古志金沢ズーム句会(2024年8月18日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
「魔の山」の秋一夜ごと深みけり 長谷川櫂
溽暑なる野辺切り裂きて新幹線 密田妖子
目指したる生前遺句集星月夜 氷室茉胡
桃食べてけむりのごとき息を吐く 趙栄順
黙祷の鼻にピアスや終戦日 田村史生
傷ひとつなき空残る原爆忌 安藤久美
かなかなやかなかなかなや母逝けり 飛岡光枝
大いなる木陰となりぬ紀伊の秋 玉置陽子
【入選】
帰省子は母の知らなひ香を纏ふ 山本桃潤
死受け入れば生は自由や涼新た 土谷眞理子
七夕や一夜かぎりの竹しなふ 安藤久美
ころりとは逝けぬあはれや羽抜鶏 梅田恵美子
囮追ふ鮎の気負ひを串に刺す 山本桃潤
西瓜食ぶはるかに父のハーモニカ 松川まさみ
高きよりふはりと小鳥展宏碑 泉早苗
ドームの名奪はれしまま原爆忌 安藤久美
母のなき母の病室けさの秋 飛岡光枝
ブルブルと秋のみ空を槍が飛ぶ 花井淳
天の川舟で辿れば美しきかろ 土谷眞理子
火の子抱く火の母親や原爆忌 稲垣雄二
馥郁と白桃傷む夜の底 玉置陽子
母を焼くからくれなゐの秋の風 飛岡光枝
能登きりこブルーシートの夏に立つ 花井淳
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
空に墓標海に墓標や敗戦忌 趙栄順
母を焼くからくれなゐの秋の風 飛岡光枝
ころりとは逝けぬあはれや羽抜鶏 梅田恵美子
蟬は鳴きトンボはとぶや終戦日 橋詰育子
六人の敵は送りぬ生身魂 稲垣雄二
【入選】
胸に手を当てれば聞こゆ秋の声 土谷眞理子
白桃を食べてけむりのごとくをり 趙栄順
七夕や一夜かぎりの竹しなふ 安藤久美
母のなき母の病室けさの秋 飛岡光枝
かなかなやかなかなかなや母逝けり 飛岡光枝
火の母が火のわが子抱く原爆忌 稲垣雄二
馥郁と白桃傷む夜の底 玉置陽子
天の川ほとりに栖みて新藁うつ 酒井きよみ
蜩や十一人で母送る 飛岡光枝
第二句座
席題:「踊」、「蜻蛉」
・鬼川こまち選
【特選】
潮風の香り渦なす踊かな 玉置陽子
徹夜をどり暮らし忘れてのっぺらぼう 間宮伸子
避難先より集まりぬ踊の輪 宮田勝
蜻蛉の光零れて楽園に 田中紫春
幽谷の光統べるや鬼やんま 藤倉桂
大土佐に生まれよさこい踊りかな 橋詰育子
【入選】
輪踊りや半拍遅れの園児たち 密田妖子
恐竜の眼が二つあかとんぼ 安藤久美
精霊も家族も総出盆踊り 田村史生
盆踊り後ろについて来しは誰 松川まさみ
踊りの輪タトゥー跳ねたる異邦人 氷室茉胡
踊り子のくるぶし綺麗ゆびさきも 川上あきこ
踊笠ことしは二夜被りけり 泉早苗
杭一本交互に分かち蜻蛉飛ぶ 越智淳子
実盛が萌黄縅か鬼やんま 長谷川櫂
ひとごゑも風に消えゆく踊りかな 安藤久美
少しづつ君へ近づく盆踊り 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
笠の内見せず女の手が踊る 安藤久美
少しづつ君へ近づく踊かな 田村史生
踊りけり冠灯籠消ゆるまで 飛岡光枝
踊笠ことしは二夜被りけり 泉早苗
【入選】
忘れじと折々すさる踊かな 松川まさみ
この椅子に一睡の幸赤とんぼ 花井淳
少年の誇りとしたり鬼やんま 橋詰育子
避難先より集まりて踊の輪 宮田勝
子を抱きて足で踊るや盆一夜 稲垣雄二
大土佐に生まれよさこい踊りかな 橋詰育子