古志広島ズーム句会(2023年10月1日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
おろし林檎母の唇濡らしけり 米山瑠衣
殻割つてまこと胡桃の命(みこと)かな 長谷川櫂
ポケットの草の実ひとつ大宇宙 城山邦紀
手のひらに胡桃鳴らしてけふの月 金田伸一
銀杏や毒と言はれてもうひとつ 原京子
【入選】
雑草をごぼう抜きして墓洗ふ 城山邦紀
ヴィオロンに月を跳びだす兎かな 原京子
栗百個一気に剥かん小半時 加藤裕子
秋天の壁に落書きトトロ来る 米山瑠衣
根の国の御霊の声か蚯蚓鳴く 安藤文
今生は稲刈までも競ひ合ひ 大平佳余子
枝豆の塩加減よしけふの月 金田伸一
湯浴みして月浴びをする今宵かな 大平佳余子
今年米病院食のしみじみと 矢田民也
もてなしはまづ一献の菊の酒 斉藤真知子
運ばんとぐらりと傾ぐ菊の鉢 斉藤真知子
半分の家族になりぬ栗羊羹 高橋真樹子
月に泣き月に笑うて喜寿迎ふ 大平佳余子
鶉の卵はやも鶉のまだらあり 大平佳余子
山栗のかつと口開く蛇笏の忌 大場梅子
・長谷川櫂選
【特特選】
崩れ簗月影もまた水音も 加藤裕子
心今も傷つきやすし敬老日 矢野京子
十六夜や夜干し終へたる寿 林弘美
【特選】
蓑虫の破れ葉の蓑さむからむ 斉藤真知子
安芸の海へ竹伐り出さん牡蠣筏 加藤裕子
月に泣き月に笑うて喜寿迎ふ 大平佳余子
露の玉はらはらさせてまだ葉先 矢野京子
夏帽を木に掛けしまま山下る 岡村美沙子
【入選】
安らかに母の寝息やけふの月 米山瑠衣
花ニラの花は清らか庭の隅 夏井通江
栗百個一気に剥かん小半時 加藤裕子
腹探るエコー検査や秋の暮 今村榾火
胡瓜茄子ともに届きぬ今年米 伊藤靖子
反骨の骨はぼろぼろ羽抜鶏 大場梅子
今年米病院食のしみじみと 矢田民也
現れて風鈴外す大きな手 菅谷和子
月天心いよいよ深き月の色 菅谷和子
森の木のそれぞれに秋深みゆく 斉藤真知子
手のひらに胡桃鳴らしてけふの月 金田伸一
運ばんとぐらりと傾ぐ菊の鉢 斉藤真知子
半分の家族になりぬ栗羊羹 高橋真樹子
秋風にさらはれさうや杖の母 矢野京子
鶉の卵はやも鶉のまだらあり 大平佳余子
用も無し宛てにもされず柘榴の実 岡村美沙子
ひよんの実を吹いて勝ち負けなかりけり 矢野京子
第二句座(席題:鵙、胡桃)
・矢野京子選
【特選】
熟年を夫婦で迎ふ鬼胡桃 高橋真樹子
玲瓏と双葉の眠る胡桃かな 長谷川櫂
まな板の芯まで乾き鵙の声 石塚純子
【入選】
胡桃餅今年の胡桃もう出たか 長谷川櫂
胡桃割る父の手元を兄弟 石塚純子
鵙高音わが体温の切り替わる 加藤裕子
のこされし胡桃に母の握り艶 神戸秀子
かすかにも吊り橋揺らし鵙のこゑ 矢田民也
掌の胡桃回し回して句をつくる ももたなおよ
・長谷川櫂選
【特選】
しつくりと麻痺の手にある胡桃かな 瑞木綾乃
しづかなる力をこめて胡桃割る 安藤文
愛玩の二つを残し胡桃割る 矢野京子
【入選】
鵙高音老の歩みをわらふかに 金田伸一
胡桃割る父の手元を兄弟 石塚純子
晩節を汚すなかれや鵙の声 大場梅子
何時の間に庭のあちこち鵙の贄 林弘美
一粒の音して落ちし胡桃かな 高橋真樹子
胡桃割る明日来る人を楽しみに 加藤裕子
丹精の薔薇や鵙きて贄を刺す 大平佳余子
寝静まる家にひとりや胡桃割る 斉藤真知子
のこされし胡桃に母の握り艶 神戸秀子
したたかや打てども割れずこの胡桃 菅谷和子
胡桃割る怒りの音を立てながら 安藤文
右の脳きたへん胡桃鳴らしつつ 金田伸一
あつけなく二つに割れし胡桃かな 矢田民也
ばんざいの形のままや鵙の贄 ストーン睦美
わが頭打つて信濃の鬼くるみ 神戸秀子
掌の胡桃回し回して句をつくる ももたなおよ