古志広島ズーム句会(2025年5月3日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
鳥海の山を揺らして雪解水 斉藤真知子
鯉濃の大阪の夏来たりけり 長谷川櫂
烟らせて佐渡一島を若葉雨 安藤文
牧水のさびしいと言ふ五月かな 今村榾火
更衣わが身のなほも軽くなる 城山邦紀
【入選】
五月富士わが師の誉れ讃へけん 大場梅子
下駄箱に下駄なきふしぎ昭和の日 矢田民也
夏来る鋼のごとき蜘蛛の糸 石塚純子
薫風も汽笛も魚鼓は飲み込んで 加藤裕子
蝌蚪跳ねて四分音符のあと休符 駒木幹正
北国の山より白き牡丹かな 高橋真樹子
戦地より帰りし父の居た夏よ 伊藤靖子
四十兆の細胞奮ふ夏来る 駒木幹正
麦こがしつくづく昭和の子なりけり 矢田民也
白樺と白樺つなぐハンモック 高橋真樹子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
柚の花の君でありしがはや三年 大場梅子
雲の峰亡国のうた四辺より 神戸秀子
ひと息で散りたきものを牡丹かな 斉藤真知子
世界なほ戦場である麦の秋 矢田民也
薮を出てたけのこ眠る冷蔵庫 安藤文
【入選】
酔ひざめの顔吹き渡れ青嵐 安藤文
万緑や心のままに淡く濃く 矢野京子
雪解水鳥海山を揺らしては 斉藤真知子
羊羹の箱に眠れる蚕かな 神戸秀子
夏来たり鋼のごとき蜘蛛の糸 石塚純子
締まりつつ丸くなりゆくキャベツかな 矢田民也
万緑や大蛇のごとく山動く 駒木幹正
みちのくに大きな句集柏餅 大平佳余子
涼しさや俳句の国へ朝刊来 瑞木綾乃
果てしなく続く水田は空写す 伊藤靖子
牧水のさびしと言ひし五月来る 今村榾火
戦地より帰りし父の居た夏よ 伊藤靖子
更衣わが身のなほも重くなる 城山邦紀
散り敷いて花のこころや桜蕊 ももたなおよ
行く春や母が残せし短歌メモ 今村榾火
第二句座(席題:茶摘み、初鰹)
・矢野京子選
【特選】
この一句釣り損ねたり初鰹 城山邦紀
一番茶大海原を渡りける ストーン睦美
龍のすむ雲の中なる茶摘かな 長谷川櫂
【入選】
アンパンマン生まれし国の初鰹 ストーン睦美
五七五竿にキラリと初鰹 城山邦紀
道なりに県境こゆる茶摘かな 今村榾火
背に馴染みゆく真つ青の茶摘籠 高橋真樹子
夫の眼の選ぶ一匹初鰹 石塚純子
・長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
土佐なれや酒は酔鯨初がつを 矢田民也
あをあをと背になじみけり茶摘籠 高橋真樹子
眩暈する茶摘の畝の只中へ 今村榾火
【入選】
アンパンマン生まれし国の初鰹 ストーン睦美
茶を摘むや一日神代の人となり 矢野京子
一番茶大海原を渡り来つ ストーン睦美
高らかに農学校の茶摘唄 駒木幹正
初鰹彷彿として父の胸 今村榾火
わが庭の摘む人もなき茶の木かな 金田伸一
通の眼の選ぶ一頭初鰹 石塚純子
別れ話聞いて茶摘みのはかどらず 岡村美沙子
老いたれば腹皮もよし初鰹 加藤裕子
乾坤を炙りて焦がす初鰹 矢田民也