山梨県立文学館(甲府市)で開催中の「金子兜太展」図録に「兜太と龍太」が載っています。
「金子兜太展」は9月14日(土)から11月24日(日)まで。
山梨県立文学館(甲府市)で開催中の「金子兜太展」図録に「兜太と龍太」が載っています。
「金子兜太展」は9月14日(土)から11月24日(日)まで。
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
秋の蚊のへなへなと来てふらと消ゆ 佐伯律子
老兵のごとく日暮の案山子かな 武藤主明
ぎんどろの秋は木漏れ日ばかりかな 長谷川櫂
紅葉山けさ山姥の高笑ひ 上 俊一
【入選】
黒猫の集まつてくるハロウィーン 平尾 福
被爆者の声の届きし秋夕焼 武藤主明
秋風やぎんどろの葉の裏おもて 長谷川櫂
安達ケ原に噴き出す万の曼珠沙華 佐藤和子
もうゐない父かもしれぬ螻蛄の声 川辺酸模
途中まで済ませ思案や衣更 石川桃瑪
新米を買ふや一人に一袋 武藤主明
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
干乾びる体折り曲げ胡麻叩く 齋藤嘉子
秋の夜やむかしの星の沈む井戸 谷村和華子
古里は詠まず語らず玩亭忌 長谷川冬虹
煙らせて秋刀魚焼きをり両隣 川辺酸模
秋風やぶら下がり器にぶら下がる 那珂侑子
【入選】
天国の猫は元気か破れ襖 及川由美子
秋茄子や舌頭千転なほも駄句 臼杵政治
帰らざるかの老兵も案山子かな 武藤主明
噛みしめてそれとは知らず蜂の子は 上 俊一
安達ケ原噴き上げてみな曼珠沙華 佐藤和子
舞ひ躍る四十七士や玩亭忌 長谷川冬虹
かの酷暑もうはるかなり青みかん 齋藤嘉子
故郷の栗を焚きこみ栗ご飯 武藤主明
わが友の大稲妻の去りにけり 服部尚子
紅葉や備前の甍三百年 齋藤嘉子
つるべ落とし眺めてゐれば着陸す 那珂侑子
象潟のかつての島の蘆火かな 三玉一郎
第二句座(席題:落穂、菊人形、鵙)
長谷川冬虹選
【特選】
波の音戦死者すべて鵙の贄 三玉一郎
夢に立つ菊人形の無言かな 川村杳平
道長を縦抱つこせり女菊師 佐藤和子
その中にピカチュウまじる菊人形 服部尚子
鵙高音フレンチトースト焦げだして 及川由美子
【入選】
胸元に一本足しぬ菊師かな 佐伯律子
鵙一羽吾がはらわたを屠りをり 青沼尾燈子
菊人形アンドロイドには勝てず 川村杳平
段々と厚着となりぬ菊人形 平尾 福
弁慶の後ろへまはる菊師かな 上村幸三
長々と落穂拾ひの影法師 平尾 福
かの世から見に来し己が菊人形 齋藤嘉子
しんみりと世界を造る菊師かな 青沼尾燈子
老菊師十二単衣の襟直す 武藤主明
長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
しんみりと世界を造る菊師かな 青沼尾燈子
菊人形みなうつし世を恨みけり 三玉一郎
【特選】
夢に立つ菊人形の無言かな 川村杳平
一粒の米も拾はむ落穂籠 石川桃瑪
天地の落穂を拾ひ集めけり 三玉一郎
長々と落穂拾ひの影法師 平尾 福
【入選】
胸元に一本足せる菊師かな 佐伯律子
落穂はやきれいに雀ついばめり 那珂侑子
拾ひつつ行きつ戻りつ落穂かな 及川由美子
死していよよ睦まじきかな菊人形 川辺酸模
痩せつぽの雀に残す落穂かな 武藤主明
弁慶の後ろへまはる菊師かな 上村幸三
懸崖の袖の見事や菊人形 服部尚子
かの世から見に来し己が菊人形 齋藤嘉子
敦盛の袖花盛り菊人形 谷村和華子
第一句座
・藤英樹選
【特選】
つつがなく秋の金魚となりにけり 木下洋子
薬箪笥に抽斗いくつ木の実降る わたなべかよ
秋は空から桐の実を鳴らしつつ 葛西美津子
見舞篭秋の果実のひややかに 葛西美津子
被爆者の投げし林檎を受け留めよ 神谷宣行
竜胆の立て札の横竜胆咲く 仲田寛子
【入選】
栗の子がさざめいてゐる栗御飯 澤田美那子
がうがうと簗鳴き崩れ濁流へ 西川遊歩
三千年石を穿ちて水の秋 きだりえこ
みの虫の夢にやさしい母ゐるか 森永尚子
鴎外は冷眼なりぬ秋日影 関根千方
木の実独楽最後よろよろ我のごと 園田靖彦
仕事できる女黙して新酒汲む 仲田寛子
ふるさとのほのかな地熱今年米 園田靖彦
百年後描けぬ我らそぞろ寒 おほずひろし
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
秋は空から桐の実を鳴らしつつ 葛西美津子
初恋の人もジジイや秋刀魚焼く 木下洋子
空を飛ぶジンベイザメや秋の晴 おほずひろし
ふるさとはほのかな地熱今年米 園田靖彦
この辺り千年のちは薄原 きだりえこ
【入選】
竹伐つて青空残る静寂かな きだりえこ
渋皮の香の栗飯をよろこべり 葛西美津子
この秋やしみじみノーベル平和賞 澤田美那子
秋晴や完治を願ふカツカレー 神谷宣行
ひややかな秋の果実の見舞籠 葛西美津子
第二句座 (席題:鳥兜、障子洗ふ)
・藤英樹選
【特選】
障子洗ふ信濃の川や母の声 吉田順子
糟糠の妻の微笑み鳥兜 きだりえこ
洗はれて障子の骨の立ちあがる 長谷川櫂
自堕落に生きて最後は鳥兜 きだりえこ
【入選】
一間きりの和室の障子洗ひけり わたなべかよ
障子洗ふや猫のひつかき傷あらは 仲田寛子
訳もなく魅かれてゆきぬ鳥兜 久嶋良子
老松に干さる山盧の障子かな 西川遊歩
胸過るひとりの男とりかぶと 葛西美津子
障子洗ふたつた二枚の大仕事 澤田美那子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
洗はんとすれば障子の流れ出す 藤英樹
兄弟が破りし障子洗ひけり 木下洋子
ざぶざぶと国も障子も洗ふべし きだりえこ
【入選】
シャワー浴びながら洗ふ障子かな 木下洋子
ふるさとの川で障子を洗ひし日 吉田順子
一間きり和室の障子洗ひけり わたなべかよ
干されある障子の骨を吹く風よ イーブン美奈子
かって二十枚今二枚障子干す 園田靖彦
老松に干して山盧の障子かな 西川遊歩
洗ひ上げ骨美しき障子かな 森永尚子
障子洗ふたつた二枚の大仕事 澤田美那子
第一句座 | |
・矢野京子選 | |
【特選】 | |
秋の日の藜の杖の軽さかな | 長谷川櫂 |
大谷の時代をともに天高し | 今村榾火 |
残り世はなほ大胆に菊の酒 | 斉藤真知子 |
糸瓜忌や猫欠伸して咽あらは | 駒木幹正 |
【入選】 | |
カルデラの底に町あり吾亦紅 | 今村榾火 |
ハリケーン月と星のみ残しけり | ストーン睦美 |
放牧の牛戻りくる秋の空 | 今村榾火 |
晩年の生き様を句に晒す秋 | 金田伸一 |
豊漁の中の二本の秋刀魚焼く | 斉藤真知子 |
父母をらぬ家ただ広く秋灯 | 米山瑠衣 |
桐一葉ほどの去来の墓なりし | 大場梅子 |
赤富士や甲斐も駿河も訛り似て | 菅谷和子 |
産衣の子とその父と良夜かな | 矢田民也 |
枯れかけの庭に秋蝶色ひとつ | ストーン睦美 |
包丁を弾き返さん大南瓜 | 安藤文 |
子の造る魚を待つて今年酒 | 瑞木綾乃 |
今日の柿今日の分だけ色づけり | 原京子 |
栗飯や六人家族なつかしき | 加藤裕子 |
あ | |
・長谷川櫂選(推敲例) | |
【特々選】 | |
豊漁の中の二本の秋刀魚焼く | 斉藤真知子 |
もの言へば涙がこぼれ衣被 | 米山瑠衣 |
捥がれては夢より醒める無花果よ | 安藤文 |
【特選】 | |
生涯の生きざまを句に晒す秋 | 金田伸一 |
去来の墓桐の一葉に隠れけり | 大場梅子 |
残る生はなほ大胆に菊の酒 | 斉藤真知子 |
けふよりはいよよ大胆扇置く | 神戸秀子 |
【入選】 | |
無花果の色香におぼれ雀蜂 | 安藤文 |
秋の雷一つの村を鷲づかみ | 駒木幹正 |
時々ははたと居眠る案山子かな | 斉藤真知子 |
灼熱の一塊となる秋果かな | 矢野京子 |
父母をらぬ家だだ広し秋灯 | 米山瑠衣 |
橡の実の硬きを託つ鴉かな | 林弘美 |
子別れの烏か闇にしのび鳴く | 岡村美沙子 |
雁の棹途切れてはもうつながらず | ストーン睦美 |
世を嘆き笑ふしかない案山子らよ | ももたなおよ |
日本の未来を憂ふ案山子かな | 安藤文 |
カムイミンタラ粧ふや山も湖も | 高橋真樹子 |
山国を動かざること百目柿 | 大場梅子 |
行く人やどなたも秋の顔となり | 矢田民也 |
括られて闇夜の蟹は観念す | 加藤裕子 |
赤松の根もあかあかの蛇笏の忌 | 神戸秀子 |
あ | |
第二句座(席題:木の実、新酒) | |
あ | |
・矢野京子選 | |
【特選】 | |
何の木かしらず大きな木の実かな | 長谷川櫂 |
祖父笑ふ写真発見新走り | 今村榾火 |
利き酒の流儀は祖父に習ひけり | 瑞木綾乃 |
【入選】 | |
拾はれて木の実に目鼻地蔵様 | ももたなおよ |
宿題に飽きて廻すや木の実独楽 | 斉藤真知子 |
思ふほど回つてくれず木の実独楽 | 安藤文 |
神々の山の雫や今年酒 | 高橋真樹子 |
賞品は木の実が三つ運動会 | 長谷川櫂 |
西条の駅舎新酒の香に噎せて | 瑞木綾乃 |
あ | |
・長谷川櫂選(推敲例) | |
【特選】 | |
病床に一滴許せ新走り | 城山邦紀 |
はや土に根おろす木の実二つ三つ | 大平佳余子 |
新走り末期の水に間に合ひき | 岡村美沙子 |
【入選】 | |
敲くたび変はる俳句や木の実降る | 金田伸一 |
木の実独楽民の嘆きを聞きにこよ | 大場梅子 |
思ふほど回つてくれず木の実独楽 | 安藤文 |
病床の姉の掌に置く木の実かな | 石塚純子 |
大胆に団栗十個栗鼠の頬 | ストーン睦美 |
木の実降る林と聞きてまだ行かず | 矢田民也 |
*年間賞 | ||
白露や妻逝くまでの七日間 | 石川 | 花井淳 |
*次点 | ||
鈴虫は氷の翅で鳴き通す | 愛知 | 稲垣雄二 |
長袖を着る嬉しさよ秋の風 | 埼玉 | 下家正幸 |
立秋や一気におろす加太の鯛 | 和歌山 | 玉置陽子 |
*佳作 | ||
青年の裸のまぶし牛洗ふ | 新潟 | 安藤文 |
愛せざる哀しみもあり梅を煮る | 広島 | 森恵美子 |
豊かなる乳房疎まし夏遍路 | 愛知 | 稲垣雄二 |
ゆっくりと上りゆく蛇燕の巣 | 高知 | 森脇杏花 |
*候補 | ||
生き方の異なる母の髪洗ふ | 神奈川 | 植木彩由 |
かすむ目にもつと光を雲の峰 | 長野 | 金田伸一 |
夏帽子大地に置きて黙祷す | 愛知 | 稲垣雄二 |
寝返りの骨が軋むや夏の夜 | 奈良 | きだりえこ |
妻死さば我は骨なし古団扇 | 長崎 | 川辺酸模 |
つるのびて天上天下ががいもの花 | 北海道 | 芳賀匙子 |
荒梅雨や大蛇のごとく最上川 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
ほととぎす記憶の谷から聞こえくる | 千葉 | 木地隆 |
遠くまで見えてバス来ぬ酷暑かな | 東京 | 櫻井滋 |
木から木へ燃え移るなり蝉の声 | 神奈川 | 三玉一郎 |
初蝉や身の裂けるほど泣くがよし | 石川 | 北村おさむ |
わなわなと忍び泣く花烏瓜 | 静岡 | 湯浅菊子 |
日の熱の残る暗闇蛍飛ぶ | 愛知 | 稲垣雄二 |
炎天や黙礼交す杖と杖 | 大阪 | 澤田美那子 |
風の来て大海原となる青田 | 兵庫 | 吉安とも子 |
口紅のどろりと溶くる炎暑かな | 奈良 | 中野美津子 |
蝉時雨遥かに我のゐたりけり | 広島 | 森恵美子 |
明易の何の報ひやこの病苦 | 高知 | 森脇杏花 |
聞きつつも邯鄲の音を忘れゆく | 広島 | 森恵美子 |
たとふれば泉のごとく癒えたまへ | 広島 | 森恵美子 |
はたた神の全身見たり島泊り | 大分 | 山本桃潤 |
死ぬるまでうつけうつつのをどりかな | 北海道 | 芳賀匙子 |
しんかんと大き木蔭の夏了る | 神奈川 | 三浦イシ子 |
立枯れのひまわり累累敗戦忌 | 新潟 | 高橋慧 |
糠床の守り神なり唐辛子 | 石川 | 清水薫 |
壮烈ナル戦死と読めり夏木立 | 愛知 | 服部滝伸 |
青虫の動き優雅に秋立ちぬ | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
新涼が大きくゆるる渡しかな | 神奈川 | 三玉一郎 |
竿燈や腰へ額へ掌へ | 神奈川 | 植木彩由 |
大花野揺らし去り行く人は誰 | 新潟 | 高橋慧 |
踏み折りて気づく悲しみ花畠 | 石川 | 山本葉舟 |
ひつそりと華やぐ花のからすうり | 岐阜 | 梅田恵美子 |
鵙叫喚眼球に入るメスの音 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
ミューズ今たれの頭上に綾子の忌 | 広島 | 森恵美子 |
じりじりと列島焦げる九月かな | 長崎 | ももたなおよ |
黄昏てコスモス黒く湖赤し | 東京 | 岡田定 |
婆の手の舞ふがごとくに海苔炙る | 神奈川 | 遠藤初惠 |
今宵また孤独を友に新酒かな | 新潟 | 安藤文 |
能登の栗能登の塩もて炊き込まん | 石川 | 花井淳 |
白山の霧の固まり堅豆腐 | 石川 | 花井淳 |
虫の音の豊かな闇に故郷あり | 愛知 | 稲垣雄二 |
コピー機の光露けく走りけり | 広島 | 森恵美子 |
黄昏てコスモス黒く湖赤し | 東京 | 岡田定 |
婆の手の舞ふがごとくに海苔炙る | 神奈川 | 遠藤初惠 |
今宵また孤独を友に新酒かな | 新潟 | 安藤文 |
能登の栗能登の塩もて炊き込まん | 石川 | 花井淳 |
白山の霧の固まり堅豆腐 | 石川 | 花井淳 |
いきなりの秋降りてきし朝かな | 岐阜 | 梅田恵美子 |
虫の音の豊かな闇に故郷あり | 愛知 | 稲垣雄二 |
老犬も鈴虫を聴く宵の庭 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
岸和田のしゃこの旨さよ昼の酒 | 大阪 | 齊藤遼風 |
のうぜんや君美しき筑後川 | 大阪 | 齊藤遼風 |
コピー機の光露けく走りけり | 広島 | 森恵美子 |
すさまじや猪捌く剣鉈 | 長崎 | 川辺酸模 |
秋天や九月は吾の生れ月 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
長袖を着る嬉しさよ秋の風 | 埼玉 | 下家正幸 |
新涼が大きくゆるる渡しかな | 神奈川 | 三玉一郎 |
初鴨や川の匂ひをたてる波 | 神奈川 | 松井恭子 |
竿燈や腰へ額へ掌へ | 神奈川 | 植木彩由 |
大花野揺らし去り行く人は誰 | 新潟 | 高橋慧 |
踏み折りて気づく悲しみ花畠 | 石川 | 山本葉舟 |
はらわたの星屑こぼす唐辛子 | 石川 | 松川まさみ |
先の句の古びを敲く夜長かな | 長野 | 金田伸一 |
おにやんま野道まつすぐ先を行く | 岐阜 | 古田之子 |
ひつそりと華やぐ花のからすうり | 岐阜 | 梅田恵美子 |
大稲田案山子連合ありにけり | 静岡 | 湯浅菊子 |
鵙叫喚眼球に入るメスの音 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
窓の灯を消して独りの月見かな | 大阪 | 澤田美那子 |
立秋や一気におろす加太の鯛 | 和歌山 | 玉置陽子 |
ミューズ今たれの頭上に綾子の忌 | 広島 | 森恵美子 |
じりじりと列島焦げる九月かな | 長崎 | ももたなおよ |
長茄子の水を欲しがる残暑かな | 長崎 | 川辺酸模 |
死ぬるまでうつけうつつのをどりかな | 北海道 | 芳賀匙子 |
しんかんと大き木蔭の夏了る | 神奈川 | 三浦イシ子 |
光の中ひかりとなりて蜻蛉とぶ | 新潟 | 高橋慧 |
立枯れのひまわり累累敗戦忌 | 新潟 | 高橋慧 |
白露や妻逝くまでの七日間 | 石川 | 花井淳 |
糠床の守り神なり唐辛子 | 石川 | 清水薫 |
月になら読まれても良き手紙かな | 石川 | 清水薫 |
鈴虫は氷の翅で鳴き通す | 愛知 | 稲垣雄二 |
壮烈ナル戦死と読めり夏木立 | 愛知 | 服部滝伸 |
八月や夜は白銀の雲走る | 大阪 | 澤田美那子 |
青虫の動き優雅に秋立ちぬ | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
夢見つつ無花果熟るる真昼かな | 和歌山 | 玉置陽子 |
今もなほ愚かなるまま墓洗ふ | 和歌山 | 玉置陽子 |
ゆっくりと上りゆく蛇燕の巣 | 高知 | 森脇杏花 |
草を刈る人と思へば案山子かな | 長崎 | 川辺酸模 |
歳をとる鎧を脱ぎて裸なり | 大分 | 山本桃潤 |
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
指と指広げて洗ふ今朝の秋 佐伯律子
昼の月真白く高く大花野 甲田雅子
死ぬまでのほんの一生鉦叩 三玉一郎
人間を見定めてゐる秋の蜂 平尾 福
【入選】
父母のにはかに恋し鰯雲 齋藤嘉子
新豆腐予後の味覚を確かめん 上 俊一
細首を斬れとばかりに曼殊沙華 上 俊一
刷新も古びもせずに秋また来 三玉一郎
蚯蚓鳴く地下に燻ぶる核デブリ 武藤主明
鬼やんま空を破つて現れき 長谷川櫂
日に二升食ふて出世の相撲かな 臼杵政治
桐一葉この世の苦悩降りてくる 三玉一郎
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
指と指広げて洗ふ今朝の秋 佐伯律子
力無き口に吸はする黒葡萄 谷村和華子
けふの月ほどしづかなるもの知らず 上村幸三
【入選】
下校の子らにおしろいの花盛り 平尾 福
塩チョコを二人でつまむ良夜かな 及川由美子
手遊びに酢飯を扇ぐ団扇かな 臼杵政治
封人の舘の土間に差す秋日 宮本みさ子
ひそと咲く花に声掛け秋手入 谷村和華子
尿前の関は谷底初もみぢ 宮本みさ子
核デブリ燻ぶる地下に蚯蚓鳴く 武藤主明
母のシチュー野菜たくさん月の秋 臼杵正治
四十年この地に暮らし萩に花 長谷川冬虹
木犀や猫歩みゆく塀の上 平尾 福
根こそぎにされし鶏頭なほ赤し 上 俊一
第二句座(席題:新米、鈴虫、唐辛子)
長谷川冬虹選
【特選】
年に二十日にはか百姓今年米 川村杳平
荷台から父の声する今年米 佐伯律子
天地にくがね響かす今年米 上村幸三
今宵星は空にあふるる唐辛子 三玉一郎
【入選】
新米を炊いて香りを椀に盛る 甲田雅子
主なき家に棲みつく月鈴子 佐伯律子
一斉に髭靡かせて月鈴子 及川由美子
大谷の栄えある年の今年米 長谷川櫂
新米は一合足して研ぎにけり 武藤主明
鈴虫鳴かす昔の父の得意顔 川村杳平
今年又冷凍にする唐辛子 阿部けいこ
鈴虫やだんだん雄がゐなくなる 臼杵政治
新米研ぐこれが最後の米作り 齋藤嘉子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
今年米一合足して研ぎにけり 武藤主明
抱き直すひかりの重み今年米 三玉一郎
新米の袋のけぞりては進む 宮本みさ子
【入選】
年に二十日にはか百姓今年米 川村杳平
老犬も鈴虫を聴く宵の庭 青沼尾燈子
天地にくがね響かす今年米 上村幸三
今年又冷凍にする唐辛子 阿部けいこ
十キロの新米のごと子ども抱く 平尾 福
脱穀の埃はやまず今年米 上村幸三
靴下や五本の指に唐辛子 臼杵政治
新米研ぐこれで最後の米作り 齋藤嘉子
積み上げし新米さへも土砂の下 齋藤嘉子
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
ロボットのしくじり続く残暑かな 川上あきこ
田の神の手から零るる落とし水 清水薫
残業の妻を待ちをり今年酒 稲垣雄二
広重ぶるう版画涼しき空のいろ 梅田恵美子
秘めごとてふ鎧外しぬ天の川 川上あきこ
家持が盃をあふるる今日の月 安藤久美
妻といふ月の光の一抱へ 長谷川櫂
【入選】
稲刈り機妻のパラソル括り付け 藤倉桂
みつしりと秘密ひと箱黒葡萄 趙栄順
熱きあつき一煎残暑払ふなり 松川まさみ
底知れぬ心の闇や草茂る 長谷川櫂
頬に来る秋の蚊も母母亡くて 飛岡光枝
新涼や一気におろす加太の鯛 玉置陽子
葡萄棚枯れなんとして夜々泣きぬ 飛岡光枝
月皓々ゆがみし大地撫でゆくも 安藤久美
舟でゆく珠洲の国見や月今宵 安藤久美
宵闇や浄土への道開けゆく 花井淳
けふ逢はねばいのちなかりし花オクラ 川上あきこ
畏みてとほき神代の稲光 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
家族葬済ませましたと桐一葉 氷室茉胡
新涼や一気におろす加太の鯛 玉置陽子
【入選】
母も吾も闘病中のけふの月 土屋真理子
虫の音の豊かな闇に母一人 稲垣雄二
祝はれて急に年とる敬老日 酒井きよみ
柳散るひと葉にさはぐ水面かな 清水薫
田の神の手から零るや落し水 清水薫
月こよひ珠洲はむかしの波の音 安藤久美
残暑この熱き一煎払ひけり 松川まさみ
川岸の渡し地蔵や水の秋 橋詰育子
秋団扇掬つて捨つる蛾の骸 稲垣雄二
あらがうて風に流るる秋の蝶 趙栄順
早や五年職無き暮らしとろろ汁 松川まさみ
望の月沈みゐるごと芋子汁 酒井きよみ
第二句座
席題:「獺祭忌」、「秋桜」
・鬼川こまち選
【特選】
夕されば石の湯舟へ獺祭忌 花井淳
コスモスや大観覧車空に触れ 飛岡光枝
妹のありてよかりし子規忌かな 橋詰育子
肺を病む苦しさ我も獺祭忌 酒井きよみ
大盛りの伊予の新米獺祭忌 玉置陽子
【入選】
生涯の一句はありや獺祭忌 泉早苗
朝市に残る鶏頭子規忌かな 酒井きよみ
コスモスの可憐に見えてあばれ咲き 松川まさみ
コスモスの揺るるがままを大甕に 稲垣雄二
庭先の下駄から暮れて獺祭忌 飛岡光枝
灼熱を上る蔓草獺祭忌 藤倉桂
同窓のえにしや揺るる秋さくら 安藤久美
子規忌とは知らず全集はたきかけ 密田妖子
あをあをと月を浴びたり獺祭忌 泉早苗
すさまじき日々もはるかに子規忌かな 梅田恵美子
コスモスや倒れ伏すとも地に触れず 藤倉桂
コスモスや空の渚といふところ 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
コスモスの暴るる空を夜勤明け 稲垣雄二
あんぱんは臍ありてこそ獺祭忌 飛岡光枝
生きながら仏となりし子規忌かな 橋詰育子
【入選】
朝市に残る鶏頭子規忌かな 酒井きよみ
庭先の下駄から暮れて獺祭忌 飛岡光枝
これからを生きる力や獺祭忌 橋詰育子
柿吸へば君を思ふや獺祭忌 趙栄順
吟行は動き回るな獺祭忌 氷室茉胡
コスモスや大観覧車空にあり 飛岡光枝
妹のありてよかりし子規忌かな 橋詰育子
台風のただ中にある子規忌かな 梅田恵美子
月並みの句ばかりできる子規忌かな 間宮伸子