ネット投句(2021年7月15日)選句と選評
・わかるように作ってください。そのためには必ず読み返すこと。
・説明にならないように。
・どこかで見たような句は作る必要がありません。この点、自分に厳しく。
【特選】
夜風鈴托鉢僧の居る如し 13_東京 杜野廉司
新涼やスカイツリーが屋根の上 13_東京 楠原正光
大昼寝この世の声が聞こえけり 14_神奈川 三玉一郎
引力のここに集まる大瀑布 17_石川 花井淳
初蝉を聞く産声を聞くごとく 17_石川 岩本展乎
夏の月石まだぬくくうづくまる 21_岐阜 夏井通江
羽抜鶏未来を見つめてゐるところ 21_岐阜 夏井通江
涼しさや無より現はれ石の庭 27_大阪 安藤久美
袋掛桃のうたたね始まりぬ 30_和歌山 玉置陽子
珊瑚礁映して眠るサングラス 42_長崎 川辺酸模
草を取るこんな時間を待つていた 44_大分 山本桃潤
土用鰻俳句作るも力技 44_大分 山本桃潤
【入選】
一人来てまた二人来て夜焚釣 01_北海道 高橋真樹子
切り詰めし夏の暮らしや花手水 01_北海道 芳賀匙子
郭公や牧場は未だ目覚めざり 01_北海道 柳一斉
あらまほし冷奴のごといさぎよく 04_宮城 長谷川冬虹
冷奴百珍あれど極まれり 04_宮城 長谷川冬虹
産土の素肌にほやか青田風 07_福島 渡辺遊太
捩花や誰かが捨てし夢の跡 08_茨城 馬場小零
新婚の新居に早もあぶら虫 11_埼玉 園田靖彦
産土のあの日にもどらん籠枕 11_埼玉 園田靖彦
主ゐるごとく蔵書や黴匂ふ 11_埼玉 上田雅子
遠く来て哀れ百円バナナかな 11_埼玉 上田雅子
グロリオーサ競いて咲きぬ梅雨の庭 11_埼玉 上田雅子
セロハンの翅震はせて兜虫 11_埼玉 藤倉桂
誰もゐぬ誰も来ぬ午後百日紅 11_埼玉 藤倉桂
雪解けてアカチンの膝小僧たち 12_千葉 芦野アキミ
懐かしきもの悉く黴の華 12_千葉 若土裕子
初恋やふはふは積もるかき氷 12_千葉 若土裕子
銀漢や夫の残せし旅かばん 12_千葉 若土裕子
青春や図書室の窓夏木立 12_千葉 谷口正人
大谷が投げ打ち笑ふ梅雨あがる 12_千葉 谷口正人
島の子の岩飛ぶ遊び土用波 12_千葉 池田祥子
故郷の黒酢の届く土用かな 12_千葉 池田祥子
籐椅子にゐて再会の旅の夢 12_千葉 池田祥子
トマト胡瓜さくらんぼ茅の輪潜りけり 13_東京 岡恵
釣忍揺らして時を戻しけり 13_東京 岡恵
戦争のなくて人死ぬ大暑かな 13_東京 神谷宣行
翡翠やコバルトブルーの炎立つ 13_東京 西川遊歩
今年こそ銀座へ行こう薄衣 13_東京 長尾貴代
冷そうめん父とふたりの不登校 13_東京 長尾貴代
泰山木の花のやうなる人娶る 13_東京 畠山奈於
農協のキャベツ抱きてよろめきぬ 13_東京 堀越としの
子ら声を潜めよ合歓の花の下 14_神奈川 越智淳子
ハイビスカス蕾あまたの鉢買はん 14_神奈川 越智淳子
咲きさうな莟がひとつ水中花 14_神奈川 金澤道子
鈍行や時間だけある夏休 14_神奈川 三玉一郎
きみはまだきみを知らない藍浴衣 14_神奈川 三玉一郎
規格外胡瓜一笊二百円 14_神奈川 水篠けいこ
田水沸きどぜうざにがに逃げ隠れ 14_神奈川 土屋春樹
大菩薩尾根noを越えれば雲の峰 14_神奈川 土屋春樹
兄弟の留守番の午後心太 14_神奈川 湯浅菊子
夫すこし若く見えたり半ズボン 14_神奈川 那珂侑子
白玉やさらりと嘘をつくをんな 14_神奈川 片山ひろし
大喧嘩のあとの静けさソーダ水 15_新潟 安藤文
おそるおそる茅の輪をくぐる吾が子かな 15_新潟 安藤文
水はじき茄子は仔犬の声あぐる 17_石川 松川まさみ
青田風穂高の水の絶ゆるなき 20_長野 金田伸一
寂けさや聞こゆるこゑは新樹光 20_長野 柚木紀子
紅花のれんこん拡声器で正午を 20_長野 柚木紀子
黒揚羽雨のあいまをぬふて来し 21_岐阜 古田之子
梅雨激し人為の果ての土石流 21_岐阜 三好政子
水割りの氷涼しき江戸切子 21_岐阜 辻雅宏
廃線のレールそのまま草いきれ 21_岐阜 辻雅宏
よく生きて滲み・傷・破れ古団扇 23_愛知 稲垣雄二
一丁を二人で分けて冷奴 23_愛知 臼杵政治
旅客機の斯くも行き交ひ梅雨明くる 23_愛知 宗石みずえ
空蝉や眠れ大樹に抱かれて 23_愛知 野口優子
棒読みの街頭演説炎天 26_京都 吉田千恵子
浴衣着て物憂きものに乳押さへ 26_京都 佐々木まき
虫干や母の恋の句見つけたる 26_京都 氷室茉胡
呼鈴を掴んでゐたる蝉の殻 26_京都 氷室茉胡
百歳で一人暮らしや雲の峰 27_大阪 内山薫
この年の祇園囃子を聞きに行く 27_大阪 木下洋子
ぎんどろの押し葉涼しき風を呼ぶ 27_大阪 木下洋子
蓴菜といふ味なくて旨きもの 27_大阪 澤田美那子
京の人動かぬ鉾を見て帰る 27_大阪 澤田美那子
とにかくに今日まで生きて心太 27_大阪 齊藤遼風
絵唐津の露の音聞くマスクかな 27_大阪 齊藤遼風
氏神や名越の祓入念に 28_兵庫 加藤百合子
噴水やみづさかさまに乱反射 28_兵庫 魚返みりん
梅雨出水地球も荒れて傷だらけ 28_兵庫 天野ミチ
手に並べ小石の如き雹見せる 28_兵庫 天野ミチ
トラノオや蝶訪ふたびに尾を振れり 28_兵庫 藤岡美惠子
夾竹桃花の向こうに溶鉱炉 28_兵庫 髙見正樹
葉の陰にでんと重たき胡瓜かな 29_奈良 田原春
蝸牛梢の先の空を見に 30_和歌山 玉置陽子
無防衛な悪女の昼寝姿かな 37_香川 丸亀葉七子
熱帯夜パソコン青く発光す 37_香川 丸亀葉七子
抗ひつつ蛾のひかれゆく蟻の列 37_香川 曽根崇
夏帽も我もくたびれをりにけり 37_香川 曽根崇
花南瓜雌花雄花に囲まるる 42_長崎 ももたなおよ
トンネルの先は黒潮雲の峰 42_長崎 川辺酸模
アメリカを真似続けてや冷奴 44_大分 竹中南行
風死せり京にどでんと東山 50_外国 廣瀬玲子