ネット投句(2021年7月31日)選句と選評
・どこかで見たような句(既視感のある句)は誰でも作る句です。詠む必要はまったくありません。
・日本語まだできない人も見受けられます。
【特選】
革靴は歩く焼きごて炎天下 13_東京 岡田定
無意識の森へ降りゆく熱帯夜 13_東京 西川遊歩
山百合のどさりと届き花開く 14_神奈川 伊藤靖子
香水を一滴覚悟決まりけり 27_大阪 木下洋子
藍浴衣藍の力を借りて逢ふ 28_兵庫 加藤百合子
炎帝や五輪の上にのしかかる 28_兵庫 天野ミチ
打ち水のおこぼれに咲く草の花 28_兵庫 藤岡美惠子
楸邨の夕焼けまでの大昼寝 29_奈良 喜田りえこ
青梧桐の蔭はみ出して三尺寝 37_香川 曽根崇
いさかひし昔恥づかし墓洗ふ 42_長崎 川辺酸模
【入選】
言い止しの言葉失う蛍かな 01_北海道 村田鈴音
蚊帳吊りて遊牧の民の記憶に 01_北海道 芳賀匙子
空以外何も無くなるゆだちかな 01_北海道 芳賀匙子
虹生れこの世の我を忘れをり 01_北海道 柳一斉
コロナ禍に君に届けし大鰻 04_宮城 長谷川冬虹
山中に日輪降りし睡蓮花 04_宮城 長谷川冬虹
がさつなる性は永劫羽抜鳥 07_福島 渡辺遊太
ナイフ研ぐ夏至の光の水注ぎ 07_福島 渡辺遊太
やゝ高きヒールを選りぬ今朝の秋 08_茨城 馬場小零
大花火佐渡で揚ぐれば弥彦でも 11_埼玉 園田靖彦
寅さんはトランクひとつ夜の秋 11_埼玉 園田靖彦
はるかより馬車駆る音や夏深く 11_埼玉 松本邦吉
軽トラに九段重ねし早苗床 12_千葉 芦野アキミ
垣根越青林檎のせ回覧板 12_千葉 菊地原弘美
ひと塩のきびなご旨き土用かな 12_千葉 池田祥子
玉虫の落ちて家居の夏終る 12_千葉 池田祥子
百歳の寝釈迦のごとき昼寝かな 12_千葉 麻生十三
古パナマ被れば父の顔となり 12_千葉 麻生十三
白南風やひやり重たき黄八丈 13_東京 岡恵
オリンピックテレビの前の爺昼寝 13_東京 森徳典
日の本に風の名二千矢車草 13_東京 西川遊歩
八月の巨きな背中に乗りゆかん 13_東京 長井亜紀
からつぽの腹からつぽの冷蔵庫 13_東京 長井亜紀
花に射す日の色移る晩夏かな 13_東京 長尾貴代
涼風や一人寝のとき本を読む 13_東京 長尾貴代
洋上の船から望む遠花火 13_東京 楠原正光
根には根の争ひ見ゆる草むしり 13_東京 畠山奈於
かんなくず咥へて鵯の営巣す 13_東京 堀越としの
摘みたての茗荷の香る今朝の汁 14_神奈川 伊藤靖子
白頭のほかは赤銅夏の海人 14_神奈川 越智淳子
老いいよよ残りわずかや香水も 14_神奈川 遠藤初惠
土用波大技の板ひるがへり 14_神奈川 松井恭子
雹降って野球の子らを散らしけり 14_神奈川 水篠けいこ
広げたる両手に余る夏の海 14_神奈川 水篠けいこ
ふつふつと胸にも泉湧くところ 14_神奈川 中丸佳音
梅干しや見ても聞いても身震いす 14_神奈川 土屋春樹
イタリヤの国旗の色に夏料理 14_神奈川 那珂侑子
我が家の縮図の如し冷蔵庫 14_神奈川 片山ひろし
宰相の言葉届かず秋の風 15_新潟 安藤文
混沌たるこの世の底より虹立てり 15_新潟 高橋慧
雲水に道果てしなし雲の峰 16_富山 酒井きよみ
蛤の砂抜かれゐる夕凉し 17_石川 岩本展乎
夕焼けや口笛の人後ろから 17_石川 密田妖子
一人分胡瓜を揉みて胡瓜食む 17_石川 密田妖子
すさまじきナラ枯れの山夏座敷 19_山梨 小泉雅恵
散策は明日もこの道稲の花 20_長野 金田伸一
宙つつまむ宙につつまれむ水芭蕉 20_長野 柚木紀子
アイスティー庭のミントを摘んできて 21_岐阜 夏井通江
夜に干す白衣と下着夏遍路 23_愛知 稲垣雄二
また一人仮面を外す木下闇 23_愛知 稲垣雄二
背泳ぎやだんだん空が近くなる 26_京都 氷室茉胡
今はもう誰も咎めぬ昼寝かな 26_京都 氷室茉胡
百年に一度の暑さ荒神輿 27_大阪 安藤久美
呆然と人も大樹も夕立かな 27_大阪 高角みつこ
差し出せば子は泣き出せり蝉の殻 27_大阪 内山薫
競技場蝉が囃してゐるばかり 27_大阪 木下洋子
ワクチンを打つて涼しき夕べかな 27_大阪 木下洋子
朝食の窓朝顔の裏ばかり 27_大阪 澤田美那子
ハンドルに長き足乗せ三尺寝 27_大阪 齊藤遼風
蛞蝓の遠き歩みを楽しめり 27_大阪 齊藤遼風
街白夜ああ月がない星がない 28_兵庫 魚返みりん
街を行くわが影もなき暑さかな 28_兵庫 千堂富子
おまじない覚えたてなる茅の輪かな 28_兵庫 藤岡美惠子
山の寺闇に下がりし瓢かな 28_兵庫 福田光博
初秋や展示の変わる美術館 28_兵庫 髙見正樹
選びたる魚目百句の涼しさよ 29_奈良 喜田りえこ
半世紀前は新妻レース編む 30_和歌山 玉置陽子
とぐろ巻く蝮もをるぞ蛍狩 33_岡山 齋藤嘉子
銀漢や二峰崩れし五剣山 37_香川 曽根崇
奥祖谷の炭焼きし跡青胡桃 37_香川 曽根崇
夏の月波に曳かるる砂の音 44_大分 竹中南行
仏壇は熟るるバナナの香に満ちて 46_鹿児島 大西朝子
毛虫焼くステロイド剤光る腕 50_フランス 廣瀬玲子