ネット投句(2021年8月15日)選句と選評
・まず意味不明の句を作らないように。
・自分がわかれば人もわかるはず、というのが間違い。人はわかりません。
・わかるようにするためには「第三者の目」で読み直すこと。
【特選】
ばばさまの乗りこなしたり茄子の馬 13_東京 神谷宣行
メコン河の秋水萍の来ては去る 17_石川 花井淳
・二つの「の」不要。散文ではありません。
ひとつずつ木の実手にして別れけり 17_石川 岩本展乎
蝉声のなかひと筋の法蝉蝉 27_大阪 澤田美那子
西日照り命のかぎり女哭く 28_兵庫 魚返みりん
・大西日
敗戦日杭一本の墓標かな 29_奈良 喜田りえこ
・を墓標とす
【入選】
風鈴の音にしばらくペンを置き 01_北海道 柳一斉
打つ手なくコロナ第五波敗戦忌 04_宮城 長谷川冬虹
人去りて言葉残りぬ水中花 07_福島 渡辺遊太
箱庭や産湯の家と喪の家と 07_福島 渡辺遊太
真二つや無花果の裸身美しき 11_埼玉 上田雅子
飼育ケース並ぶや十個夏休み 11_埼玉 藤倉桂
新涼の翼を広げ浅間山 12_千葉 若土裕子
油蝉近く日ぐらし遠くから 12_千葉 谷口正人
敗戦忌母の遺品に引揚証 12_千葉 池田祥子
床下を風吹きぬけて夏の家 12_千葉 麻生十三
カナカナや独り住まひの門の内 13_東京 岡恵
秋めくや一品多し夕ごはん 13_東京 岡田栄美
道なりに花売りのロバ秋に入る 13_東京 岡田栄美
人の世の片蔭にゐて寿 13_東京 神谷宣行
秋刀魚食ふ母の必死やまだ生きる 13_東京 神谷宣行
レナウンのワンサカ娘秋が来た 13_東京 長井信彦
初蝉を聞くやたちまち蝉しぐれ 13_東京 杜野廉司
手花火や遊びし日々の友の顔 13_東京 楠原正光
三度巣に育つ子燕駅舎の壁 13_東京 畠山奈於
大くさめは隣家の主人今朝の秋 13_東京 堀越としの
月光に冷たく光る五つの輪 13_東京 櫻井滋
神様の退屈凌ぎ野分かな 13_東京 齊藤拓
降りつづく闇夜の底に鉦叩き 14_神奈川 伊藤靖子
夏休み熱いトマトにかぶりつき 14_神奈川 遠藤初惠
八月の道に小石の照り返し 14_神奈川 遠藤初惠
父の忌を修し風鈴外しけり 14_神奈川 金澤道子
静寂の記憶八月十五日 14_神奈川 三玉一郎
爆弾抱へ死ぬる訓練父の夏 14_神奈川 松井恭子
読みさしの本めくる風秋に入る 14_神奈川 松井恭子
閉幕のアンツーカーに秋の雨 14_神奈川 水篠けいこ
炎天や落し物して齢増ゆ 14_神奈川 中丸佳音
遠雷をうきうきと待つ心あり 14_神奈川 中丸佳音
飢えに飢えフスマを食くす敗戦忌 14_神奈川 土屋春樹
テレビ観戦終りて我の夏終る 14_神奈川 那珂侑子
荒れ川の簗に追ひ込む藻屑蟹 14_神奈川 片山ひろし
夕立にさつと濡れゆくランナーよ 15_新潟 安藤文
今年また一家揃はぬお盆かな 15_新潟 安藤文
深閑と泉の底に深き空 15_新潟 高橋慧
冷まじや障碍者てふ言葉あり 15_新潟 高橋慧
ひと雨の来て秋草となりにけり 17_石川 岩本展乎
ややありて音も終ひの遠花火 17_石川 松川まさみ
蜩の輪唱の波森は海 17_石川 密田妖子
西瓜食ふ昼は測らぬ血糖値 20_長野 金田伸一
どこをどう来るや枕辺の飛蝗 20_長野 金田伸一
終戦日音くぐもれる真空管 20_長野 大島一馬
蜻蛉のすいと行き来す今昔 20_長野 大島一馬
己すませば天高く不可思議 20_長野 柚木紀子
草原の香の香水をまとひ寝ん 21_岐阜 夏井通江
雨の輪や鯉の緋色の揺れてをり 21_岐阜 古田之子
点さねば父母まよふ門火かな 21_岐阜 梅田恵美子
お大師が背にへばりつく夏遍路 23_愛知 稲垣雄二
水撒けば小さな虹や原爆忌 23_愛知 稲垣雄二
路面電車の細きホーム炎天 26_京都 吉田千恵子
墓洗ふお山の水で何杯も 26_京都 佐々木まき
代筆とある友の文秋の声 26_京都 氷室茉胡
大文字の今宵の空のひろびろと 27_大阪 安藤久美
八月や木叢草叢疲れそむ 27_大阪 高坂泰子
賑やかに帰りくるらん魂迎 27_大阪 澤田美那子
大阪に飽きて京都や鱧の皮 27_大阪 齊藤遼風
夕べより嫉みの雨よ恋の星 28_兵庫 加藤百合子
初めての火傷に泣けり庭花火 28_兵庫 藤岡美惠子
砂浜に見ゆる人影良夜かな 28_兵庫 高見正樹
迎え火や軍靴の父の蚤しらみ 29_奈良 喜田りえこ
好物の芋と南瓜を菰筵 29_奈良 喜田りえこ
秋高しまだ純白のユニフォーム 33_岡山 齋藤嘉子
かじられて脛も細りぬあつぱつぱ 37_香川 丸亀葉七子
空蝉や隣りはすでに墓じまひ 42_長崎 ももたなおよ
義兄死すしばし泣かせよ秋の風 42_長崎 川辺酸模
今もなほいくさは止まづ敗戦日 44_大分 山本桃潤
俎の音に八月六日明く 44_大分 竹中南行
瓜の馬役目を終へて門の陰 46_鹿児島 大西朝子
夕凪の坂は蘭盆勝会かな 50_フランス 廣瀬玲子