『古志』6句
原文:雪の旅とどまれば雪ゆるやかに
発音:yuki no tabi todomareba yuki yuruyaka ni
譯文:雪旅且駐足,雪落亦踟蹰。
漢文訓読:雪旅 且(しばら)く駐足して、雪落もまた踟蹰(ちちゅう)す。
譯注:雪是晩冬的季語。
原文:法師蝉止まれる幹の熱きかな
発音:hoshizemi tomareru miki no atsuki kana
譯文:寒蝉止於木,高温幹上駐。
漢文訓読:寒蝉 木に於いて止まり、 高温の幹の上に駐(とど)まる。
譯注:法師蝉中文翻譯為寒蝉,是初秋的季語。聞其鳴声愈覚秋天来臨。
原文:手にとりて日のあたためし椿の実
発音:te ni torite hi no atatameshi tsubaki no mi
譯文:山茶花實掌心置,余温尚存日光熾。
漢文訓読:山茶花の實を掌心に置き、余温 尚存りて日光熾(さかん)なり
譯注:山茶花實是初秋的季語。椿的中文翻訳為山茶花。
原文:荒梅雨や杉箸で切る胡麻豆腐
発音:araduyu ya sugibashi de kiru gomatofu
譯文:胡麻豆腐兮,持箸緩切両分離,屋外梅雨急。
漢文訓読:胡麻豆腐を箸を持して緩かに切れば両(ふたつ)分離す、屋外 梅雨急ぐ。
譯注:荒梅雨是指梅雨末期下的暴雨,為仲夏的季語。
原文:掛け声の一団通る雪夜かな
発音:kakegoe no ichidan toru yukiyo kana
譯文:号子陣陣喧,夜警前行歩履艱,響徹雪夜天。
漢文訓読:号子(かけごえ)陣陣として喧し、夜警 前行の歩履(あしどり)艱(くる)し、響き徹る雪夜の天を。
譯注:雪夜是晩冬的季語。
原文:こほろぎや黙のほのかに弥勒仏
発音:kohorogi ya moda no honoka ni mirokubutsu
譯文:蟋蟀咕噜咕噜音,静默処隠弥勒尊。
漢文訓読:蟋蟀 コロコロと鳴く音、静黙な処に隠れる弥勒尊
譯注:蟋蟀是三秋的季語。
『天球』 4句
原文:天暗く赤き椿の咲き満てる
発音:ten kuraku akaki tubaki no sakimiteru
譯文:天色暗無光,山茶花樹着紅粧,満開枝頭上
漢文訓読:天色暗くて光無し、山茶花樹 紅粧を着る、枝頭の上に満開す。
譯注:山茶花是三春的季語。
原文:何となく芹の香のする箸の先
発音:nantonaku seri no ka no suru hashi no saki
譯文:若有若无芹香現,細找原来在箸尖。
漢文訓読:有ったり無かったり現れる芹の香、細めに探せば原来(もとより)箸尖(ちょせん)に在った。
譯注:芹是三春的季語。
原文:赤ん坊の掌の中からも桃の花
発音:akanbo no te no naka kara mo momo no hana
譯文:灼灼桃花開春俏,嬰児掌中亦含笑
漢文訓読:灼灼たる桃の花 俏(みめよ)く春に開き、嬰児の掌中も亦た含笑す。
譯注:桃花是晩春的季語。
原文:しなやかな枝をひつぱり梅摘めり
発音:shinayaka na eda wo hippari ume tsumeri
譯文:柔軟枝条用力拽,意中梅子摘下来
漢文訓読:柔軟な枝条を力込めて拽く、意中の梅子を摘んで来てしまう。
譯注:梅子是仲夏的季語。