9月12日(木)の熊本日日新聞文化面に《故郷の肖像》「海の国の物語」⑤が載っています。ご感想あればどうぞ。
毎月第2木曜日に掲載予定。次回は10月10日(木)です。
9月12日(木)の熊本日日新聞文化面に《故郷の肖像》「海の国の物語」⑤が載っています。ご感想あればどうぞ。
毎月第2木曜日に掲載予定。次回は10月10日(木)です。
長谷川 櫂 選
第一句座 | |
【特々選】推敲例 | |
新潟の大吟醸と月を待つ | 北側松太 |
月光に集まつてくる鯨かな | 三玉一郎 |
月光やこよひ華やぐ石の庭 | 安藤久美 |
【特選】 | |
病院へ明日また戻る良夜かな | 臼杵政治 |
アンモナイト石に眠れる良夜かな | 岩井善子 |
修羅嘆く口の中まで今日の月 | 岩井善子 |
【入選】 | |
百年を生ききし母と今日の月 | 矢野京子 |
今日の月すべての月を忘れては | 稲垣雄二 |
病癒え月見の支度山盧守 | 西川遊歩 |
月光や立てかけしまま母の杖 | 飛岡光枝 |
明日捌くうなぎ沈めり今日の月 | 飛岡光枝 |
まだぬくき芋を供へて月を待つ | 斉藤真知子 |
蓑虫も顔だしてゐる今日の月 | 川辺酸模 |
まん丸な月を丸呑み蟇 | 北側松太 |
丁寧にだし取るこよひ芋名月 | 安藤久美 |
捨て梨の畑にすえゆく良夜かな | 岩井善子 |
名月や逝きし人みなその下に | 矢野京子 |
とぼとぼと来る秋を待つ今日の月 | 矢野京子 |
菅原の鼠出で来よ今日の月 | 川辺酸模 |
妻といふ命一つと月に寝る | 稲垣雄二 |
けふの月戦の星を見てをらん | 澤田美那子 |
大叔父のへたな高吟月翳る | 西川遊歩 |
壁にあるメニュー眺めて月見そば | 髙橋真樹子 |
月餅を割るやぽつかり黄身の月 | 西川遊歩 |
* | |
第二句座 | |
【特々選】推敲例 | |
野晒も夢を見るらむ月今宵 | 川辺酸模 |
人類に月ひとつあり上りくる | 三玉一郎 |
干蛸の頭を透けるけふの月 | 北側松太 |
【特選】 | |
白さまざま今宵の月の団子かな | 髙橋真樹子 |
莟みつつ小菊香るや月の畑 | 玉置陽子 |
月餅を年中売るもけふの月 | 西川遊歩 |
二十年人を待ちゐる月の椅子 | 飛岡光枝 |
【入選】 | |
月光やアボカド黒く熟れゆくも | 飛岡光枝 |
病室の馴染めぬベッドけふの月 | 稲垣雄二 |
寝静まる加太千軒や今日の月 | 玉置陽子 |
しんしんと月光纏ふ阿修羅かな | 髙橋真樹子 |
赤ん坊は月を待たずに眠りけり | 斉藤真知子 |
けふの月真黒の富士照らしけり | 飛岡光枝 |
笯二つ仕掛けて帰る月夜かな | 北側松太 |
煮びたしの茄子冷ましありけふの月 | 北側松太 |
名月やくろぐろとある愛宕山 | 木下洋子 |
「Best Partner」(浜銀総合研究所)10月号に「サムエル・コッキング商会」が掲載されています。
考へる一本の棒竹節虫 | 新潟 | 安藤文 |
花びらの重さに破れ朝顔よ | 新潟 | 高橋慧 |
身一つで闘ふパリの夏暑し | 長野 | 金田伸一 |
豊かなる乳房疎まし夏遍路 | 愛知 | 稲垣雄二 |
黒々とぬれたる硯けさの秋 | 大阪 | 安藤久美 |
魂の一番底に敗戦忌 | 大阪 | 澤田美那子 |
丹精は口には出さず秋茄子 | 大阪 | 澤田美那子 |
聞きつつも邯鄲の音を忘れゆく | 広島 | 森恵美子 |
たとふれば泉のごとく癒えたまへ | 広島 | 森恵美子 |
はたた神の全身見たり島泊り | 大分 | 山本桃潤 |
八月来硝煙のごと霞みつつ | 大分 | 竹中南行 |
「中央公論」(中央公論新社)10月号の熊本特集にエッセイ「怪獣モッコス」が載っています。
第一句座
•藤英樹選
【特選】
八月を呑み込んでゆく夕焼かな イーブン美奈子
部屋まるでお化け屋敷やいなびかり 森永尚子
台風報ひもの少々買ひたしぬ 湯浅菊子
稲妻は水なき空を走りけり 長谷川櫂
秋風の君住む街や眺め過ぐ 髙橋真樹子
痩せこけて眼ん玉ぎよろり鮎下る 園田靖彦
【入選】
大空が瀑布をなせり大白雨 長谷川櫂
舟ゆくや霧を抜けては霧に入り 関根千方
けさ秋の海すべりゆくヨットあり 木下洋子
蟻地獄この静寂に誘はれて 木下洋子
黄の喉みせて鯉くる今朝の秋 仲田寛子
男踊りの腰深く折り風の盆 わたなべかよ
病巣の影なき身体秋高し 神谷宣行
目に耳に八月の修羅ことごとく イーブン美奈子
ラ・フランス一日待てと又妻が 西川遊歩
爽やかや川をはなるる川の音 おほずひろし
あの渓の欠片の硯水の秋 西川遊歩
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特々選】
長き柄の細きを秋の団扇とす 澤田美那子
少年は大河を泳ぐ敗戦日 イーブン美奈子
卵割つて黄身の高しや今朝の秋 佐藤森恵
朝顔のうしろにしんと昨日あり 髙橋真樹子
あの崖の欠片の硯水の秋 西川遊歩
【特選】
ざらざらを喜ぶ刃梨を剥く 葛西美津子
八月を呑み込んでゆく夕焼かな イーブン美奈子
台所汚さぬやうに秋刀魚焼く 髙橋真樹子
腰深く踊る男や風の盆 わたなべかよ
獣の匂ひをさせて台風来 藤英樹
アルプスの水に冷やして桃ひとつ 高橋真樹子
【入選】
つぎつぎと蕾かかげぬ秋の薔薇 吉田順子
露草に小さき骸埋めけり 藤原智子
黄の喉あけて鯉よる今朝の秋 仲田寛子
部屋まるでお化け屋敷やいなびかり 森永尚子
これがかの蟋蟀相撲の土俵とや 西川遊歩
台風や鯵のひものを買ひたしぬ 湯浅菊子
秋高き身に病巣の影もなし 神谷宣行
敗戦日より太陽の子となりき イーブン美奈子
抽んでて秋明菊は花支度 金澤道子
秋冷や川を流るる川の音 おほずひろし
ラ・フランス一日待てと妻が又 西川遊歩
第二句座 (席題:猿酒、青蜜柑)
•藤英樹選
【特選】
もてなされ猿酒とは知らざりき 萬燈ゆき
もう二度とたどり着けない猿酒 木下洋子
猿酒やなめとこ山に分け入りて 葛西美津子
青みかん誰か剥いてる夜行バス 金澤道子
海風に照る青蜜柑崖なして 葛西美津子
蒼白き月が醸すや猿酒 萬燈ゆき
【入選】
ましら酒不老長寿と教えられ おほずひろし
青みかんむひて病室さわやかに 田中益美
猿もまた乙女の醸す猿酒 長谷川櫂
風待ちの船を見下ろす青みかん わたなべかよ
戸隠の鬼より掠めましら酒 金澤道子
空をゆく悟空の腰にましら酒 おほずひろし
•長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
蟻と蜂沈んでをりぬ猿酒 佐藤森恵
東塔の向こう西塔青みかん きだりえこ
青蜜柑蝶の惑うて近づき来 佐藤森恵
梛の木の月が醸すや猿酒 萬燈ゆき
青蜜柑ひからびたわがくちびるへ 森永尚子
【入選】
青蜜柑割つて豊かな飛沫浴ぶ 澤田美那子
もう二度とたどり着けない猿酒 木下洋子
青みかんむいて病室さはやかな 田中益美
猿酒さがして出羽の山深く 萬燈ゆき
つるのびて天上天下ががいもの花 | 北海道 | 芳賀匙子 |
荒梅雨や大蛇のごとく最上川 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
ほととぎす記憶の谷から聞こえくる | 千葉 | 木地隆 |
遠くまで見えてバス来ぬ酷暑かな | 東京 | 櫻井滋 |
木から木へ燃え移るなり蝉の声 | 神奈川 | 三玉一郎 |
青年の裸のまぶし牛洗ふ | 新潟 | 安藤文 |
初蝉や身の裂けるほど泣くがよし | 石川 | 北村おさむ |
軽井沢産のビールは冷えて着く | 長野 | 金田伸一 |
わなわなと忍び泣く花烏瓜 | 静岡 | 湯浅菊子 |
日の熱の残る暗闇蛍飛ぶ | 愛知 | 稲垣雄二 |
金メダル地獄を見きとさはやかに | 大阪 | 澤田美那子 |
炎天や黙礼交す杖と杖 | 大阪 | 澤田美那子 |
風の来て大海原となる青田 | 兵庫 | 吉安とも子 |
夜が明けて魔法の解けし蛍かな | 奈良 | 中野美津子 |
口紅のどろりと溶くる炎暑かな | 奈良 | 中野美津子 |
紀ノ国は大空の中夏の果 | 和歌山 | 玉置陽子 |
愛せざる哀しみもあり梅を煮る | 広島 | 森恵美子 |
蝉時雨遥かに我のゐたりけり | 広島 | 森恵美子 |
明易の何の報ひやこの病苦 | 高知 | 森脇杏花 |
素潜りの少年魚群の中にかな | 長崎 | ももたなおよ |
「古志」九月号の長谷川櫂連載「二度目の俳句入門」で「水俣病公式発見の日」が「一九五八年(昭和三十三年)五月一日」とあるのは「一九五六年(昭和三十一年)五月一日」の誤りでした。
生き方の異なる母の髪洗ふ | 神奈川 | 植木彩由 |
散り敷きて今日の命や凌霄花 | 新潟 | 高橋慧 |
かすむ目にもつと光を雲の峰 | 長野 | 金田伸一 |
三伏や顔まつかにし卯の花炒る | 静岡 | 湯浅菊子 |
夏帽子大地に置きて黙祷す | 愛知 | 稲垣雄二 |
寝返りの骨が軋むや夏の夜 | 奈良 | きだりえこ |
妻死さば我は骨なし古団扇 | 長崎 | 川辺酸模 |
第一句座
・矢野京子選
【特選】
石あらばたれの墓ぞと秋遍路 矢田民也
神仏吹き飛ばされし野分朝 城山邦紀
銀漢や我が光陰はホ句の中 今村榾火
不知火の言葉の海へ帰省かな 長谷川櫂
父と子のだんまり続く榠樝の実 石塚純子
【入選】
独り居をたたくはクイナばかりなり 岡村美沙子
祝はれて酔ひほのぼのと温め酒 菅谷和子
ひとつ咲き暑さ嫌いの牽牛花 加藤裕子
ちちははと居た日は遠し初秋刀魚 高橋真樹子
荼毘に付すしづかな時を鉦叩 今村榾火
若冲の鶏になりたや羽抜鶏 大平佳余子
旅立つ日金魚を池へ放ちやる 伊藤靖子
すいつちよのちよいと飛び込む勝手口 ストーン睦美
ひげ生やし息子現はる盂蘭盆会 夏井通江
台風のぐづらぐづらや大混乱 大平佳余子
いびつでも愛しき家族吾亦紅 瑞木綾乃
お七夜を終えて連れ出す地蔵盆 ももたなおよ
先生の魔法の手なり小鳥来る 大場梅子
水柱噴いて厄日のマンホール 神戸秀子
アルプスの雫よシャインマスカット ももたなおよ
竹伐りの音叡山にこだまする 大平佳余子
やはり道間違へたらし秋の山 原京子
邯鄲と母が教へてくれし日よ 斉藤真知子
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
もう裂けるところはあらず破芭蕉 斉藤真知子
竹を伐る音こだませり比叡山 大平佳余子
にぎやかに月より戻る屋形船 今村榾火
【入選】
亡き犬が来て寄り添ひぬ秋の夜 夏井通江
悶々と術後の夜長いかにせん 大場梅子
野分晴マッターホルンのような雲 伊藤靖子
朝からの秋の暑さに家ごもり 夏井通江
台風に灼熱列島ひと呼吸 加藤裕子
やはり道間違へたらし秋の山 原京子
ふるさとの墓仕舞しぬつくつくし 神戸秀子
白桃を剥きゐて静かなる夜かな 斉藤真知子
赤ん坊も母も眠りぬ涼新た ももたなおよ
人無惨草木無惨秋に入る 矢野京子
台風一過青空のぼりゆく一機 斉藤真知子
第二句座(席題:朝顔、秋高し)
・矢野京子選
【特選】
山一つ湖に浮かべて秋高し 高橋真樹子
朝顔棚藍一色の瀧をなす 長谷川櫂
朝顔の色を殺してしぼみけり 矢田民也
【入選】
朝顔の開きそこねに手をかして 大平佳余子
秋高し放たれし犬まっしぐら 石塚純子
朝顔が見送ってゐる登校子 石塚純子
年ごとに色淡くなり牽牛花 原京子
朝顔にきのふの夜の匂ひあり 高橋真樹子
朝顔やきのふの花をもう忘れ 斉藤真知子
この先はすべてが記録秋高し 金田伸一
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
朝顔や今朝は不調の俳句会 金田伸一
秋高しされど不作や秋津洲 菅谷和子
朝顔や今朝の花さへもう忘れ 斉藤真知子
【入選】
父愛す藍の朝顔ひらきけり 菅谷和子
秋高し放たれし犬まっしぐら 石塚純子
朝顔の一輪ひらく大事かな 斉藤真知子
朝顔と大きく書きぬ種袋 高橋真樹子