ひつくしてや凍大根 | 北海道 | 芳賀匙子 |
春も記憶も茫々雨の神田川 | 神奈川 | 中丸佳音 |
蘇るあの日三月のマーラー | 青森 | 清水俊夫 |
グールドの宙へ天使の梯子掛け | 青森 | 清水俊夫 |
春も記憶も茫々雨の神田川 | 神奈川 | 中丸佳音 |
蛇出でて石で追はるるこの世かな | 愛知 | 稲垣雄二 |
涅槃会へ馳せ参じたきミミズかな | 大阪 | 木下洋子 |
夜の句会(四月五日 戎館) 十九名 十句出句 五句選
長谷川櫂 選 *お直し後の句を掲載
特 選
軋ませて花のまほらへロープウェイ 田村史生
ひとひらは意思あるごとし花吹雪 高橋慧
咲きみちて昏れゆく花のしづけさよ 葛西美津子
入 選
御朱印帳花をはさんで閉ぢにけり 藤英樹
吉野山歳時記千句花ふぶく 葛西美津子
花ごろも軒に干したり吉野建 宮本みさ子
うち寄せる花の怒涛や吉野建 玉置陽子
花の波うねりかへすや吉野建 髙橋真樹子
箸にする杉干してあり花の昼 飛岡光枝
花の句のてんでに躍る屏風かな 田村史生
み吉野の霞のほろと桜菓子 稲垣雄二
春の雪テントを灯すたこやき屋 宮本みさ子
恐ろしき花の道あり金峯山 田村史生
ひとひらの花を浮かべて葛羊羹 髙橋真樹子
めでたくも皆老いたりな花の句座 木下洋子
きだりえこ 選
特 選
花の宿とうに世になき人ばかり 長谷川櫂
初花を心に一生大岡忌 飛岡光枝
見えますか花の杖もて母との歩 谷村和華子
入 選
ぎしぎしと花のまほらへロープウェイ 田村史生
原発忌みさ子怒りの餅となれ 藤英樹
鬼の眼を踏んで見にゆく桜かな 稲垣雄二
めでたくも皆老いにけり花の句座 木下洋子
さつきまで父母在りし花筵 玉置陽子
朝の句会(四月六日 櫻花壇) 二十名 十句出句 五句選
長谷川櫂 選 *お直し後の句を掲載
特 選
餅屋句集あをあをと香る蓬かな 飛岡光枝
山彦の吹き散らしたる桜かな 玉置陽子
桜鮎口を貫く竹の串 稲垣雄二
花見舟櫻花壇を漕ぎ出しぬ 西川遊歩
墨痕を花と散らしぬ吉野紙 ももたなおよ
ひとつまた花に朽ちゆく吉野建 葛西美津子
入 選
満山の花に呆けて今朝の句座 田村史生
うぐひすの一声雨の上がるべし 葛西美津子
ひと汐の鮎のひらきも花のいろ 葛西美津子
ととが搗きかかが丸める柏餅 きだりえこ
朝粥の花うち分ける箸の先 玉置陽子
花見へと皆出払つて製材所 田村史生
花びらをつけてナイキの小さき靴 葛西美津子
草餅の湯気たててゐる句集かな 飛岡光枝
花冷の鈴の音する吉野山 三玉一郎
杉箸の香りに花を惜しみけり 髙橋真樹子
朝茶粥ひと日を花とあそべとや 髙橋真樹子
きだりえこ 選
特 選
花湧きて亡き人のみな近づきぬ 谷村和華子
跡継ぎの揺れる心や花おぼろ 西川遊歩
草の餅湯気たててをり初句集 飛岡光枝
今朝開く花の息吹の霞かな ももたなおよ
入 選
闇の中花のにほひて眠られず 飛岡光枝
花びらをつけてナイキの小さき靴 葛西美津子
中空に立ち濡れてゐる桜かな 玉置陽子
人柄のよきこと尊し大岡忌 西川遊歩
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
赤鬼の顔して負けて浪速場所 及川由美子
母の香の残れる家へ初燕 川辺酸模
黒板にひらがなだけの卒園歌 佐伯律子
卒園や振り向きもせず登園す 佐伯律子
黒板の師の似顔絵や卒業す 臼杵政治
【入選】
点滴で存へ五年星朧 上 俊一
桜鯛かぶとを割りて潮汁 服部尚子
大白鳥まほらを目指し脚伸ばし 谷村和華子
犬も服着る世となりぬ春の風 那珂侑子
わが骨灰みなこへ投げよ春の波 臼杵政治
まさぐりし祖母の乳房よ辛夷咲く 齋藤嘉子
壁抜けし校舎は原発忌のすがた 宮本みさ子
みごとなる角落ちてゐき雪の上 長谷川櫂
白木蓮や母を恋しと母は言ふ 谷村和華子
長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】下段は
ひと村を包める蚕時雨かな 齋藤嘉子
咲みちて母が母恋ふ白木蓮 谷村和華子
【特選】
青き星にじむさよりの一夜干し 上 俊一
笑はざる母となりけり草の餅 川辺酸模
盛岡の清しき朝よ雪解川 長谷川冬虹
静けさの何やら動く木の芽かな 石川桃瑪
太陽へ引きずり揚ぐる若布かな 三玉一郎
【入選】
点滴で五年存へ人朧 上 俊一
桜鯛かぶとを割りて潮汁 服部尚子
裏表確かめ海苔を飯にのせ 上 俊一
塗畦のまつすぐにして曲がりけり 三玉一郎
母の香の残れる家へ初燕 川辺酸模
犬も服着る世となりぬ春の風 那珂侑子
春雨や大きな犬の浮かぬ顔 上村幸三
ぶらんこの少年何に怒れるや 上村幸三
排尿のあとの春眠心地よき 上 俊一
春帽子買う気にさせてゐる鏡 辻奈央子
わが言葉砥石にかけん梅真白 長谷川冬虹
春蘭の増ゆる花芽を数へけり 阿部けいこ
山上に乙女踊るか花辛夷 齋藤嘉子
【第二句座】(席題:雁帰る、花見、柳絮)
長谷川冬虹
【特選】
草の葉にしばしやすらふ柳絮かな 長谷川櫂
縄文の水場の跡や柳絮飛ぶ 上 俊一
落城にあらず開城柳絮とぶ 武藤主明
喪の明けし大きな空を雁帰る 三玉一郎
【入選】
微笑んで柳の花粉症と言ふ 平尾 福
青空に声のさざ波雁帰る 佐藤和子
霊園を一周したる花見かな 那珂侑子
晩翠の歌碑を背にして花見かな 武藤主明
冥界へ身を乗り出して花見かな 三玉一郎
大利根を渡つて常陸柳絮飛ぶ 上 俊一
隊列を組み直しては雁帰る 川村杳平
研がれたる言葉の塵の柳絮かな 三玉一郎
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
長安の陽はなほ高し柳絮とぶ 上村幸三
立ち止まり行き帰りては花見かな 那珂侑子
研がれたる言葉の塵の柳絮かな 三玉一郎
【入選】
ふるさとの力士自慢や花見舟 平尾 福
大利根を渡れば常陸柳絮飛ぶ 上 俊一
二頁に余る花見の日記かな 宮本みさ子
第一句座
飴山忌または当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
樽底に櫂残りけり鳥雲に 宮田勝
飴山忌能登の岩海苔炙りつつ 田村史生
能登未だ涙のやうにすみれ草 松川まさみ
春風や足の生えたるランドセル 籔谷智恵
湯上がりの赤子おぼろをだくやうに 川上あきこ
民主主義藁の解けし目刺達 山本桃潤
取り合はせの化学反応飴山忌 氷室茉胡
沃野まだ畦ばかりなり飴山忌 密田妖子
シーラカンス十の鰭にて春をよぶ 近藤沙羅
【入選】
跳びつく子ほのかに春塵匂はせて 密田妖子
飴山忌コースターごと持ち上ぐる 宮田勝
燕来る旅路の果てに母となる 田中紫春
白山を雪の馬駆く實の忌 稲垣雄二
いのちなほ熱しと思ふ花衣 趙栄順
「抗がん剤効いてますよ」と山笑ふ 土谷眞理子
震災忌けふただならぬ空の青 趙栄順
わが体つなぐ金具や春来たる 橋詰育子
母の香を風へ返さん春ショール 玉置陽子
崩れたる海岸線や貝寄する 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
生き死にの昭和百年實の忌 鬼川こまち
春の水鮒のきほひに濁りをり 趙栄順
いのちなほ熱しと思ふ花衣 趙栄順
大加賀に實忌の月上りけり 田村史生
恍惚と犀川は音飴山忌 玉置陽子
【入選】
知らぬ人なれどなつかし飴山忌 泉早苗
ものの芽のざわつく庭となりにけり 密田妖子
この年は母無き花を待ちにけり 飛岡光枝
眠りゐるかはづもろとも溝浚へ 酒井きよみ
犀川へ花のいろ射す飴山忌 玉置陽子
春風や定置網へとみをつくし 花井淳
我もまた花鋤き込まむ飴山忌 藤倉桂
能登濡らす雨もかをれよ飴山忌 松川まさみ
掻き立てて炭香らせん飴山忌 安藤久美
解体や泥に混じれる春の雪 稲垣雄二
鮠走る流れしづかに飴山忌 越智淳子
さへづりや数多の薬命延ぶ 土谷眞理子
わが体つなぐ金具や春来たる 橋詰育子
リハビリの歩幅伸びけり春の土 氷室茉胡
柔らかなことばは強し飴山忌 稲垣雄二
春塵や螺髪をあらふ今朝の雨 梅田恵美子
燻されて月もあらはれお松明 田村史生
貝寄や海岸線のずたずたに 泉早苗
第二句座
席題:「花冷え」、「春塵」
・鬼川こまち選
【特選】
野仏の台座に残る花の冷え 藤倉桂
二人ともやがてきらきら春の塵 松川まさみ
花冷えを能登の太鼓は打ち払ふ 田中紫春
県職を退きて一医師桜冷え 宮田勝
ソプラノや梁の春塵ふるはせて 松川まさみ
花冷えの朝はロイヤルミルクテイー 川上あきこ
花冷に葛善哉の旗上がる 田村史生
母逝きしあの日あの時花の冷え 藤倉桂
【入選】
春塵や土を篩へば骨片片 玉置陽子
春塵や少年悲哀の由知らず 越智淳子
花冷の顔を並べて句会かな 飛岡光枝
球場の春塵を駆け守備位置へ 安藤久美
春塵や人の埋まらぬ椅子ばかり 宮田勝
東京は花冷えのビル煌々と 飛岡光枝
小気味良き裾の捌きや春の塵 花井淳
花冷えや母の琥珀のネックレス 藤倉桂
花冷えや白き歯が笑む独裁者 稲垣雄二
花冷の花よりあはき貝の口 安藤久美
うなぎ屋の薄き座布団春の塵 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
花冷や珠を抱きて貝眠る 安藤久美
花冷や花よりあはく貝の口 安藤久美
【入選】
花冷の東京にビル煌々と 飛岡光枝
花冷や全身麻酔出来ぬ歳 氷室茉胡
愛猫をはたけばまふや春埃 酒井きよみ
「俳壇」(本阿弥書店)4月号に「二度目の俳句入門」④が掲載されています。「発想に問題のある俳句」は捨てるしかないという話。