ネット投句(2022年8月15日)選句と選評
【特選】
空にまだ希望が映る二重虹 北海道 村田鈴音
・希望が残る?
蝉採りの子らがくすぐる古木かな 東京 岡田定
攻めし国かならず負ける敗戦忌 神奈川 越智淳子
夏惜しむ鴎の餌を空に撒き 神奈川 松井恭子
亡き人に甘えてばかり盆の月 神奈川 中丸佳音
掌のくぼみに眠る空蝉よ 新潟 高橋慧
かすむままこの目使はん天高し 長野 金田伸一
麦の秋バンドゥーラ弾きも戦場へ 岐阜 三好政子
あれも捨てこれも手放し白団扇 京都 諏訪いほり
継承の目途立たぬ墓洗ひをり 京都 氷室茉胡
我らより我に戻るや衣被 奈良 喜田りえこ
良く食べるお精霊さまや盂蘭盆 奈良 喜田りえこ
味噌汁の湯気を目で追ふ今朝の秋 岡山 北村和枝
現世の唯一の重石原爆忌 大分 竹中南行
【入選】
人絶えてえぞみそはぎの花ざかり 北海道 芳賀匙子
わがたもと蜂の飛入る残暑かな 北海道 芳賀匙子
うかうかと大鍋こげて迎盆 北海道 芳賀匙子
樺太の父の味なり鰍汁 北海道 柳一斉
月出でて整ふ空や秋来る 北海道 柳一斉
理髪師の祖母の匂ひや麦こがし 宮城 長谷川冬虹
志ほがまてふ土地の落雁盆用意 宮城 長谷川冬虹
千までを数へる母や秋涼し 茨城 袖山富美江
背表紙のタイトルあせし残暑かな 茨城 袖山富美江
飛び入りの見やう見まねの踊りかな 埼玉 園田靖彦
地対空ミサイル止まず夜の秋 千葉 宮城治
子の名札見えて新居の朝顔鉢 千葉 池田祥子
桃すすり食べる力の戻りけり 千葉 池田祥子
短くも深くちぎりし霊送り 千葉 麻生十三
秋近し隣の人もコロナらし 東京 岡田定
川水は魚影もなし油照り 東京 畠山奈於
真夜中にいとどの王と睨めっこ 東京 堀越としの
靖国や今もさまよふ敗戦日 東京 櫻井滋
追憶のほどよく褪せて秋澄めり 神奈川 遠藤初惠
雨あがる天地たちまち虫時雨 神奈川 遠藤初惠
闘ふ気もはや無いらし兜虫 神奈川 遠藤初惠
秋茄子の一皿の紺いかにせむ 神奈川 三浦イシ子
しんかんと空呻きけり敗戦忌 神奈川 三玉一郎
大いなる静寂八月十五日 神奈川 三玉一郎
百万本の向日葵消えし白昼夢 神奈川 中丸佳音
灼熱の坩堝の底の盆地かな 神奈川 土屋春樹
磐梯の裏の古沼に菱を採る 神奈川 片山ひろし
一品を足してかなしき盆用意 神奈川 片山ひろし
いかにせん熱き足裏よ夏の夜 新潟 高橋慧
七夕やほくろく道の暮れかかる 石川 花井淳
蝉の声針なき時計焼けただる 長野 大島一馬
熱き石かをるやんまの昼間かな 岐阜 夏井通江
月の庭白きミントの花盛り 岐阜 夏井通江
魂迎へ準備は野のもの畑のもの 岐阜 古田之子
短夜をいくたび通る救急車 岐阜 三好政子
流木に三代の亀夏の川 岐阜 三好政子
かぐはしき川の匂ひや秋の鮎 岐阜 梅田恵美子
日に急ぎ月に急ぎて鮎落つる 愛知 稲垣雄二
亡き父も吹かれているか青田風 愛知 稲垣雄二
室外機まだごうごうと今朝の秋 愛知 臼杵政治
未だ母も生きていますと生身魂 愛知 宗石みずえ
このおれをじじいじじいと蚯蚓鳴く 愛知 青沼尾燈子
沖縄や一世紀となる夏の檻 愛知 青沼尾燈子
老猫の息を確かめ秋の宵 京都 吉田千恵子
累々と日焼の茄子終戦日 京都 佐々木まき
落蟬に全き翅と脚六本 京都 諏訪いほり
圏外と表示のスマホ秋暑し 京都 氷室茉胡
忘我へと滝の流れの迫り来る 大阪 高角みつこ
白雲の胸堂々と残暑なり 大阪 高角みつこ
草むしり汗ぽたぽたと草の上 大阪 木下洋子
かなかなや三代揃ひ黙祷す 大阪 木下洋子
先代の能装束やお風入 大阪 木下洋子
祀らねどしみじみとある盆の月 大阪 澤田美那子
コロナ二十万残暑に籠もるわが砦 大阪 澤田美那子
ピーマンの中身ほどなるわが句かな 兵庫 藤岡美恵子
鰯雲通院治療の末期がん 兵庫 髙見正樹
神様の勧誘長し秋暑し 奈良 喜田りえこ
立秋や風のうた聴く猫の耳 和歌山 玉置陽子
長袖のシャツにアイロン涼新た 岡山 北村和枝
落雁や夏の絵日記さながらに 岡山 齋藤嘉子
墨塗りの続く国なり敗戦忌 広島 鈴木榮子
暮れてなほ火照る石垣終戦日 香川 曽根崇
暑き日を称え高砂百合の花 長崎 ももたなおよ
終戦日今朝も新たに蟬の殻 大分 竹中南行