・年間賞 | ||
初空や一夜で白き伊吹山 | 大阪 | 木下洋子 |
・次点 | ||
欲望に早も汚るる破魔矢かな | 神奈川 | 三玉一郎 |
大井川一振りで越す絵双六 | 愛知 | 稲垣雄二 |
・候補 | ||
セーターは糸一本に戻りけり | 愛知 | 稲垣雄二 |
セーターや怒りの乳房くつきりと | 新潟 | 安藤文 |
雪螢わが掌に死にに来るらし | 広島 | 森恵美子 |
おそろしや猪を丸ごと薬喰 | 長崎 | 川辺酸模 |
カテゴリーアーカイブ: ネット投句
ネット投句(2024年12月31日)特選と入選
★印は特選
ひたひたと肉球冷えて年移る | 北海道 | 芳賀匙子 | |
ぽつぺんにはしぶとがらすのをどりだし | 北海道 | 芳賀匙子 | |
★ | 初夢を語る人なく忘れたり | 北海道 | 柳一斉 |
星空へひびく靴音雪の道 | 北海道 | 柳一斉 | |
さじかげん火加減手加減柚子のジャム | 宮城 | 長谷川冬虹 | |
★ | 白鳥の鳴き交はす中除夜の鐘 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
探梅や人の気配の少しして | 茨城 | 袖山富美江 | |
もうけもん八十二歳ぞおらが春 | 埼玉 | 園田靖彦 | |
★ | 老いの手の震へるままに初硯 | 埼玉 | 園田靖彦 |
腰痛の跡形もなし去年今年 | 埼玉 | 園田靖彦 | |
あけぼのや草津は雪にすっぽりと | 埼玉 | 下家正幸 | |
本棚の著者死者ばかり年果つる | 埼玉 | 佐藤森恵 | |
能登の地に杓かたむけよ寒北斗 | 千葉 | 安田勅男 | |
金柑のとろり煮えたる除夜の鐘 | 千葉 | 若土裕子 | |
初御空能登は吹雪の中なるや | 千葉 | 若土裕子 | |
初明り座右の句集厳しくも | 千葉 | 若土裕子 | |
寝床にて年振り返る除夜の鐘 | 千葉 | 谷口正人 | |
一日の重きを知るや大晦日 | 千葉 | 谷口正人 | |
除夜の鐘闇の奥へと音は消へ | 千葉 | 谷口正人 | |
君も又目覚めて居るか浮寝鳥 | 千葉 | 池田祥子 | |
栴檀は校庭の主去年今年 | 千葉 | 池田祥子 | |
外つ国のカボチャ炊きたる冬至かな | 千葉 | 麻生十三 | |
振り返る時の長さや大晦日 | 千葉 | 麻生十三 | |
冬の雷天意に躊躇無かりけり | 千葉 | 木地隆 | |
年の瀬の席取り負けし山手線 | 東京 | 岡田定 | |
遠くから礼丁寧に年新た | 東京 | 楠原正光 | |
年新秘訣はなしと百寿翁 | 東京 | 櫻井滋 | |
また一歩父母の国へと近づけり | 神奈川 | 伊藤靖子 | |
身体髪膚メス待ちながら年送る | 神奈川 | 臼杵政治 | |
蕪村忌や京大阪を往き来して | 神奈川 | 越智淳子 | |
風邪気味と聞きとりあへず生姜湯 | 神奈川 | 遠藤初惠 | |
雲眺め今日もいつしか暮れる冬 | 神奈川 | 下嶋敏夫 | |
夜つぴての瀬音や宇陀の年の宿 | 神奈川 | 丸山分水 | |
★ | 花小袖私が私でないやうな | 神奈川 | 丸山分水 |
とつおいつ老母どっかと年の暮 | 神奈川 | 三浦イシ子 | |
旅ごころ遺品のマフラー手に取れば | 神奈川 | 三浦イシ子 | |
★ | 欲望に早も汚るる破魔矢かな | 神奈川 | 三玉一郎 |
数へ日や伸びる早さも無精髭 | 神奈川 | 松井恭子 | |
★ | まつ先に空を磨きて年用意 | 神奈川 | 松井恭子 |
対岸へ泳ぐ猪冬の朝 | 神奈川 | 松井恭子 | |
雪国へ来たまへラグビーやるならば | 神奈川 | 植木彩由 | |
★ | セーター編むずつと我が夫大事かな | 神奈川 | 谷村和華子 |
★ | イマジンせよ誰もみな浴びよ冬銀河 | 神奈川 | 谷村和華子 |
青空から一便ひらり朴落葉 | 神奈川 | 中丸佳音 | |
遠き日をたぐり寄すれば冬桜 | 神奈川 | 中丸佳音 | |
ゆふやみの地より湧きたつ冬至かな | 神奈川 | 藤澤迪夫 | |
冬の月我に抱かれて犬逝きぬ | 神奈川 | 那珂侑子 | |
風邪の子が握りしめてる菓子袋 | 神奈川 | 片山ひろし | |
★ | 佐渡の闇東京の闇除夜の鐘 | 新潟 | 安藤文 |
★ | 渾身の一句を生まん雑煮腹 | 新潟 | 安藤文 |
すきとほった冬空の下戦禍あり | 新潟 | 高橋慧 | |
捨て舟に雪降り積もる日は暮るる | 富山 | 吉村信哉 | |
むささびに洞作りけり千年杉 | 富山 | 酒井きよみ | |
むささびの眠りゐる洞月射し来 | 富山 | 酒井きよみ | |
むささびの月より飛んで来たるかな | 富山 | 酒井きよみ | |
★ | 九頭龍の龍のふところ若菜摘む | 石川 | 花井淳 |
★ | 瀧凍る傾ぶける木々もろともに | 石川 | 花井淳 |
★ | 出稼ぎの思い出語る土産物 | 石川 | 山本葉舟 |
息深くひとり悴む机かな | 石川 | 松川まさみ | |
天に満つ餅を搗く音能登の國 | 石川 | 清水薫 | |
一輪の花を添へたき雪の原 | 石川 | 清水薫 | |
白山も柴山潟も雪の中 | 石川 | 北村おさむ | |
一年を十二に分けて神無月 | 石川 | 北村おさむ | |
★ | 出かけずも美しきかな雪景色 | 長野 | 金田伸一 |
★ | 歳一つ重ねて年を惜しみけり | 長野 | 金田伸一 |
大年や孫のみんなとハイタッチ | 長野 | 金田伸一 | |
地に落つる音聞こへたりぼたん雪 | 岐阜 | 古田之子 | |
逝きし友心半分持ちゆけり | 岐阜 | 古田之子 | |
年の瀬の畑をあちこち土竜塚 | 岐阜 | 古田之子 | |
師走の荷重し自転車乗らで引く | 岐阜 | 三好政子 | |
正月が来たら下ろさむスニーカー | 岐阜 | 三好政子 | |
読初は名画を見る眼高階死す | 岐阜 | 梅田恵美子 | |
★ | 汁のもの全て土より猪子餅 | 静岡 | 湯浅菊子 |
梅園に詩人の旧居冬めける | 静岡 | 湯浅菊子 | |
一輪や決意を見せて冬の薔薇 | 愛知 | 稲垣雄二 | |
★ | 大井川一振りで越す絵双六 | 愛知 | 稲垣雄二 |
燃え盛り鎮まり年の火の火花 | 愛知 | 宗石みずえ | |
古日記五年日記を又も買ふ | 愛知 | 宗石みずえ | |
★ | ことし亦粗末な松を立てやうか | 愛知 | 青沼尾燈子 |
妻が手のためつすがめつブロッコリー | 愛知 | 青沼尾燈子 | |
木枯らしや縦横無尽のシャッター街 | 愛知 | 服部滝伸 | |
讒謗の虚言に暮るる師走かな | 愛知 | 服部滝伸 | |
先づ記す出産予定初暦 | 京都 | 氷室茉胡 | |
煤逃や百貨店にて受く化粧 | 京都 | 氷室茉胡 | |
嘴ぬぐふ鴉と年を惜しみけり | 大阪 | 安藤久美 | |
あの人の享年超へて迎ふ春 | 大阪 | 山中紅萼 | |
★ | 初空や一夜で白き伊吹山 | 大阪 | 木下洋子 |
たのしみは焚火の底の藷三つ | 大阪 | 木下洋子 | |
★ | 管一本手間暇かけてこのわたに | 大阪 | 澤田美那子 |
★ | 雀来よ籾ふさふさと注連飾 | 大阪 | 澤田美那子 |
凩を帰る扉のギーと鳴る | 兵庫 | 加藤百合子 | |
あの面で人殺めるか河豚の鍋 | 兵庫 | 吉安とも子 | |
寒潮の満ち来る河口波立ちぬ | 兵庫 | 高見正樹 | |
目を閉じてカピバラ憩う柚子湯かな | 兵庫 | 天野ミチ | |
ゆく年や胸痛む事数多乗せ | 兵庫 | 天野ミチ | |
どんど焼ゆらぐ炎の男と女 | 兵庫 | 福田光博 | |
去年今年言葉の海へ船を出す | 奈良 | きだりえこ | |
ぐるぐるとだけ書くページ古日記 | 奈良 | 荻野隆子 | |
★ | 干柿の痩せて旨味を増やしゆく | 奈良 | 荻野隆子 |
寒晴れや歩きスマホに道譲る | 奈良 | 中野美津子 | |
かいつぶり思いのままに遊ぶ池 | 奈良 | 中野美津子 | |
正月や甥の悩みを叔父が聴く | 奈良 | 中野美津子 | |
岩影に海鼠恋する冬の月 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
ふくいくとチーズ熟るるや枯木星 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
初雪を知らせに窓の鳥一羽 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
諸声とやがてなりけり寒鴉 | 広島 | 森恵美子 | |
聖夜なり小さき羽音は天使かも | 広島 | 森恵美子 | |
働くが幸なる吾に柚湯かな | 広島 | 瑞木綾乃 | |
働かず奪ふとふ餓鬼虎落笛 | 広島 | 瑞木綾乃 | |
★ | ぶれぬ軸しかと求めん花弁餅 | 広島 | 瑞木綾乃 |
仕舞い風呂正月休暇の案を練る | 広島 | 鈴木榮子 | |
句作りや楽し難し炬燵守り | 広島 | 鈴木榮子 | |
又掛かる知らぬ電話やそぞろ寒 | 高知 | 森脇杏花 | |
霰降る今たけなはの寒造 | 高知 | 森脇杏花 | |
湯豆腐や利尻昆布に花と咲き | 長崎 | ももたなおよ | |
★ | 諍ひしこの身鎮めむ落葉搔 | 長崎 | 川辺酸模 |
ジョッキーのなんてカラフル勝負服 | 熊本 | 山下れんげ | |
大根漬けスマホ片手に塩加減 | 熊本 | 山下れんげ | |
氷壁は超然と立つ人間に | 大分 | 山本桃潤 | |
由布山に笹取りに行く煤払ひ | 大分 | 山本桃潤 | |
湯気立ての声なき声や夜半の星 | 大分 | 竹中南行 | |
★ | 海鼠にはなり得ずまして無欲など | 大分 | 竹中南行 |
持病持ちマスク外さぬままなりき | 大分 | 土谷眞理子 | |
悩ましげな手足の荒るる副作用 | 大分 | 土谷眞理子 |
ネット投句(2024年12月15日)特選と入選
★印は特選
凍道や天使のやうに軽く踏む | 北海道 | 芳賀匙子 | |
ダッシュ音真直ぐ空へスケート場 | 北海道 | 柳一斉 | |
ガザ愁ふ心に年はつまりけり | 青森 | 清水俊夫 | |
ずたずたのこの星なれど年惜しむ | 宮城 | 長谷川冬虹 | |
波郷忌の陽だまりをとぶ黄蝶かな | 埼玉 | 下家正幸 | |
家族てふものもありしや根深汁 | 千葉 | 麻生十三 | |
冬の薔薇日毎に癒ゆる妻の顔色 | 神奈川 | 臼杵政治 | |
寛解は今日よ鯛焼き買て帰らむ | 神奈川 | 臼杵政治 | |
白鳥に見る見る利尻島しののめの | 神奈川 | 丸山分水 | |
いてふ散り恥毛わづかな陰のごと | 神奈川 | 丸山分水 | |
寝て聞くや大いなる波やすらけし | 神奈川 | 三浦イシ子 | |
出店でる切腹最中十二月 | 神奈川 | 松井恭子 | |
錆びつきし鉈の重みや松迎へ | 新潟 | 安藤文 | |
荒波の佐渡の上なる初寝覚 | 新潟 | 安藤文 | |
震へながら開かんとして冬薔薇 | 新潟 | 高橋慧 | |
雪起し家震わせて過ぎ行けり | 新潟 | 高橋慧 | |
寒鰤や刺身包丁水の桶 | 石川 | 山本葉舟 | |
能登未だ祈りの中に冬の川 | 石川 | 清水薫 | |
★ | 新調の入れ歯を逃げる生海鼠 | 長野 | 金田伸一 |
貰ひしがきもち大きめ吊し柿 | 長野 | 金田伸一 | |
北風や死後の提出書の数多 | 京都 | 氷室茉胡 | |
民意とはいかなるものぞ冬帽子 | 大阪 | 木下洋子 | |
渡り鳥かがやく冬を連れてきし | 大阪 | 木下洋子 | |
煌めきて道頓堀は冬の川 | 大阪 | 澤田美那子 | |
餅二枚みかんひとつや我が蓬莱 | 大阪 | 澤田美那子 | |
年毎に増す有難さ初日の出 | 兵庫 | 高見正樹 | |
冬籠日光月光傍らに | 奈良 | きだりえこ | |
連帯すガザの詩人と冬籠 | 奈良 | きだりえこ | |
綿入れの何より似合ふ夫かな | 奈良 | 中野美津子 | |
★ | 身ひとつ波と揺らすや紙漉女 | 和歌山 | 玉置陽子 |
万歳のほろりと酔うて帰りけり | 和歌山 | 玉置陽子 | |
凩やけぶり立ちたる神の滝 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
友の忌を白鳥の忌と名づけたり | 広島 | 森恵美子 | |
★ | 雪螢わが掌に死にに来るらし | 広島 | 森恵美子 |
ヒロシマの鐘冱つれども鳴らしけり | 広島 | 瑞木綾乃 | |
日の枝が終の住処や冬の蝶 | 広島 | 瑞木綾乃 | |
また鼬片方消えし庭草履 | 広島 | 鈴木榮子 | |
土佐沖に戻り鰹や群れ鴎 | 高知 | 森脇杏花 | |
風邪引かぬ小学生の半ズボン | 高知 | 森脇杏花 | |
風体は鼠男や寅彦忌 | 高知 | 森脇杏花 | |
★ | おそろしや猪を丸ごと薬喰 | 長崎 | 川辺酸模 |
電線に糞るもめでたし初烏 | 長崎 | 川辺酸模 | |
解禁の水面にキラリ氷川鮎 | 熊本 | 山下れんげ | |
西空に見えたげなばいきのこ雲 | 熊本 | 山下れんげ | |
★ | 烏瓜枯れて仏や掌 | 大分 | 山本桃潤 |
遺されしハーケン数多大氷壁 | 大分 | 山本桃潤 | |
★ | 初雪の初めて触るるものばかり | 大分 | 竹中南行 |
癖なれど冷たき耳を揉みほぐす | 大分 | 土谷眞理子 |
ネット投句(2024年11月30日)特選と入選
★印は特選
一声に日暮れ深まる鴨の池 | 北海道 | 柳一斉 | |
ガザの冬ヒトがヒトをば殺しをり | 青森 | 清水俊夫 | |
縄文のまほろ思ほゆ栗食めば | 青森 | 清水俊夫 | |
杖ついて風の中ゆく冬帽子 | 山形 | 猪口布子 | |
今朝の庭動一点の尉鶲 | 茨城 | 町川悠水 | |
抑留の父の形見の外套よ | 埼玉 | 園田靖彦 | |
奥能登の塗炭見てきし木守かな | 埼玉 | 園田靖彦 | |
秋蝉や無色山河を一人越ゆ | 埼玉 | 下家正幸 | |
口笛に烏きょとんと冬に入る | 埼玉 | 下家正幸 | |
★ | ひととせの能登の思ひや山眠る | 千葉 | 安田勅男 |
点々と葱売並ぶ上州路 | 千葉 | 安田勅男 | |
間引きせし大根美味し今朝の汁 | 千葉 | 谷口正人 | |
灯ともす一人の部屋の寒さかな | 千葉 | 池田祥子 | |
★ | 一休みしませんかと妻栗を剝く | 千葉 | 木地隆 |
秋晴れや年に数度の深呼吸 | 千葉 | 木地隆 | |
亡き犬のほのかな臭ひちびマント | 東京 | 岡田定 | |
公園の烏が騒ぐ冬の朝 | 東京 | 楠原正光 | |
同僚とはぐれぬやうに酉の市 | 東京 | 楠原正光 | |
掃けるもの全て掃きたし年の暮れ | 東京 | 櫻井滋 | |
ほらもつと風を貰へや凍大根 | 神奈川 | 臼杵政治 | |
煮大根やあの頃の母かの姿 | 神奈川 | 越智淳子 | |
父の父の遠きふるさと星月夜 | 神奈川 | 遠藤初惠 | |
翔ぶ力あるもの飛べる冬の原 | 神奈川 | 下嶋敏夫 | |
星空の佐渡に真向かひ山眠る | 神奈川 | 松井恭子 | |
毒舌の母より生まれ温め酒 | 神奈川 | 植木彩由 | |
真つ新な水晶体や雪真白 | 神奈川 | 谷村和華子 | |
寒林の一本一本月に濡れ | 神奈川 | 谷村和華子 | |
背負商ひ始発ホームの息白し | 神奈川 | 藤澤迪夫 | |
★ | セーターや怒りの乳房くつきりと | 新潟 | 安藤文 |
セーターや今日の講義もうとうとと | 新潟 | 安藤文 | |
その昔母の手に見し葱の白 | 富山 | 吉村信哉 | |
一本の冬木に見守られて逝く | 富山 | 酒井きよみ | |
凩や袴に忍ぶ鼓の手 | 石川 | 花井淳 | |
ズック靴これしかなくて冬の道 | 石川 | 山本葉舟 | |
悴みて我を張る我を笑ひけり | 石川 | 松川まさみ | |
悴んだ口を大きくかきくけこ | 石川 | 清水薫 | |
第三の句集忙しちやんちやんこ | 長野 | 金田伸一 | |
眠られぬ心の中やもがり笛 | 岐阜 | 梅田恵美子 | |
冬蝶の足の細さよ冷たさよ | 愛知 | 稲垣雄二 | |
散々に暴れしは夢冬の川 | 愛知 | 稲垣雄二 | |
洗顔の水の怖さよ冬来たる | 愛知 | 服部滝伸 | |
冬枯や子の餌を探るものの影 | 大阪 | 安藤久美 | |
キラキラと道頓堀も冬の川 | 大阪 | 澤田美那子 | |
六甲へ届く海光冬うらら | 兵庫 | 吉安とも子 | |
冬凪の人工島を浮かべ居る | 兵庫 | 吉安とも子 | |
重ね着やこれの上にはあれ如何に | 兵庫 | 天野ミチ | |
生ききつたかたちにどれも蓮の骨 | 兵庫 | 藤岡美恵子 | |
はうきぐさまこと箒になりにけり | 兵庫 | 藤岡美恵子 | |
牧水の旅寝の果てぞ朴落葉 | 兵庫 | 福田光博 | |
どの家も大根(おおね)干したり山の里 | 兵庫 | 福田光博 | |
寒波来て豚汁に列学園祭 | 奈良 | 荻野隆子 | |
なけなしの想像力や冬ざるる | 奈良 | 中野美津子 | |
松林ぬければ冬の白い海 | 奈良 | 中野美津子 | |
干烏賊の空へ張りつく寒さかな | 和歌山 | 玉置陽子 | |
皸もなき母の掌を握りしむ | 広島 | 森恵美子 | |
容赦なく地震の揺さぶる寒厨 | 広島 | 瑞木綾乃 | |
もう「家」に縛られぬぞと冬籠 | 広島 | 瑞木綾乃 | |
この軍鶏にかけし思ひや泥鰌掘る | 高知 | 森脇杏花 | |
駄菓子屋に並ぶガチャポン一葉忌 | 長崎 | ももたなおよ | |
初空へ唸り上げをり紙鳶 | 長崎 | 川辺酸模 | |
★ | 天地の塵となるまで手毬唄 | 長崎 | 川辺酸模 |
火鉢の間隅に残れる寒さかな | 大分 | 山本桃潤 | |
枇杷の花いつしか家事を分担し | 大分 | 竹中南行 |
ネット投句(2024年11月15日)特選と入選
★印は特選
旅人にまぎれて神や神有月 | 北海道 | 芳賀匙子 | |
隣り合ふ閉店の店秋深し | 北海道 | 柳一斉 | |
手の甲の蒼き血脈冬銀河 | 北海道 | 柳一斉 | |
寒林やぐんぐん近づく岩手山 | 宮城 | 長谷川冬虹 | |
秋薔薇の白きに蟻のさ迷へり | 埼玉 | 下家正幸 | |
高空にきばれや蜘蛛よ明日は冬 | 埼玉 | 下家正幸 | |
山の宿酒と紅葉と古き友 | 千葉 | 青山果楠 | |
外苑のイチョウ葉ふぶき抗議デモ | 千葉 | 谷口正人 | |
群鳥の美声麗声冬に入る | 東京 | 横山直道 | |
灯を寄せて親しむ考の手紙かな | 神奈川 | 谷村和華子 | |
ふるさとへ手紙大根に味染む間 | 神奈川 | 中丸佳音 | |
特売の米買ふ列や冬に入る | 神奈川 | 片山ひろし | |
かしつと齧ればりんごの水しぶき | 富山 | 酒井きよみ | |
風もなく綿虫日和展宏忌 | 富山 | 酒井きよみ | |
初凪や一そうの舟すべり行く | 富山 | 酒井きよみ | |
★ | 小春日やブルーシートの古ぶ能登 | 石川 | 花井淳 |
★ | 息切らし冬走り来る朝かな | 石川 | 松川まさみ |
★ | 石蕗咲けりなんと大きな空だらう | 石川 | 清水薫 |
団栗を踏みて現に戻りけり | 石川 | 北村おさむ | |
★ | 糖尿や夢でいただく富有柿 | 長野 | 金田伸一 |
浮寝鳥一羽潜るを眺む一羽 | 静岡 | 湯浅菊子 | |
★ | セーターは糸一本に戻りけり | 愛知 | 稲垣雄二 |
子供らは破る手伝い障子貼 | 愛知 | 服部滝伸 | |
人参は千切りにして炒めよと | 兵庫 | 天野ミチ | |
祇王祇女秋明菊の咲く寺に | 兵庫 | 福田光博 | |
大鴉ほうと空見る小春かな | 奈良 | きだりえこ | |
年用意ぼちぼちすると母はいふ | 奈良 | 中野美津子 | |
ももいろの眠り薬も冬に入る | 和歌山 | 玉置陽子 | |
立冬や河口へ迫る海の色 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
★ | 朴落葉天日近くかざしけり | 広島 | 森恵美子 |
我もまた布石のひとつ冬銀河 | 広島 | 森恵美子 | |
次の世も海豚となりて君に添ふ | 広島 | 森恵美子 | |
どよもせる戻り鰹の競り続く | 高知 | 森脇杏花 | |
大国が揺れておたおた冬に入る | 長崎 | ももたなおよ | |
身に入むや産卵終えし鮭の殻 | 長崎 | 川辺酸模 | |
黒ぐろと光る川面や鮭のぼる | 長崎 | 川辺酸模 | |
山に沿う薩摩街道天高し | 熊本 | 山下れんげ | |
秋晴れの子供やっこの得意顔 | 熊本 | 山下れんげ | |
さようなら言へぬ別れや雁の棹 | 大分 | 山本桃潤 | |
あの世との仕切りなからん銀杏散る | 大分 | 竹中南行 | |
冬紅葉老いの歩みの似てきたる | 大分 | 竹中南行 |
ネット投句(2024年10月31日)特選と入選
★印は特選
不在とふ有り方のあり菊人形 | 北海道 | 芳賀匙子 | |
遠くから香りくるかに金木犀 | 青森 | 清水俊夫 | |
同期会あいつが逝きたり十三夜 | 宮城 | 長谷川冬虹 | |
秋風やものひとつなき大広間 | 茨城 | 袖山富美江 | |
巌さんせめての事よ菊日和 | 茨城 | 町川悠水 | |
ゆく秋や泣かせ笑わせ役者馬鹿 | 埼玉 | 園田靖彦 | |
秋惜しむ永久欠番スラッガー | 埼玉 | 園田靖彦 | |
朝顔やふるさと離れ五十年 | 埼玉 | 下家正幸 | |
漆黒の能登の上には天の川 | 千葉 | 安田勅男 | |
障子貼る立山連峰みゆる日に | 千葉 | 若土裕子 | |
家垣の茶の花咲けり母忌日 | 千葉 | 池田祥子 | |
この国を捨つるに遅し秋暮るる | 千葉 | 麻生十三 | |
一病を得て面白き敗荷かな | 千葉 | 麻生十三 | |
老境の蛇や鍵かけ穴に入る | 東京 | 神谷宣行 | |
母愛でる小菊にとまるショウリョウバッタ | 東京 | 長尾貴代 | |
一献で終わらふものかうるめ焼く | 神奈川 | 臼杵政治 | |
鬼の子の声する中を紅葉狩 | 神奈川 | 臼杵政治 | |
ころがつて恋にはならぬ檸檬かな | 神奈川 | 三玉一郎 | |
暮れ残る富士の頂かりんの実 | 神奈川 | 松井恭子 | |
特売の秋刀魚炙つてゐて佳き日 | 神奈川 | 植木彩由 | |
君句座にいまも在るごと秋澄めり | 神奈川 | 中丸佳音 | |
火恋し佐渡の夜空に億の星 | 新潟 | 安藤文 | |
火恋し電子書籍で読む源氏 | 新潟 | 安藤文 | |
投票の鉛筆ぎゆつと秋の暮 | 新潟 | 安藤文 | |
★ | 枯れ枯れて煙となりぬ彼岸花 | 新潟 | 高橋慧 |
思い出の山河は葛に呑まれけり | 富山 | 酒井きよみ | |
★ | ぶち当たりながら凩兜町 | 石川 | 花井淳 |
日を入るる夫の病床秋深し | 石川 | 松川まさみ | |
遺さるる身やもあまりにも秋晴 | 石川 | 松川まさみ | |
秋深き水切りかごの湯呑二個 | 石川 | 松川まさみ | |
友の死の悔しさ今も雁のこゑ | 石川 | 清水薫 | |
秋深し親父が在れば百と十 | 石川 | 清水薫 | |
むつまじきお手植え松や天高し | 石川 | 北村おさむ | |
秋うらら藍の甕たり日本海 | 石川 | 密田妖子 | |
★ | 誰ならん胸に飛びくる赤蜻蛉 | 長野 | 金田伸一 |
雨の夜の酒もまたよし月見豆 | 長野 | 金田伸一 | |
新小豆炊いて結婚記念の日 | 長野 | 金田伸一 | |
紫に浅間迫れる今朝の秋 | 長野 | 大島一馬 | |
柚子の実を突き抜けそふな柚子の棘 | 岐阜 | 古田之子 | |
菓子断ちも栗きんとんは捨て置けず | 岐阜 | 三好政子 | |
ぽたぽたの柿が好みの在りし母 | 岐阜 | 梅田恵美子 | |
★ | 残生や背打ち腹うち鰡は跳ぶ | 愛知 | 稲垣雄二 |
一針で弾けてしまふ熟柿かな | 愛知 | 稲垣雄二 | |
今を生き今歩まんと犬の秋 | 愛知 | 青沼尾燈子 | |
犬の秋動かぬ足が夢走る | 愛知 | 青沼尾燈子 | |
此方向け吾が貌記せ犬の秋 | 愛知 | 青沼尾燈子 | |
★ | 秋雨の音の沁みたり雑記帳 | 愛知 | 服部滝伸 |
柿三つ選挙広報に包まれし | 京都 | 諏訪いほり | |
十三夜外泊許可の母囲み | 京都 | 氷室茉胡 | |
娘いま母の風格秋桜 | 京都 | 氷室茉胡 | |
★ | かりそめの虫籠に夜を鳴き交はす | 大阪 | 安藤久美 |
★ | ならびゐて目鼻たしかに亥子餅 | 大阪 | 安藤久美 |
気が付けばはや十年よこの家秋 | 大阪 | 山中紅萼 | |
妙薬や母の金柑甘露煮は | 大阪 | 澤田美那子 | |
★ | 行く秋のここらにベンチひとつ欲し | 大阪 | 澤田美那子 |
秋の色いよいよ深し練羊羹 | 大阪 | 澤田美那子 | |
木犀の色香にも耐へ母逝けり | 大阪 | 齊藤遼風 | |
彗星は過るし太陽は暴れるし | 兵庫 | 加藤百合子 | |
★ | ふる里は熟柿の落ちる音ばかり | 兵庫 | 吉安とも子 |
★ | 白壁の剥がれる藏や柿熟るる | 兵庫 | 吉安とも子 |
朝歩き色新しき落葉踏む | 兵庫 | 高見正樹 | |
★ | 特別な味はなけれど零余子飯 | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
触れし枝もけふの縁ぞ萩の道 | 兵庫 | 藤岡美恵子 | |
しあはせを測る物差しねこぢやらし | 奈良 | きだりえこ | |
幼子の足裏白し冬に入る | 奈良 | 荻野隆子 | |
糸つむぎの女が歌ふ秋の風 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
★ | 心中の花真くれなゐ梅室忌 | 和歌山 | 玉置陽子 |
たらちねと小豆を干せし記憶かな | 広島 | 森恵美子 | |
小包の尊く大きく雁の列 | 広島 | 森恵美子 | |
檀の実いよいよ深む青い空 | 広島 | 鈴木榮子 | |
★ | うねり来る南海トラフそぞろ寒 | 高知 | 森脇杏花 |
しみじみと母の古着を解く夜なべ | 長崎 | ももたなおよ | |
存分に生を尽くせよ海蠃廻し | 長崎 | 川辺酸模 | |
亜紀さんと擦れ違ったやも妙見祭 | 熊本 | 山下れんげ | |
一位の実厳父の愛を知らぬ儘 | 大分 | 山本桃潤 | |
朝刊にガザの狂気や雁渡る | 大分 | 山本桃潤 | |
瓢棚本読まぬようになりし国 | 大分 | 山本桃潤 | |
ふはふはと時にすがりて烏瓜 | 大分 | 竹中南行 | |
★ | 秋深し遠き耳なる身のほとり | 大分 | 竹中南行 |
ネット投句(2024年10月15日)特選と入選
・言葉は心が動いた分だけ動くので、「いいたいこと」がないと俳句はできません。
・次から次に量産するのはムダ。
・5月と11月にネット投句のスクーリング句会を開いていますので、ご参加ください。
★印は特選
手鏡の奥を過ぎゆく木の葉かな | 北海道 | 柳一斉 | |
諸々の電波飛び交ふ秋の空 | 青森 | 清水俊夫 | |
(ウクライナ・ガザ)戦場と化したる故郷鵙の贄 | 宮城 | 長谷川冬虹 | |
瞑想に入りゆく巨峰二粒目 | 山形 | 猪口布子 | |
回送のバスのランブや暮の秋 | 茨城 | 袖山富美江 | |
秋一日剣道大会吉野ヶ里 | 茨城 | 町川悠水 | |
秋の陽に干してけふから羽布団 | 埼玉 | 上田雅子 | |
故郷を化粧回しに大相撲 | 千葉 | 若土裕子 | |
★ | 地下鉄を出し各々ヘ秋の暮 | 千葉 | 池田祥子 |
行き暮れて石に休らふ赤とんぼ | 千葉 | 池田祥子 | |
秋風や愛しきものは耳飾り | 千葉 | 麻生十三 | |
秋風の立てば立つたで身の軋む | 千葉 | 木地隆 | |
雪解の水の香りの今年米 | 東京 | 神谷宣行 | |
母はいま障子洗ふや天の川 | 東京 | 神谷宣行 | |
繕ひの糊をほぐして障子洗ふ | 東京 | 神谷宣行 | |
苅田あと稲架(はざ)高々と一列に | 神奈川 | 伊藤靖子 | |
朝ごとの鳥聞き覚ゆ新豆腐 | 神奈川 | 松井恭子 | |
★ | この箱を犬の柩に今朝の秋 | 神奈川 | 植木彩由 |
老犬の食い散らかした石榴かな | 神奈川 | 植木彩由 | |
よべの星ひとつ浮かべんにごり酒 | 神奈川 | 谷村和華子 | |
墓洗ふ生きてもの言ふ父と母 | 神奈川 | 島敏 | |
我ら一行十月の八甲田山 | 神奈川 | 那珂侑子 | |
雄叫びを上げる大谷菊人形 | 神奈川 | 那珂侑子 | |
一合の酒の旨さや走り蕎麦 | 神奈川 | 片山ひろし | |
一舟に黄金の色の栗鹿の子 | 神奈川 | 片山ひろし | |
行く秋のサラダに梨のごろごろと | 新潟 | 安藤文 | |
踏み入れば小さき蝶舞う大花野 | 新潟 | 高橋慧 | |
夕日影誰も拾はぬ落穂かな | 富山 | 酒井きよみ | |
大根買ひ秋刀魚の列に並びたり | 富山 | 酒井きよみ | |
鈴虫のこゑか月光降る音か | 石川 | 松川まさみ | |
戦火無き町に老ひけり花八手 | 石川 | 松川まさみ | |
金木犀胸のすきまを埋め尽くせ | 石川 | 清水薫 | |
夢二には猫と彦乃と蛍草 | 石川 | 清水薫 | |
★ | 秋深し青春終へて五十年 | 石川 | 北村修 |
敲くほど変はる俳句や木の実降る | 長野 | 金田伸一 | |
山里や小さき稲田のコンバイン | 岐阜 | 古田之子 | |
★ | 長弓を持つは少年秋の駅 | 岐阜 | 三好政子 |
鈴虫や食はれ残りし肢二本 | 岐阜 | 梅田恵美子 | |
秋扇ことば少なくなりにけり | 愛知 | 稲垣雄二 | |
蜘蛛の巣にびつしり露やみな仏 | 愛知 | 稲垣雄二 | |
★ | 八十年敗れしままの国の秋 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
ぽつぽつと釣れてお仕舞鯊日和 | 愛知 | 服部滝伸 | |
さつま芋蒸篭にのこる濃紫 | 京都 | 諏訪いほり | |
手向とてわが墓ならば草の花 | 京都 | 諏訪いほり | |
天高し使ひこんだる吾身かな | 大阪 | 山中紅萼 | |
国境は杭と針金そぞろ寒 | 大阪 | 木下洋子 | |
立ち止まりまた歩き出す式部の実 | 大阪 | 澤田美那子 | |
皿の上白無花果は菩薩かな | 大阪 | 澤田美那子 | |
赤とんぼ火の粉のごとき龍野かな | 大阪 | 齊藤遼風 | |
ははそはの母の乳房や豊の秋 | 兵庫 | 加藤百合子 | |
生き過ぎを嘆く母在り曼珠沙華 | 兵庫 | 吉安とも子 | |
きちかうの咲きぶりあはれ糸瓜の忌 | 兵庫 | 藤岡美恵子 | |
立秋や潮の香りの鯛茶漬け | 兵庫 | 福田光博 | |
腹いつぱい食ふて頓死の飛蝗かな | 奈良 | きだりえこ | |
父在らば百寿とならん今年酒 | 和歌山 | 玉置陽子 | |
鶏頭の倒れ伏すともなほ燃ゆる | 和歌山 | 玉置陽子 | |
渋少し舌に残れど樽柿よ | 岡山 | 齋藤嘉子 | |
鶴守や一羽一羽の名を呼びて | 岡山 | 齋藤嘉子 | |
樟脳の匂ふジャケット月曜日 | 広島 | 鈴木榮子 | |
★ | 被団協のひとの涙よ身にしみぬ | 長崎 | ももたなおよ |
★ | いかり星詩人は子らに物語 | 長崎 | ももたなおよ |
身に入むや鉄の風鈴閨に聞く | 長崎 | 川辺酸模 | |
地蔵様茗荷饅頭お好きかな | 熊本 | 山下蓮花 | |
答なき生き死になれど秋の暮 | 大分 | 竹中南行 | |
★ | 根の深き夏ばて断たん秋刀魚焼く | 大分 | 竹中南行 |
ネット投句スクーリング 軽井沢紅葉句会(2024年11月4日)
一座目
【特選】
菊人形いやいや回る子供かな 中野美津子
悪の世へ露の一票投じけり 園田靖彦
黄落の大きな息や大かしは 芳賀匙子
掘り起こす荒ぶる神や山の芋 安藤久美
酒臭きわが身を秋の天日干 北側松太
【入選】
カフェの席空くまで外で桜紅葉 猪口布子
追分や布目も粗き新豆腐 安藤久美
凩や柱の痩せる五合庵 岩井善子
ねんごろにたつた二枚の障子貼る 園田靖彦
また少し縮みし背丈冬はじめ 梅田恵美子
あたたかに落葉よ積もれ五合庵 岩井善子
長き夜や晩酌二合終へてより 北側松太
紅葉狩滝よ湖よと巡りけり 越智淳子
ピラニアはなんて元気だ冬に入る 園田靖彦
ひとむれの鹿のよぎるを待つ停車 芳賀匙子
冬山家ときには猿のあそびに来 梅田恵美子
二座目
【特選】
爽やかやぬか床今朝は上機嫌 岩井善子
ひつそりとわが身を去つてゆく秋よ 北側松太
赤銅の光放てり利平栗 澤田美那子
かく暮れてかく酒となる秋思かな 北側松太
松手入れ幸せさうな松と人 澤田美那子
【入選】
鉄橋は歓喜の悲鳴溪紅葉 越智淳子
薄暗き納屋に戻りし案山子かな 北側松太
もう風と区別のつかぬ芒かな 三玉一郎
天高きままに日暮れて草千里 北側松太
一塊の秋の翳なる浅間山 三玉一郎
秋空をゆくしろがねの龍の道 安藤久美
ネット投句年間賞(秋)花井淳さん
*年間賞 | ||
白露や妻逝くまでの七日間 | 石川 | 花井淳 |
*次点 | ||
鈴虫は氷の翅で鳴き通す | 愛知 | 稲垣雄二 |
長袖を着る嬉しさよ秋の風 | 埼玉 | 下家正幸 |
立秋や一気におろす加太の鯛 | 和歌山 | 玉置陽子 |
*佳作 | ||
青年の裸のまぶし牛洗ふ | 新潟 | 安藤文 |
愛せざる哀しみもあり梅を煮る | 広島 | 森恵美子 |
豊かなる乳房疎まし夏遍路 | 愛知 | 稲垣雄二 |
ゆっくりと上りゆく蛇燕の巣 | 高知 | 森脇杏花 |
*候補 | ||
生き方の異なる母の髪洗ふ | 神奈川 | 植木彩由 |
かすむ目にもつと光を雲の峰 | 長野 | 金田伸一 |
夏帽子大地に置きて黙祷す | 愛知 | 稲垣雄二 |
寝返りの骨が軋むや夏の夜 | 奈良 | きだりえこ |
妻死さば我は骨なし古団扇 | 長崎 | 川辺酸模 |
つるのびて天上天下ががいもの花 | 北海道 | 芳賀匙子 |
荒梅雨や大蛇のごとく最上川 | 宮城 | 長谷川冬虹 |
ほととぎす記憶の谷から聞こえくる | 千葉 | 木地隆 |
遠くまで見えてバス来ぬ酷暑かな | 東京 | 櫻井滋 |
木から木へ燃え移るなり蝉の声 | 神奈川 | 三玉一郎 |
初蝉や身の裂けるほど泣くがよし | 石川 | 北村おさむ |
わなわなと忍び泣く花烏瓜 | 静岡 | 湯浅菊子 |
日の熱の残る暗闇蛍飛ぶ | 愛知 | 稲垣雄二 |
炎天や黙礼交す杖と杖 | 大阪 | 澤田美那子 |
風の来て大海原となる青田 | 兵庫 | 吉安とも子 |
口紅のどろりと溶くる炎暑かな | 奈良 | 中野美津子 |
蝉時雨遥かに我のゐたりけり | 広島 | 森恵美子 |
明易の何の報ひやこの病苦 | 高知 | 森脇杏花 |
聞きつつも邯鄲の音を忘れゆく | 広島 | 森恵美子 |
たとふれば泉のごとく癒えたまへ | 広島 | 森恵美子 |
はたた神の全身見たり島泊り | 大分 | 山本桃潤 |
死ぬるまでうつけうつつのをどりかな | 北海道 | 芳賀匙子 |
しんかんと大き木蔭の夏了る | 神奈川 | 三浦イシ子 |
立枯れのひまわり累累敗戦忌 | 新潟 | 高橋慧 |
糠床の守り神なり唐辛子 | 石川 | 清水薫 |
壮烈ナル戦死と読めり夏木立 | 愛知 | 服部滝伸 |
青虫の動き優雅に秋立ちぬ | 兵庫 | 藤岡美恵子 |
新涼が大きくゆるる渡しかな | 神奈川 | 三玉一郎 |
竿燈や腰へ額へ掌へ | 神奈川 | 植木彩由 |
大花野揺らし去り行く人は誰 | 新潟 | 高橋慧 |
踏み折りて気づく悲しみ花畠 | 石川 | 山本葉舟 |
ひつそりと華やぐ花のからすうり | 岐阜 | 梅田恵美子 |
鵙叫喚眼球に入るメスの音 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
ミューズ今たれの頭上に綾子の忌 | 広島 | 森恵美子 |
じりじりと列島焦げる九月かな | 長崎 | ももたなおよ |
黄昏てコスモス黒く湖赤し | 東京 | 岡田定 |
婆の手の舞ふがごとくに海苔炙る | 神奈川 | 遠藤初惠 |
今宵また孤独を友に新酒かな | 新潟 | 安藤文 |
能登の栗能登の塩もて炊き込まん | 石川 | 花井淳 |
白山の霧の固まり堅豆腐 | 石川 | 花井淳 |
虫の音の豊かな闇に故郷あり | 愛知 | 稲垣雄二 |
コピー機の光露けく走りけり | 広島 | 森恵美子 |
ネット投句(2024年9月30日)特選と入選
★印は特選
贅沢にどんぐりふんで石畳 | 北海道 | 芳賀匙子 | |
かうかうと月あらぬものやあるものや | 北海道 | 芳賀匙子 | |
背もたれに両手広げり秋の空 | 北海道 | 柳一斉 | |
玉砂利を踏む音ひびく菊日和 | 北海道 | 柳一斉 | |
大谷を言祝ぎいわて今年酒 | 宮城 | 長谷川冬虹 | |
人よりも犬幸せさう秋渚 | 山形 | 猪口布子 | |
日々なぞる「明珠在掌」敬老日 | 茨城 | 町川悠水 | |
天高し人文字ゆるるスタジアム | 千葉 | 安田勅男 | |
白山や泥にまみれし今年米 | 千葉 | 若土裕子 | |
笑み栗や跡継ぎのなき山静か | 千葉 | 若土裕子 | |
茅蜩に眠り覚ますや古畳 | 千葉 | 青山果楠 | |
新蕎麦や我が手清めて打ち始む | 千葉 | 谷口正人 | |
わけ知らぬ位牌もありて霊祭 | 千葉 | 麻生十三 | |
音読の徒然草の夜長かな | 千葉 | 麻生十三 | |
兄弟の縁の薄さや衣被 | 千葉 | 麻生十三 | |
★ | 黄昏てコスモス黒く湖赤し | 東京 | 岡田定 |
悪声の尾長群がる秋の朝 | 東京 | 楠原正光 | |
★ | 婆の手の舞ふがごとくに海苔炙る | 神奈川 | 遠藤初惠 |
落鮎や重き白子をまず炭へ | 神奈川 | 臼杵政治 | |
栗色の艶こそ誉れ栗饅頭 | 神奈川 | 越智淳子 | |
大谷の記録供へる子規忌かな | 神奈川 | 越智淳子 | |
うらやまし柚子坊のその喰ひつぷり | 神奈川 | 遠藤初惠 | |
病む犬を抱いて形代流しけり | 神奈川 | 植木彩由 | |
柿右衛門の大絵皿秋澄みにけり | 神奈川 | 藤澤迪夫 | |
蜉蝣の舞ひては落つる千曲川 | 神奈川 | 片山ひろし | |
★ | 今宵また孤独を友に新酒かな | 新潟 | 安藤文 |
ひとしほや佐渡の今年の米うまし | 新潟 | 安藤文 | |
束の間の平和噛みしめ今年米 | 新潟 | 安藤文 | |
白露とて言うに言われぬ暑さかな | 新潟 | 高橋慧 | |
しんとして出を待つ胡弓風の盆 | 富山 | 吉村信哉 | |
透きとほる手の編笠と風の盆 | 富山 | 吉村信哉 | |
鳶鳴いて静けさを知る街の秋 | 富山 | 吉村信哉 | |
能登の天底の抜けたり秋出水 | 富山 | 酒井きよみ | |
★ | 能登の栗能登の塩もて炊き込まん | 石川 | 花井淳 |
★ | 白山の霧の固まり堅豆腐 | 石川 | 花井淳 |
崖崩れあとを残して山粧ふ | 石川 | 花井淳 | |
両手つき残暑の尻を持ちあぐる | 石川 | 松川まさみ | |
鈴虫やこころ澄まねば音のあらず | 石川 | 松川まさみ | |
あるかなしの気宇の衰へ九月尽 | 石川 | 妖子 | |
神の子の記録どこまで天高し | 長野 | 金田伸一 | |
血糖値低し大粒マスカット | 長野 | 金田伸一 | |
★ | いきなりの秋降りてきし朝かな | 岐阜 | 梅田恵美子 |
彼岸すぎようやく花芽ひがんばな | 岐阜 | 古田之子 | |
菅浦やかはらぬ月の二百軒 | 岐阜 | 梅田恵美子 | |
中秋の名月なんと顔前に | 静岡 | 湯浅菊子 | |
★ | 虫の音の豊かな闇に故郷あり | 愛知 | 稲垣雄二 |
★ | 老犬も鈴虫を聴く宵の庭 | 愛知 | 青沼尾燈子 |
石置きしだけの墓守る曼珠沙華 | 愛知 | 青沼尾燈子 | |
蟷螂のむさぼり食ふや餓鬼の顔 | 愛知 | 服部滝伸 | |
七輪も母もとうに無し秋刀魚焼く | 京都 | 諏訪いほり | |
★ | 岸和田のしゃこの旨さよ昼の酒 | 大阪 | 齊藤遼風 |
★ | のうぜんや君美しき筑後川 | 大阪 | 齊藤遼風 |
淀川のほとりに生まれ鯊の秋 | 大阪 | 木下洋子 | |
へうたんの中に往生して煙 | 兵庫 | 加藤百合子 | |
日焼けせし肌に糸瓜の水叩く | 兵庫 | 加藤百合子 | |
分け入れば遠退いて行く大花野 | 兵庫 | 吉安とも子 | |
白波や河口を上る秋の潮 | 兵庫 | 高見正樹 | |
退院や辿る家路に跳ぶ飛蝗 | 兵庫 | 高見正樹 | |
病院や行く度会へる白木槿 | 兵庫 | 天野ミチ | |
咲きこぼれ散りこぼしてや萩の道 | 奈良 | きだりえこ | |
死場所を探す蝶居る夜長かな | 奈良 | きだりえこ | |
酢に浸けて真白き花の鰯かな | 和歌山 | 玉置陽子 | |
目にみゆるものみづいろに九月果つ | 和歌山 | 玉置陽子 | |
★ | コピー機の光露けく走りけり | 広島 | 森恵美子 |
あそこにも赤き一群彼岸花 | 広島 | 鈴木榮子 | |
藷畑夜な夜な猪に掘られけり | 高知 | 森脇杏花 | |
★ | すさまじや猪捌く剣鉈 | 長崎 | 川辺酸模 |
うららかや百寿の母の蒲団干す | 長崎 | 川辺酸模 | |
大東京今宵は月の浮かぶ川 | 大分 | 山本桃潤 | |
自転車に一俵載せて今年米 | 大分 | 山本桃潤 | |
あちこちに敵はひそめど秋うらら | 大分 | 竹中南行 |