古志金沢ズーム句会(2024年6月16日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
名刀は何もまとはず涼しさよ 長谷川櫂
ひとひらがほどけ怒濤の牡丹かな 趙栄順
山ひとつ動かしてゐる団扇かな 趙栄順
奥能登や卯波真白き鎮魂歌 玉置陽子
六月の花嫁のごと母逝きぬ 安藤久美
狩行逝く吾なら青に咲く四葩 氷室茉胡
【入選】
無花果の葉影は故郷みどり色 山本桃潤
過ぎし日は還らず噴水の滂沱 田中紫春
抗がん剤薬か毒か水中花 土谷眞理子
万緑や青春は吹き抜けし風 田中紫春
涼しさや呉須一滴の花ひらく 長谷川櫂
青萩の大きく撓ひ吾を揺らす 近藤沙羅
憂ひなどパセリもろともみじん切り 稲垣雄二
病む母に夏の窓あり開け放つ 飛岡光枝
世の中を放り出したる団扇かな 長谷川櫂
枇杷たわわ百歳にして独り住む 密田妖子
帰省子の畳の上にころがへり 宮田勝
水羊羹かの一切れが別れとは 長谷川櫂
池の面の空に昇るや夏の雲 越智淳子
鼓門無音どよみて梅雨入かな 越智淳子
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
滴りて水面を穿つ水の玉 趙栄順
奥能登の卯波は白き鎮魂歌 玉置陽子
新しき妻のごとしよ冷蔵庫 安藤久美
六月の花嫁のごと母逝きぬ 安藤久美
天蚕のかがやく緑脱皮四度 間宮伸子
【入選】
推敲の一字をさぐり明易し 泉早苗
古庭や今朝新しく花みかん 川上あきこ
螢籠ひと世といへど短かさよ 橋詰育子
葭切の葭にしづまる夕べかな 橋詰育子
抗がん剤薬は毒か水中花 土谷眞理子
白山を動かしてゐる団扇かな 趙栄順
藍褪せていよいよ涼し麻のれん 松川まさみ
嬉しさは五つの色の奈良団扇 藤倉桂
たたまれしままの籐椅子母の部屋 梅田恵美子
而して戦乱の世へ古団扇 鬼川こまち
この星の一点にいゐる天道虫 田中紫春
途中から力を込めて西瓜割る 宮田勝
バスを待つ日傘の影にひとりづつ 飛岡光枝
第二句座
席題:「かき氷」、「凌霄花」
・鬼川こまち選
【特選】
かき氷二人ひとつの涼しさよ 花井淳
かき氷ただ一口のため並ぶ 田中紫春
晴天の寂しき狂女凌霄花 藤倉桂
鉾町は雨に洗はれ凌霄花 飛岡光枝
匙いつぽん富士山にさし氷水 飛岡光枝
のうぜんの呑みこんでゆく山家かな 酒井きよみ
ざくざくとくづすが嬉しかき氷 越智淳子
【入選】
かき氷山の中腹から匙を 間宮伸子
白山を匙で崩すやかき氷 稲垣雄二
天上へなら連れゆかれても凌霄花 川上あきこ
苺氷初めて食べし日の遠き 近藤沙羅
凌霄花吾にもありぬ嫉妬心 間宮伸子
のうぜんの花咲きほこる廃工場 松川まさみ
のうぜんは血の花散つて地を染めり 稲垣雄二
のうぜんを屋根に登らせしづかなり 近藤沙羅
のうぜんの花太陽を溢れきて 松川まさみ
凌霄花母の残せし帯の色 清水薫
かき氷憂さもろともに冷やしをり 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
かき氷二人ひとつの静かさよ 花井淳
かき氷炎の舌で触れてみよ 稲垣雄二
初恋や肩に力のかき氷 梅田恵美子
人生の休暇はてなしかき氷 山本桃潤
【入選】
歯にしみる齢かしこしかき氷 橋詰育子
のうぜんの花咲きほこれ廃工場 松川まさみ
凌霄花呑みこんでゆく山家あり 酒井きよみ
のうぜんやながらへてなほ恋心 田中紫春
かき氷夢醒めるごと溶けにけり 趙栄順
のうぜんの花太陽に憧れて 松川まさみ
凌霄に一雨ほしき夕べかな 安藤久美
かき氷路面電車の通りけり 梅田恵美子