ネット投句(2023年4月30日)選句と選評
【特選】
旅立ちの終着春の上野駅 青森 清水俊夫
草原に戦車かげろふウクライナ 神奈川 土屋春樹
蟻の来て蝶の終はりを見てをりぬ 愛知 稲垣雄二
夏帽子自由の人でありしかな 大阪 木下洋子
落椿ほどにがつくりしなくとも 兵庫 藤岡美恵子
大いなる春の沈黙黒茶碗 奈良 きだりえこ
行く春の後ろ姿の仏かな 奈良 きだりえこ
花冷や一句のための墨摩らむ 和歌山 玉置陽子
つばくらめ恋も墓標も雲の中 和歌山 玉置陽子
轟々と福島洗へ夏の海 大分 山本桃潤
若鮎の追ひつ追はれつ光の矢 大分 竹中南行
【入選】
木の芽時アボカドの種捨てがたし 北海道 村田鈴音
言い訳の嘘と知りつつ花は葉に 北海道 村田鈴音
そのうちと忘れほうけし土筆かな 北海道 芳賀匙子
つぼみとは耳をすましてゐる桜 北海道 芳賀匙子
人間に言葉てふ枷山笑ふ 北海道 柳一斉
蝌蚪うごき現れ出づる泥煙 北海道 柳一斉
惜しげなく虹弾けさせしやぼん玉 青森 清水俊夫
雪形は種蒔うさぎ句作せん 宮城 長谷川冬虹
蚯蚓にも食はせてやらうわが骸 宮城 長谷川冬虹
がしやがしやと洗う子の靴メーデー歌 茨城 袖山富美江
風光る大人のための金曜日 茨城 袖山富美江
海へ出て裸でざぶり夏遍路 埼玉 園田靖彦
母の日や膝下離れて五十年 埼玉 園田靖彦
推し開くま白き命牡丹咲く 埼玉 上田雅子
もう少し話したき道リラの花 千葉 菊地原弘美
新しき教科書の香や春の朝 千葉 谷口正人
たんぽぽの綿毛ひと吹き春ゆきぬ 千葉 谷口正人
山吹や川になじみの洗濯石 千葉 池田祥子
後先に燕の囃す代掻機 千葉 池田祥子
春日傘忘れられたる形見かな 千葉 麻生十三
この春を一期と思い送りけり 千葉 麻生十三
歯ざはりにしみじみ日本筍飯 千葉 木地隆
半島に放牧の牛夏来る 東京 楠原正光
抱っこして孫の手に汲む甘茶かな 東京 堀越としの
雲遊ぶ水面に柳楽しそう 東京 堀越としの
万緑や三年ぶんの深呼吸 東京 櫻井滋
どの薔薇の芽も新しく愛おしく 神奈川 臼杵政治
スズランを握りて探す小花瓶 神奈川 越智淳子
霾や都庁ゆつくり墓標めく 神奈川 植木彩由
岬まで白花小花夏が来る 神奈川 中丸佳音
遅霜や大ファンまわるお茶畑 神奈川 土屋春樹
菜の花や潮の香りと混じり合ふ 神奈川 土屋春樹
春の川みずとひかりが戯れて 神奈川 島敏
囀りや夢のつじつま合わぬまま 神奈川 藤澤迪夫
夏近し今さら外せぬマスクかな 神奈川 那珂侑子
物を云ふ口なきがよし竹夫人 神奈川 片山ひろし
湯上りの身体をあふぐ団扇かな 神奈川 片山ひろし
お地蔵に造花挿しある薄暑かな 富山 酒井きよみ
荒波の能登の栄螺の角自慢 石川 花井淳
ランチメニュー若葉の幹に立てかけて 石川 松川まさみ
ひとしずくひしほ垂らして焼栄螺 岐阜 梅田恵美子
三年の巣ごもり後や更衣 愛知 宗石みずえ
二人して涙流せし桜かな 愛知 青沼尾燈子
飛花落花城に米蔵銃の蔵 京都 氷室茉胡
筍飯吾子の伸びしろ疑はず 京都 氷室茉胡
今しがたまで花あびてをられしが 大阪 安藤久美
水尾は柚の花咲いてゐるころか 大阪 木下洋子
たつぷりのお茶でいただく柏餅 大阪 澤田美那子
三年の長き朝寝や昼の酒 大阪 齊藤遼風
金色の光ふるえて木の芽張る 兵庫 加藤百合子
春眠や覚めてもの喰ふものうまし 兵庫 天野ミチ
葉桜に光とどまる雨上がり 奈良 中野美津子
同じ木に同じ顔して目白来る 奈良 中野美津子
なつかしき我と会ひたり花の下 和歌山 玉置陽子
味噌汁の春菊の香に目をとぢむ 岡山 北村和枝
うららかや薬の袋似合はざる 岡山 北村和枝
剥がされて夢のさなかの鮑かな 岡山 齋藤嘉子
酔うほどに恩師偲びぬ花の宴 広島 鈴木榮子
まきさんの句を読みかえし春惜しむ 長崎 ももたなおよ
惜春やまきさんのこゑもう聞けぬ 長崎 ももたなおよ
逝く春の磯に屈むは君が影 長崎 ももたなおよ
な鳴きそ鳴けば墜ちるぞ巣の燕 長崎 川辺酸模
行く春や眉雪の守るジャズ喫茶 長崎 川辺酸模
草餅や子供九人生みし祖母 大分 山本桃潤
まほろばの国は何処に青き踏む 大分 竹中南行
陽炎をつかまんとする一生にて 大分 竹中南行