古志仙台ズーム句会(2023年8月27日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
炊き上げて大地の色や零余子飯 齋藤嘉子
笑顔のみ思ひ出されて盆の月 及川由美子
原爆忌わたしも愚者のその一人 三玉一郎
会津峰の水をちからの稲の花 宮本みさ子
十一時二分のしじま長崎忌 青沼尾燈子
【入選】
戦争を売り買ひしたる烏ども 青沼尾燈子
旧姓にはつと振り向く盆踊 谷村和華子
百日紅遠き戦地の子らの声 青沼尾燈子
父親によく似た人や踊りの輪 平尾 福
どの家も老いし女や敗戦忌 長谷川櫂
枝豆や酒徒は硬めの茹で加減 石川桃瑪
すべりひゆ地球のどこかいつも飢餓 佐藤和子
・長谷川櫂選
【特々選】
夕暮れて道なほ熱し葉鶏頭 服部尚子
ややの声露の言葉を吐かんとす 齋藤嘉子
いまさらと詫びも通らぬ糸瓜かな 臼杵政治
【特選】
寂莫と火蛾の紋様塵取りに 佐藤和子
広島がしづかに眠る夏帽子 三玉一郎
旧姓にはつと振り向く盆踊 谷村和華子
心平の瞑想の籐寝椅子かな 宮本みさ子
一匹で足りる一夜の虫の声 佐伯律子
冬瓜や妻の寝姿そのままに 齋藤嘉子
湾曲の列島猛々しき残暑 川村杳平
すべりひゆ地球のどこかいつも飢餓 佐藤和子
【入選】
片蔭をはみ出してゐる力士かな 佐伯律子
海風に溺れさうなり秋の蝶 平尾 福
炊き上げて大地の色や零余子飯 齋藤嘉子
弾けたる氷の音や冷し酒 武藤主明
手花火や安らぎこぼる妻の顔 川辺酸模
畑仕事終へて自由な素足かな 阿部けいこ
かなかなや木の根に縋る焼山寺 川辺酸模
孫よりの朝顔のたね開花せり 那珂侑子
白桃の夢のしずくを啜りたり 上村幸三
小さき手に零るる菓子や地蔵盆 臼杵政治
ひもじさを知る人の減り終戦日 阿部けいこ
数多なる魂とびかふ終戦忌 青沼尾燈子
遺影早も決めある輩生身魂 石川桃瑪
笑顔のみ思ひ出されて盆の月 及川由美子
さよならと空に書きおく秋燕 臼杵政治
夫が手の抹茶いただく涼新た 那珂侑子
秋の灯へ広ぐ英世の母の文 宮本みさ子
広島やひとりひとりが爆心地 三玉一郎
原爆忌わたしも愚者のその一人 三玉一郎
盆帰省磐梯山の水真つ先に 宮本みさ子
ケルン積む姫神山の磊磊たり 甲田雅子
盆迎へ山形なまりの母の声 長谷川冬虹
会津峰の水をちからの稲の花 宮本みさ子
墓参り戦死特進古びけり 上 俊一
第二句座(席題:九月、ねこじやらし、鰡)
・長谷川冬虹選
【特選】
一湾を自在に跳ねる鰡たちよ 上 俊一
ランドセル誰のものやらゑのこ草 臼杵政治
寄り道は秘密の始め猫じやらし 及川由美子
しろがねのつぶてつぎつぎ鰡飛べり 齋藤嘉子
【入選】
鯔ばかり狙ふ白髪の漢かな 及川由美子
故郷の川はいまでも鰡飛ぶか 那珂侑子
鰡の子のしきりに跳ぶや竿の先 平尾 福
猫見舞ひ狗尾草を手土産に 及川由美子
だんだんと猫に遊ばれ猫じやらし 臼杵政治
尻尾立て猫出かけ行く九月かな 平尾 福
・長谷川櫂選
【特選】
故郷の川はいまでも鰡飛ぶか 那珂侑子
鰡の子のしきりに跳ぶや竿の先 平尾 福
老犬よ九月の風を見に出でん 青沼尾燈子
尻尾立て猫出かけ行く九月かな 平尾 福
九月来る草ばうばうの吾が庭に 那珂侑子
【入選】
グランドに大声響く九月かな 阿部けいこ
鰡とんで福島の海取り戻せ 甲田雅子
蔵王山雲隆々と九月来る 長谷川冬虹
ねこじやらし二本枯れたり本の上 上村幸三
旅先にワインの試飲九月かな 佐藤和子
鰡跳んで雨雲かかる羽田沖 服部尚子
小名木川堤越えんと鰡飛べり 齋藤嘉子
阿蘇五岳ふたり遊びし九月かな 川辺酸模
えのこぐさ九月はわれの生まれ月 長谷川冬虹
涸れ川に水流れ入る九月かな 服部尚子
仮設跡ゑのころ草の盛りなり 武藤主明
鰡の腹そろばん珠をまさぐりぬ 佐伯律子
投げ直す竿や鰡飛び暮るる海 石川桃瑪
今年また夫の誕生九月くる 甲田雅子
砂浜を軽トラがゆく九月かな 谷村和華子