古志金沢ズーム句会(2025年1月13日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
難儀さへ笑へば福よ初戎 安藤久美
寒の水たばしり濯ぐ濁世かな 泉早苗
初句会ことば悴むことなかれ 趙栄順
空そめて激動の世へ初日の出 梅田恵美子
風の声とけては氷る凍大根 梅田恵美子
寒肥やたまさかの雪鋤き混ぜて 玉置陽子
ひざかけの寒き日暮れをたたみけり 川上あきこ
餅あはひ羽あるやうに焼く餃子 酒井きよみ
こころして能登一国の鬼やらふ 泉早苗
【入選】
迂回路は隆起海岸雪しまく 花井淳
吾を産みし母の力に寒卵 間宮伸子
寒鯉は不意に瞑想解きにけり 稲垣雄二
看取り妻寒餅二こに力を得 泉早苗
奥能登の月孕みたる氷柱かな 玉置陽子
生糸編む裏の川岸寒に入る 宮田勝
双六の上りは遥か能登の国 稲垣雄二
洗ひたる手の静かなる三日かな 趙栄順
ふるさとの天のまほらへ凧 安藤久美
能登の国を守りえざりき鏡餅 長谷川櫂
踊り子は鶴の羽ばたくトウシューズ 山本桃潤
いつもよりマフラーきつく寂し夜は 川上あきこ
初夢の誰が呼びたるか逝かれけり 酒井きよみ
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
初富士や誰にも告げぬ老の夢 藤倉桂
初日の出能登の裸の大地かな 稲垣雄二
初稽古氷の床に坐りけり 稲垣雄二
寒の鯉ふと瞑想を解きにけり 稲垣雄二
こころせよ能登一国の鬼やらふ 泉早苗
【入選】
雑踏に大あくびの子初御空 梅田恵美子
金で継ぐ輪島の椀の初むかし 酒井きよみ
愚かなる吾の浮べる初湯かな 田村史生
難儀さへ笑へば福よ初戎 安藤久美
癖のある文字の三行寒見舞 清水薫
餅を切るなまくら包丁励ましつ 飛岡光枝
故郷を厚き氷と思ひけり 清水薫
寒肥やたまさかの雪鋤き混ぜて 玉置陽子
コフノトリ二十羽来たといふ賀状 近藤沙羅
双六の上り遥かに能登の国 稲垣雄二
こりと噛む能登のなまこの音高く 飛岡光枝
頬当てて炎のごとし大氷柱 玉置陽子
今頃はロンドン辺か冬の暮 清水薫
孫編みしマフラー巻いていざ行かむ 氷室茉胡
残り福あれもこれもと結はへけり 安藤久美
雪止みてしづかに青き一人かな 松川まさみ
まだ残る瓦礫に届く年賀状 稲垣雄二
再会はもはや無からん寒見舞 氷室茉胡
第二句座
席題:「風花」、「橇」
・鬼川こまち選
【特選】
そり遊びまろびまろびて雪まみれ 梅田恵美子
風花ややさしく哀し能登ことば 飛岡光枝
三日月を今宵の橇にしつらへて 田中紫春
雪塊となりて眠るや橇の犬 飛岡光枝
絶え間なき地打ちの波や橇の上 宮田勝
橇飛ばすカムパネルラに会ひたくて 藤倉桂
風花を恐ろしと思ふ杜氏かな 稲垣雄二
橇遊び止まらぬことを恐れつつ 泉早苗
風花や母の背中の遠ざかる 宮田勝
【入選】
風花や山の向かふは雪地獄 稲垣雄二
風花や二度とは会へぬ人ばかり 飛岡光枝
風花や呼ばれたるかに笑み返す 越智淳子
風花やレスキュー隊の駆け抜ける 田村史生
橇に子とランドセルのせ山下る 土谷眞理子
星々を随え橇は鈴ならし 川上あきこ
率先し橇引く側に餓鬼大将 氷室茉胡
風花や山の向かうは銀世界 間宮伸子
星屑に青く染まるや人と橇 玉置陽子
その下に瓦礫の残る橇遊び 宮田勝
風花やもう振り向かぬと決めており 川上あきこ
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
雪塊となりて眠るや橇の犬 飛岡光枝
わが空に風花の舞ふ日和かな 橋詰育子
風花や山の向かうは銀世界 間宮伸子
その下に瓦礫の残る橇遊び 宮田勝
風花やもう振り向かぬと決めており 川上あきこ
【入選】
風花や水面に浮かぶ大拙館 清水薫
風花や単身赴任あと僅か 氷室茉胡
町めぐる荷橇に魚を売る日かな 花井淳
総玻璃のプール泳ぐや風花と 藤倉桂
箱橇の転び易きを遊びけり 花井淳
肥え桶を運ぶ昭和の橇の道 密田妖子
家出でて風花の舞ふ田道かな 橋詰育子