古志金沢ズーム句会(2025年5月4日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
葛桜みよしのの夜をとぢこめて 安藤久美
灰汁抜かれあはれ筍丸裸 松川まさみ
生命線にぎる嬰児や夏来る 花井淳
薫りよき餅屋句集やつばくらめ 近藤沙羅
チューリップ大笑いして崩れけり 稲垣雄二
句の切れを如何に英訳夏立ちぬ 花井淳
能登を出て能登に戻る子荒神輿 宮田勝
潮騒が慟哭となる水俣忌 趙栄順
【入選】
一粒の意思の静けさ蝸牛 趙栄順
鯉のぼり子ら定年を過ぎにけり 密田妖子
空も海も空きがあります鯉幟 川上あきこ
駆除といふ筍あはれころがりぬ 梅田恵美子
くちびるは覚えてゐたり草の笛 安藤久美
四万十を泳いで渡れ鯉のぼり 安藤久美
どの星へ行こうかジャンケン子どもの日 川上あきこ
幼子に菖蒲湯掛ける頭から 藤倉桂
紀ノ川へ潮さかのぼる立夏かな 玉置陽子
何にでもなれるパン種子供の日 安藤久美
筍の中より竹のあらはれり 田村史生
漣のやうにあやめの咲き初むる 近藤沙羅
穂高嶺の歓声のごと柳絮とぶ 梅田恵美子
ベネチアは水のゆりかご明易き 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
はつなつや大き虚空の中に我 近藤沙羅
夏めくやわが一日ははや夜に 密田妖子
花よ葉よ吾にもうなき恋の夜 氷室茉胡
筍の中より竹のあらはるる 田村史生
一本の胡瓜を齧り推敲す 田村史生
【特選】
灰汁抜かれあはれ筍丸裸 松川まさみ
くちびるは覚えてゐるか草の笛 安藤久美
チューリップ大笑ひして崩れけり 稲垣雄二
風鈴やまづは指もて鳴らしやる 趙栄順
菩提樹の花こぼるるや蛇の寺 飛岡光枝
蝌蚪のひも眠りてしづか山の路 梅田恵美子
さらさらと夏来たりけり竹林 間宮伸子
切つても切つても吹きあぐる新緑 近藤沙羅
ベネチアは海のゆりかご明易き 玉置陽子
赤箱の石鹸下ろす立夏かな 田村史生
薫風や深くかなしく象の皺 松川まさみ
この國の戦後よ永久に蜃気楼 宮田勝
早苗田にわが家も浮かぶ越の国 酒井きよみ
【入選】
一粒の意志の静けさ蝸牛 趙栄順
心臓を測るベットに春惜しむ 稲垣雄二
山法師町を見おろす峠かな 橋詰育子
薫風や遺伝子のまま髪の生ゆ 土谷眞理子
空も海もまだ空きがある鯉幟 川上あきこ
壬生狂言鐘の中から鬼や出づ 田村史生
葛桜みよしのの夜をそのなかに 安藤久美
薫りよき餅屋句集へつばくらめ 近藤沙羅
天真の土偶の乳房春の月 川上あきこ
柿若葉ブルーシートのままに町 密田妖子
わが庭のわけても柿の若葉かな 橋詰育子
菖蒲湯や後期高齢とは如何に 藤倉桂
辞儀深く見送られゐる薄暑かな 松川まさみ
金沢の菓子なほのこと新茶かな 越智淳子
古家の闇を知りをる守宮かな 清水薫
草茂る輪島通りに人の声 越智淳子
山の池水盛り上げる蝌蚪のひも 梅田恵美子
身をすべる一枚の布五月くる 飛岡光枝
幼子に掛ける菖蒲湯頭から 藤倉桂
紀ノ川を潮さかのぼる立夏かな 玉置陽子
行きあうて八十八夜宵の口 松川まさみ
山彦の歌うて囃す小鮎かな 玉置陽子
蟇の声を辿るや寺の奥 近藤沙羅
七十の体温に薔薇香るかな 趙栄順
万緑や神に任せん吾が命 土谷眞理子
蒔きそこねたる公物の茄子の種 飛岡光枝
筍の深き眠りへ鉈を打つ 梅田恵美子
能登を出て能登に戻る子荒神輿 宮田勝
穂高嶺は歓声をあげ柳絮とぶ 梅田恵美子
清水へ登る坂みな飛花落花 氷室茉胡
早苗田や夕日に燃ゆる越の国 酒井きよみ
余花の雨ふつふつとなほ恋心 氷室茉胡
潮騒が慟哭となる水俣忌 趙栄順
まき散らす一葉もなし青嵐 越智淳子
吾に挑む蚊は軽率をまぬがれず 清水薫
白玉にかがやくえくぼ一つづつ 安藤久美
小満の月はさやかに楠匂ふ 間宮伸子
タンバリン鳴らして子らの夏来たり 間宮伸子
第二句座
席題:「滝」、「鮑」
・鬼川こまち選
【特選】
ひつぺがす岩になりたる大鮑 稲垣雄二
滝壺や思ひの丈のこゑたまる 松川まさみ
一本の滝立ち上がる御姿 安藤久美
太陽も月も流るる瀑布かな 田村史生
炙られて阿鼻叫喚のあわびかな 梅田恵美子
鮑住む岩は無事かな舳倉島 清水薫
鮑上ぐ海女をいたはる舟の夫 越智淳子
滝しぶき浴びて水の香芳しく 梅田恵美子
神さびの滝音に胸濡らしけり 安藤久美
鮑焼く我ロビンソン・クルーソー 藤倉桂
【入選】
白き炎(ほ)を吐きたる滝や神の声 川上あきこ
日の射して虹うまれけり滝の前 橋詰育子
大あわび捕りて話がおほきくなり 酒井きよみ
神の火に身をよぢりけり大鮑 飛岡光枝
滝音に励まされゆく山の道 近藤沙羅
眼裏に枯山水の滝の音 花井淳
取り落とす鮑は闇へ沈みゆく 長谷川櫂
軽々と羽衣の滝舞ひにけり 間宮伸子
引つ付ひて離れぬ二枚鮑籠 飛岡光枝
何もかも捨ててしまへと大瀑布 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
あらあらと滝立ち上がる御姿 安藤久美
鮑住む巌は無事か舳倉島 清水薫
能登揺れてすみかはりたる鮑かな 鬼川こまち
【入選】
恙なく隆起の海へ鮑採り 花井淳
箆入れて一気に捌く鮑かな 宮田勝
炙られて身も世もあらぬあわびかな 梅田恵美子
滝壺へカッパを借りる大中小 間宮伸子
滝落ちて轟音に蝶生まれけり 稲垣雄二
吸ひつひて離れぬ二枚鮑籠 飛岡光枝