第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
でんと置く初湯の尻や活断層 松川まさみ
セーターや先づは首から白鳥に 玉置陽子
余震千回能登一国は地震の上 酒井きよみ
鷹匠に鷹の眼差し初御空 藤倉桂
寒たまご瓦礫の町に光さす 飛岡光枝
鬼柚子をみな墜としたる能登地震 泉早苗
悲しみの底打ち叩く霰かな 越智淳子
冬木の芽いつかほぐれん能登の空 趙栄順
【入選】
待春や光れるものに能登の海 趙栄順
白山は天上の嶮初明り 玉置陽子
短日に瓦礫いくばく片づくや 越智淳子
この国の愚かなる一人初鏡 山本桃潤
地震の地へ雪は辛くも清め塩 密田妖子
男は漁女は朝市能登氷る 酒井きよみ
大加賀は詩のまほろば初句会 玉置陽子
分け入て心の奥へ旅はじめ 安藤久美
薺打つ春の鼓動のはじめなり 稲垣雄二
大地震や供華のごとくに波の花 安藤久美
月凍る家の肋骨頭蓋骨 稲垣雄二
真つ白な雪悲しけり能登半島 山本桃潤
揺れ止まぬ大地に机読始 稲垣雄二
老骨も免れがたく寒に入る 橋詰育子
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
地震ふるや夫を背負ふて初山河 鬼川こまち
春よこい能登一国は地震の上 酒井きよみ
風花や能登の嘆きに夜も舞ふ 稲垣雄二
山を流し海を抉りぬ冬の地震 飛岡光枝
揺れ止まぬ大地に机読始む 稲垣雄二
【特選】
地震つなみ火炎さかまく夢はじめ 鬼川こまち
薺打ち春の鼓動のはじめとや 稲垣雄二
能登揺れて足腰たたぬ二日かな 鬼川こまち
能登崩壊めくれぬままの初暦 泉早苗
悲しみの能登打ち叩く霰かな 越智淳子
黒焦げの街あらはるる二日かな 宮田勝
【入選】
初夢を砕く余震の夜を独り 泉早苗
不明百の活字をたたむ七日かな 川上あきこ
皮だけとなりし母の乳房や寒紅梅 飛岡光枝
白山は天上の嶮初明り 玉置陽子
凍星よ吾も凍星ウオッカ酌む 花井淳
福笹の押し合ふ路面電車かな 田村史生
逃れえぬ揺れや眩暈や三が日 鬼川こまち
短日に瓦礫いくばく片づくや 越智淳子
驚愕の後唖然たり能登は凍つ 清水薫
元日の円居を襲ふ地震無情 密田妖子
つぼみ数ふ友の遺愛の紅椿 間宮伸子
この国の愚かな一人初鏡 山本桃潤
岩海苔を炙るや能登の海の色 玉置陽子
岩出づるまことに寒の真水かな 梅田恵美子
遠巻きに鹿も見てをり大とんど 田村史生
大地震さつさと空へ初鴉 山本桃潤
大地震や海より供華の波の花 安藤久美
寒たまご瓦礫の町へ光さす 飛岡光枝
月凍る家の肋骨頭蓋骨 稲垣雄二
能登地震真つ白な雪悲しかり 山本桃潤
能登揺れて闇に分け合ふ節料理 宮田勝
屠蘇汲むや誰にも告げぬこころざし 藤倉桂
初山河わが足もとは活断層 安藤久美
老骨も免れがたく寒に入る 橋詰育子
第二句座
席題:「手袋」、「かいつぶり」
・鬼川こまち選
【特選】
われを呼ぶ鳰の声とは知らざりき 安藤久美
一対の手袋我になってゆく 川上あきこ
母の忌や母の手袋はめてみる 玉置陽子
ひとの世に影を遺さずかいつぶり 宮田勝
避難所の手袋の手が眠りをり 趙栄順
再会の手袋脱ぐももどかしく 安藤久美
若き日の手袋編みし社宅かな 密田妖子
手袋が飛びついてくる園の前 酒井きよみ
【入選】
流されし巣を又作りかいつぶり 橋詰育子
鳰あそぶさざ波のはて暮れにけり 安藤久美
手袋を掘り出せど人の手はあらず 稲垣雄二
手袋を外し拾へり泥の椀 趙栄順
手袋に欲望の手を隠しけり 長谷川櫂
にほどりや能登へ飛び立つ救援機 花井淳
手袋をしても寒かろ地震の後 近藤沙羅
川底になにを探してかいつむり 清水薫
ストーブに手袋並べ一限目 田村史生
鳰一羽水尾なめらかに立ちて消ゆ 越智淳子
避難所に手袋の束届きたり 宮田勝
手袋をぬぎ合掌す避難びと 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
手袋を掘り出せど人の手はあらず 稲垣雄二
手袋のずらりと干され雑魚寝かな 田村史生
避難者ら手袋をぬぎ合掌す 泉早苗
【入選】
口で剥ぐ凍てし手袋手湯足湯 鬼川こまち
一対の手袋我になってゆく 川上あきこ
何を啼く今宵闇夜のカイツブリ 田中紫春
ちつとも釣れずかいつむり眺めをり 酒井きよみ
避難所の手袋の手が眠りをり 趙栄順
手袋のままの握手の別れかな 藤倉桂
再会の手袋脱ぐももどかしく 安藤久美
若き日の手袋編みし社宅かな 密田妖子
避難所に手袋の束届きたり 宮田勝
手袋に鼻を突つ込む子犬かな 土谷眞理子