古志広島ズーム句会(2023年6月17日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
惜命の夏の真白きマスクかな 長谷川櫂
夕焼けの病室ナット・キング・コール 瑞木綾乃
父母の墓のほとりにゐて涼し 高橋真樹子
ひともとの竹でありしが竹婦人 菅谷和子
ガジュマルを灯す蛍よ沖縄忌 大場梅子
【入選】
故郷を思へばからす瓜の花 林弘美
誰よりも紫陽花が好きシーボルト 大平佳余子
人は皆愛されてをり燕の巣 駒木幹正
鳰どりや過ぐれば閉づる菱のみち 米山瑠衣
戦争が咽につかへし麦の飯 城山邦紀
鳥黐搗く兄が来てをる夢の中 ももたなおよ
消灯の窓辺あかるき水中花 菅谷和子
紫陽花の海となりたる鎌倉よ 神戸秀子
赤ん坊くるみしごとく袋掛 斉藤真知子
曾良いまも夏野をいそぐ笠一つ 長谷川櫂
雲の峰限りなく命限りあり 伊藤靖子
アルプスの大きな水を抱く代田 金田伸一
・長谷川櫂選
【特選】
鳰どりや過ぐれば閉づる菱のみち 米山瑠衣
戦争が咽につかへし麦の飯 城山邦紀
鳥黐搗く兄が来てをる夢の中 ももたなおよ
ひともとの竹でありしが竹婦人 菅谷和子
百歳の夢に螢のふぶきけり 石塚純子
よく見ればわれこそお岩立版古 大場梅子
父編みし籠にことしの蛍かな 矢田民也
【入選】
この辺りめだかをりしが梅雨出水 米山瑠衣
早起きの小鳥らの声夏の森 伊藤靖子
しづかなる水に眠りて未草 斉藤真知子
トラックの音や夜明けの花むくげ 夏井通江
紫陽花の海となりたる鎌倉よ 神戸秀子
黴といふミクロ世界の静寂かな 駒木幹正
八重山や杏子の詠みし白上布 大平佳余子
尺蠖を真似て廊下でストレッチ ももたなおよ
第二句座(席題:汗、竹婦人)
・矢野京子選
【特選】
海みえてたちまち汗のひく峠 神戸秀子
人間の細部省略竹婦人 長谷川櫂
汗かかぬ機械に汗し町工場 矢田民也
【入選】
未だ捨てられぬぼろぼろの竹婦人 斉藤真知子
読経してたうとき汗を流されし 菅谷和子
初めからくびれなかりし竹婦人 斉藤真知子
汗の香の君をやさしく抱きにけり 安藤文
子の汗はをとこの匂ひとなりにけり ストーン睦美
・長谷川櫂選
【特選】
共に見るいくたびの夢竹婦人 矢野京子
フィールドの華となりたる汗みづく 高橋真樹子
つつがなき齢重ねて竹婦人 矢野京子
初めからくびれなかりし竹婦人 斉藤真知子
竹夫人形見にもらつていいものか 岡村美沙子
【入選】
竹婦人今宵は風もかぐはしく 菅谷和子
編みたての青竹にほふ竹婦人 菅谷和子
鳩尾を流れて汗の行きどころ 原京子
去年より強き吾の身や汗つたふ 瑞木綾乃
幾夜経て抱籠肌になじみけん 大場梅子
けふの汗けふの給料風呂浴びる 安藤文
新しきよりは古きが竹婦人 矢田民也
わが嘆き聞いて幾年竹夫人 石塚純子
竹夫人座敷にひとつ放られて 夏井通江