古志鎌倉ズーム句会(2023年6月11日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
はなよめと名づけし桃や袋掛け 木下洋子
紫陽花の今日の水色生けにけり 木下洋子
香水の一滴にして深き森 関根千方
したたかに老い使ひ分け白団扇 澤田美那子
【入選】
ひと鳴きで水にごしけり牛蛙 森永尚子
ぴかぴかの黒御影から青蛙 仲田寛子
いとけなき蓮の莟も山廬かな 萬燈ゆき
太陽を一重に包む海芋かな 関根千方
父の日や戦死の父の味しらず 吉田順子
涼しさや鑑真和上結跏趺坐 きだりえこ
•長谷川櫂選
【特選】
紫陽花の今日の水色生けにけり 木下洋子
梅雨空やにぶき音してホームラン おほずひろし
香水の一滴にして深き森 関根千方
押寿司の鯖の厚みも祇園かな わたなべかよ
人間の一生螢の一夜かな 藤英樹
連休の終はりし村の花柚かな 森永尚子
【入選】
はなよめと名づけし桃や袋掛け 木下洋子
自転車で家庭訪問さくらんぼ 藤原智子
岩陰にそつと仕掛ける鰻針 西川遊歩
父の日の酒は静かに飲むべかり 藤英樹
亀の子のおそるおそるや手足首 園田靖彦
一群の蛍袋に驟雨かな 湯浅菊子
一枚の紙の軽さよ夏布団 園田靖彦
第二句座(席題:枇杷、帰省子)
•藤英樹選
【特選】
帰省子や服も思想もあたらしく 萬燈ゆき
房州は縹の国や枇杷実る イーブン美奈子
帰省子の大きな声のはなしぶり 森永尚子
帰省子に老犬の尾の振り止まず 湯浅菊子
帰省子のための畳の広々と 藤原智子
【入選】
帰省子や富士見える窓全開に 仲田寛子
枇杷をもぐ二階の窓より手を伸ばし 吉田順子
枇杷の実を生けて茶室を灯しけり 西川遊歩
枇杷剥くやをんなの衣を剥ぐごとく 萬燈ゆき
枇杷の実の光を目指す岬かな 神谷宣行
•長谷川櫂選
【特選】
帰省の子遠き目をして見るなかれ 関根千方
帰省子の胸にはや住むをみな子よ わたなべかよ
枇杷剥くやをんなの衣を剥ぐごとく 萬燈ゆき
枇杷の種転がして君待ちゐたり 関根千方
枇杷ひとつ夕日の色を掌 葛西美津子
【入選】
また父母の小さくなりたる帰省かな 藤英樹
帰省子や服も思想もあたらしく 萬燈ゆき
帰省して揚げ物三日食はさるる イーブン美奈子
帰省して三日そろそろ叱らるる 森永尚子
房州は縹の国や枇杷実る イーブン美奈子
枇杷の皮へそから剝いてかぶりつく わたなべかよ
皮引けばしとど滴る杷の実よ 葛西美津子
帰省して父の顔みる面はゆく 澤田美那子
帰省子の大きな声のはなしぶり 森永尚子
指つたふ甘露あまさず枇杷食ぶ 萬燈ゆき
枇杷食へばひもじき記憶蘇る 藤英樹
枇杷美しやつやつやの種もまた 葛西美津子
帰省子に老犬の尾の振り止まず 湯浅菊子
枇杷しゃぶる肘の先まで枇杷の汁 澤田美那子
公園にちぎる子もなし枇杷たわわ 田中益美
枇杷たわわ空き家となつて三年かな 木下洋子