ネット投句(2022年7月31日)選句と選評
・句はわかるようにお作りください。
・わからないのは読者ではなく作者に原因あり。
・他人の目で読み直すこと。
【特選】
秋暑し今宵も恃む古る枕 神奈川 湯浅菊子
鷹山の曳き手装束空の青 石川 花井淳
夕立やビニール傘の滝の中 石川 松川まさみ
朝涼の熱きみそ汁熱き飯 岐阜 夏井通江
どたと寝て死ぬるを待つや犬の夏 愛知 青沼尾燈子
往生はちよいと待たせて鰻食ふ 京都 諏訪いほり
くれなゐは思ひ出の色夏氷 大阪 安藤久美
腹這ひてあさましき顔見る泉 大分 山本桃潤
【入選】
惚けたる鐘の音聞こゆ大暑かな 北海道 村田鈴音
追憶の雨の匂ひや青酸漿 北海道 芳賀匙子
秋空に一筆書きのポプラかな 北海道 柳一斉
思い出すことのみふえて秋の夜 北海道 柳一斉
コンビ二で買ふにはあらず兜虫 宮城 長谷川冬虹
炎昼や監視カメラに死角あり 茨城 袖山富美江
今朝秋の富士をはるかに投函す 千葉 若土裕子
長雨が明けて畑の大茄子 千葉 谷口正人
捕逸して球は転々炎天下 千葉 麻生十三
熱帯夜今日も大の字どうとなれ 東京 岡田定
漆黒の水を見に行く涼み舟 東京 神谷宣行
送り梅雨今日も一日こもりをり 東京 長尾貴代
八月の半ばを過ぎて海静か 東京 楠原正光
凝視せよ被爆マリアを原爆忌 神奈川 越智淳子
落し文拾ひし初め弥彦山 神奈川 越智淳子
嚙み合わぬ二人の記憶百日紅 神奈川 遠藤初惠
空つぽの校舎にひびく蝉時雨 神奈川 三玉一郎
底知れぬ暑さの前にひざまづく 神奈川 三玉一郎
昨夜見たる夢の欠片か黒揚羽 神奈川 中丸佳音
道のべに牛の顔ある大暑かな 神奈川 片山ひろし
水飯もよし佃煮を家苞に 神奈川 片山ひろし
梅ジャムを煮るのはいつも我が役目 新潟 安藤文
第七波負けじと喰らふ鰻かな 新潟 安藤文
空蝉や葉に爪立てて揺れてをり 新潟 高橋慧
アスファルトに電線の影炎暑かな 新潟 高橋慧
来年は蛍狩らんと箒草 富山 酒井きよみ
白玉やふところにあるよき御籤 富山 酒井きよみ
復興の鷹山白木芳しく 石川 花井淳
眼帯の人となりけり夏景色 長野 金田伸一
鬼百合のかつと開きて朝餉かな 長野 大島一馬
くまぜみの声のワシワシ生きんかな 岐阜 古田之子
月見草石まだぬくき河原かな 岐阜 梅田恵美子
晴れやかに鷹山衆のお曳き初め 岐阜 梅田恵美子
幼子の寝息に合はす団扇かな 愛知 稲垣雄二
君の胸触れし記憶や夜光虫 愛知 稲垣雄二
大書庫は涼し窟にあるごとく 愛知 臼杵政治
三年目の夏空全開鉾祭り 京都 佐々木まき
寝覚めらし夜明けの蝉のたどたどし 京都 諏訪いほり
ビニールのプール開きの日曜日 京都 諏訪いほり
二人だけとなりし同胞遠花火 京都 氷室茉胡
ちよいと裾抓み水打つ若女将 京都 氷室茉胡
手放しの自転車のゆく夏の朝 大阪 山中紅萼
ピースピースと云ひし夏など今は昔 大阪 内山薫
故郷の海の色なる扇置く 大阪 澤田美那子
一日をよく働いて冷奴 大阪 澤田美那子
幸せの尻のはみ出すハンモック 奈良 喜田りえこ
雨乞の灯のつらなりて祠みち 香川 曽根崇
老人は外には出るな夏休み 長崎 ももたなおよ
亡き人の髪の匂ひや籠枕 長崎 川辺酸模