古志金沢ズーム句会(2023年10月15日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
この星のいづくか裂けてダリア咲く 田中紫春
柿の箱洩れくる紀伊の大夕焼 玉置陽子
鯖雲に見へ隠れする地球かな 田村史生
自然薯や日本列島よこたはる 泉早苗
ラグビーの真青き空へ巨体舞ふ 長谷川櫂
靡くコスモスひとはみな死ぬ撃たずとも 田中紫春
おほ空に羊の大群玩亭忌 近藤沙羅
はららごの一大火炎飯の上 玉置陽子
不知火や水俣の裁き七十年 山本桃潤
【入選】
太極拳舞ふや月夜の鶴となり 藤倉桂
火を焚いて太古の月を待つとせん 酒井きよみ
名人は一人奥へと茸狩 氷室茉胡
深秋や「歩」を突く一手始まりぬ 宮田勝
かへり花病める地球を癒さんと 泉早苗
白山は神のまばゆさ鮎落つる 玉置陽子
色鳥やむかし文もて恋をせし 趙栄順
手はじめに木の葉一枚龍田姫 清水薫
冬瓜の味ほどの距離吾が夫婦 氷室茉胡
火のごとく氷のごとく批評あれ 長谷川櫂
花野より出て花野へ鬼遊び 田村史生
一斉に加賀一国の松手入 趙栄順
こほろぎの艶やかに手をこぼれけり 長谷川櫂
しろがねの光の帯や秋の川 梅田恵美子
浅酌両吟月によふてさうらふ 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
先の世はリスの夫婦か栗を剥く 飛岡光枝
白山は神のまばゆさ鮎落つる 玉置陽子
一日をかまけて栗の渋皮煮 飛岡光枝
自然薯や日本列島よこたはる 泉早苗
塩ふつて子芋の素揚げ田舎酒 酒井きよみ
おほ空を羊の大群玩亭忌 近藤沙羅
【入選】
瓢箪のふたつ眠るや月の中 飛岡光枝
掘り出して乳房の色の秋茗荷 稲垣雄二
身の内に獣飼ひならす栗ごはん 鬼川こまち
けがれなき産土であれ芋の露 花井淳
栗の飯丸きこころでいただかん 清水薫
空き家にはあらぬ証か吊し柿 宮田勝
枯れ枝にまだ草の色鵙の贄 稲垣雄二
角伐るや今伐りし角高高と 田村史生
器量よく洗ひ上げたり芋水車 酒井きよみ
報恩講四日つづきの朱の御膳 泉早苗
名人は一人奥へと茸狩 氷室茉胡
蛤と化して雀の焼かれけり 玉置陽子
けさ鶴や戦の空を渡り来き 趙栄順
大甕に裏山の秋活けてあり 稲垣雄二
八方へしぶき飛ばすや芋水車 酒井きよみ
病む母に匙ですくひて新豆腐 稲垣雄二
手はじめに紅葉一枚龍田姫 清水薫
一斉に加賀一国は松手入 趙栄順
はららごの炎えひろがりぬ飯の上 玉置陽子
棉の桃むかしアメリカ土産かな 越智淳子
第二句座
席題「砧打つ」、「木犀」
・鬼川こまち選
【特選】
腰入れて二人がかりや砧打つ 松川まさみ
恋すれば歩幅を合はす金木犀 間宮伸子
千たび打つ月の光や葛砧 玉置陽子
空耳や砧を打ちし友遥か 松川まさみ
ごつごつと祖母の握り癖古砧 稲垣雄二
白山は白一色へ砧打つ 花井淳
厳めしき職員玄関金木犀 花井淳
金木犀夢のなかまで香るかな 趙栄順
【入選】
み吉野の狐狸が覗くや小夜砧 玉置陽子
憎しみも愛も織りなし打つ砧 田中紫春
砧打つ夢の中まで山の風 安藤久美
砧打つ女の意地は一直線 趙栄順
木犀や町中めぐる富士の水 飛岡光枝
砧うつ始めは音のかろがろと 酒井きよみ
回想録金木犀の香りけり 長谷川櫂
ウクライナハマス他人事砧打つ 近藤沙羅
ひと雨にひとしを香る金木犀 趙栄順
どの路地もうっとりとして木犀の香 川上あきこ
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
憎しみも愛も打ち打つ砧かな 田中紫春
小夜砧始めは音のかろがろと 酒井きよみ
この路地もうつとりとして金木犀 川上あきこ
【入選】
打ちひしがるるニュースばかりや金木犀 近藤沙羅
み吉野の狸が覗く小夜砧 玉置陽子
大岡信愛せし町や銀木犀 飛岡光枝
木犀や町中めぐる富士の水 飛岡光枝
白山は白一色や砧打つ 花井淳
母の家に母ゐぬふしぎ金木犀 玉置陽子
木犀の香りの猫となり帰る 稲垣雄二