第一句座
•藤英樹選
【特選】
口閉ぢて非戦の構へ海鼠なる きだりえこ
氷の鰤雪の鮪と糶られけり 葛西美津子
荒涼たる一日ぬくもれ焼芋に 葛西美津子
庭に福散らして跳ねて初雀 イーブン美奈子
近松忌柚子の香りの蕎麦を打つ 澤田美那子
桜鍋いろはにほへと下足札 金澤道子
【入選】
さりげなくそつと焚火へ手紙束 園田靖彦
大利根の夜ごと皺よる懸大根 園田靖彦
五百年の名句埋火搔くごとく 澤田美那子
海鳴りはあなたでしたかセーター編む 魚返みりん
洗はれて大根笑ひ出しさうな 藤原智子
冬深しずしりと俳句五百年 葛西美津子
新年や瀧のごとくに龍太の句 長谷川櫂
余生とはいまだ思わず海鼠噛む 升谷正博
楸邨の硯は山の眠るかに きだりえこ
•長谷川櫂選
【特選】
雪の鰤氷の鮪糶られけり 葛西美津子
冬深しずしりと俳句五百年 葛西美津子
脚一本押し戴いて蟹を食ふ イーブン美奈子
【入選】
この森のかをり馥郁落葉踏む 金澤道子
この道も旧道となる冬田かな 森永尚子
金継の金を曇らす寒さかな 升谷正博
踏みゆけばこの世遥けき落葉かな 萬燈ゆき
みかんの皮花とひらきぬ置き炬燵 森永尚子
荒涼たる一日ぬくもれ焼芋に 葛西美津子
ほの赤く手術痕浮く柚子湯かな わたなべかよ
寒禽や言ふべきは言ふ国であれ 木下洋子
オンドルや骨身に当たる薄布団 西川遊歩
第二句座 (席題:氷柱、初旅)
•藤英樹選
【特選】
初旅の京の和菓子の花やかに わたなべかよ
初旅や車窓に探す伊吹山 金澤道子
ひとり寝にずしり氷柱折るる音 おほずひろし
初旅や草のひとつも美しく イーブン美奈子
真青な空より氷柱折りて来よ 長谷川櫂
【入選】
初旅やさみしさ極むところまで 萬燈ゆき
天つ風りんりんと鳴れ軒つらら 長谷川櫂
初旅や最後は伊勢の大明神 園田靖彦
不老長寿うたふ温泉旅始 仲田寛子
初句会初旅となるうれしさよ 澤田美那子
初旅や夢にいできし街探し 萬燈ゆき
初旅や荷物小さく一つきり 田中益美
スキー客氷柱のカーテン蹴りて出ぬ 湯浅菊子
怖ろしき樹々に囲まれ氷柱宿 森永尚子
•長谷川櫂選
【特選】
この胸を射抜く氷柱の輝きよ 葛西美津子
初旅や母の寝息を聴きにゆく 神谷宣行
冬が冬たりし昔や大氷柱 イーブン美奈子
【入選】
初旅の京の和菓子の花やかな わたなべかよ
初旅は杖の練習門を出づ 神谷宣行
初旅や車窓に探す伊吹山 金澤道子
ぽたぽたと日をこぼしつつ軒氷柱 金澤道子
赤き実の一つ一つの氷柱かな 関根千方
初旅や一番軽きかばんもて 森永尚子
怖ろしき樹々に囲まれ氷柱宿 森永尚子