古志広島ズーム句会(2023年9月3日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
また一つ森の消えゆく竹の春 大場梅子
火の中に目玉が一つ原爆忌 長谷川櫂
生きてまた秋の歳時記ひらきけり 斉藤真知子
まきさんに逢ふ歳時記の梨畑 ももたなおよ
世界を憂ふ枝豆を食ひながら 今村榾火
【入選】
鬱々と無花果熟るる真昼かな 安藤文
茫茫と庭草の丈秋の風 城山邦紀
敬老日気がすすまぬの一点張り 石塚純子
向日葵の一つ一つに挨拶す 伊藤靖子
子規庵に白粉花の咲くころか 今村榾火
艶やかないのち山栗炊き込めば 石塚純子
生きて跳ぶ水切りの石秋の川 駒木幹正
鷹渡る海の細道案内せよ 林弘美
夕凪や海流れこむ蟹の穴 長谷川櫂
秋彼岸母の大ぶりいなりずし 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特特選】
明け方の夢より醒めて桃をむく 斉藤真知子
冬瓜とかはるがはるに思案顔 加藤裕子
荒野には荒野の花の露けしや 神戸秀子
【特選】
一病を得て親しきは子規忌かな 大場梅子
長き夜やペン皿にペン置いてより 矢野京子
露けしや庭に廻りてみても留守 加藤裕子
鬱々と無花果熟るる真昼かな 安藤文
何もなきわが家の自慢虫時雨 矢野京子
父の忌や庭に今年の桔梗咲く ももたなおよ
世界を憂ふ枝豆を食ひながら 今村榾火
虫の夜の闇へ睡りの舟を漕ぐ 矢野京子
このごろの南アルプス大根蒔く 大場梅子
地の底を大江戸線や九月一日 原京子
【入選】
故郷の無花果食めば母恋し 伊藤靖子
乳吸ひてすぐ寝る赤子月今宵 夏井通江
枝豆を枝ごと抜きて土産とす ストーン睦美
秋恋し空いちめんのうろこ雲 菅谷和子
故郷に実る無花果届きけり 伊藤靖子
茫茫と庭草の丈秋の風 城山邦紀
日がな一日雲見て飽きず啄木忌 石塚純子
命あらば百歳の母震災忌 大平佳余子
草刈りし庭に向日葵高々と 伊藤靖子
若き子は手順追ひつつ踊の輪 加藤裕子
安曇野の友病みてありけふの月 城山邦紀
ふるさとに釣糸垂らす夏の果 高橋真樹子
艶やかないのち山栗炊き込めば 石塚純子
生きて跳ぶ水切りの石秋の川 駒木幹正
生きてまた秋の歳時記ひらきけり 斉藤真知子
満月を仰ぐ兵士か黒き影 石塚純子
猛々し夜店のひよこ雄鶏に 米山瑠衣
原爆ドーム今宵しづかに虫時雨 菅谷和子
輪に入れば両手の挙がる踊りかな 駒木幹正
引くところのめりかけては踊りけり 金田伸一
梔子の再びの花ひらきゆく 上松美智子
生れし子を囲む家族へ小鳥来よ 夏井通江
秋刀魚焼く一尾は逝きし父の為 斉藤真知子
桃食ふや昼は測らぬ血糖値 金田伸一
第二句座(席題:野分、蜻蛉)
・矢野京子選
【特選】
ふいと来て心をよぎる糸とんぼ 城山邦紀
飛行機は大きなとんぼ子を送る 神戸秀子
野分すぎ蜻蛉の空となりにけり 大平佳余子
【入選】
戦地へと目玉光らせ鬼やんま 城山邦紀
竹帚きのふの蜻蛉来てとまる 斉藤真知子
綿雲のちぎれちぎれて夕蜻蛉 今村榾火
海底の石も逆立つ野分かな 菅谷和子
厳島なほも清らや野分あと 瑞木綾乃
・長谷川櫂選
【特選】
将門の首のさまよふ野分かな 大場梅子
蜻蛉来る一天紺のかなたから 菅谷和子
ひと掃きで揺らぐ天地野分かな 城山邦紀
【入選】
はじめての佃なつかし赤とんぼ 神戸秀子
竹帚きのふの蜻蛉来てとまる 斉藤真知子
次々にとんぼ乗り継ぐ次の風 矢野京子
忘れずによくぞ我が家へ秋茜 石塚純子
むせかえる風の奥から銀やんま 高橋真樹子
とんぼうや芝しきつめて爆心地 神戸秀子
庭箒探して回る野分あと ももたなおよ
空海の高野を守る鬼やんま 大平佳余子
草ぐさの力を試す野分かな ももたなおよ
野分きて駆け上がりゆく太田川 林弘美
何もなき田舎といへど野分立つ 今村榾火