「短歌往来」(ながらみ書房)12月号に「天空山水」10句が掲載されています。特集「都市を詠む」、今年2024年夏の東京です。
古志金沢ズーム句会(2024年11月17日)
第一句座
新年詠または当季雑詠
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
おんおんと能登一国を除夜の鐘 酒井きよみ
【特選】
黙々と蒔絵師の筆冬に入る 越智淳子
元旦や能登半島は震災忌 鬼川こまち
山積みの眼鏡よ語れ夜と霧 山本桃潤
あらたまのひとつ大きな輪を飾る 安藤久美
起き上がる姫小法師や能登の春 飛岡光枝
【入選】
母の鍋黒豆の釘残りけり 飛岡光枝
母の無きわが新年や花びら餅 飛岡光枝
母の味今もありあり雑煮かな 越智淳子
ぷかぷかと赤子も柚子もお湯の中 玉置陽子
夫の手を借りて眉引く初鏡 土谷眞理子
この冬はなほ寒からん能登の人 近藤沙羅
東京の昔の空へ羽根をつく 飛岡光枝
手袋のまま握り合ふ別れかな 藤倉桂
残業の机が一つ冬の月 稲垣雄二
水仙や庭の仕舞ひを一つづつ 川上あきこ
第二句座
席題:「虎落笛」、「水仙」
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
移り来て心の中に虎落笛 花井淳
虎落笛薬が勝つか死が勝つか 土谷眞理子
能登崩れ人間崩れ虎落笛 稲垣雄二
【入選】
水仙の花一輪の菩薩かな 清水薫
屋上の物みな今宵虎落笛 泉早苗
老い果ててさすらふ我は虎落笛 橋詰育子
人を喰ふむかし話や水仙花 酒井きよみ
水仙や二十一世紀はどこへ 清水薫
あきらかに摩天楼より虎落笛 田村史生
さすらへる詩歌の神か虎落笛 稲垣雄二
思ひ出のかけらの瓦礫虎落笛 花井淳
父母の留守の間を虎落笛 越智淳子
ふるさとの大土佐を越え虎落笛 橋詰育子
水仙の花をしごきてただ一輪 藤倉桂
初めての二間の社宅虎落笛 密田妖子
《故郷の肖像》11月14日の熊日に「海の国の物語」⑦
11月14日(木)の熊日新聞に「故郷の肖像」「海の国の物語」⑦が載っています。
プロ野球の選手カズヨシ・ジョージ・マツウラの話など。
次回は今年最後、12月12日(木)。
先日の鎌倉句会で
先日(2024年11月10日、日曜日)の鎌倉ズーム句会で、おほづひろしさんの
げつそりと痩せたる手足初湯かな
という句がありました。上五の「げつそりと」はいただけない、再考の余地ありとお伝えしましたが、その後の推敲、名案浮かびましたか。
一案、
痩せたまふ足の命(みこと)の初湯かな
という手もあるかと。
新春詠ですから、何事もめでたきさまに。
古志鎌倉ズーム句会(2024年11月10日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
ふるさとの山のごとくに蒲団干す 藤原智子
鯛焼や日のあるうちに買ひにゆく 藤原智子
紅葉の木々のまほらに大紅葉 長谷川櫂
小春日に迷いひ込んだる蜆蝶 澤田美那子
【入選】
べつたら市雪より白き米麹 西川遊歩
膝の上匂ひしてゐる今川焼 田中益美
山廬いま青き香のなか松手入 関根千方
しぐるるやヒシギに呼ばれ里女 わたなべかよ
海鳴りや大根を干す背中にも 森永尚子
風花やうれしきことはしづかに来 澤田美那子
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
山廬いま松の香のなか松手入 関根千方
一握の灰となるまで日向ぼこ 森永尚子
秋出水いのしし一頭流され来 仲田寛子
木の実ひとつ君の思ひ出小引き出し 森永尚子
ヨモツヒラサカ狂ヒ花巨大ナリ イーブン美奈子
【入選】
一票の行方は知れず初氷 木下洋子
返り花一つ開きて古木かな 藤原智子
づたづたの能登置き去りに秋は行く きだりえこ
初氷花に埋もるる母の顔 神谷宣行
ひとつづつ山河の重み秋果盛る 仲田寛子
大蜥蜴冬の運河を覗き込む イーブン美奈子
熱燗や民主主義とは腹の立つ 藤英樹
屋根よりも高きに上り松手入 関根千方
東京は木枯らし一号母へ電話 森永尚子
第二句座 (席題:初湯 蓮根堀り)
•藤英樹選
【特選】
七十の乳房かがやく初湯かな 萬燈ゆき
のうのうと今は一人の初湯かな 金澤道子
蓮根掘り泥あたたかき一日かな 藤原智子
鬼の脛つかむがごとく蓮根引く 関根千方
【入選】
胴長の抜き差しならず蓮根堀 葛西美津子
蓮根掘るマンション群に囲まれて 木下洋子
はからずも米寿となりて初湯かな 澤田美那子
番台の日本髪なる初湯かな 佐藤森恵
蓮根掘り片足抜かば深みへと わたなべかよ
蓮根掘る太きホースを唸らせて 仲田寛子
赤んぼが一番乗りの初湯かな 萬燈ゆき
げつそりと痩せたる手足初湯殿 おほずひろし
•長谷川櫂選 (推敲例)
【特々選】
七十の乳房かがやく初湯かな 萬燈ゆき
蓮掘るや泥のなかより観世音 きだりえこ
初湯して桃色の妻眩しめり わたなべかよ
【特選】
蓮根引く泥のなかへと引き込まれ 関根千方
やはらかく泥を揺すりて蓮を引く イーブン美奈子
のうのうと今は一人の初湯かな 金澤道子
蓮根掘り泥あたたかき一日かな 藤原智子
【入選】
この晴れ間のがすものかと蓮根堀 田中益美
蓮根掘り泥にまみれてまだ続く 金澤道子
蓮根掘るマンション群に囲まれて 木下洋子
腰までの長靴重く蓮根掘る 鈴木榮子
蓮根掘小学生が眺めに来 木下洋子
蓮根掘る太きホースを轟かせ 仲田寛子
赤んぼが一番乗りの初湯かな 萬燈ゆき
鬼の脛つかむがごとく蓮根引く 関根千方
あたたかき一日選んで蓮根掘る 藤原智子
古志広島ズーム句会(2024年11月3日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
零戦は底なき闇へ展宏忌 米山瑠衣
生きて届く渡蟹こそ初荷かな 長谷川櫂
秋鰺のたたきあら汁展宏忌 ももたなおよ
日の丸の巻きつくポール展宏忌 矢田民也
暁に海鳴り止まぬ展宏忌 駒木幹正
【入選】
手首にもくるぶしひとつ露けしや 神戸秀子
わが角もまあるくなつて冬に入る 大場梅子
霧がたち遂に兄逝くハマちゃんも ももたなおよ
推敲の色なき風に吹かれをり 城山邦紀
井戸塀の政治家遠し秋刀魚焼く 金田伸一
あかぎれて罅われて原爆ドーム 長谷川櫂
返り花いつのまにやら八重桜 上松美智子
撃ち損ねほつとしてゐる猟初 菅谷和子
外苑の伐らるる木々に秋の雨 斉藤真知子
安達太良の空に真白き秋の雲 伊藤靖子
子に後れゆつくりと行く木の実山 石塚純子
寒空に花のスカーフ打つて出る 夏井通江
つぶぞろひ重き稲穂に大臣賞 原京子
戦争はまつぴらごめん展宏忌 斉藤真知子
大谷の満面の笑み冬に入る 安藤文
展宏忌泉濁したお相手は 岡村美沙子
展宏忌恋の港に佇みて 林弘美
父の名の遺る表札松手入 矢田民也
観音に十一の眉間野路は秋 高橋真樹子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
浮寝鳥大波に夢さらはれき 斉藤真知子
展宏忌こよひいづくの酒の神 矢野京子
返り花ひらけばなんと八重桜 上松美智子
戦争はまつぴらごめん展宏忌 斉藤真知子
【入選】
関節に油差したし展宏忌 ストーン睦美
木枯しや空也の杖は鹿の角 大場梅子
星月夜介護する身とさるる身と 瑞木綾乃
小春富士わたくししたる展宏忌 矢田民也
返り花展宏さんを偲ぶべく 安藤文
打つて出る花のスカーフ凩へ 夏井通江
黄葉の奈落にひとつわが家あり 高橋真樹子
菊の日や自分のための握り飯 矢野京子
第二句座(席題:柿、マスク)
・矢野京子選
【特選】
マスクとは涙も吸うてくるるもの 米山瑠衣
家仕舞最後の柿を頂きぬ 瑞木綾乃
マスクして遠き日の恋すれ違ふ 高橋真樹子
【入選】
太郎柿どこにおはすと次郎柿 城山邦紀
したたかに酔うて候ふ熟柿かな 長谷川櫂
マスクしてマスクをやめる会議かな 矢田民也
マスクして四十九日の経つづく 今村榾火
柿たはは百戸の谿をうるはせて 大平佳余子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
糖尿や夢でいただく富有柿 金田伸一
鬼の尻座れるごとし次郎柿 今村榾火
種多き禅寺丸柿手強いぞ 大場梅子
スズメバチと闘ひ熟柿守る人 加藤裕子
懐にいまだしのばすマスクかな 安藤文
【入選】
マスクとは涙も吸うてくるるもの 米山瑠衣
家仕舞最後の柿を頂きぬ 瑞木綾乃
マスクして若返りけり大きな目 夏井通江
マスクして四十九日の経つづく 今村榾火
マスクして遠き日の恋すれ違ふ 高橋真樹子
マスクして年寄りばかりローカル車 金田伸一
干柿の日毎に萎ゆる簾かな 駒木幹正
人の世を隔つるマスク捨てられず 石塚純子
佐渡やいま金色放つおけさ柿 安藤文
眼差しに出でて怒りのマスクかな 斉藤真知子
中国語句集『長谷川櫂俳句選譯』ができました!
《故郷の肖像》10月10日、熊日に「海の国の物語」⑥
10月10日(木)の熊本日日新聞文化面に《故郷の肖像》「海の国の物語」⑥が載っています。ご感想あればどうぞ。
毎月第2木曜日に掲載予定。次回は11月14日です。
@10/明治神宮外苑の再開発について/奈良握
ストップしていた外苑再開発が動き出すことになった。樹木伐採本数を124本減らして619本とするなどの「見直し案」が東京都環境影響評価審議会で受け入れられたというかたち。
抜本的な解決には程遠く残念だ。「俳句的生活」のサイトでは山桜植樹に取り組んでおり、今回のような対応では各地にあるであろう植樹等によって環境保全に尽力しようという試みを台無しにするようである。日本の貴重な自然環境が損なわれていくことに当然納得いく立場ではない。
しかし、かと言って、この場でなにか表明するという位置にあるわけではないとも思う。せめて自然を尊ぶ意思を強く持つことをもってこうした事態に耐えていきたいと思う次第だ。私には、いまの悲しみを句にできる力がない。が、たとえ初心者であれ、ここに居る身としてこの投稿に一句は添えておくべきだろう。
おけら鳴く今宵銀杏も鳴くとかや 握
【長谷川櫂コメント】佐賀県武雄市の武雄神社には樹齢3000年の大楠があります。樹木は何百年、何千年と生きるのに、人間は数十年、せいぜい百年ではありませんか。たかがカネ儲けのために619本もの樹木を切るという今回の行為は、どう理屈をつけようと「樹木への敬愛」をまったく欠いた蛮行にほかなりません。加担した三井不動産などの業者、東京都、そして明治神宮にも天罰が下ります。
古志金沢ズーム句会(2024年10月20日)
第一句座
梅室忌または当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
富士山の解けては氷る小春かな 長谷川櫂
一山をころがす勢ひ猪の鼻 酒井きよみ
猿面の老ゐて味はひ梅室忌 山本桃潤
てつぺんに止まりて鵙の天下かな 橋詰育子
ごつごつと一本の道栗羊羹 飛岡光枝
稲妻を手斧で切つて花入に 長谷川櫂
一弾の谺や秋の水に罅 松川まさみ
彗星の尾がふれゆきし金木犀 安藤久美
悴んで地球は重し鉄の玉 長谷川櫂
【入選】
竹箒一夜の秋を掃き集む 稲垣雄二
白徳利もて月待たん梅室忌 田村史生
鮒の影掠める障子洗ひけり 玉置陽子
枯れゆきて光となりぬ蝦夷りんだう 梅田恵美子
「ぐりとぐら」いまだ手元に秋惜しむ 川上あきこ
どんぐりも地球も回れ二十日月 駒木幹正
帰り咲く一木もあれ梅室忌 酒井きよみ
梅室忌一本松は色変へず 藤倉桂
ラフランスの詩を遺してゆかれしよ 近藤沙羅
異国のオオトカゲ来る梅室忌 近藤沙羅
破案山子軽トラックの助手席へ 藤倉桂
角伐るや一頭つひに逃げ通す 田村史生
大拙の思索の海へ木の実落つ 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
花の芽のころより愛でし花梨捥ぐ 清水薫
猿面に老ゐて候ふ梅室忌 山本桃潤
鮒の影掠める障子洗ひけり 玉置陽子
ふり払ふ露はなやかや梅室忌 飛岡光枝
小菊からこぼるる水も梅室忌 梅田恵美子
【入選】
初雁や妻を恋ひつつ五十年 宮田勝
白山の水脈々と梅室忌 安藤久美
青畳のごとく海原梅室忌 間宮伸子
梅室忌白徳利は月を待つ 田村史生
猪の鼻山をころがす勢ひかな 酒井きよみ
金沢は松吊るころか梅室忌 越智淳子
たましひを震はせて鳴く虫一匹 趙栄順
梅室忌枯萩起こす碑のうしろ 松川まさみ
梅室忌その手になりし翁像 泉早苗
凍らんとせし菊の露梅室忌 玉置陽子
帰り咲く一木もあれ梅室忌 酒井きよみ
新蕎麦や水響き合ふ音高し 宮田勝
古九谷の盃選ぶ梅室忌 密田妖子
梅室忌一本松は色変へず 藤倉桂
傘の露乾かぬ一世梅室忌 飛岡光枝
夕映て白山炎ゆる梅室忌 梅田恵美子
盥ほどの田も豊作や千枚田 稲垣雄二
かぶら鮓仕込み始まる梅室忌 梅田恵美子
水を吹く松の根榾や梅室忌 玉置陽子
白山を眺めつ京へ梅室忌 花井淳
みな白髪にてつつがなく梅室忌 泉早苗
梅室忌砥石に氷る指のさき 梅田恵美子
角伐るや一頭つひに逃げおほす 田村史生
一刀に露のはしるや梅室忌 飛岡光枝
梅室忌初めてつけし椿の実 間宮伸子
第二句座
席題:「鹿」、「大根」
・鬼川こまち選
【特選】
鹿の目の濡るるは子鹿思ひてか 田中紫春
種まきて今朝も通ひし大根畑 梅田恵美子
寂寂と月染み入るや掛大根 玉置陽子
巫女さんの朝の仕事や鹿の糞 飛岡光枝
鹿憩う松葉の上に膝折りて 間宮伸子
鹿に会い見つめられたる山のなか 梅田恵美子
この里も地割れをまたぐ掛大根 花井淳
桃源の翁と嫗大根干す 長谷川櫂
【入選】
いつも辛き夫の大根おろしかな 氷室茉胡
一揆村晴れそくばくの大根干す 泉早苗
防人の島や身を寄す月の鹿 泉早苗
この道を行けば白峰鹿が鳴く 清水薫
角伐つていよいよかろき鹿の声 安藤久美
太りだす大根の葉の茂りかな 趙栄順
鹿の群見送りてわれも帰りけり 橋詰育子
吾も欲し鹿の瞳と細き足 間宮伸子
禅寺に山と積まれし土大根 清水薫
大根煮ることから始む独居かな 氷室茉胡
神鹿もすさびし眼近寄り来 藤倉桂
渋滞の先頭をゆく牡鹿かな 田村史生
浅間山ひと筋赤し鹿の声 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
彗星の落ち行くさきや大根畑 梅田恵美子
恋の頬大根当てて冷ましけり 稲垣雄二
あふるるや大根の水まな板に 藤倉桂
竿鹿に見つめられたり山の道 梅田恵美子
大根の穴日の差して健やかな 間宮伸子
【入選】
懸大根里の道来る選挙カー 駒木幹正
伐られたる角が痛しと啼く鹿よ 安藤久美
鹿憩う松葉の上に膝折りて 間宮伸子
せんべいに頭を下ぐる鹿哀れ 稲垣雄二
大根煮て始める一人暮らしかな 氷室茉胡
波寄せる浜に鹿たち何思ふ 近藤沙羅
子を中に一群れの鹿霜に寝る 稲垣雄二

